カヤちゃんが征く!   作:無名のカヤ推し

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Prologue01:よろしくお願いしますね、先生

 

 

「と、いうことで。よろしくお願いしますね、先生」

 

「いやいや待って!?ち、ちょっと整理させて欲しい……!」

 

「では、先生が落ち着かれるまでの間、のんびりとこのお茶菓子をいただかせてもらいますね。 む、中々いいお菓子置いてるんですねシャーレは」

 

 

 連邦捜査部シャーレが発足して暫く。やっと部室、建物の中に必要な調度品などの配置が終わり、生徒会長代行であるリンが用意してくれていたという書類の山を崩しながらその確認を進めていた頃。先生のもとには、思わぬ来客が訪れていた。

 

 桃色の髪を三つ編みにし、それを後ろでまとめた糸目の、小柄な少女は連邦生徒会の身分証を見せて、『不知火カヤ』と名乗った。その身分証を見て、まず先生が驚いたのはその役職だった。

 

 『連邦生徒会防衛室長』。最初、その役職を見て一瞬固まった先生だったが、つい最近見た連邦生徒会についての資料と、組織図を思い出す。連邦生徒会は連邦生徒会長をトップとして、その直下に統括室と行政委員会が存在している。統括室に所属しており、現在生徒会長代行になっているのが、自分がキヴォトスに来た際に色々と説明してくれたリンであると記憶している。

 

 そうして、各行政委員会についての説明資料。そこにはそれぞれの代表となる生徒の名前が書かれており、防衛室。キヴォトスの治安維持に関してのことを管轄する委員会の最高責任者、そこにあった名前が今訪れている少女の名前だ。

 

 思わず驚いて声をあげてしまったが、仕方のないことだろう。シャーレに赴任して、書類の山を崩しながらこれからキヴォトスの生徒達の助けになっていこうと考えながら仕事を進めていたら、そこに現れたのは連邦生徒会の治安維持の最高責任者。驚いても仕方のないことだ。

 

 そうして。そんな連邦生徒会の大物である生徒が訪れた理由を聞くために、シャーレの部室に入ってもらい話を聞こうとすれば、まず手渡されたのは連邦生徒会のロゴが封蝋された何やら重要そうな封筒だった。そして、カヤに対して『拝見するね』と断って封蝋を割り、中を見れば、再び驚くこととなる書類がそこには存在していた。

 

 そこに入っていたのは、カヤを含めた9名の生徒の入部届だった。

 

 シャーレは発足したばかりではあるが、発足後に話題になったらしく各自治区からの依頼は徐々に送られてきている。ミレニアムサイエンススクールのユウカが既に部員となってくれており時間がある時にシャーレで仕事を手伝ってくれてはいるものの手は圧倒的に足りていない状況だった。そのため、新しく部員が増えるというのは歓迎すべきところだ。

 

 だが、その入部希望者が全員揃ってあまりにもとんでもなさすぎた。

 

「ごめんね、カヤ、聞きたいんだけど……」

 

「……ふむ、これ。ミヤコさんが好きそうな味ですね。こっちはユキノさんが好きそうな。 ああ、失礼しました先生。なんでしょうか」

 

「あ、うん。そのお菓子気に入ったなら帰りに箱を幾つか持っていってくれても構わないよ。 ……ええっと、すごく当たり前というか変なことを聞くけど。カヤは防衛室の防衛室長、だよね?」

 

「本当ですか?きっと後輩や友人が喜びます。 はい、如何にも私は防衛室長ですよ?」

 

「うん、そうだよね。えっと、じゃあこの子達。入部届を出してくれてる、残り8名全員の所属学校に『SRT特殊学園』ってあるけど……ごめんね、私もまだキヴォトスのことがよくわかってなくて。SRTというのは、最近ニュースでも話題になっていた、SRT?」

 

「その認識で間違いありません。私以外の8名は全員がSRT特殊学園の生徒です」

 

「そっか。 ……いやいや待って!?SRTって確かエリート中のエリートだよね!?そんなすごい子たちが、どうしてシャーレに。いや、人手は足りてないし、こんなすごい子達が来てくれるのは嬉しいんだけどね……なんでかなって思って」

 

「先生、SRTのことをご存知ということは恐らくリン代行からの資料。それから、お話の流れからニュースのこともご存知ということですね?」

 

「それは、……うん」

 

 SRT特殊学園。それは、最近ニュースで連日話題になっていた学校の名前だ。先生はリンからの資料でその学校についても把握していたが、キヴォトスにおいてもかなり特殊な学校だった。

 

 キヴォトスの法執行機関における最高学府であるSRTは、連邦生徒会長直属の学園組織として設立されていた。一般的な治安維持を目的としているヴァルキューレ警察学校では対応が難しい事件などに対して対応可能な、特殊作戦遂行要員の育成。そして、連邦生徒会長の権限を以て、ありとあらゆる自治区への介入を可能という、シャーレと似た部分を持つ学校だった。

 

 しかし、その全ては『だった』という過去形がつく。

 何故ならば、現在のSRT特殊学園は期間の定めのない、休校という状態なのだ。

 

 SRTは、その存在を危険視されてしまった。

 

 それは、ある意味仕方のないことなのだろう。SRTの活動に対して責任を負う存在、即ち連邦生徒会長が不在の状況となり、宙に浮いてしまったそのあまりにも強すぎる権力と武力は連邦生徒会内部で脅威になると判断された。加えて、外部からも同様の意見が多く出た。その結果として、一度は学園を閉鎖するべきだという声もあがったほどだ。

 

 それに対して全力で反対の意を示したのが、防衛室長であるカヤを筆頭とする生徒会幹部だ。公にされていないことだが、中立の立場としてSRTに関する協議を見守っていたリンもまた、内心では学園の閉鎖には反対寄りの考えだった。

