転生ゆうむす、あと三年   作:多部キャノン

14 / 17
作品トップに自分用のアッセロくん立ち絵的なものを追加してます
特にまだイメージ固まってないって方はよろしければどうぞ


第二章
第十四話 友だち募集中


窓から覗くは青い空、白い雲、広がる草原。

ガタガタと音を立てて身体を揺らす一つの箱は、未経験の私に否応なく非日常を与える。

 

「ふんふん、ふふん……」

 

もたらされるのは、時折座る姿勢を変えないとお尻が痛くなってくるほどの揺れ。

普通は大変さが先に来るのだろうこの環境も、今の私にとってはワクワクする"冒険"の一つでしかない。

 

「ご機嫌そうですね。馬車は初めてだと伺いましたが、酔っていたりはしませんか? 何か不調を感じたら、すぐに言ってくださいね」

「…………」

「あ、あ、いえ、ごめんなさい、護衛なのに呑気でしたね。その、今のところ全然大丈夫です、はい。ね、マルティロ」

「あー。俺はのんびり寝転がってるだけだからな。構わずきりきり働きなぁ、アッセロ……いでで!」

「疲れてそうだから足つぼ押したげるね、多分この辺」

 

完全にリラックスした体勢でプラプラと手を振る中年の足裏を、なんとなく柄でグリグリしながら私は今、自分がいる空間を見渡す。

 

私たちが身を預けている馬車の中にいるのは、四人。

一人は今私に優しげな声をかけた、ふんわりとした……シスター?のような衣装に身を包んだ、青い髪のお姉さん。

その横で腕を組みながら沈黙を守る、お姉さんとは対象的に硬そうな金属の鎧で全身を纏う人物。

そして、未知の体験に頬を熱くさせ窓や進行方向に視線を回す私と、旅に出る前のゆるみっぷりが戻ったかのようにへらりと笑うマルティロだ。

 

 

後悔ばかりだった前世から超、かっこいいヒーローを目指しこの世界に足をつけられた私は、アッセロは今。

イドナ村を出て、ウーツ港から船を乗り……次なる目的地の王都がある、中央大陸に足を踏み入れていた。

 

この道程自体は、隣を歩く友人マルティロの案内によるものだが。

ここでやりたいこと、やるべきことは私が出した希望に沿ったものだ。

 

そしてそんな中、まだまだコミュニケーション力にも乏しい……言ってしまえば人見知りもいいところである私が。

全く知らない彼女らと馬車で身を寄せ合っている理由は。

 

「────おぉい! また出やがった、魔物が四体! 護衛のねーちゃん、出てくれ!」

「はい、任せて! 四体か……とりあえずマルティロ、さっきまで通りで!」

「おー」

「ありがとうございます、ご無事を祈らせていただきます」

 

突如馬車が歩みを止めたことで身体が傾いていた私に、御者の人から声がかかる。

『馬車の料金も含めた報酬を対価に魔物からの護衛をする』という契約を今回も果たすため、私は刀を取り馬車を躍り出たのだった。

 

 

------------

 

 

「んで、お前はこれからどうしたいんだ?」

 

イドナ村でやることも終え、そろそろお(いとま)しよう、というタイミングになり、突如。

友人であるマルティロがかけてきた質問が、これだった。

 

「え、どうって、それは……三年後の災厄をなんとかしようって」

「そりゃ最終的な目標だ。今の自分がいきなりなんとか出来るなんて思っちゃいねえだろ?

そこに至るまでに直近の目的をどうするか、どうしたいと思ってるか聞かせてみろ。

……言っとくが、全部聞こうなんて思うなよ? 俺は手段を伝えはするが、これはお前の旅なんだからな」

 

むむむ。

確かにマルティロの言う通り、私がやりたいと決めたこの道を、誰かに言われるがまま進むというのは違う話だ。

納得した私は自分に今、何が一番足りないか、何が欲しいかをまず考えて……

最初に浮かんだのは、イドナ村での戦いを共にした少女、レクタのことだった。

 

「……仲間、ほしい。

私自身もこの先強くなりたいけど、今回の事件みたいに一人じゃどうにもならないってことはいくらで……も……あっ……」

 

……やっぱり、今からでもレクタが着いてきてくれたりしないだろうか、と未練がましく考えて初めて、私は気付いた。

レクタが来れないのは当然で、その事自体は残念ではあるが納得している。

 

が、今話している友人マルティロはどうなんだ、と。

 

