カヤちゃんが征く!   作:無名のカヤ推し

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体調不良につき少し寝込んでいました。
アビドス対策委員会編、はじまります


Vol.1 アビドス対策委員会編 『約束、果たしに来ましたよ』
Episode1:ここがアビドス高校ですか


「くひひひひっ……!しつちょ……じゃなかった。カヤ先輩、この機体すごいよぉ!流石最新鋭機ぃ!」

 

「開発整備部からのテスト機ですから、壊さないでくださいね?いや本当壊すと私がリン代行に怒られるので」

 

 『わかってまーす!ひょわああああああ!』などという声が操縦席から聞こえてくる。本当に大丈夫だろうか、と思いつつもため息をついていれば、隣に座るミヤコが申し訳無さそうに苦笑いしていた。

 

「も、申し訳ありません先輩。私からもモエにはちゃんと言っておきますので……」

 

「ありがとうございます、ミヤコさん。いや、弾薬とか消耗品は別にいいんですよ。先生の『クラフトチェンバー』と経費で落とした弾薬がそこそこにあるので。ただ機体の損傷だけは不味いんですよ、このテスト機特殊な合金使ってる上に積んでる兵装も多いので壊れると不味いんですよね……。」

 

「このヘリ……ええと、TDF-00『SKYRAIDER』でしたか。私はモエほど詳しくはありませんが、確かにとんでもないものだとは思います。その、いいのでしょうか。まだSRTとしても未熟な私達にこんなものをお貸しいただいて」

 

「貸す?……あれ。私、伝えてませんでしたっけ」

 

「えっと、何をです?」

 

「んん?おかしいですね、ユキノさん達や先生には確かに伝えて……ああ、しまった。これは私の落ち度ですね。ごめんなさい、ミヤコさん」

 

「先輩方や先生には伝えてとは、ええと……」

 

 

 

「これ。このスカイレイダー、シャーレの作戦用機になったんですよ。テストの名目で、開発室で埃被っていたのを私が指示して引っ張り出してきましてね。機体が機体なので所有者不在だったので、シャーレの備品ということで持ってきました」

 

「なるほど。 ――ええっ!?」

 

 TDF-00『SKYRAIDER』。それは、防衛室の中にある部署、『開発整備部』が作った最近技術を詰め込み、このキヴォトスにおいて稀に発見されるあるオーパーツをコアに組み込んだ戦闘輸送機である。ティルトローター機であるこの機体のコンセプトは『迅速な輸送と有事の現場における単騎での制空権確保』である。総搭乗員数は15名と、輸送機としては少ない人数ではあるが注目すべきはその航空性能と武装である。

 

 出力においては、現存するキヴォトスの作戦用輸送機の中でもトップレベルであり、搭載されている武装は対空・対地兵装に加えて、対人・対主力兵器。更には電子戦までも想定されているものがこれでもかというほどに搭載されている。特筆すべきは、恐らく航空兵器としては現状キヴォトスでは類を見ない分離する子機。オールレンジ攻撃可能の兵器を搭載しているという点だ。本体に格納される形で搭載されているのは全部で3基。基本的には本体の周囲に展開する形で配置され、レーザー兵器による攻撃とミサイルなどの対空兵器に対しての迎撃を行う。

 

 この類を見ない兵装を可能としているのが、キヴォトス内部で発見され、防衛室が保管していたあるオーパーツである。機体に使用されているオーパーツは全てで2つ。中枢のコアと呼ばれている心臓部と、機体の装甲である。装甲に使用されているオーパーツは、防衛室でも加工にかなり苦戦するほどのものであり、耐久テストでは並大抵の銃撃では傷すらつかなかった。

 

 そんな機体ではあるが、開発されたのは連邦生徒会長がまた居た頃だった。本来ならば、かつて発生した。カヤの全てを変えることとなったある事件の時のように、凶悪犯罪や制圧が想定される現場に対して、生徒会長とその直属の精鋭が乗り込み急行するために作られたのだが、連邦生徒会長は失踪。そして、SRTもそれに関連して現在は休校。行き場のなくなった機体は防衛室の整備開発室の管理倉庫の奥で埃を被っていたのだが、シャーレ発足によって日の目を見た。

