カヤちゃんが征く!   作:無名のカヤ推し

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Episode7:友達を襲われて黙っていることは出来ません

「ヘルメット団に襲われた!?だ、大丈夫だったの?セリカちゃん」

 

「うん、無事だよホシノ先輩。かなり危なかったけど……ちょっと予想外の人が助けてくれて」

 

「予想外の人?」

 

「えっと、公安局の尾刃カンナ公安局長」

 

「うへぇ!?なんでそんな大物がアビドスに……」

 

「送ってもらってる時に聞いた話なんだけど、どうやら休暇らしくて……。連邦生徒会から、あまりにも休みを取ってないから取れって言われたんだって。なんでも、知り合いから『観光ならアビドスのオーロラなんかがいいよ』って聞いたらしくて。それでアビドスに観光に来てるんだって」

 

 

 翌日のアビドス高校の対策委員会部室。そこに集まっていた面々は、昨日柴関ラーメンで別れてからセリカの身に起こったことを聞いて驚いていた。といっても、カヤだけは何やら難しい顔をしていたが。

 

 カヤとしては、本当にカンナを呼んでおいて正解だと思った。偶然とは言え、セリカの誘拐を防ぐことが出来たのもそうだが、やはり事態は単純に借金問題だけではないのだと今回の件で確信した。

 

 実際の所、カンナの休暇というのは本当である。カヤとしても最近仕事続きでいい加減休んで欲しいと思っていたのは事実であり、アビドスという休暇先を指定したのは自分だがカンナに観光スポットなどを勧めたのはFOX小隊のオトギである。なので、観光というのも休暇というのも嘘ではない。

 

 

「オーロラって……ああ、あれかな。砂漠地帯で何故かはわからないけど、よく観測されるオーロラのことかな。でも、アビドスって今こんな状況だから、観光地としてはそこまで多く知られてないはずなんだけどなあ」

 

「キャンプと天体観測が趣味の知り合いに教えてもらったんだって言ってた。なんか、そっちの方面の人たちのコミュニティだとアビドスのオーロラって結構有名なんだって」

 

「そういえば、たまにガッチガチのキャンプ装備で砂漠に行く人見るねえ。あの人達ってその方面の人だったのかな」

 

「ん……ホシノ先輩、私も前にロードバイクで走ってたら観光地のこと聞かれたことがあるから、案外人気なのかも」

 

「そんなことになってたんだねえ、おじさん気が付かなかったよ」

 

 ちらり、とカヤは先生を見た。そして先生もまたカヤの視線に気がついて、感づかれないように頷いた。要するに、後で話があるということである。

 

 カヤとしては連邦生徒会防衛室長という立場で見ても、そしてシャーレの部員という立場で見ても、今回のアビドスの件をこれ以上先生に内密で処理するのは不可能だと判断した。単純な不良やヘルメット団程度ならなんともできる。だが、相手は明らかにそんなものではない。

 

 一番怪しいと睨んでいるのは、カイザー。だが、言及や弾圧できるだけの証拠がない以上シャーレ・防衛室どちらの立場としても下手は打てない。そしてなにより、今回の件で確証したが間違いなくカイザーが糸を引いていたとして、その裏にまだなにか居る。

 

 現状、打てる手はない。だが、対策を講じることは出来る。カヤは裏で、FOX小隊への別件での依頼、カンナへの休暇を含めたアビドスへの派遣、防衛室での執行部隊の準備を進めさせていた。防衛室の準備だけは、副室長の采配だったが。

 

 カヤとしてもまだ謎なことはある。恐らく下手人はカイザー、その狙いはアビドス高校、対策委員会の面々は知らないように見えたが、恐らくアビドスの土地をカイザーが買収しているのは全てアビドス高校を廃校に追い込むためだ。では、何故そこまでする必要があるのか。

 

 確かにアビドス砂漠には、殆の人間が知らない存在が居る。ビナー、と呼ばれる大蛇のような存在であり、自身は仲間内のとある実体を持たない仲間から聞いたことがあり、現在失踪している連邦生徒会長は交戦経験がある。ビナーについて聞いた時の実体を持たない仲間は『貴女達に敗北するまでは天空を統べていた私が味方に居るのにどうしてあのような存在のことを聞くのですか?理解不能です』と大変不機嫌そうだったが。

 

「あの、ホシノ先輩。提案なんですが」

 

「ん?どしたのミヤコちゃん」

 

 ちらり、と一瞬カヤを見たミヤコはそのまま言葉を紡ぐ。どうやら、カヤが何も伝えなくとも今回の事態について何かを感づいたようだ。

 

「昨日お話されていたように、ヘルメット団の襲撃頻度は高いんですよね。そんな中、セリカを狙った襲撃が起こった ……このまま黙っていることは出来ないと思います。シャーレの部員として感情のままには動けませんが、個人的なことだけ言わせてもらえば、友達を襲われて黙っていることは出来ません」

 

