カヤちゃんが征く!   作:無名のカヤ推し

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各話タイトルは、確定でカヤちゃんというわけではなく、その話の中の誰かの台詞を丸めたようなものにしています。


Episode3:うへ~グラウンドが軍事キャンプみたいだよ~……

 カヤとリンの話は、そこそこの時間続いた。その間、対策委員会の面々は固唾を呑んでそれを見ており、ホシノに至ってはこれ以上無いほど真剣にその通話に耳を傾けていた。

 

 そうして。わかったことは幾つかあった。

 

 まず、根本的な問題。借金についての情報は、連邦生徒会で具体的には把握していなかったとリンは回答した。というのも、あえてリンが電話での言葉を濁して、『……会長のデスクの個人的なノートに彼女がそんな話を、個人的に少しだがしていた記録がありました』と告げたのだ。通話はカヤ以外には聞こえていないが、その瞬間、明らかに彼女の表情が曇った。

 

 アビドスの状況について、連邦生徒会はそもそもあまり把握できていないというのもあった。アビドスは、過去にはキヴォトス最大の学園として名を馳せていたものの、ここ十数年以上は連邦生徒会への発言権を確保するための議員選出もされていなかった。

 

 議員は、自治区の状況をある程度報告する義務がある。それがないことにより状況把握が難しかったのもそうだが、以前生徒会が別件で動いていた記録があったのは、前の生徒会長である人物。あえてリンは言葉を濁したが、梔子ユメが動いていたからだ。

 

 当時その対応をした『生活環境室』の室長が誠実な人物だったこと。また、個人的に連邦生徒会長と交友があったこと。それが理由で、動くことが出来ていた。だが、それだけだ。借金の件については連邦生徒会長がリンに残していたというノートの内容以外には、何もなく。それだけ莫大な借金があるということに対してリンも怪しむような表情を見せていた。

 

『カヤ、わかってると思うけど』

 

「ええ、申し訳ありませんがお任せします」

 

『自治区の中のことだからあまり連邦生徒会としては深入りできない。でも……怪しいですね。アオイにも確認して、資料をできるだけ早く送ります』

 

「ありがとうございます。私、アオイさんには嫌われてるみたいなので」

 

『……アオイは嫌ってなどいないと思いますよ』

 

「そうですか?いつもアオイさん、当たりが強いように見えて」

 

『私はあなたが色々と心配ですよ……。   あの子、あれで貴女に妄信的なんですよ

 

「ん?リンー?最後なにかいいましたー?」

 

『いいえ、何も。ともかく、連邦生徒会としては自治区に無理な介入は出来ません。ですので、内側のことはシャーレにしかわかりません。今回のように、こちらで把握できてないことが判明することがあればすぐに連絡をください。 ……連絡は副室長にお願いしますね。何度もシャーレの部員と代行が連絡を取り合っている、なんてクロノスにでも知れたら事です』

 

「わかりました、何かあればそうしますね。 ――では」

 

『ええ。心配はいらないでしょうが、貴女も気をつけて』

 

 

 通話を終える。さて、どう伝えたものかとカヤは考える。

 

 まず、ユメのことは伝えられない。連邦生徒会長とどんな形であれ個人的な関係があった、などというのはただの面倒ごとの種にしかならない。伝えられるとすれば、自治区の住民区画に対しての災害対策についてくらいだが、今は関係のないことだろう。

 

 

 とすれば、伝えられることは借金についてのことしかない。

 

 

「シャーレとして今、連邦生徒会に確認しましたが借金については把握はやはりしていませんでした。連邦生徒会は特例を除いて一方的に自治区に対して介入は出来ません。なので、実情を知らなかったこと。それから、議員の選出がされていなくて生徒会への報告がされておらず自治区の情報が入ってこなかったことにより把握できていなかった、ということです」

 

 ままならない、そう思った。

 

 連邦生徒会は自治区に対して原則的に介入できない。自治区のことは自治区か、他の自治区同士でやり取りされることが多い。そしてその自治区の中で行われるやり取りについて、介入できない以上ほとんど把握できない。

 

 他の自治区の実情を知るために。だからこそSRTが必要だった。ただの治安維持の特殊部隊というだけではないのだ。知らなければ何も出来ない、手を伸ばせない。助けられない。

 

 

 ――だから、助けられなかった。救えなかった。太陽のような、あの人を。

 

 

 だが。今は違う。シャーレという存在は、あらゆる自治区に手を伸ばせる。先生は、生徒のためにその力を行使してくれる。

 故に先生の力となるのだ。誰かの明日を、笑顔を守るために。今までの連邦生徒会では出来ないことを、シャーレでやるのだ。

 

「ですが先生、我々の主目的は借金返済ではないはずです。我々はシャーレとしてここに来ています。アビドスの学生でもなければ、連邦生徒会でもありません ――我々にしか出来ないことがある。違いますか?」

 

