【完結】アンデッドダンジョンの最深部でパーティ追放されてボコられて放置された結果、俺を拾ったダンジョンのラスボスの女の子が俺のご先祖様だったから後継者に指名された件。今日から俺がダンジョンマスターだ。   作:羽黒楓

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第20話 ママになろう!【※※※美香子視点】(残酷描写あり、閲

 美香子にはもう、演技する余裕などひとつもなかった。

 

「ゆるひてぇ……ゆるひてぇ……」

 

 内臓がひっくり返るような痛み。

 吸い取られる生命エネルギー。

 瞼《まぶた》の裏で火花がバチンバチンと爆《は》ぜる。

 歯が折れちゃうほど全身に力が入っているのに、筋肉ひとつひとつには力が入らない。

 下半身の筋肉は全部ゆるんでしまって、美香子はみっともなくその場で放尿してしまった。

 

「あー、あー、……美香子ちゃん、さすがに……かわいそうかな……。もうやめましょう、ご先祖様」

 

 慎太郎の声が遠い。

 

「俺ももう、必要以上にはいじめる気はないです。もう十分痛い目にあったと思います。反省してればいいんです。これからまっとうに生きてくれれば……」

「そっかー? まーかわいいわが子孫、慎太郎がそういうならまあええねんけど……」

 

 そして体内からプラグが引っこ抜かれた。

 

「ふぎぃっ!」

 

 それだけでもするどい痛みが走って、涙腺から涙がぴゅっと出た。

 しかしなるほど、ご先祖様に子孫か。

 そういう関係か。

 それはわかったけど、しかし、この身体の痛みは……。

 耐えかねて、床の上で身もだえする美香子。

 そんな美香子に、慎太郎が声をかけた。

 

「美香子ちゃん、反省してくれた?」

「ふぐぅ、うん、うん、はん、しぇー、してまぁす……」

 

 必死の思いで喉の奥から声を絞り出す。

 この一言を言えれば、なんとか助かりそうな流れだ。

 

「そうはいってもなー。こういう悪人が、ちょっと痛い目見ただけで善人にはならんしなー」

 

 よけーなこというな、ロリータ!

 

「うーん、私もそう思うなー。私なんて殺されちゃってるし……。生きたままモンスターに食べられちゃったんだよ、私……。うーん、生かしとくってのは……」

 

 ほのかのクソホネ女もそういいやがる。

 いいだろ、もう十分痛い目みたよ、許せや。

 

「まー、私はもういいかなー」

 

 そうそう、桜子はイイコだぞぉ。

 と、そこに、クソバカロリータが似非関西弁でとんでもないことを言い出した。

 

「あたしもなー。十代前半のころは人の迷惑考えない悪ガキやった。でもな、あることを境に、ぱぁっと目の前が開けて、ああ、世のため人のために生きようって、そう思った出来事があったんや」

「え、それはなんです、ご先祖様?」

「慎太郎、あんたのひいひいひいひいひいばあちゃんを産んだ時や」

「ご先祖様、いうたびに『ひい』の数違いますけど、そこ適当にいってるでしょ」

「ばれた?」

 

 あああ?

 なにいってんだこのロリババア、まさか私に、私に……?

 

「で、なんだっけか、美香子、ちゃん? 出産こそ輝かしい人生の転機なんや。あんたも子供産めば正しく生きようって思えると思うんや。で、選ばせてあげるわ。適当に人間相手に生殖能力のあるゾンビモンスターみつくろってきたんや」

 

 そして、とんでもない言葉を吐いた。

 

()()()()()()()()()()()」 

 

 隣の玄室に並んでいるモンスターたちを見て、美香子は顔から血の気がさぁっと引いていくのを感じた。

 

「右からワンワンゾンビ、パオーンゾンビ、巨大タコゾンビ、巨大ゴキゾンビや」

「やだぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁああああああ!」

「だ・か・ら!」

 

 髪の毛をひっぱりあげられて、そのままゴチンと床に頭を叩きつけられる。

 痛い、痛いを通り越して脳みそのなんか重要な部分が傷つけられた気がする、吐き気が襲ってきて「おえっ」と胃液をちょっと吐いた。

 

「ど・れ・が・い・い・か、選ばせてやるっていってんの!」

「おえっ、ひ、ひ、ひ、ゆ、ゆる、おえっ、ゆるし、ごめ、わた、ごめ、」

 

「慎太郎は許してもさー、あたしの気持ちがおさまんないからさー、あたしの子孫を馬鹿にしたってことはあたしを馬鹿にしたも同然。男相手なら泣き落としがきいてもさー、女同士それは無理だってわかるやんなー? ま、でも殺さないであげるよ、出産という人生最大の喜びを通して人間性を取り戻すとええわ、さ、お父さんはどれがいい?」

「あひ、ひ、ごめ、すみま、ごめ、もうし、ごめ、ゆる、ゆる、」

「はやくえらべよぉガキィィィイッ!」

 

 巨大ゴキゾンビって、あれでしょ、Gでしょ、ゴキは、ゴキは、ゴキだけはいやだ。

 じゃ、じゃあ、いちば、いちばんましなのを……。

 

「ひゃ、ひゃ、わ、わ、ワンワンゾンビで…………ォなしゃす……」

「えへへ、わかりがいいね! うん、わかったよ! ワンワンゾンビからだね! ……選ばせてやるってのは、順番の話だからね? じゃあ一番目はワンワンで、二番目にゴキちゃんにしよっか!」

「ヒイィィィィィィィイィィィイイイイイイイヤアアアアアアアアアアァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 脳みそがバグった、と美香子は自分でもわかった。

 喉の奥からはもう悲鳴すらでなくなった。

 クルン、と目が上を向いたのを感じる。

 

 あぁぁあああぁ、私いま白目をむいてる、かっこわるー。

 

 ごめんなさい、私が今まで迷惑かけちゃったぜんぶにごめんなさい。

 許してください。

 死なせてください、殺してください。

 美香子はそんな言葉すら、もはや発することができない。

 ご先祖様に髪の毛を雑にわしづかみにされ、モンスターが待つ隣の玄室へ、ずるずると床を引きずられていった。

 

 

 

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