 セリカは新しい友人だ。彼女についても、日は短いがどんな人物かというのは少しは知っているつもりで居た。友人で、学校のために頑張ろうとしている。その姿はもし、SRTが今の状況になりえなかった場合の自分達なのではないのかとミヤコは思った。

 

 きっと、もしSRTが閉鎖になっていれば自分達も学校を守るために行動しただろう。その形がちがうというだけで、守るという点ではきっと同じだっただろう。そんな今頑張る友人を助けたいと思ったし、何よりその友人を襲った相手を個人的な感情だけで言えば許すことなど出来なかった。

 

 だが、今の自分はシャーレだ。そして師匠であるユキノからは『組織の人間として、時には組織のために己を律しなければならないこともある。だが、自分だけのその想いは忘れるな』と教えられていた。シャーレの部員である以上、自分達の上官は先生だ。だが、先生ならきっとアビドス高校に手を差し伸べてくれる。そう信じて、自分の個人としての思いをミヤコは口にした。

 

 

「そうだね、私もミヤコと同意見だ。このままヘルメット団を放置すれば、すぐにまた襲撃される。いくら今は防衛陣地を敷いているとは言え、相手も相応の目的があるなら……何度撃退しても攻めてくるよ」

 

「……じゃあ、どうするの?先生」

 

 ホシノは恐らくわかっている。ミヤコの言葉、そして先生の口ぶりから何をするのかを。

 

「打って出よう。幸い、今のこっちの陣営には人数もいる。攻撃(オフェンス)防衛(ディフェンス)。その2つに隊を分けて、主要なヘルメット団の拠点を制圧する。拠点が潰されれば、すぐには立て直しは出来ないはずだよ。アヤネ、拠点の位置はわかる?」

 

「は、はい!主要なヘルメット団の拠点は、恐らく――」

 

 そうして、地図上に指し示されたヘルメット団の拠点を確認した先生はそれを持っている端末。シッテムの箱に何かを打ち込んで頷いた。

 

「攻撃には対策委員会全員と――周辺全てのヘルメット団主要拠点を制圧するために移動手段が必要だから、輸送機を使用する。よって、モエと上空からの狙撃支援のためにミユにお願いしたい。 ……モエ、今回は撃っちゃだめだよ。とりあえず輸送だけね」

 

 『そ、そんな先生……まあ、仕方ないかあ』とモエが返答する。残念には思っているが、今回の作戦の主目的を理解していないモエではない。伊達にSRTの1年生ではないのだ。

 

 主目的はヘルメット団の襲撃を大幅に減らすための主要拠点の制圧。そして、アビドス高校の報復である。仲間を襲撃され、もしカンナが居なければ拉致までされていた。そうなっていたら、どんな結末になっていたかもわからない。そんな状況で、アビドス高校の面々も黙ってなどいられない。

 

 そうして。ミユを加えたのにも理由がある。彼女の狙撃と隠密の実力は天才と言っても過言ではないもので、あらゆる面での狙撃手の役割について教えているFOX小隊のオトギが『狙撃もかなりいいセンスしてるね。いやあ~隠密だけはミユちゃんに勝てないかな~』と評価するほどだ。

 

 例え上空のヘリからの狙撃であっても、今のミユであれば『威力制圧狙撃手』としての働きができる。そして、彼女は距離2km程までならば、足場や狙撃位置が不安定でも殆ど外すことがない。

 

 アビドス対策委員会それぞれの武器は、ホシノがSG(ショットガン)とバリスティックシールド、シロコとセリカがAR(アサルトライフル)、ノノミがMG(マシンガン)である。そうなると、必然的に不足しているのが狙撃手、SR(スナイパーライフル)となる。

 

 だからこそ先生は攻撃編成にミユを組み込んだ。いわば、上空のヘリという移動可能な狙撃ポイントから相手に対して一方的に狙撃を行う。それが相手にとってはどれだけ脅威なことか。そこに居るのはわかっているのに、手は出せないし無視できない。そういった『威力制圧狙撃』こそが、オトギが現在ミユに教えているものだった。

 

「完全にアビドス高校を無人にするのは危険だからね、防衛は……カヤ、君が指揮官としてミヤコとサキを指揮して3人体制になるけど。大丈夫かな?」

 

「ふふ、先生。私が誰だかお忘れですか?私を止めたければ、それこそ会長でも連れてくるべきですね。 ……それに、アサルトとしてのミヤコさんやポイントマンとしてのサキさんはとても優秀ですよ。ご安心を、私と。彼女達が居る限り敗北はありえません」

 

 事実。防衛側も突破不可能と言っても良かった。連邦生徒会最強戦力であるカヤ。そして、まず並大抵の不良では数を揃えようと太刀打ちすることは難しく、各自治区の正規部隊であってもエースクラス。副委員長やそれに該当するレベルの生徒でなければこの二人は止められない。

 