「――ああ、そうだね。カヤの言う通りだ」

 

 

 そうだ。

 

 自分達はシャーレ。自治区の垣根を超えて、そこに助けを求める生徒がいる限り手を伸ばす。

 そして今の自分達の目的は、

 

 

「私達はシャーレだ。アヤネからの手紙の内容の通り。アビドス高校を守るためにここに来たんだ」

 

 

 借金以外にも問題は山積みだろう。そういったことを、シャーレとして力になって解決する。

 それが今の。シャーレの不知火カヤと、RABBIT小隊の使命なのだから。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「いやぁー……壮観だねぇ」

 

 

 対策室での話が終わり、暫くの間他の対策委員会の後輩達と話をした後、ホシノは校舎の前。現在、先生達が乗ってきた輸送機が着陸しているグラウンドに来ていた。そこで、ホシノは目の前の光景に目を奪われていた。

 

「遮蔽物とか適当においてただけのグラウンドが、ちょっと目を離した隙に軍事キャンプみたいになっちゃってるよー……うへぇー……」

 

 そこでは、手慣れたように作業を進める、客人であるシャーレの部員。SRTの1年生だと自己紹介してくれた、ミヤコ達が居た。既に輸送機の周辺には大型テントや様々な機材、調理器具が設置されており、現在はバリケードの補強や配置を行っている所のようだ。

 

 特に機材は凄まじいものだ。ちらりとホシノが見れば、テントや周辺の施設に対しては電気が通っているようだ。加えて、シャワーなどの施設に浄水器のようなものまで見られる。

 

「あ、ホシノ先輩」

 

「おお、ミヤコちゃん。いやあすごいねぇ……おじさんがちょーっと見ないうちに、こんな立派な基地みたいになっちゃって……」

 

「グラウンドを使用してもいいと許可をいただけましたので、私達が滞在中に過ごす設備。それから勝手ながらバリケードも触らせていただきましたが……よろしかったでしょうか」

 

「全然いいよー。バリケードはおじさん達が適当に組んだだけのものだったんだけど、かなりしっかりとしたものになったねえ」

 

 

 ホシノの口調はのんびりとしているが、内心はかなり驚いている。1年生であり、まだ特殊部隊の卵とはいえ流石SRTだと感心したほどだ。

 

 攻めるは難く、守るは易しとでも言うのか。その配置は、素人目線ではあまりわからないようにされているが、ホシノには理解できる。この配置は、防衛側が圧倒的に優位になるように配置されている。加えて、ミヤコ達それぞれの武器。そして自分達対策委員会の武器を運用するにおいても、それを考慮しての配置がなされていた。

 

 攻める側からは見えないが、防衛側から確認するとバリケードの一部が防衛側からだけ迂回できるようになっている。高低差を確保された作りなので、攻める側はこれを利用できない。これにより、ポイントマンやアサルト。機動力のある生徒は一方的に相手側へと奇襲が可能となっている。

 

 他にも、ノノミのようなMG(マシンガン)を一方的に撃つための遮蔽物が確保されている高台。校舎を振り向くと、視線に入るのは窓際と屋上。そこからの射線を逆算して、ホシノは息を呑んだ。通っているのだ、バリケードで構築された迷路のような防衛陣地。その全てに対して、一切の逃げ道がないように。

 

 恐らくだが、校舎の窓際。そして、屋上からであれば多少狙撃位置を修正するだけでこの布陣のどこに対しても狙撃が可能だろう。それを行うのは、SRTの1年生であるミユだろうと推測する。とすれば、相手に逃げ場など無い。まさに、ここに攻め入った相手は自ら地獄へと踏み入るようなものだ。

 

 想定できない位置から奇襲され、常に後方からの制圧射撃や狙撃に相手は晒される。それに対応しようとしても、相手にはそれが難しくなるようにされているのだ。加えて、攻め側からは相手の位置が確認しづらい上に意図的な高低差や遮蔽物での視界の妨害までされているため投擲物に対する対策もされている。

 

 対策委員会の面々や自分は、自分の武器や動きについて話してはいない。だが、部室に武器は置いてあった。つまり、この1年生達はそれだけの情報から、このような陣地を構築したことになる。

 

 とんでもない1年生達だ。そう思った。

 

「――いや、すごいね。本当に。 おじさんが攻め側だったら、装備次第だけどよっぽどな準備でもない限り撤退を選ぶよ、これ」

 

「褒めていただきありがとうございます、やはり先輩方に褒められると嬉しいですね、えへへ」

 

「うーん……それに、キャンプの設備から見て電子戦や支援も想定されてるのかな?しっかり見てないからわかんないけど、センサー類も置いてる?」

 

「はい、入口に感知センサーと、屋上には夜間対応型、ジャマーも対応済みのサーチ用のドローンを設置しています。各情報は、モエのタブレットや先生のお持ちの端末へと送信されますので、戦術指揮などにも役立てることが出来ます」

