カヤちゃんが征く!   作:無名のカヤ推し

22 / 53
いつも誤字報告、ここすき・感想・評価をいただきありがとうございます。
とても励みになっております。

ちょと作者忙しくなるので、連日投稿。
その後は更新頻度が落ちるかもしれない。


Episode8:彼女と本当の意味で『敵』として相対だけはしちゃダメなんだ

「ひっ……に、逃げろ!」

 

「なんだよ!アビドス高校って補給が底をつきかけてる烏合の衆って話じゃなかったのか!?」

 

「は、話が違う!」

 

 

 戦況は一方的と言って良かった。既に6箇所あった、アビドス郊外を含むヘルメット団の拠点は現在制圧中の拠点を最後にして、全てが制圧済みだった。ここまで半日とかかっておらず、負傷者も発生していない。

 

 グレネードやロケットランチャーなどの主力武器で反撃をしようとしても、上空からの狙撃によって全てが止められる。上空からの狙撃銃特有の銃声がする度にヘルメット団の団員たちは震え上がり、同時に誰か一人が倒れる。

 

 反撃に転じようとすれば、今度は上空の狙撃手に加えてマシンガンを持つノノミによる制圧射撃が放たれる。それにより迂闊に攻勢にも出れず、7.62×51mmNATO弾の雨によって遮蔽物も殆ど意味をなさない。ましてや、隠れようものなら上空から死神の鎌だと言わんばかりに、ミユの狙撃が容赦なく飛んでくる。

 

 防戦一方となった相手の陣地を荒らすのは、ホシノを筆頭にした襲撃担当のセリカとシロコである。ホシノによってただですら無茶苦茶にされたラインを突破され、近づかれればショットガンの近距離射撃により制圧される。一度相手の陣地に入ってしまえば、後はシロコとセリカのやりたい放題である。そのまま相手の陣地を荒らし尽くし、後続の反撃を許さない。

 

 一部のヘルメット団主要拠点では、戦車などの主力兵器も出してきた。だが、逆にそれを出したのはヘルメット団にとっては地獄だった。

 

 流石に戦車に対しては、対策委員会それぞれの武器やミユの狙撃では有効打撃になりにくい。いくらシロコの使用するドローンに小型ミサイルが搭載されているとは言え、それでも有効打には繋がりにくい。なので、先生がモエに言ってしまった。『モエ、対主力C武装までなら使ってもいいよ』と。

 

 シャーレの、モエの操縦する戦闘輸送機であるスカイレイダーには武装規定が設けられている。それは、AからDの4段階であり、Aが最も緊急かつ有事の場合であり、Dが最低限の制圧までとされている。基本的に先生が指示するのは、CかDである。AとBについては、余程の事態でなければ許可をしない。

 

 それを聞いた瞬間のモエはそれはもう歓喜した。同時に、大慌てして狙撃を中止したミユが『先生なんてことを……!ま、まずいです!全員ラインを下げて下さい!』と通信で叫んだ。降下していた全員が大慌てで下がり、遮蔽物に隠れた瞬間。ヘルメット団が我が物顔で出してきた10台近い小型戦車を襲ったのは容赦のない爆撃にマイクロミサイル、そして2門ある機関砲から斉射される徹甲焼夷榴弾の雨だった。

 

 そんなことをされれば後に残るのは更地だけだ。用意された主力兵器は全て炎と煙を上げる鉄屑に成り果てた。拠点はボロボロであり対抗できるだけの力もないと悟ったヘルメット団は全力で撤退した。

 

 結果として。通信機から聞こえてくる歓喜に打ち震えるモエの声と、それを落ち着かせるような先生とミユにアヤネの声を聞きながらなんともいえない表情になるホシノ達。

 

「……と、とりあえず帰ろっか」

 

「ん……結果オーライ」

 

「これ、トラウマになったんじゃないかな……?」

 

「わ、わあー……流石の私もコメントに困っちゃいます」

 

 それぞれが本当に、ほんの僅かだけヘルメット団に同情した後。着陸するスカイレイダーへと歩いていき、そのままアビドス高校へと帰還した。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「――私は断るべきだと思う、社長」

 

 

 アビドス陣営がヘルメット団の拠点を壊滅させた翌日。ブラックマーケットにあるとある事務所で、その少女は険しい表情をしながらそんな言葉を向かい合う相手へと告げていた。

 

