【完結】アンデッドダンジョンの最深部でパーティ追放されてボコられて放置された結果、俺を拾ったダンジョンのラスボスの女の子が俺のご先祖様だったから後継者に指名された件。今日から俺がダンジョンマスターだ。 作:羽黒楓
俺は桜子の胸から手を離した。
名残惜しいが、いつまでもこうしているわけにもいかない。
桜子とほのかさんのおかげで、マPは満タンだ。
このまま物量でおせば、和彦たちを数で押しつぶせそうだった。
でも、それじゃあ、俺の気持ちがおさまらない。
この手で、やっつけてやる。
おれはゆっくりと和彦たちへと近づいて行った。。
剣を鞘から引き抜く。
安物の、なまくらだ。
和彦たちのパーティは俺の武器に予算をまわしてくれなかったからな。
でも今はこれで十分。
和彦も春樹もMPをかなり消費していて、もはや最大の攻撃呪文はつかえまい。
あとは物理で殴りあうだけだ。
「和彦。お前はもうパーティにいらない、と俺に言ったな?」
俺はそう聞く。
「……ああ、言ったさ」
「今もそう思っているのか?」
「はは、今ももなにも。お前が俺たちのパーティに加入してきたときから、お前が邪魔だった」
「そうか」
その答えに、俺は心からがっかりする。
初心者のころから、四人でこのダンジョンを攻略してきた。
少しは、少しは、仲間意識があったと思っていたのに。
「なあ、和彦、俺たちはパーティじゃなかったのか」
「慎太郎、『おれたち』ってなんだよ、最初からいたのは、『俺のパーティ』と『お前』だ。お前が俺たちのパーティの一員だったことなんてなあ、俺の気持ちの中では一度もなかったぜ」
それは和彦の、俺への最終宣告だった。
わかったよ。
一時の気の迷いで俺を追放してリンチして放置したわけじゃないってことを、きちんと理解した。
「和彦、もうひとつ聞きたいことがあるんだ」
「なんだ」
「トロールゾンビを俺たちがやっつけたとき、赤い宝石を手に入れたな。……マゼグロンクリスタルって宝石だ。今、持っているか?」
「なんだ、お前、これが目当てか? 今持っているよ、ほら。もしやとは思うが、これを渡したら俺らを見逃すか?」
「いいや」
俺は和彦のせいでアンデッドとなり果てたほのかさんを見た。
彼女は和彦たちをすごい鋭い目つきでにらみつけている。
「その宝石があるとわかったらそれでいいんだ。あとは、――お前たちを殺して、お前たちの魂と、その宝石を手に入れるだけさ」
「……そうかい! じゃあ、こいよ、慎太郎!」
「……いくぞっ!」
俺は剣をふりかぶって和彦たちに襲い掛かった。
「大いなる力よ、か弱き我らのためにその力を貸したまえ……。悪しきものの悪しき
俺の後ろでほのかさんが呪文を唱える。
物理的な攻撃にたいする防御力を高める、防護の魔法だ。
次に桜子が呪文の詠唱を始めた。
「わが声を聴け、そして沈黙せよ。震えるな空気ども、そのものの言葉には価値がない。震えるな空気ども。ただ求めるは静寂のみ……」
呪文の詠唱を防ぎ魔法を封じる呪文だ。
和彦たちは魔法攻撃が主のパーティだから、はっきりいってこれが決まれば俺たちの勝ち確だ。
だがもちろん、和彦たちもそれがわかっているからなにも対策をしていないわけがない。
やつらは魔封じの魔法を防げる、魔法のペンダントを持っているはずだ。
その効果によって魔封じの成功する確率はわずか1%。
それでも成功すれば勝ち確なわけだし、とりあえず開幕にかましておく価値はあった。
「静寂《モンタナー》!!」
桜子の発した魔法は和彦たち二人を包み込んだが――しかし和彦たちには直接届かず、その場で雲散霧消してしまった。
くそ、1%ならこんなもんか。
「わが武器よ、燃えよ。わが敵を打ち倒すためだけに生まれしものよ。今こそ燃えよ、燃えさかれわが武器よ」
今度は春樹が詠唱を始める。
なるほどね、いい度胸だ。
これは武器にエンチャントを着けて物理攻撃力をあげる魔法だ。
つまり、俺と物理で殴りあうつもりだな。
鬼の子孫たるこの俺と!
こいつらは俺の攻撃力の数値をバグだと思っているから、俺のガチの力を知らないのだ。
「汝らの脳に我は贈り物を授ける。休息を与えよう、疲れをとり、癒されよ。眠りだけがすべての回答なるぞ――
今度は和彦が呪文を唱える。
ってか、強制睡眠の魔法か、このアンデッドダンジョンではこれやるくらいなら解呪したほうが早いから俺はほとんど見たことない魔法だった。
和彦の魔法力の光が俺たち三人を包む。
頼むぞ、俺。
風呂入っておっぱい揉んで精神力はばっちりだ、いまさら眠りに落ちるほど疲れてもないし……。
…………。
………………。
うむ、大丈夫。
すくなくとも俺には睡眠の呪文が効かなかったみたいだ。
と。
俺の後ろの方で、桜子とほのかさんの二人がコテン、と床に倒れこんだ!
二人にはめっちゃ効いてたわ!
安らかな表情でぐっすりと寝込んでいる桜子とほのかさん、こりゃしばらく起きないぞ?
「はは、あの時は怖がる顔を見たかったから殴りつけたけど、最初からこうしておけばあのとき簡単にレイプできたんだけどなあ」
春樹がにやにやしていう。
「そうだな、睡眠姦ってのもいいな、心配するなよ慎太郎」
和彦は最高に下衆な笑みを俺に見せ、
「お前を殺したらそこのお前の幼馴染――桜子は、俺たちで穴という穴を――いや、穴がないところにもナイフで穴をつくってつっこんでやるからな。心配するなよ、死んだ後までしゃぶりつくしてやる、死体になった桜子の体内を俺の体液まみれにしてやるからな、ほら頑張れよ慎太郎、お前が負けたらお前の幼馴染は俺たちに犯されて殺されて殺された後また死体を犯されるんだからな。ははは、お前にかかっているぞ、せいぜい頑張れよ」
魔法で強化されたメイスを振りかぶって、春樹が俺にそれを叩きつけてきた。
俺はなまくらな剣でそれを受ける。
あーあ、馬鹿なやつ。
すっかり忘れてるよな、こいつら……。
俺らのこの姿、全世界配信されてるんだぜ……。
★
「お、スーパーチャットありがとさんな。ええと、“高低差200メートルの坂”さんありがとう。なになに、今音量小さくて和彦がなにいったかわからなかったって? うん、ちょっと巻き戻って音量あげてきかせてあげるやんな。ほら。『俺たちで穴がないところにもナイフで穴をつくってつっこんでやるからな。死体になった桜子の体内を俺の体液まみれにしてやる。お前の幼馴染は俺たちに犯されて殺されて、殺された後また死体を犯される』だって」
ご先祖様は満足そうな笑顔でうんうんとうなずくと、
「すばらしいやんな、さすがアンデッドキングたるあたしの部下のいうことや。もはやモンスターより邪悪になっていてあたしはうれしいよ。お、全世界にこれ配信されてるやんな。みんなドン引きなコメントで草や。みんなあたしのかわいい部下の和彦と春樹の応援、たのむやんな。あいつら屍姦をしたいがために今戦っているからな。あ、同時接続数が20万超えたわ」
全世界において、もはや和彦たちは人類の憎悪を一心に受ける、モンスター以下の存在とみなされ始めていた。