 

 カヤをはじめとした幹部の反対は通ることはなかった。

 だが、閉鎖ではなく休校という決定に持ち込むことは成功した。

 

 カヤ達の敗因は、『責任を負う者』の存在がなかったことだ。SRTとは、連邦生徒会長の権限と彼女の実力があったからこそ成立していた。その責任者としての立場を仮に再定義しようとしても、連邦生徒会長と同等の能力で、かつ生徒会長の席に座る人間など今のキヴォトスには存在しない。よって、仮にカヤやリンにSRTを統制する能力があったとしても、生徒会長として認められていない、という時点で存続させることは極めて困難だった。

 

 そのことをカヤも理解していた。当然、責任の行方について問われることも。だからこそ、SRTをキヴォトスにおける抑止力として定義して、協議で発言したのだ。

 

 つまり、SRTの権限を剥奪し脅威としての牙を削いでやれば良い。カヤとしても苦渋の決断だったが、存続させるにはそれしかなかった。だからこそ彼女は会議で、SRTを何らかの形でその力を剥奪すること。その戦力を有事の際に運用可能とするための方法の提案。そして、SRTを閉鎖した場合に考えられるリスクについて発言した。

 

 特に会議を動かしたのは、SRTに所属する他の自治区を見ても上澄みの、トップクラスの生徒が流出するかもしれないという可能性と、それを防ぐための方法。そして、閉鎖することにより生徒からの反発が起こることも考えられるということだった。

 

 言葉は悪いし、カヤとしては毛頭そんなことは思っていないが要するに牙を削いで飼い殺しにするということだ。SRTを『休校』という形として、希望するものはヴァルキューレ警察学校への編入を行う。だが、SRTに残りたいものはそのまま残り、『自習』という形で勉学を続けても良い。最終的にそこまで持っていき、なんとか閉鎖を取りやめることは出来た。

 

 そうしてその結果が、ここ最近クロノススクールにより連日報道されている。そして、SRT内部ではカヤが思っていた以上にヴァルキューレへの転入希望者は少なかった。

 

 

 学園は休校となった。だが、自主的に学ぶことはできるし、部活動についても連邦生徒会の管理内部。つまり、ヴァルキューレか、生徒会関係ならば認可されている。ここで出てくるのがシャーレだった。

 

 シャーレは、連邦生徒会の管理下にある部活動ではない。だが、連邦生徒会長が認めた部活動である。そしてシャーレの決まりにも、あらゆる自治区の生徒を部員として加入させることができる、とある。

 

 

「私を含めて、シャーレへの入部希望を出した理由はただひとつですよ。先生なら、私達の目指す先へ行けると確信しているからです」

 

「カヤ達の、目指す先?」

 

「ええ。 先生、私は ――このキヴォトスが好きなんですよ」

 

 糸目が開かれる。そこには澄んだ翠玉の瞳が見えた。

 そのままカヤは慈しむように、大事なものかのように口元に笑みを浮かべて。

 

「先生、もし。もしも生徒が傷ついた時。理不尽に、不条理に心を折られそうになった時。絶望に沈み、何もかも諦めそうになった時。どうしますか?」

 

「手を伸ばすよ。助けたい、そう思う。だって……私は、生徒(こども)にそんな痛みを味わってほしくない。笑っていて欲しいんだ」

 

「先生は神様ではありません。全てを救うことは出来ない、そうだとしても?偽善者だと言われ、敵意を向けられたとしても?」

 

「それでもだよ。私は、それでも手を伸ばし続けたい。カヤの言うように、私は神様じゃない。何もかもを救うことなんて出来ないかもしれない。それでも、誰かの。生徒の痛みを少しでも救えるのなら。私にできることならなんだってする。 ――差し出せるものは、全て差し出すよ」

 

「くくっ……はは。ああ、失礼しました。 ですが、やはり。 ――先生、あなたは狂っている」

 

 満足気にカヤは笑い、そう告げて。此方の眼を翠玉の瞳が正面から見据えてきた。

 

「私も、同じですよ。 このキヴォトスが好きです。この日常が、大切な人達がいる場所がかけがえのないものなんです。そして、誰かの明日が。笑顔が眩しくてたまらないんです。だからこそ私も、彼女達も守りたい。誰かの明日を、日常を」

 

 それは、生徒(こども)とは思えないほどに強く、眩しいもので。炎のような熱いものだった。

 

「先生。あなたの持つその想いは、私達の目指すものです。誰かの明日を守るために。誰かの痛みを少しでも除くために。誰かに、手を伸ばすために。私は、不知火カヤ個人としても。防衛室長としても。そうすることを、キヴォトスをよりよくしていくことを心から願っているのです。 ……これでは、不足でしょうか?」

 

 その輝きは本物だと、先生は思った。

  

「ありがとう、カヤの、君達の想いを聞かせてくれて。シャーレは知ってると思うけど、いろんなことをやらなきゃ駄目なんだ。だから、人手も足りてないし、私もまだまだわからないことだらけなんだ ――だから、すごく心強く思うよ。これからよろしくね」

 

 

 そうして、先生は力強く。入部届の担当顧問の欄に承認印を押した。





 先生:アニメ版先生+アプリ先生の精神。光の狂人。

 SRTはカヤが全力で反対したため、閉鎖は免れました。ヴァルキューレのカンナとの関係は良好、友人関係。

 先生の所に押しかけて、シャーレに加入が成功したのでここからキヴォトス世直しの旅が始まります。なお、リンちゃんは色々とやらかしまくる一行にただですら痛い胃が更に痛くなる模様。

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