転生ゆうむす、あと三年   作:多部キャノン

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第十七話 ネガネガシスターズ

「と、とりあえずその……怪我とか無さそう、ですよね良かった。えっと、ひとまずこのまま一緒に脱出したいのですが……大丈夫……ですか?」

 

私が声をかけた直後、頭……というよりは両耳を抑え、尻尾も隠すように座り込んで、全身から警戒のオーラを発するルブラさん。

 

(私がしっかりしなきゃ……)

 

そんな彼女を見ているとふつふつと湧いてきた感情に背を押され、私は提案する。

しばらく無言でそうしていた彼女だったが、やがてすでに見られていたことを察すると、諦めたように手を外し、呟いた。

 

「……そんな演技しなくていいよ、もう分かってるんだよね。

見ての通り、ボクはライカン種を祖に持つ魔物との混血児……ライジン種の生き残りだ」

 

見ての通り、と言われても混血児のことなんて全然知らないわけだが。

反応に困っている私を置いて、ルブラさんは続ける。

 

「……悪かったね、護衛の依頼をしたのがこんなので。ライジン種のボクなら売り払えばそこそこの額にはなるだろ。

フラウデはただの人間だから、出来れば見逃してやってくれると────」

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待って。売ったりしないし、別に怒ったりもしてませんよ? え、なんでそんな……」

 

一周回ったような穏やかな口調で、とんでもない提案をしてきたルブラさんに、私は慌てて全力の否定を返す。

 

「え……だってキミたちは"ニンゲン"だろ? それも冒険者だ。魔物との混血児なんてどう扱っても文句は言われないし、生きたまま売ればお金にもなる。

ボクだってそんなのごめんだけど、さっきのカラコ種との戦闘見たろ? ボクは魔物との戦いはからっきしなんだ。

キミから逃げたり、仮にキミを倒せたとしても脱出前に魔物にやられておしまいさ」

 

"ニンゲン"をやけに強いニュアンスで区切って言った彼女は、種別に対しての不信感のようなものを覗かせていた。

彼女が当然のような口調で語ったのは、もしかしたらこの世界での常識といえる考え方なのかもしれない。

 

ただ、それは……きっと、今の私には全く関係のないことだ。

ならば。

 

「そっか……その、じゃあ今ちゃんと宣言します。

私は世間知らずで、混血児がどうとかの常識は無いし、マルティロから魔物との混血児は無条件でやっちまえなんて教えも受けてないです」

だからルブラさんが何かしてこない限り、私も何かする気はありません。それより協力してみんなと合流して、ここから脱出したいです。

……あとさっきの魔物にリベンジ」

 

私が腰の刀を撫でながら口にした最後の言葉に、一瞬ひぇ、とルブラさんが漏らした。

……しまった、安心させようと思って言ったのに。

ただ、フラウデさんやマルティロに手を出して、こんな状況に陥らせた危ない魔物を、このままにしておきたく無い、というのは偽らざる本音だ。

 

「そ、そ、そうか……変わってると思うけど……そういうことなら、し、信じる……少なくとも、脱出までちゃんと協力しよう。

……ちなみに、ボク後ろ側歩いていい?」

 

(弱りながらに意外と図太いな……)

 

おっかなびっくり信じる、と言った次の瞬間にはちゃっかり背後に回る要求を出した彼女に、私は少し笑って承諾する。

そうして、改めて私たちは脱出のため歩き始めたのだった。

 

 

------------

 

 

「ところで……その、ルブラさんはさっきのライカンとかいう魔物のことご存知、なんですよね。

ご先祖、とかなんとか。言いづらいことじゃなかったら、その……」

「ああ……構わないよ、血が混じってるってだけで別にライカン種と協力してるわけでもないし。

あと、話し方だけど。

もう顔も見られたし無理に敬語使わないで、呼び捨てでいいや。見た感じ同い年ぐらいだろう?」

 

「ッ!」

 

ルブラさんからかけられた提案に、私はピンッと跳ねたように背筋を伸ばす。

なんだ、と訝しげな表情を浮かべる彼女に、私はゆるみかけた口元に手を持っていき抑えながら、返した。

 

「はい、じゃなくてうん、分かった。えっと……ルブラ。

改めて私はアッセロ、です。えっと最近十四歳になって旅に出ました。よ、よろしく……」

「十四!? あんなしっかり魔物と戦えてて……? ボクは十六……ぐぅ……自分より歳下で出来るヤツを見るとストレスが……」

 

