【完結】アンデッドダンジョンの最深部でパーティ追放されてボコられて放置された結果、俺を拾ったダンジョンのラスボスの女の子が俺のご先祖様だったから後継者に指名された件。今日から俺がダンジョンマスターだ。   作:羽黒楓

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第38話 なまえ

 しかしまだ、やらなければならない大きな仕事が一つ、残っている。

 ほのかさんが和彦と春樹にかけよって、死なない程度に回復魔法をかけているのを横目に俺は言った。

 

「人類を裏切った和彦と春樹はやっつけたぞ! 残るはお前だけだ、」

「ちょっとストップ」

 

 桜子さんがタブレットを俺に向けて言う。

 

「うーん、この角度だとあんましかっこよくない、ちょっと待ってね、うん、こっちの角度がかっこいい。じゃ、テイクツー! よぉ~~おい、アクションッ!」

 

 俺はなるべくかっこいい(と自分で思っている)表情をキリッと作って、

 

「人類を裏切った和彦と春樹はやっつけたぞ! 残るはお前だけだ、アンデッドキーング!」

 

 すると、闇の向こうから小さな人影がこちらへと歩いてくる。

 不気味な雰囲気の少女。

 黒髪のショートヘア、小柄な体格に着ているのは甘々なフリルとレースまみれのロリータファッション。

 あれ、いつのまにかカウガールからこっちに着替えたんだ?

 やっぱこっちが正装なんだろうか。

 んでもってその少女はかわいらしいウサギを手に抱えて撫でている。

 そのバックではコウモリが数羽、パタパタと舞っている。

 なるほど、こう使うのが本来か、ちゃんと悪そうな空気感出ているぞ。

 

「よくぞわが部下、和彦と春樹をやっつけたな。しかしこのあたしはそうはいかないよ」

 

 そういってニヤリと不気味に笑う少女。

 まあ少女ってかご先祖様だけど。

 俺はちらっと桜子の方を見る。うん、いい角度で撮影できてるな。

 

「容赦はしないぞ、アンデッドキング!」

「あはは、それはこっちのセリフだねえ!」

 

 ご先祖様はそれっぽく高笑いすると、

 

「ちょっと待っててな」

 

 といってウサギをやさしく逃がしてやる。そして、

 

「よっしゃいくでー! てやあ!」

 

 といって俺に向かってパンチしてきた。

 俺は台本通りそれを軽く片手で受け止め、

 

「くらえ、悪の親玉め!」

 

 といってご先祖様の頭を軽くはたく、予定だったのだが。

 なんかちょっと演技に熱が入りすぎて本気出しちゃった。

 

「ぬわーーー!」

 

 俺の鬼の力で壁に向かってふっとんでいくご先祖様。

 いつか見た光景、衝撃で壁が崩れ落ちる。

 そして俺は事前に打ち合わせておいたセリフを言う。

 

「ふふふ、これで女の子にとりついていたアンデッドキングの魂をやっつけたぞ! これで君は解放された!」

「ちょ、ちょっと待ってえな、今立ち上がるから……やりすぎや」

 

 ご先祖様が崩れた壁の破片の中から立ち上がってくる。

 せっかくのロリータファッションもぼろぼろだ、これもいつか見た光景。

 

「ぎゃーーーーっ」

 

 桜子が叫ぶ。

 

「見えてる! 乳首見えてる! BANされる! 収益がぁ」

「おっと危ない」

 

 胸を隠すご先祖様。そしてタブレットのカメラに向かって、

 

「いやー何者かに操られてたでぇ! でもこのあんちゃんが助けてくれた! 助かったでー!」

 

 なんでこんな三文芝居してるかというと、ご先祖様、まじでダンジョン暮らしに飽きていたらしく、地上で暮らしたいとかいうのだ。

 とはいえ、配信で顔ばれしてるし、さすがにダンジョンのラスボスが地上で普通の暮らしはできないだろう。

 じゃあ操られていた人間の少女だったっていうことにして、今後は俺んちで暮らそうかなとか、そういう計画らしい。

 まあ、別に俺はいいけどね、母さんはなんていうかな?

 で、カメラの前で演技しているご先祖様に、俺はちょっといたずら心を出して台本にないことを聞いてみた。

 

「お嬢ちゃん、助かってよかったね! ところで君の名前はなんていうんだい?」

「な、名前?」

「そう、名前」

 

 う、っとつまってちょっと考え込むご先祖様。

 

「いいじゃないか、名前くらい教えてくれても」

 

 ご先祖様はちょっとため息をついて、

 

「せやなあ、名前くらいはおしえてもええかなあ」

「なんていうんだい?」

 

 ぷいと横を向くご先祖様。

 ちょっと頬を赤らめている、名前をいうのがはずかしいらしい。

 

「……め」

「うん? なんて?」

 

小梅(こうめ)、や」

 

 ご先祖様はこうめちゃんだった!!

 なるほど古風だ!

 きゃわわわいいいい!!

 

「ふん、かわいくないわい。もっとハイカラな名前がよかった、アンジェリーナとか。まあええ、次回はお楽しみのおしおき回や」

 

 

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