 

「うへー……ハイテクだねえ。じゃあちょーっと意地悪な質問しちゃうけど、相手の主力兵器。戦車とかへの対応は?流石の強化バリケードでも、主力兵器相手だと突破されちゃうよ」

 

「それについても考慮しています。まあ……その、ゴリ押し、ですが」

 

「うん?」

 

「各自が所有している武装で対応が難しい場合、私達が乗ってきた輸送機……スカイレイダーを戦闘モードで稼働させます。弾薬の燃費が良くないので、出来るだけ使用は控えたいのですが……有事の際は、制空権を確保。空からの対地爆撃と制圧射撃にマイクロミサイル、支援攻撃ドローンにて相手を完全制圧します」

 

「うわぁ……でも、対空兵器とかは?流石に砲撃の直撃とか、スティンガーなんてもの持ち出されたら」

 

「その、カヤ先輩から聞いた話なのですが……。特殊な装甲を採用しているらしく、殆どダメージが入らないそうです。また、相手の電子武装妨害装置に迎撃用機構も備わってまして……」

 

「……うん、無理ゲーだね?」

 

 これだけの布陣に攻撃機。ちょっとこれは不良どころか他の自治区の行政機関に攻め込まれても対処できてしまうだろうとホシノは思った。陣地に装備、そして特に大きいのがそういったものを場合によっては全て覆してしまう戦術指揮なのだが、此方には先生がいる上に、あの不知火カヤまで居る。思えば、まずここに不知火カヤが居るということを知った時点で相手は攻めるのは辞めるだろう。

 

 不思議と、もしヘルメット団が攻め入ったら瞬く間に制圧され、それを引き取りに来るヴァルキューレ警察学校の公安局長を幻視した。あの公安局長が此処まで来るのかは疑問だが、よくニュースでカヤによって制圧された現場で公安局長が捕縛された生徒を連行しているのを見るので、本当に来そうだろうとも思った。

 

 

「いやはや、なんというか……一気に騒がしくなったねぇ」

 

 

 だが。嫌な気分はしなかった。

 

 にへら、と笑いながらホシノは『面白そうだから色々見てみようかなー?』などと言いながら、少し離れた場所で作業をしているサキ達の所へと歩いていく。

 

 

 そんなホシノの姿を、校舎の二階から感づかれないように見ている姿があった。

 それは、カヤであり。その開かれた糸目は、どこか嬉しそうにしていた。

 




・連邦生徒会長は知っていた
 アビドスの状況について、会長は知っていました。また、ユメと個人的な交友もありました。ただ、議員選出ができていない・あまり自分が贔屓で動くと問題になるという理由もあったがもっと別の問題でアビドスに対して動けなかった。リンに宛てたメモ書きのようなノートには、アビドスの借金についてとアビドスという土地に存在する何かのヒントが書かれていた。

・アビドス高校、要塞化
 滞在先の確保のためのキャンプ設置と防衛陣地についての提案をされたホシノが『いいよー、好きにやっちゃってー』とゴーサインを出した。結果、軍事キャンプと防衛陣地が出来上がった。重装備オートマトンに狙撃タレット、制圧射撃位置に狙撃ポイントも確保されており、センサー類まで設置されている。

 キャンプがこれでもかというほど快適な上に何故か防砂対策がされたハンモックなども設置されているため、時折そこで寝ているホシノが目撃されている。

・カヤちゃん
『あれが先輩の言っていたホシノさんですか……な、仲良くなれるでしょうか。まずは気さくな挨拶から……そう、そうです。わっぴー! とやらを試してみましょうか』

 数少ないトリニティの知り合いが、今度試そうかどうか考えていると言っていた魔法の言葉を使ってみようと考えて、『こんなファーストインプレッションどうですか?』と、連邦生徒会身内モモトークで相談したらリンからは『絶対やめなさい』と止められた。ハイネとモモカは大爆笑していた。アオイからは宇宙を背景にして理解できないというような表情をした猫のスタンプが送られてきた。アユムからは必死に気を遣ったような返事をされた。

 その後、ちゃんと普通に会話して交友を深めていた。
 昼寝が好きと聞いていたので、今度巨大ウェーブキャット抱き枕を送ろうと思っている。

・ミヤコ
 年上の先輩(ホシノ)に褒められてすごくうれしい。
 更にやる気を出した。

 なお、シャーレ本部で別任務と依頼対応中のユキノはミヤコを甘やかせず目のハイライトが消えて本編ユキノになっていた。後日楽しそうにしているRABBIT小隊の写真がシャーレの雑談モモトークに貼られて目にハイライトが戻った。

【あとがき】
 アビドス高校、軍事拠点化する。実は設置されているオートマトンとタレットは作動時にあるAIが操作している。輸送機もいざという時、無人でも稼働する。

 感想・評価などもらえると作者がとても喜びます。それでは、また次回お会いしましょう。

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