ルブラさんは何やら苦しんでいるが私は彼女に気を遣う余裕もなく。

浮つきそうな自分の心を、必死に抑えることに腐心していた。

 

同性、同年代の相手に呼び捨てでいい、と言われたならこれはもう友だちでは? と喜びそうになったが。

さすがにまだ隠していることも多そうで、護衛の依頼も完遂したわけでもない相手に気を許しすぎるべきではない、と理性が止める。

 

彼女の人間性の把握もまだ出来ていないし、マルティロ、レクタに次ぐ友だち認定はまだ早い……はずだ。

私もそうチョロくは無い。

 

一人で浮き沈みを続ける私だったが、後ろを歩くルブラにその心境が伝わるはずもなく、彼女は口を開く。

 

「えっと話を戻して、さっきのはライカン種っていう狼の魔物で、まあ……見ての通り速い、とにかく速い。

鉱病にかかってなくても、一体一体がモース3程の強さはあると見ていいね」

「ぅ……やっぱそれぐらいあるんだね……」

 

私が半死半生になりながらなんとか倒したメナトロールと同格以上。

おまけに話し方から、一体だけの魔物では無さそうで、改めて今の状況の危険性を強く認識させられた。

 

……ただ、私だってメナトロールとの戦いと、ここまでの旅で大きく力を増しているはず。

ならば臆してばかりいられない、と確認を続ける。

 

「じゃあルブラ……さっきは流物(るぶつ)で地面がどっかいっちゃって終わったけど、それ無しでみんなで、本気で戦ってたらどうなってた、と思う?」

「キミまじで倒す算段つけてるんだな……

えーっと正直キミたちの力も全部分かってるわけじゃないし、ボクはアレだしフラウデもまあ……アレだし……うーん」

 

やたら多い"アレ"が指すのが何なのかはよくわからないが、ルブラはそのまま少し考えてから答えた。

 

「多分……あのライカン一体なら勝てた。正確には、負けはしなかった、と思う。

ライカン種はだいたいが共通した弱点を抱えてるから」

「弱点?」

 

あんな動きが出来る魔物に分かりやすい弱点なんてあるのか、と首をひねった私に、ルブラは続ける。

 

「ボクらみんな……マルティロ以外か、あいつの攻撃をまともに受けたけどみんな動けてただろ?

彼らはものすごく速いが強靭な爪とか、戦闘技術とかを持っていないから、攻撃が致命的にならないんだ」

身一つで戦うことが一族の誇りになってるせいで、カラコ種みたいに武器でも使えばとんでもない脅威になるだろうに、それもしない」

 

戦闘技術……もしかしたらライカン種と関わりがあるルブラが、魔物への決定打を持たなかったのもそこが由来だったりするのだろうか。

 

「ん、あれ、じゃあさっきライカン種が流物を奪って使ってきたのは……」

 

ルブラに受けた説明に引っかかりを覚え、漏らした言葉にルブラはそう、それなんだよ、と力強く返した。

 

「そう、おかしいんだ。彼らがよく分からない流物を使うのもそうだし……

そもそもフラウデが言った通り、向こうから初対面のボクらを積極的に襲ったのも変だ。

普段はニンゲンと関わろうなんてしないから、見ること自体滅多にない、ライジン種のボクだってそうそうご先祖は見かけないよ」

 

そう少し興奮したようにまくし立てた彼女は、ふぅ、と息をつく。

 

「……やっぱり、さっきのはライカン種を知る人から見ても変だったんだね……

分からないことも多そうだし、なおさら早くマルティロやフラウデさんと合流しないと」

 

この場で考えていても判断がつかないことの多さに、改めて早く彼らと再開しなければ、という思いが募る。

そんな私に、ルブラは少し沈んだ表情を見せると、重そうに口を開いた。

 

「……その、流物があるってフラウデが言ってなかったこととか……ごめん。

詳しいことをボクから話すわけにはいかないけど、あの子……その、すごく焦ってるんだ。

一刻も早く遺跡で……その、とある流物を見つけないとって思ってて」

「いや、そんな……私は別に……えっと、その流物ってのはここにあるものなの?」

 

気にしていない方向からの謝罪に戸惑い、なんとか話題を変えようとルブラの言葉尻を私は拾う。

 

「……分からない。そういう流物があるって言われてるだけでここにあるのか、まだこの世界に残ってるのかも。

正直、雲を掴むような話さ。

だからその流物が見つかったら……ごめん、他の何を置いても、ボクたちにもらいたい」

「…………」

 