 

 シャーレは、連邦生徒会長とSRTが持っていた権限に近いものを持つ部活動である。そして現在、シャーレにはこの機体を運用できるだけの人材も揃っていた。SRTにおける最優秀部隊であるFOX小隊、そしてルーキーながらFOX小隊の後継とまで言われたRABBIT小隊。加えて、本人はあまりその呼ばれ方は好きでないようだが一部からは『英雄』とまで称される、防衛室長の不知火カヤ。

 

 結果として、カヤ本人がリンに対して話をつけてシャーレの備品という扱いで配備したのだ。

 

 

「備品!?これ、うちの……シャーレのなんですか先輩!?ひゃっはあああああああ!」

 

「モエさん。基本的にこれ操縦するの貴女なんですから、かなり責任重大ですよ?ニコさんは操縦貴女ほど上手くないからって辞退しましたし。無理な運用すると……貴女もリン代行に呼び出されて怒られますよ。何度も言いますけど、本当に怖いですよリン代行。私、何回か泣きたくなりましたもの」

 

「ひえっ……。ら、RABBIT3了解!細心の注意を払いながら大切に扱わせてもらいます……!」

 

「今は小隊じゃないですよ。まあ、大破でもしない限り大丈夫ですよ。それに、貴女の操縦技術は信頼していますから。だからお任せしたんですよ?」

 

「くひひっ……そう言ってもらえると、嬉しいなあ」

 

 

 

 ――『あなたのそれは破滅願望でしょう。ですが、それは同時にあなたの責任の強さを表している』

 

 ――『誇って下さい、風倉モエさん。あなたのその責任に対する姿勢は、SRT足るものであり。気高い光であるのですから』

 

 

 

 操縦に再び集中して、昔のことを思い出す。

 

 あんなことを言われたのは、初めてだった。自分のもとにミヤコと共に現れた『英雄』と呼ばれる相手は、自分の話を聞いて、力強くそんなことを告げたのだから。

 

 モエは自分の師匠のようなものであるニコからはカヤのことを聞いたことはあった。その口から伝わってくるのは、英雄と呼ばれるには程遠いもので。まるで、自分達と変わらない。何処にでも居るような生徒の姿だった。

 

 

『冷蔵庫のアイスのことでユキノと本気の喧嘩をした』

 

『ゲームで負けると、『ま、まだです!』などと言って悔しがりながら満足するまで何度でもリトライする』

 

『実はモモフレンズが好きで、ウェーブキャットの抱き枕を買うために変装して朝イチから販売店の列に並んだ』

 

『ヴァルキューレのカンナ局長とは友人であり苦労仲間で、一緒にコーヒー談義をしたり、時々一緒におでんの屋台に行っている』。

 

 

 他にも、色んなことを聞いた。

 

 伝えられるそれは、自分の中の不知火カヤという人物のイメージを完全に破壊した。だが、それは嫌なものではない。本当に自分達と変わらない、そう思ったし、それを語る先輩の姿はとても楽しそうだった。

 

 モエにとってのカヤとは、正義の体現者だ。そして同時に、自身を破滅させる存在でもあると思っている。

 

 その光に魂を焼かれた。故に、思う。その光に報いるために。自分に罰を、途方も無いほどの責任押し付けて使い潰してほしいと。

 

 だが、破滅することをこの人は許してくれない。破滅することを望んでいる自分を、破滅させないようにするのだ。それも、風倉モエとしての意思でだ。

 

 ああ、それはなんと酷いことだろうか。

 

 

 

 その大きな責任は、信頼するが故に。

 その罰は、己を見てくれているが故に。

 

 

 

 破滅するほどの責任を。その輝きに報いるがために、もっともっと大きな責任を。

 そんな自分をこの人は自分の中に生み出した。

 

