カヤちゃんが征く!   作:無名のカヤ推し

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Episode11:ここで一番安いメニューっておいくらでしょうか……?

 定例会議は今までにないほどの大収穫だった。恐らくアビドスの面々だけでは考えつかないような案、それが幾つも出たことにより今後のアビドス自治区に対しての光明が見えた。それは、借金問題だけではない。長年災害として頭を悩ませていた砂がもしかすると巨大なビジネスチャンスになるかも知れないのだから。

 

 砂に対しての調査や研究価値というだけではない。ユウカとノアとの通信の後、今度はミヤコが現在シャーレ本部で依頼にあたっているFOX小隊のオトギに連絡して色々と話を聞いてみれば、やはりアビドスは知る層にとっては有名な観光地だった。

 

 ミヤコが仮の話で、アビドスが整備されて観光地としての事業を展開したらどうなるか、とオトギ、それからシャーレ本部に居たニコに相談してみたが。

 

『え?そんな話が出てるの?もしそうならすごく嬉しいね。聞いた話だと今までって、場所が場所だったから観光するのにもキャンプ装備をフル装備で行かないと駄目だったから、もし宿泊施設とか食事処とか完備してくれるとみんな嬉しいだろうね』

 

『需要?いやいや、すっごいあると思うよ?そもそも砂漠でオーロラ見えるなんてこと、多分アビドス以外ではないよ。砂塵対策を強化して、キャンパー以外の一般向けにもツアー整備とかしたら絶対人来るよ。 いや、むしろ私が今回一緒に行きたかったなぁ……あ、もしオーロラ見る機会があったら写真お願いしてもいい?』

 

『オトギちゃんが言うことには私も同意かな。後、私が気になってるのは……アビドスって昔、砂祭りやってたよね?話を聞く限りだと、オアシスの枯れた後の水源の資源調査ってミレニアムも介入してないし、セイント・ネフティスも多分調べてないよね……。もしミレニアムと提携を結ぶなら、それについても提案してみたらどうかな?』

 

 と、新たな意見も含めての回答をもらうことが出来た。特にオアシスの資源調査というのはアビドスとしては重要視すべきものだろうと対策委員会も判断した。そして、ニコからは『シャーレとして意見を言わせてもらえば、ミレニアムとは提携したほうがいいかな。企業より遥かに信用できるし、向こうってリオちゃんも居るし』とも返答された。

 

 

 つまるところ、アビドスの現状に絶望的だったのだが外部からの視点に変えてみたり、見方そのものを変えてみれば下手をすれば宝の山だったのだ。その話を聞いた時、ホシノはなんとも複雑そうな顔をしていたが。

 

 また、ノノミとしても今回出た話については実家。つまり、セイント・ネフティス社には話すつもりはないらしい。彼女としても、もし手を結ぶならミレニアムがいいようで、そもそも今の実家はアビドスで良くは思われておらず、事業参入しようものなら住民から猛反発を食らうのは目に見えているとも話していた。

 

 

 大きな進展があった定例会議の後、流石に色々話しすぎてお腹も空いた、ということでお昼は柴関ラーメンへと行くこととなった。

 

 その時はまだ彼女達は知らなかった。今のアビドスには不穏な影が迫っているということ、そして――既に悪い大人が、別の目的で手を伸ばしているということを。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「へぇ、観光客か。そりゃあいいな!そういったお客さんがうちのラーメンを食べに来てくれれば、こんなにも嬉しいことねえな!」

 

「大将……というよりは、アビドスに残っている地元民としては、観光事業とかはどう思うんですか?」

 

「そりゃ先生、歓迎よ。今の砂塵災害が酷いアビドスに住む連中の多くは、ここが好きで住んでるやつが殆どなんだ。ここで育って、ここで生きてる。このアビドスこそが生まれ故郷の奴としては、外からこのアビドスに興味を持ってくれるってだけで嬉しいもんよ。それによ、時々来るんだよ。アビドスの外からやたらと重装備のキャンパーが、うちのラーメン食べにな」

 

「やっぱりアビドスのオーロラって、大将も知ってるんですか?」

 

「ああ、知ってるさ。あれは本当になんで発生しているのかわからないらしいんだが、俺が生まれるよりずっと昔から。それこそアビドスがキヴォトスいちのマンモス高って言われてた時代よりも前から発生してたらしい。今の時代で知ってる奴らも、当時の口伝とか噂とか、そういうのを聞いて知ってるんじゃねえかな」

 

「そんなに昔から……」

 

「ああ。まあ、そんなこんなで語り継がれているオーロラってのを見に来る奴はちょくちょく居るのは知ってる。前にオーロラを見に来たっていうキャンパーも、うちのラーメン食べて言ってくれてよ。『ラーメンはよく食べるがこんなに旨いラーメンは久しぶりに食べた』なんて褒めてくれるんだぜ、世辞でも嬉しいってもんだ」

 

 実は、この大将を褒めたキャンパーというのは、キャンプをしに来た今では珍しい硬派な食べ物評論家だった。心底大将のラーメンに惚れ込んだその人物は、あえて雑誌や本、SNSなどで柴関ラーメンの存在を明らかにせず、仲間内だけで情報を共有していた。

 