 鬼方カヨコ。ゲヘナ学園の生徒であり、とある非公認の部活に所属する生徒でもある。そんな彼女は、基本的には自身の所属する便利屋68の受ける依頼にはあまり反対を示さない。大抵のことなら、『仕方ない』と思うこともあるが受ける方向で動くのだが今回は訳が違った。

 

「珍しいね、カヨコちゃんがそこまで反対するなんて。なになに?なんかある感じ?」

 

「ムツキ。悪いけど今回は本当に不味い。……ちょっと、洒落になってない噂があるの」

 

「噂?」

 

「連邦捜査部、シャーレ」

 

 その言葉に対してムツキは目を見開いて息を呑んだ。普段おちゃらけた態度を取っているが、ムツキもまたキヴォトスの情勢をある程度確認していた。だからこそ知っている。連邦捜査部シャーレという存在を。

 

「あくまで噂だし、信憑性もない。普通ならたかが噂だと切り捨てるところだけど、今回に限ってはちょっと違う。 ……依頼主の指示であるアビドス高校への襲撃。そのアビドスにシャーレが協力しているって噂がある」

 

「ちょっと待って。シャーレって言うと……」

 

「私が反対する理由がわかった?この前まで騒がれてたニュース、知ってるでしょ。SRTの一部生徒と、それからあの不知火カヤがシャーレに加入したってニュース」

 

「知ってる。もし、シャーレが本当にアビドスについてて、SRTや不知火カヤが居た場合不味い。そういうことだよね?」

 

「そう。心を冷静にして客観的に考えてみて。 ――アビドス高校に加えて、もし不知火カヤとSRTが居た場合。もしくは、SRTの精鋭の生徒数名だけでも味方に居た場合。 ……勝てると思う?」

 

「うん、無理だね」

 

 即答だった。ムツキもSRTがどんな学校かは知っている。そして、シャーレにはFOX小隊と呼ばれる最強の部隊と、その小隊が選んだという上澄みの生徒が加入したという報道だった。一般生徒でも小隊単位で各自治区の風紀委員会などの部隊と戦えると言われている学校だ。その中の上澄みといえば、どれだけの強さかというのは想像できる。

 

「で、でも……私、アル様のためなら例えどんな相手でも戦ってみせます!」

 

「ハルカ、その意気はいいと思うけど……相手が悪すぎる。SRTの生徒は間違いなく戦闘のプロ。特殊作戦や執行作戦のエリート中のエリートだよ」

 

 それだけではない。特に、ある意味一番まずい問題がある。

 

「それに。いくらシャーレの任務中はその権限を持ってないとは言え、あの不知火カヤと戦える?」

 

「う……」

 

 不知火カヤ。その相手と敵対するのだけは不味いのだ。

 

 連邦生徒会最高戦力。かつては現在失踪している連邦生徒会長と共に現場を駆けていたというそれが何を意味するのかと言えば、未だに底が見えないその存在は少なくともこのキヴォトスにおいてトップレベルの実力者には違いないのだ。

 

 

「ねえ、カヨコちゃんやたらと不知火カヤを警戒してるけど、昔何かあったの?」

 

「……昔、ちょっとね。その時に彼女のことを知ることがあったから、よく知ってる。ひとつだけ言えるとすれば、彼女と本当の意味で『敵』として相対だけはしちゃダメ。それだけは、絶対にダメなんだ」

 

 過去にカヨコは一度だけ見たことがある。

 

 彼女に敵対した、『邪悪』に下される裁きの天霆を。

 

 それは。救われる側にとっては希望そのものだろう。

 決して消えることのない、絶対的な光。明日と希望を示す光。

 

 だが、逆に言えばそれを下される側にとってはそれは破滅の光そのものだ。

 

 一切の慈悲はなく、ただ彼女の敵を滅ぼす絶対的な力。

 破滅と終焉を告げる、悉くを滅ぼす天霆の光。

 

 

「っは……あれは、まずいんだ」

 

「カヨコちゃん!?か、顔色悪いよ、大丈夫?」

 

 思い出し、息が荒くなる。身体が震える。

 

 あれが、もし自分達に向けられたら。

 そう考えただけでも恐ろしい。

 

 あの天に轟く雷霆の前では、ふたつのものしか存在していない。そこに慈悲や情けというものが入り込む余地はなく、ただ純粋に『敵』か、『守るべきもの』なのか。それしか存在していない。

 

 