そもそも神託を受けた私がマルティロに頼んだのは、最低限戦えるようにする指導。

そして、レクタと出会った後したのは、メナトロール討伐のための報酬ありきの依頼だけだ。

その両方が終わった今、もはやマルティロが私と一緒にいて、危険な思いをする必要なんて、どこにも無いんじゃないか、と。

 

 

『なら、これからは一人で?』

 

ヒトリ、一人……独り。

 

今まで多分、無意識に考えないようにしていた現実。

それに考えが及んだと同時、急速に口が乾いていくような感覚に襲われ、思わず唇を引き結ぶ。

気づけば刀をぎゅっと抱きしめていたのは、ヒーローを目指して災厄を止める、という決意が少しでもグラつかないようにするためだろうか。

 

「…………っ、っ……」

 

そうして、ある種メナトロールとの決戦前にも負けないぐらいの緊張に一人揺れながら。

どういう結果になるにしろ頑張って受け入れよう、と。

 

なんとか言葉を待った私に、マルティロはあくまで軽く言い放った。

 

「まあ、そうなるな。災厄に対抗する旅なんだから、欲しいのは当然戦えるやつだ。

そういう連中は今大体王都に集まってるだろうから、まずはそこに向かうのが当面の目標だな。

ウーツ港ってとこから王都のある中央大陸に渡るから、今から旅の準備始めるぞ…………なんだ?」

 

「あ……えっと、その……もしかしてマルティロも、着いてきてくれたり……する、感じ?」

 

「あ~~~~~?」

 

当たり前のような態度で荷物をまとめ始めた男に、おずおずと口にした私のセリフ。

それに飛んできた返答は、『アホに対する態度』そのものだった。

 

「お前っ、まさかっ、モース2だか3だかのっ、魔物をなんとか倒したぐらいでっ、もう一人前だかなんだかにっ、なったと思ってんのっ、かっ」

「いたっいたっ、いだだだっ」

 

コンコンコココン、とよく音がなる私のおでこを小突きながら、マルティロは詰め寄り、続ける。

 

「王都への行き方、船の乗り方、道中ぼったくられない金勘定、食料がない時の調達法。

な~んも知らん世間知らずのガキが、気ままに一人旅希望なんざ三年は早えよ。

わかったらさっさと荷物まとめて、村の連中にも案内……いででっ! なんで柄をグリグリすんだ、お前、(カラ)の頭叩いたからかっ!」

「────ふふぅーん……、なんでもないよ」

 

突如襲いかかった理不尽に当然の文句を垂れる中年。

早々に彼に背を向けた私は、荷物をまとめ始める。

 

────ああ、そっか、まだ自分は一人にはならないんだ、と。

緩む口元を自覚しながら、私は現金なほど明るく広がったような気がする未来に、目を向けたのだった。

 

(……この世界の私は、恵まれすぎてるな、色々)

 

 

その後旅立つ準備を終えた私は、イドナ村の人たちと、レクタと。

別れを惜しみながら挨拶をする。

 

「……三年後……災厄……そっか、アッセロさんはそれと戦う旅に出るんだね」

 

併せて、自分が今直面している問題を、警告として伝えることに決めた。

『世界を覆う災厄』と聞かされたからには、このイドナ村や他の村も無関係ではいられないかもしれない。

もちろん突然村に来た少女がこんなことを言っても信憑性も何も無いだろうが、戦いを経て信頼をもらえた今ならきっと信じてくれる、と。

災厄の正体が何か分からない以上警告止まりにしかならないが、それでも彼女たちの幸せに1%でも貢献出来るなら十分すぎる話だ。

 

そんな危険な旅ならばなおさら、と彼らは私たちのサイズに合う防具作りの提案などもしてくれたが、それはマルティロが止めた。

曰く「旅の目的を考えると、防具は邪魔になりかねない」とのことだ。

マルティロがした判断の説明は後日、旅に出たあとにされることになる。

 

「わかった……それならぜったい、ぜったい無事に帰ってきてね。アッセロさんも、マルティロさんも……!」

 

最後に、涙ぐむレクタの力強い言葉に背を押され……私たちはイドナ村を後にした。

 

その後、一度アカシャ村に戻り挨拶回りと、念の為こちらにも同じように災厄の話をする。

私が生まれ、これまで過ごしてきた村とはいえ。

直接的な魔物の被害なども受けていない彼らは、残念ながらイドナ村の人たちほどには響いてはいなかったようだ。

それでも、言わないよりはきっとマシだろうし、この先も可能な限り注意は促していくべき……なはず。

 