 己はどうしようもない破綻者だと自分でも思う。破滅願望があるのに、それと同時に破滅したくない。その信頼に報いたい。もっと、もっと信頼が欲しいと思ってしまう。支離滅裂な矛盾を抱えた、この人の光に焼かれてしまった破綻者だ。

 

 自分は太陽に近づきすぎた。その自分を破滅させると思っていた太陽に焼かれ、別の自分を見つけてしまった。

 

「ああ、いいなぁ……先輩が私のことを信じてくれるのを感じる。くひひっ、堪らないなぁ……!」

 

 操縦席でモエは、誰にも聞こえないように呟いた。

 

 自分は真正面から、何もかも燃やされてしまった。

 同時に、受け入れてもらった。その願望も、思いも、何もかも。

 

 ならばこそ、その大きな信頼に応えよう。そしてもっと。もっともっと応えていこう。何度だって、その輝きに焼かれ、御伽噺(神話)のように蝋の翼を溶かして堕ち。また飛び立とう。

 

 そうすれば、自分はその信頼に応え続けることが出来るのだから――

 

 

「そろそろアビドス自治区に入るから各位準備をお願いねー」

 

 気がつけば、地平線向こうに、広大な砂漠が見えた。

 目的地である場所。アビドス高等学校を目指して、再び速度を上げた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ふぁー……今日はいい天気だねぇー……」

 

 

 アビドス高校屋上。そこでは、一人の少女が気持ちよさそうに横になり、晴れ渡る空を見上げていた。昼寝をするには最適な日だろうと少女、小鳥遊ホシノは思った。

 

 晴れ渡る空にちょうどいいくらいの気温。そして気持ちのいい風まで吹いている。更に言えば、少し前に屋上の掃除をしたこともあって、砂などは溜まっておらず綺麗な状態。対策委員会の後輩達が集まる予定の、みんなで決めている朝の登校時間までもまだ少し余裕がある。

 

 これだけ心地いいのだし、少しくらい眠るのもいいだろう。そして後でやることをやったら、もう一度ここで横になるのもいいだろうと考えていた時だ。

 

 

 

「んんー……? 音……?この音は……。 ヘリの、音?」

 

 

 それまでのだらけながら惰眠を貪ろうとしていた意識が一気に覚醒する。

 

 まるでそれまでだらだらとしていた姿からは考えられないほどに素早くホシノは身体を跳ねるように起こして、今度は鋭い眼で空を見上げ、音のする方角を確認した。

 

 そして、見つけた。晴れ渡った青空を横切りながら、徐々に此方の方角に近づいてくる存在が。

 

 ホシノは一気に警戒を強めた。確認できる限り、ティルトローター機。輸送機に見えるが、その形状や駆動音は彼女の記憶の中にある知識や、過去に交戦した覚えのあるのもの中でどれとも一致しない。新型機、とも判断するがでは何故アビドスにそんなものが現れるのかと思う。

 

 そのまま屋上から走り出して、校舎入口へと向かう。そして、そのままグラウンドまで行くと、既にそこには後輩達が到着して、驚いたようにしながら頭上を見上げていた。

 

「ノノミちゃん。シロコちゃんは?」

 

「まだ登校してきてません。いつもなら今ぐらいには来てるんですが……。そ、それより先輩、あれは」

 

「んー……おじさんもわからないなあ。 ――少なくとも、あんな機体おじさんは知らない」

 

 慌てていたのか、後輩であるノノミやセリカ、アヤネは武器を持ち出してきていなかった。

 対してホシノは、途中大急ぎで教室に寄り、自分の装備を回収してきていた。

 

 警戒を強めながら、ホシノが自身の銃。『Eye of Horus』に手をかけようとした、その時だ。

 

 

 

「――ん。おはよう、ホシノ先輩、みんな」

 

 

「うへ……?シ、シロコちゃん!?」

 

 

 グラウンドの空いているスペースに着陸し、後部ハッチが開かれる。そこから現れたのは、普段彼女が使用しているロードバイクを持ち上げながら降りてくるシロコと複数人の姿だった。

 

 