コクリ、と同意半分といった態度で、私は頷く。

もちろん、私の一存だけで決めるべきことではないので、マルティロたちと合流してから相談するつもりだが。

彼女たちがここまで執着を見せるモノがあるのなら、可能な限り渡してあげたいな、とは思った。

 

そんな私にルブラはほんの少しだけ笑みを浮かべると、次の瞬間にはまた暗い面持ちで、警戒を促した。

 

「ただ、今の問題は無事に出られるかどうかってことになるだろうね……

その、薄々感じてたんだけどこの遺跡……同族っぽい匂いが複数するっていうか……

ぶっちゃけ、ライカン種のねぐらになってるかもしれない」

「……まじですか」

 

「まじだよまじ。おまけに遠くからうっすら血の匂いもしてるし……

出来るだけやばそうな気配を避けるようにはしてるけど、どこかで襲われてもおかしくない。

……あぁ~、なんでよりによってこんなところに巣作ってるんだぁ……フラウデだって無事とは限らないし……」

 

先程から彼女はところどころこっちがいいかも、と道を示していた。

それは、確信を持たない段階からぼんやりと危険を感知していたのかもしれない。

そしてその危険が明確になり始め再び、ここで会ったときのようなネガティブ思考に寄り始めたようだ。

 

「大丈夫、ルブラ……ここまでだって魔物と会ってないし、このまま進めば……す、すすめば、先にフラウデさんたちと合流で、出来るはず……」

「……?」

 

なんとか励まそうと自分で口にした言葉で、ぐっ、と息がつまりかけたのを無理やりこらえる。

さっきから進んでいる遺跡の道のりが、どんどんと奥まった狭いところになっているような感覚があり。

ルブラと出会って意識しないように出来ていた、"行き止まり"というトラウマへの忌避感が、またも私の心を撫で始めたのだ。

 

……おまけに。

 

 

(……やっぱり気のせいじゃない……さっきからなんだ、この嫌な感じっ……!)

 

この遺跡に来てからというもの。

粘りつくような、ジトッとした嫌な視線に見られている感覚がどんどん強まってきている感じがある。

さっきのライカン種? いや違う、多分もっと邪悪な……それこそ、メナトロールとの対峙で覚えたような強烈な負の気配だ。

 

ルブラに言うべきだろうか、とも思ったが、どう見てもすでにいっぱいいっぱいな彼女に、さらにストレスを与えて状況が良くなる気もしない。

それに、彼女自身も無意識かそうでないか、すでにこの気配に気づいているからこそ、より気分が下向いているかもしれない。

 

(……耐えよう。本当に見られているとして、少なくとも手出しはされていないし、気分が悪い以上の害はまだ無い)

 

そう、結局今出来ることは、マルティロたちとの合流を目指して進むことだけだ、となんとか気持ちを強く持たせる。

進めさえすれば、ちゃんと彼らの元へたどり着けるはずだ。

 

……ただ、もし。

もし、今進んでいるこの道の先が。

 

 

「…………ぁ…………」

「ん…………」

 

また、行き止まりだったなら。

可能な限り考えないようにしていた私に"答え"を突きつけるように。

 

そこには、永い時をかけて張り付いたように閉まったままの、大きな扉が佇んでいた。

 

 

鍵のようなものは……見当たらない。

それどころか、鍵穴らしき場所も溶けたように埋まっていて、鍵があったとして開いてくれるような状態に思えない。

 

「…………っ、ふぅ……っ!」

「アッセロ……?」

 

(ああ……くそっ……)

 

『どこかで行き止まりがあるのは当然だ』『また戻って進めばいい』そう、理屈では分かってる。

ただ、先行きに不安ばかり募る状況で突きつけられたこの扉は。

どうしても前世の最期で迎えたあの路地裏の行き止まりと同じ、"お前はここまでだ"と告げられているような、そんな気にさせられて。

ここに居たくないのに、ここから動く気になれない、そんな矛盾した感情に私を縛り付けた。

 

戻って行った道でまた行き止まりだったら?

本当はこの地下から地上に出られる道なんて無かったとしたら?

もしあったとして、魔物と戦い力尽きるまでに見つけられるのか?

無事にたどり着けたとしても、マルティロたちが無事である可能性は?