そうして今度こそ旅立った私たちは、ウーツ港から船に揺られ、なんとか新大陸に足を踏み入れる。

準備や道中で取られた時間も合わせると、この時点でまた一ヶ月ほど時間を使わされていた。

 

こうしている間も災厄の刻が近づいていると考えると、焦る気持ちも少しわいてくるが。

 

このときの私たちが直面したのは、それ以上に切実な問題だった。

 

「さて……アッセロ。分かってると思うが改めて言うぞ……金が、ねえ」

「はい……」

 

旅立つにあたり、マルティロへの依頼で全額渡した資金とは別の、家に残った物品で作ったなけなしの資金も。

経験から来る知恵で可能な限り切り詰めてきたが、船で大陸を渡るとなると面白いぐらい簡単に吹き飛んだ。

以前からマルティロに予告されていたことで想定内ではあるのだが、実際に目減りしていく資金を見ると、どうしてもそわそわと身体が動いてしまう。

 

ちなみに私がした、食事をもう少し切り詰めたらどうか、自分の分はある程度我慢出来るという提案は、かなり強めに却下された。

ごく短期的な戦いだけを見るならそれも選択肢にはなるが、そうでないなら絶対にノーだ、と。

「旅は飯を抜いたやつから死んでいく。食えないやつが一番よええ」という、実感を伴う言い含めを前に、私が言えることはなかった。

 

そんなわけで予定通り、資金稼ぎと並行しながら王都を目指して進んでいく、ということになり。

手段の一つとして、馬車による移動の護衛依頼を受けることを示された。

 

「今この依頼を受けることにはいくつもメリットがある。わかるか?」

 

学ばせるためだろう、この手の話になるとたまにクイズ形式で聞いて来るマルティロに、私はぼんやり浮かんでいた考えを言ってみる。

 

「えっと……まず、王都側に向かう馬車なら、お金稼ぎと移動が同時にできて時間を節約できる……

あとやっぱり、私自身が実戦経験で強くなれる……っていうのもあるかな、もちろん危険もあるだろうけど」

 

「……そうだな。加えるならタイミングがいい。強い連中がだいたい王都に招集をかけられてるって今は、護衛の手も不足気味だ。

実戦経験が浅いお前でも、仕事が見つかる可能性が普段より高いはずさ」

「おお~~……!」

 

確かにこれなら条件に合う人さえなんとか見つければ、諸々の問題も解決に向かっていくだろう。

思った以上に全方位よし、な提案に私は思わずパチパチと手を叩く……と。

 

「あの……すみません、そちらの方々。間違いでなければ、護衛の仕事を探しておられますか……?」

 

そんな私たちに声をかけてきたのが、ふんわりとした衣装に身を包んだ、青い髪の女性だった。

そして『フラウデ』と名乗った彼女に連れられ会った彼女の護衛? の全身鎧の人と馬車の御者。

彼らは、初見の私たちに……特に小娘の私に訝しげな様子を隠そうともしていなかったが。

 

「…………っ!」

「んなっ……!? なんだこの振りっ……こっちまで風がっ……!」

 

最初はメナトロールを倒したとかモース2だとか色々自己PRしようと思ったけど、初対面相手に上手く口が回らず。

半ばヤケクソで自分にできること、と鋼一刀をその場で見せてみたところ、分かりやすいくらいに目の色が変わってくれた。

 

下手に口で説明するより、通じるうちはこれを名刺代わりにしてもいいのかもしれないな、と。

ちょっとだけ自慢気になりながら、思った。

 

(…………ふふんっ)

 

父が遺した鋼一刀を褒められるのは、自分と父をいっしょに褒めてもらえたみたいな気分になれるから、なおさらだ。

 

 

------------

 

 

「────ッッ!!」

「…………っ、と、三体、目!」

 

そうして、今。

私は袈裟斬りのような形で振られた魔物の剣を避けながら、カウンターで斬り払う。

からからん、と軽い音を立てて地面に散らばったのは、人間の骨だけのような見た目で動く奇怪な魔物だ。

"カラコ"種と呼ばれるこういった魔物は、軽く疲れ知らずな身体で人から奪った武器を振り、俊敏に追い回す。

特に戦闘技術を持たない人にとっての脅威となる彼らの相手は、護衛の仕事の本領というべきだろう。

 

幸い、メナトロールとの死闘を終え、旅に出る前とは別物のように動かせる今の身体でなら、十分に見切れるスピードだ。

そうなるとただ倒すだけではなく、マルティロからの課題も同時にこなして行かなければならない。

 

(────ここ、だっ!)