「お願い、社長。よく考えて欲しい」

 

 その言葉を受けた相手。便利屋68の社長である、陸八魔アルはその言葉を受けて。

 

 

 

「……アビドス高校への襲撃を、中止することはできないわ」

 

「アルッ!」

 

「でも!」

 

 そう、アルとて勢いに任せたり場に流されがちではあるが、社員の。仲間のその感情がわからないわけではない。カヨコは本気で、必死だ。それが自分達全員を案じているものであり、この依頼が最悪の場合最大級の警戒を要するものであるということは理解できた。

 

「依頼遂行において、社員の身の安全は最優先事項よ。 ……一度受けた依頼はどんなことであれ、やり通すのがモットーよ。でも、それ以上に。社員の安全が優先されるわ。だから、アビドス高校への襲撃を行って、もしカヨコの言うその噂が本当なら、出来るだけの情報を入手して撤退。依頼主の指示の中に、アビドス高校を壊滅させろなんて指示は無かったわ。私が受けたのは、あくまで襲撃依頼だけ」

 

 

 一度受けた依頼は、どんな理由があっても撤回しない。例え、今回のように後でシャーレがついているかもしれないという話や、ここまでカヨコが警戒し、怯えを見せる相手だったとしても。それが後でわかったことだからと言って、依頼の撤回などできない。それは、己の信条に反するからだ。

 

 だが、最優先なのは社員の安全である。もし本当にカヨコの言うように、襲撃時にシャーレが。SRTや不知火カヤがいる場合、即時撤退をすると決めていた。幸い、依頼主からの依頼はアビドス高校の壊滅ではない。あくまで襲撃なのだから、その体裁さえ守ってしまえば後は状況次第でどうとでも動ける。

 

 アルとしての理想は、あくまでそれは噂であり本当はシャーレが居ないこと。もしくは、襲撃時にシャーレの部員が敵側に居ないことだ。それが理想、だがそうはいかない場合もある。なので、最悪の場合を想定してその時の対処も考えておく。

 

 

「でも、そんな噂があるなら……事前調査は必要よね」

 

 今はまだ計画の前段階だ。よって、アビドスと敵対しているわけでもない。ならば、現地調査をしてアビドスの状況や噂の真意を確かめるのは1つの手だろうと考える。

 

「決めたわ。ひとまず、アビドスの現地調査に行きましょう!」

 

 未来の話をすれば、アルの目論は外れることになる。

 何故ならば。アビドス陣営と便利屋の邂逅は、もうかなり近くまで来ていたのだから。

 

 




・カヨコ
 昔、『そういった改まった場』に居た頃にカヤちゃんのことを見ている。そして当時、カヨコではないがとある人物がカヤちゃんに邪悪認定された。その際に、その『天霆』を目にしているが故に、それがどれだけ恐ろしいものか知っている。

 悉くを滅ぼす光。天に轟く雷霆を向けられたからこそ、それがもし今の仲間達に向けられたらと考えてしまい、恐ろしく思っている。なお、余程倫理に反したり外道、笑顔や輝きを奪う存在でなければカヤちゃんは『邪悪』認定しないし、『悪の敵』モードにもならない。その当時のゲヘナのとある人物がやりすぎた。その結果、連邦生徒会長も動いたしカヤちゃんが『悪の敵』モードになる事態にもなった。

【あとがき】
 カヨコの昔話は、彼女の話からの勝手な考察と捏造です。『昔は改まった場所に行くのが多かった』ということから、ゲヘナのそういう場に居たんじゃないかな、という捏造。

 読者の方にとても勘のいい方がいらしたようで。実際にご本人が出るのはもう少し先なのですが、気が付かれたようなので一番最後にヒントを少し。

 ゲヘナでカヤちゃんに邪悪認定された相手、一体何者なんだ。なお、この時は途中で連邦生徒会長がカヤちゃんを止めた模様。その後、連邦生徒会として制裁した。

 感想・評価などもらえると作者がとても喜びます。それでは、また次回お会いしましょう。

 
・???
セリカ襲撃を指示した存在。黒服達とは協力関係にある。つまり――

『愛と勇気、絆、生徒の輝きが何よりも尊く愛おしく慈しみたいものだと考えている魔王』
元ネタは相州戦神館學園 八命陣の某光の魔王。

其れは、善性にして倫理・人道に厚い人格者。『英雄』と同類の存在である。


 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。