 

……一度でもネガティブな考えが脳をよぎると、連鎖するように次々と脳裏に底冷えするような現実が押し寄せてきて。

私は必死に振り払おうと、頭を掻きむしる。

 

(ああ、ダメだしっかりしなきゃ、こんなヒーローいない、"いちゃいけない"。私がならなきゃいけないのは、もっと────)

 

「ちょ……大丈夫? さっきからどうしたんだよ、アッセロ」

「ご……ごめん、ここに居てもしょうがないよね。分かってる、早く戻って違う道に────」

「いやいや、そうじゃなくてさ」

 

自分がしっかりして安心させよう、と思ったルブラにも心配をかけ始めたことに、さらに焦りが募り始める。

 

そうしてなんとか気を取り戻そう、と踵を返そうとした私に。

 

ルブラは一体さっきから何を言ってるんだ、とでも言いたげな不思議な顔で、告げた。

 

 

「────あれくらいのドアなんて、ぶっ壊して進めばいいじゃないか。あのヤバい大上段とか、えっぐい突きとかでも、なんでも使ってさ」

 

「────────っっ」

 

 

言葉が耳に入った私は……文字通り、固まった。

 

────壊す? 私が、この扉を?

運命にどうしようもないって告げられたような、あの行き止まりを?

 

そんな、あまりにも単純で、単純すぎて。

全く頭をよぎることも無かった答えが、降って湧いてきた私は。

今までは血が通っていなかったんじゃないか、と思えるぐらいのものすごい頬の熱を自覚しながら、ルブラに問いかける。

 

「……ねえ」

「ん?」

 

「ルブラは私に、そんなことが出来ると思う? 私に、この扉を壊して進んだらいいって、そう言ってくれるの?」

「え……そりゃそうでしょ。見たところ壁とか天井と一体化もしてないから、崩落とかも無いだろうし……

全く、ボクじゃ逆立ちしても出来ないとんでもない技持っておいて、何を……」

 

何を当たり前のことを、と言っては、愚痴るようにぶつぶつと羨むルブラ。

そんな彼女の、変わらないネガティブさを見た私は。

 

「……………………ははっ」

 

肺の中に残っていた澱んだ空気を吐き出しきって笑うと、大上段の構えを取った。

さっきまで微かにあった震えはピタリとおさまり、打ちなれたその感覚に身を委ねる。

強く感じる熱にうかされるように、私は後ろで見る彼女に、ただ感情のまま語りかけた。

 

「ね、ルブラ。見てて。私今から、この行き止まり、斬るね」

「はいはい、言われなくても見てますとも。ばーんとやっちゃえ、ばーんと」

 

そんな、軽々しく、出来て当然とばかりに適当なエールを送るルブラの姿。

 

それが、今の私には一番、力をくれた。

 

 

「鋼ぇ、一刀ッッ!!」

 

 

そうして、振るわれたその一撃。

かつて父アイゼンが、離れた大岩を真っ二つにした時のような、力強いイメージとともに放たれた剣閃は。

古く、そして頑丈な大扉に吸い込まれ……ビキビキビキッ、とヒビを刻み込む。

 

「うわ、これで壊れない!? なんて頑丈────」

「────まだまだっ!!」

 

間髪入れず私は上半身を反らし、絞った反動を切っ先に乗せた渾身の突き、砕月を解き放つ。

 

バガァァァンッ!! と、立ち込めていた暗雲ごと振り払うような、轟音が鳴り響き。

 

「…………やっぱ、すごっ……」

 

 

音がやみ、煙が晴れた先には……粉々に崩れきった扉の残骸と、"その先の道"が、私たちの前に広がっていた。

 

(ああ、そっか)

 

 

────もう今の私は、こうやって進んじゃっても、いいんだ。

 

 

そして、それを教えてくれたのは────

 

 

★★★

 

 

ライジン種の少女、ルブラは困惑していた。

 

 

この依頼を通して知り合うこととなったニンゲンの少女、アッセロ。

 

彼女は同年代ながら割と穏やかで落ち着いて……なんというか今の自分にも似た内向的な性質を持ち。

反面、初めて触れる馬車や魔物、知識に素直に目を輝かせる、年相応かそれ以上に幼気な面を見せ。

かと思えば、戦闘では異様なほど割り切った対応で果敢に命のやり取りを行っている。

 

特に驚かされたのが、遺跡に着いた際、カラコ種の魔物が流物を使ったときの判断だ。

あの時、彼女は魔物が流物の扱いに慣れていないと見るや、リスクを承知で突貫し抑え込む選択を取る。

 

だが、彼女はライジン種である自分のような身のこなしが出来るわけでもなく、ましてや流物の存在すら知らなかった。

ならば、あの判断に必要だった覚悟と背負ったリスクは、自分の数倍にも及ぶものだったはず。

にもかかわらず彼女は、自分が同じ判断に行き着いたときには、すでに突進を開始していた。

 