 

残った魔物が軌道を読みやすい縦斬りを放ったのを見るや、私は持っている刀……ではなく、"左腕"で迎え撃った。

容赦なく振るわれる魔物の剣閃に対し、差し出したのは防具も何もつけていない生身の身体。

 

「ちょ……ッ!?」

 

その様子を見ていたのか、待機している馬車の方から"くぐもった"、悲鳴にも近い声が耳に届く。

傍目から見ても分かるやってることの異常さに、一瞬早まったか、と揺れそうになる気持ちをなんとか噛みころすと、私はそのままぶつけた。

 

ガキンッ、と金属同士の衝突音に近いそれが鳴る。

砕き折れたのは迎え撃った私の腕ではなく、魔物が振るう剣のほうだ。

 

「────ッッ!?」

 

そして勢いのまま腕を魔物の顔にぶつけ、骨の表面を砕きながら衝撃でのけぞらせたところに。

 

「鋼、一刀ッ!」

 

トドメとなる一撃を放った私は、無事魔物の襲撃を乗り切ったのだった。

 

 

------------

 

 

「…………いっっったぁぁあ~~~~っっ…………!」

 

剣を受けた左腕の、痛みの熱を冷ますようにぶんぶんと振りながら。

私は馬車に戻る、と。

 

「お~、おつかれ、実戦でもちゃんと成功────」

「怪我はっ!? 怪我したのですか!? 痛いってどれくらいですか!?」

 

満足げなマルティロの声に突如被さった、青髪のフラウデさんの剣幕に、少しぎょっとしながら口を開く。

 

「ぁ、えっと、ごめんなさい大丈夫です、衝撃は結構あったけど薄くスジが入ったぐらいで、骨も大丈夫そう、かな」

「そ、そうですか……それなら……っ」

 

心底ほっとしたような表情を見せる彼女の姿。

まだ出会ってから間もないが、おっとりとした雰囲気を感じさせる人だっただけに、直前に見せた勢いとのギャップに少し面食らった。

 

(よっぽど怪我するところを見たくないのかな……)

 

とはいえ、心配してもらったことは間違いないので素直に感謝を示すと、次いで息をつきながら御者の人が口を開いた。

 

「無事ならいいんだけどよ、姉ちゃんよくもあんな無茶を……いくらなんでも、怖くなかったのか?」

「いやぁ……あははは……」

 

初対面の人に見せるものではなかったらしく、かなりドン引きさせてしまった気まずさに、力なく笑う。

 

 

今、私が実践したのは、旅立ってからマルティロに教えてもらったいくつかの技術……あるいはこの世界の法則の一つか。

 

(れん)』と呼ばれる、人の根源的な力とされるそれは、身体の中で意識して練り上げることで、その硬度や力を大きく増すという。

達人が鍛え上げた錬の前には生半可な防具など、錬の成長を阻害する重しにしかならない、とのことだ。

 

「え……その、なんていうか……"そういうの"あるの?」

「? そりゃあるだろ。そういうものだ」

「そっかー」

 

この話をされた当初、うっかり『この世界』そういうのあるの? なんて口から出かけながら聞いた私に、マルティロはりんごが赤いのと同じぐらい当たり前、とでも言うように返す。

思えばメナトロールたちとの戦いのさなか、フルスイングでのゴブリンの打撃に身体を固め、驚くほど軽症で済んでいたのは。

知らず知らずのうちに錬を実践出来ていたからなのかもしれない。

 

そして、そういうのがある、と知ったからには、だ。

 

「……まあ、今まで戦ってなかったって人間なら知らねえか。

そうなると最初は聞いただけじゃ全然イメージも出来ないだろうが、錬はこの先絶対必要になる。

時間をかけてでもなんとか────」

「いや、出来るよ、イメージ超出来る。もうすっごい出来ると思う。まじで任せて」

「お、おう……急に早口になったな。やっぱアイゼンにでも聞いてたのか……?」

 

