仮面ライダードゥームズギーツ 絃神島の金狐 作:究極の闇に焼かれた男
第一話
ある日の放課後、茜色に染まりかけた西の空から強烈な陽射しがファミレスの窓際にある席へと降り注ぐ。
そんな窓際の席でシャーペンを手にノートに文字を書き込んでいた少年こと金月英澄は、ふと口を開いた。
「今、何時だ?」
独り言の様に英澄が呟くと、それに対し正面の席に座っていた友人の1人が笑いを含んだ口調で答える。
「もうすぐ四時よ。 あと三分二十二秒」
「正確な時間ありがとう。 それにしても何とか終わらせる事が出来て良かったよ。 それにしてもだが、"あの先生"はどうして俺にだけ特別授業なんて物を設けてるのか分からんな」
「お前それ、本気で言ってるのか?」
英澄のボヤキに短髪を逆立て、ヘッドフォンを首に掛けている友人の1人である少年--【矢瀬基樹】が聞き返すと英澄は意味が分からないと言った表情を浮かべる。
「こりゃあ重症だな……」
「何か言ったか?」
「いや、何でも…」
「そうか? それよりも"藍羽"、そろそろバイトの時間じゃないのか?」
「あー……もう、そんな時間? んじゃ、あたし行くね」
携帯電話を眺めていた華やかな髪型と、校則ギリギリまで飾り立てた制服を着た少女--【藍羽浅葱】はそう返すと、残っていたジュースを一息で飲み干して立ち上がった。
「それにしても人工島管理会社の保安部のコンピューターの保守管理とは、本当に凄いバイトをしてるな」
「まあね、それに割がいいしね」
藍羽は空中でキーボードを叩くような仕草をした後、「じゃね」と手を振って店を出て行く。
「いつも思うんだが、あの見た目と性格で天才プログラマーってのは反則だよな。 未だに信じられんっつか……たしかに成績はガキの頃からぶっちぎりで良かったんだが」
藍羽の後ろ姿を見送りながら頬杖をついていた矢瀬が呟くと、それに英澄は「同感だな」と返す。
「そういうギャップが有るからこそ、色んな意味で人気なんだろう。 "天は二物を与えず"と言うが、それが本当か疑いたくなるよ」
「それな。 じゃあ、そろそろ俺も帰るわ」
「ああ、また明日」
そう軽く受け答えをすると、矢瀬は荷物を纏めて立ち上がり、そのままファミレスを後にする。 そして残された英澄は暫くぼんやりと窓の外を眺めてから、そっと荷物を手に席を立ち上がると会計を済ませファミレスを出るのだった。
──────────
「……アレで尾けているつもりなのか?」
ファミレスから出て暫く経った後、英澄は背後(目算で約十五メートル)に視線を向けると、ベースギターのギグケースを背負った一人の少女が建物の陰から此方を見ていた。
(服装からして彩海学園、それも"凪沙"と同じ中等部の制服だな。 それにしても、あんな顔の女子は居なかった気が……)
そう思いながら英澄は後を尾けている少女を気付かれないように観察する。 綺麗な顔立ち、どことなく人に馴れない野生の猫に似た雰囲気。 短いスカートに慣れていないのか、ときたま動きが無防備で危なっかしい挙動を見せていて、一定の距離を保ったまま不自然な程に歩調を合わせており、自分が足を止めると彼女も足を止め、街頭路の後ろに隠れたりしていた。 それに加えてどうやら本人は気付かれていないつもりらしいのだが、周りから奇妙な物を見る視線に晒されている事に気付いていない様だ。
(撒くのは簡単だが、それだと何が起きるか分かったもんじゃない。 だけど逆に俺の方から声を掛けたら逃げられる可能性があるからな……こうなったら少し様子を見るべきだな)
そう結論付けた英澄は、たまたま目に入ったショッピングモールへと入り、そして入口近くにあったゲームセンターに入って行く。
すると英澄を尾けていたであろう少女は動揺した様子を見せ始め、やがて自分の姿を隠すのも忘れて途方に暮れたように店の前で動きを止める。
英澄の姿を見失うのは避けたい、だからといって店内に入ってしまえば英澄と顔を合わせてしまう可能性が高い、その様な葛藤の板挟みとなっている。 いや、正確にはもっと単純な事で、ゲームセンターと言う"得体の知れない店"を警戒している様にも見えた。
(ゲームセンターに対して、あの視線とは、どんだけ田舎から来たんだ?)
そんな少女の姿に英澄はそう思いながら様子を伺い、流石に隠れる為だけに店内に居座る訳には行かないと考え、長い溜息を零しながら外へ出ようとした瞬間、間の悪いことに同じことを考えていたのか、ギターケースを背負った少女も意を決した様子で店に入ってきた為に、二人は入口で鉢合わせてしまうのだった。
英澄と少女は暫くの間に、無言で見つめ合う。 どう反応するべきか英澄が悩んでいると、それより先にどうにか反応したのは少女の方だった。
「か……金月英澄!」
ギターケースの少女は上擦った声でそう叫ぶと、重心を落として身構えた。
突然身構えた少女に英澄は何処か面倒くさそうに思いながら一瞬だけ黙考し、
「Paenitet me postearelinquere quaeso.(すまないが後にしてくれ)」
「え?」
黙考した末、少女に何故かラテン語で返していた。
「Id dico,ut te iterum videam.(そう言う事だから、またな)」
「えっと……あっ、ちょっと!?」
突然のラテン語に少女が動揺している隙に英澄が横を通り過ぎようとすると、それに対して少女は慌てて声を掛ける。
「待ってください、金月英澄!」
少女の声に英澄は溜息を零しそうになるのを堪えながら振り返る。
「お前、何者だ? 俺に一体なんの用があるんだ?」
英澄は警戒心を顕にしながら少女に視線を向ける。
少女は、生真面目そうな瞳で見返しながら、少し大人びた硬い声で答えた。
「わたしは獅子王機関の剣巫(けんなぎ)です。 獅子王機関三聖の命により、あなたの監視をする為に派遣されて来ました」
(獅子王機関? 獅子王機関って言うと、確か……)
少女の言葉に英澄は黙考し、間違いなく厄介事の予感をひしひしと感じ取った。
「…獅子王機関の剣巫だが、何だか知らないが話があるなら場所を移すぞ。 このままだと変に目立って居た堪れない」
「それって………ッ!?///」
英澄の言葉に雪菜が?を浮かべていると、ふと周囲から異様なまでに視線を向けられている事に今更ながら気付き、驚愕した様子を見せながら恥ずかしそうな顔をする。
「ハァ……とりあえず場所を移すから、大人しく着いて来い」
雪菜の様子に英澄は呆れた表情を浮かべながら、仕方ないと言った様子で自分の行きつけである店へと急ぐのだった。
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