(戦闘狂……ってわけでもないよね、他の戦闘でも痛いものは痛いって嫌がってたし)

 

それが芯の強さと言うべきなのか、もっと違うものなのかはまだ、ルブラには分からない。

ただ、この旅で魔物との戦いをはじめ、ほとんど役に立っていない今の自分と比較して、彼女の貢献は一目瞭然だ。

 

(どうせボクのこと、使えないやつって思ってるだろうな……)

 

少なくとも現状、理性的で色々考えているように見える彼女は、この窮地にあってわざわざ波風を立てないようにしている。

が、よりにもよって合流できたのが、魔物とまともに戦えない自分だったことに、失望を感じなかったわけがない。

 

だから、出来るだけ彼女の質問には答えて、多少は利く嗅覚で危険そうな気配は避けるという形で、吹けば飛ぶような貢献こそしていたものの。

その役目も終わったら、いつ見捨てられてもおかしくはない、と思っていた。

 

────そう、"また"ニンゲンに見捨てられる。

 

(ぅ…………)

 

その現実を直視するのが嫌で、向こうからまた見捨てられるのが怖くて、変にぶっきらぼうな態度を取ってしまいまた焦る。

何やらアッセロがよく分からないことで悩んでいる? 場面でも、思いつきの簡単な提案をしたらあっさりと解決してしまい。

そんな彼女が積み重ねてきたものを羨むとともに、いよいよ自分が出来る貢献も無くなってきた、と感じた。

 

……ただ、これで見捨てられるのも無理はない、とも思う。

『誰かが誰かとともにあるのは、それが自分の役に立つから』だ、と彼女は理解(わか)っている。

それが果たせていない自分は、彼女と一緒に脱出する資格なんてきっと────

 

そう、思っていた。

 

 

「……ん、ふへへ、ね、出来たよ、ルブラが言った通り出来た。よかった、これで進めるね。一緒にいこ」

 

(ち、近! な、なんだ急にこの距離感は! 今タマゴから生まれでもしたの!?)

 

一体あのやり取りの何が、彼女に刺さったのだろうか。

扉を壊し、道が開けたと同時、つつつ~っとルブラの横に寄ってきたアッセロは、ニコニコと満面の笑顔で彼女のそばにあり続ける。

 

ルブラが右を見れば右を見て、ルブラが左に行けば左に着いてくる、まるで生まれたての動物が初めて見る親にする、そんな動き。

当然、ルブラはどういうことなんだ、そうはならんだろ、と困惑のままに口を開いた。

 

「え、な、なに……すごい機嫌よくない? ボク、そんななんかした?」

「うん、したよ、した。……はぁ~、ルブラがいてくれて良かった」

 

仮に彼女に、ライジン種のような尻尾がついていたら、千切れんばかりにブンブンと振られていただろう。

そう思えるほどに彼女は今、無邪気に自分といることに喜びを感じているように見えた。

 

……彼女がここまで自分に好感を抱くようになった理由は、分からない。

ただ間違いなくわかることは、彼女は自分を見捨てようなんてこと、欠片も思っていないってこと。

 

そして。

 

(こ、この娘……危ういっ……! 誰かついてないと、いつかとんでもないヤツに騙されたりするんじゃっ……!)

 

アレほど色々考えていて強く見えた彼女は今、自分がちょっと押せばなんでも言うことを聞きかねないように見える。

これまで見た姿の中でも、最もギャップとアンバランスさを感じさせる今の姿に。

ルブラは、自分が見捨てられなさそうという安心が吹き飛ぶような、そんな危機感を心中に募らせた。

 

この調子ならこの遺跡に来てからうっすら感じていた、へばりつくような悪意の視線にもまだ気づいていないんじゃないか、と。

 

(これは……ああもう、ボクがしっかりしなくちゃダメなやつじゃん……!)

 

まだ、ニンゲンは怖いし、好きじゃない。

ただ、少なくともこの娘は、今自分の横で笑う強くて、なのにどこか弱い女の子は。

 

絶対、ここで死なせるべきじゃない、と、ルブラはそう思った。

 

 

先程まであった、自分じゃ何も出来ない、なんてネガティブな諦観は。

いつの間にか、どこかに消えていた。

 

 

★★★

 

 




ルブラはアッセロにツッコミをいれた!

こうかはばつぐんだ!

アッセロのこうかんどがグググーンとあがった!

ルブラはもう、にげられない!


※次回投稿日は未定デス
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