私が何を子守唄代わりにして育ってきたと思っている。

要は生前擦り切れるほど読んでいたマンガ……それも少年マンガで散々見たアレとかソレとかアレのことだ。

私の妄想の主役だったそれをこの世界で実践出来るとなったら、張り切らないのはウソというものだろう。

 

 

そういうわけで最初は軽めの打撃を防ぎ、次は少し尖った石、自分で浅く刀で切る、などなど。

旅を進めるかたわら、練の修行を大喜びで続けていた私は今回、初めて実戦の場で試してみた、というわけだ。

さすがに魔物が振るう真剣相手は緊張するものがあったが、ちゃんと古く、傷んでいそうな刃物を使う相手を残したため、十分勝算はある挑戦だった……はず。

 

(とはいえ、失敗してたら腕トんでたかもしれないのか……あれ、私やばいことやってた?)

 

生前の妄想が形になったテンションのまま実戦まで来たが、ここらで少し落ち着くべきかも知れない。

それこそ、マルティロに説明されたこの世界の法則の一つ……癒し(クラー)の力でも私にあれば、話は別だったのだけど。

 

そんな私に、いまだ心配そうにフラウデさんは声をかけてきた。

 

「無事なら良かったのですが……大事なお身体です、あまり無茶は……」

「そう、ですね……あはは、ちょっと張り切りすぎちゃいました。治す手段も無いのに護衛が大怪我するかもなんて、不安ですよね」

 

────治す手段。

以前、私がメナトロールとの戦いで重症を負って倒れたあと。

私が突然完治したのは、ここ最近になって発見された、癒し(クラー)という非常に珍しい力に目覚めた超常の"女性"、癒し手(クラーリー)の助けによるもの、と聞いた。

目を覚ましたときに居たあの魔女っぽいおばあさんが、流れの癒し手(クラーリー)で、マルティロとのコネなどもあって私にその力を使ったらしい。

 

…………ここからは確認していないので私の想像になるが、世界的にも珍しく、また何故か女性にしか発現していないという癒し(クラー)の力。

いくらコネがあるとはいっても、イドナ村の人間でも無い流れの彼女が、関わりの無い私においそれと使うような能力でないことは分かる。

では何を代価に、と考えるとそこはもうお金とかそういう話になってくるはずで。

私の父アイゼンの遺したお金を依頼として全部渡されたはずのマルティロが、今も自分だけ贅沢したりせず私と同じ財政状況で四苦八苦しているのは、どういうわけかって話で。

 

(…………言わないの、ずるいでしょ……)

 

仮にそうだとした場合の借りをどう返せばいいのか、で少し頭を悩まされるハメになった。

ただ、それも大事だけど今私たちが一番は気にするべきは、やはり三年後に向けた話。

 

もしお婆さんのような癒し手(クラーリー)が仲間になるなんてことがあったなら。

期限が差し迫った旅を乗り越える、とてつもない力となるだろう。

一番人が集まる王都を目指したのは、何よりも癒し手(クラーリー)の情報が欲しかった、というのが大きい。

 

とはいえ、世界的に見ても超レアらしい能力が見つかり、ましてや未熟な私たちの仲間になる、なんて都合の良い考えもいいところ。

乗り合わせた人たちにも引かれた自省も込めて、私は改めて頭を下げた。

 

「みなさんもその、心配かけちゃってごめんなさい。もうちょっと安心して見れる戦い方を────」

「ああいや、最初はぎょっとしたけど、よく考えたら今は安心だもんな。ねーちゃんの言う治す手段ってのも心配いらねえし」

 

「え……?」

「……どういうことだ?」

 

ぽん、と得心したように、私の言葉を遮った御者。

意図が分からず私とマルティロは問い返す。

 

「あの、その話は……」

「あれ、これ言わないほうがいいんでしたっけフラウデ様? まあこの辺の連中はだいたい知ってるし、この人たちもすぐ分かるでしょうよ、ね?」

 

何やら気まずそうな声をかけるフラウデさんと、その横で腕を組みながらどんどん不機嫌そうな空気を出す全身鎧の人。

え、この話続けてもらって大丈夫なやつ? と思い始めたが。

興奮状態なのか御者は軽いノリのまま、大仰な手振りで、私たちにそれを伝えた。

 

 

「こちらにおわすお方こそが、世にも珍しい、癒し手(クラーリー)であり、現代の地母神とも称えられる聖女、フラウデ様その人なのです!

いやあー、こんな方に加えて護衛もいるなんて、今回の旅は楽勝でありがたいことですなあ!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。