 それ以前として、まず普通の相手ならば今のアビドス高校の防衛陣地を見た瞬間よほどの理由でもない限り撤退を選ぶ。カヤ達に加えて、重装備のオートマトン3機に、狙撃タレットまで設置されているのだ。

 

「……と、私は考えてみたけど。どうかな?ホシノ。対策委員会の委員長としては」

 

「うへぇ……。先生、結構やることが過激だねえ。でも、おじさんは賛成だよ。 ――セリカちゃんに手を出されて、黙ってられるほど優しくないよ」

 

 最後の言葉には、確かな威圧感が籠もっていた。事実、ホシノは相当に頭にきていたのだ。大切な後輩、そんな相手に手を出されて最悪誘拐されてどうなっていたかもわからないなど、普段隠しているホシノの本来の性格の片鱗を表に出すのには十分だった。

 

 その圧で思わずミヤコ達とシロコ達対策委員会は息を呑むが、カヤだけは落ち着いた様子でそれを見ていた。

 

「そっちは任せていいよね?カヤちゃん?」

 

「ええ、お任せ下さい。今なら会長が攻めて来ようと諸々押し付けていった恨みつらみでボコボコにできそうです」

 

「……おじさん、ちょっと今連邦生徒会長に同情したかも」

 

 こうして。ヘルメット団に対する報復作戦が決定した。

 

 

 




・SRT1年生組
 シャーレとして、SRTとしての任務と在り方を優先しているだけで内心ではブチギレている。ミヤコ達としても、SRTという関係上、シャーレに所属するまで他の自治区の同年代と関わることが殆どなかったため友人が増えたのはとても嬉しかった。そんな友達が下手をすればとんでもないことになっていたなどと聞いて冷静で居られなかった。実行したのはヘルメット団ではないのだが、それを知る由もない。どちらにしてもヘルメット団はアビドスの敵であるため、かなりやる気満々。ヘルメット団襲撃に行ったミユとモエは本当に容赦なく殲滅を行った。

・ミユ
 総合能力と経験ではまだオトギに劣るが、隠密能力だけで言えば既にユキノ以外の三人を相手にして長時間隠れられるほどには優秀。以前FOX小隊全員相手にかくれんぼをする、という訓練をしたのだがミユとしては上手く隠れたつもりだったが気がついたらユキノがとてもほっこりしながら後ろに居てカメラを構えていた。すぐに逃げて隠れる場所を変えてもすぐに後ろでカメラを構えていた。恐怖である。なお、ユキノとしてはがんばる後輩の写真を取れて大変ご満悦だった。以後、隠密訓練ではユキノは出禁になったという。

 不安定な足場、悪天候、悪環境などの状況にも関わらず、2km程までの距離なら問題なく精密射撃を行える。隠密狙撃手としての役割をしながらスポッターとしての役割もやれるので、彼女もまた規格外。

 オフの日には、外を歩いていると何故か集まってくる動物とふれあうのが好き。動物園や水族館、動物ふれあいパークなどに行くのが好きで、よくFOX小隊やRABBIT小隊の面々と行っている。

・アビドス砂漠のオーロラ
 何故砂漠でオーロラが発生しているのか、どうしてアビドスだけで発生しているのかは不明。一説では、『神秘的』な存在が関わっているとも言われている。

 かなり昔から観測されている現象で、砂漠化によって環境変化が起こっても消えることはなかった。あまり話題にならなかったのは、全盛期のアビドス高校は特に観光や環境調査などについて考えなくともキヴォトス最大の勢力を誇っていたため、そんな事をする必要もない・そんな考えがあっても手が及ばないほど学園内の対応が忙しかったため。

 砂漠化して衰退し、住民が次々と去った後も結局、生徒会のことは基本的にホシノに話していないことも含めて全てユメがやろうとしていたためそういったことには手が伸びず。結局、昔からアビドスに居る住民か、一部のキャンパーなどにしか知られていなかった。

・ビナーくん
 実は一番命の危機を感じている。かつて天空を統べていた今は生徒大好きのとある存在に目をつけられないか震えている。そのとある存在もカヤちゃんと生徒会長二人がかりでボコボコにしたので本来の身体は滅茶苦茶ヤバい存在。

・実体を持たない仲間
 スカイレイダーの超AI。元々は滅茶苦茶とんでもない存在で、カヤちゃんと生徒会長二人がかりでボコボコにした。現在は連邦生徒会長の光にAIを焼かれて生徒に可能性を見出して生徒大好きになっている。

 一度スクラップにされたが、その身体は再構築済み。遙か上空、誰も手出しできない場所で本体は休眠状態になっている。


【あとがき】
 実は今回の話、あまり書けるあとがきがないんです。この後数話先の話と色々セットだったりするので、本当書けることがない。ただ、アビドスの状況を打破できるかも知れない方法が実は自治区外の人間から見たら見つかって、色々とホシノは複雑な気分。そのあたりについても後々の後書きで書ければなと。

 感想・評価などもらえると作者がとても喜びます。それでは、また次回お会いしましょう。
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