「シ、シロコちゃん!?自転車どうしちゃったんですか!?ま、まさか新しい趣味ですか!?」

 

「いやなんでそんな発想になるのよノノミ先輩!?」

 

「え、えーっと……シロコ先輩。本当にどうしたんですか?それに、ちょっと自転車が破損してますが……」

 

 

 言われ、ホシノ達が見れば確かにシロコの担いでいる自転車のフレームとタイヤが破損しているように見える。まさか事故にでも遭ったのか、と思っていると。

 

「私の不注意。多分、この前の大嵐で道路に飛んできたスクラップ片を自転車で踏んで、それで転んだ」

 

「怪我とかしてない?大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だよホシノ先輩。振り落とされたけど、近くが砂でクッションになった。ただ、自転車はパンクしちゃうし、フレームもちょっと傷んじゃって。学校までまだ距離がある所でそんなことになって、徒歩で行くしか無いかなと思ってたんだけど、困ってたら助けてもらえた」

 

「怪我がなくて良かったよー……。えっと、つまりそちらの人達が、助けてくれた人?随分とすごいものに乗ってるんだねえ」

 

 

 そこでホシノは、改めてシロコのやや離れた後方に居る集団。シロコを助けたという、おそらくは最新鋭機に乗っていた人物たちを見る。

 

 

 

「えっと、初めまして。突然驚かせてごめんね。私達は、アビドス高校からの手紙を受け取って、その支援にやってきたんだ。 連邦捜査部シャーレって言えば、伝わるかな?」

 

「んー?お客さんー? シャーレって、最近噂の……そういえばアヤネちゃんが手紙を出したとか行ってたかな。うへぇー……でも大人の人が来るなんて珍しいねぇ……。 ――え?」

 

 先生を見た後、シャーレの部員へと視線を向けたホシノは、突然。ある人物で視線を止めて、驚いたように目を見開いた。

 

 服装も髪型も違う。だが、間違いない。どうしてこんな相手が、とも思い再び最近のニュースを思い出す。シャーレに関するニュースを、だ。

 

「ここがアビドス高校ですか。なるほど、いいところですね ……ええ、本当に」

 

「――不知火、カヤ!?」 

 

 

 その人物を、ホシノは知っている。

 

 キヴォトスにおいての『英雄』と呼ばれる存在であり、連邦生徒会でも極めて強い発言力を持つ存在。そして。最近のクロノスの報道で、かなり話題になっていた人物でもあるのだ。

 




・TDF-00『SKYRAIDER』
 元々はある事件で覚醒後のカヤと連邦生徒会長の二人の前に立ち塞がった、神名十文字に類似する『Hræsvelgr』という飛行型超兵器だったのだが二人にボコボコにされてスクラップにされ、挙句の果てにコアを抜き取られた。その装甲とコアを再利用して製作されたのがこの機体。普段は大人しいが当時の超AIはまだ生きているらしく、自身を敗北させた生徒という存在と神秘について大変好意的かつ興味があるらしい。推しはモエの模様。

 連邦生徒会長の光に脳(AI)を焼かれた存在でもある。

・モエ
 自身の破滅願望を『それは責任の強さ』と言われ、唖然とした。同時にカヤからはその責任感の強さとニコも認める操縦技術を信頼して大きな責任を任せるに至った。莫大なほどに破滅的な責任を任せられながらもその信頼に応えることに対して興奮を覚えるようになった。

【あとがき】

 ちょっと体調を崩し、しばらく休んでおりました。

 小説概要は確認させていただいており、沢山の感想や評価、いいねを頂けて療養中、とても励みになりました。

 さて。アビドス対策委員会編、開幕です。

 シャーレの知名度が上昇、かつカヤの力を借りれているので先生が砂漠の真ん中で倒れることはありませんでした。アビドス高校現地までは輸送機で移動。更に、戦力としてカヤ&RABBIT小隊がついています。

 カヤちゃんの介入によって、ちょくちょく原作とは違う点が出てきます。
 感想・評価などもらえると作者がとても喜びます。それでは、また次回お会いしましょう。
 
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