 曰く、『これほどの店をメディアの餌にしたくない』とのこと。だから彼は、真においしいものを愛する仲間内にだけそのおいしさを伝え、その伝えられた仲間達も実は観光ついでにこっそりと食べに来ていた。

 

「他校の学生さんも、随分前だが見たことあるな。あれは……多分ゲヘナじゃねえかな。随分と綺麗な、銀色の髪をしたお嬢さんで、とても礼儀正しかったからよく覚えてるぜ。あの時はそのお連れさんも幸せそうに食ってくれたなぁ。 おっと、いけねぇつい話し込んじまった。それで、今日はどうする?」

 

 慌ててそれぞれが注文を告げていく。今日は定例会議後ということもあって、セリカもバイトの日ではない。折角アビドスにとっての光明が見えたのだ、なのでみんなで沢山食べに行こうという先生の提案の元、現在自治区外に数日間出ているカヤを除いて全員が集まっていた。

 

 

「はむっ……このチャーハン、やっぱりすごくおいしいです……!パラパラで、具も沢山でレンゲが止まりません……!」

 

「ああほらミヤコ、そんなに慌てて食べなくてもいいから……。ほら、口元にご飯粒ついてるわよ」

 

「はっ……つ、ついおいしくて手が止まりませんでした」

 

「いつもはキリッとしてるのを考えると、面白い一面よね」

 

「う……い、言わないで下さいセリカ」

 

 赤面しながらもチャーハンを食べ続けるミヤコを見て、サキ達もそれを見て彼女をからかいはじめる。それを見ていたアヤネも楽しそうに笑っていた。セリカとしても、やはり新しい友人とのこういった一幕はとても楽しいものだと感じていた。 

 

 

 

「カヤも来れたら良かったんだけどね」

 

「そういえば先生、おじさん気がついたらカヤちゃん居なくなってたんだけどどうかしたの?」

 

「ああ、ちょっとD.U.のほうに用事があってね。後、一度シャーレの本部に寄って取ってくるものがあるとか何とか。 ……後、この前のヘルメット団の装備の調査結果」

 

「――なにかわかったの?」

 

 1年生組が横のブース席で楽しそうにしている姿を見ながら微笑ましそうにしている先生。そして、その後。ホシノ達にあることを告げていた。それは、先日撃退したヘルメット団が保有していたと思われる装備についてだった。

 

「ヘルメット団があれだけの装備に主力兵器を持っているのはどう考えてもおかしい。だから、カヤに一部の装備を回収してもらって調べてもらったんだけど、あの装備。製造番号が存在していないものだったんだ」

 

「……それって、つまり。違法に流されたものってことだよね?」

 

「うん、そうなんだ。でも、仮に違法に流されているものだとしてもそれにしては装備が整いすぎている。使用している武器は殆どが最新式のもので、主力兵器も強化装甲仕様だった。仮に流されていたものだと考えても、ちょっとこれはおかしい」

 

 ただの不良が持つには明らかに異常な質の装備なのだ、そして、あれだけ続けてヘルメット団がアビドス高校を攻撃する理由もわからない。

 

「ブラックマーケットを経由して流さされたものなのは間違いないと思う。だから、カヤにはその方面でも調べてもらってる。どうにも、ブラックマーケットに知り合いがいるらしいんだ」

 

「ブラックマーケットの知り合い?うーん……それって、大丈夫な相手なの?あそこって、本当の無法地帯だよ」

 

「なんて言ったかな……そう、灰色兎(アッシュ)って言ったかな。その人に話を聞いて、もし可能であれば協力を頼むつもりだって言ってたかな。 ……あれ、どうしたのみんな?」

 

 灰色兎。その名前を出した瞬間、ホシノ達が驚愕に目を見開いた。キョトンとしているのは先生だけであり、どうしたのかというようにホシノ達3人を見ていた。

 

 

「えっと、どうかした?」

 

「……そっか、先生は外から来た人だから知らないんだ」

 

「ん……仕方ない」

 

 シロコとホシノの言葉にどういうことだ、と思っていると。ノノミが助け舟を出すようにして説明してくれる。

 

灰色兎(アッシュ)、その方は絶刀灰兎(サムライ・アッシュ)とも呼ばれてる方で、言ってしまえば実在する御伽噺の中の存在なんです」

 

「御伽噺って……そんなに凄い人なの?」

 

「はい。私も小さい頃に絵本で読んだことがあるんですが――悪を挫き、弱きを助ける任侠と勧善懲悪を重んじる武人。駆け抜ける姿は音もなく、風もなく。ただあるのは鞘へと帰る刃の音のみ。そんな一節があるくらいで、かのお方の活躍は一種の英雄譚として絵本にもなり、子供にも親しまれています」

 

「おじさんもその絵本は知ってるね。そして、その灰色兎って人物は実在している人物なんだよ、先生」

 

「そんなとんでもない人が実在なんて……でも、それとブラックマーケットに何の関係が?」

 

「それは、その本人が今住んでいるのはブラックマーケットだからだよ。そして、ブラックマーケットの事実上のトップの一人でもある」

 

「なっ……ぶ、ブラックマーケットのトップの1人!?でも、どうしてそんな相手とカヤが知り合いなんだろう」

 

「まあ、カヤちゃんの肩書を考えると知り合いって聞いても不思議じゃないかなあ。彼女だって、今やキヴォトスに知らない人間は殆ど居ない程の、まさに英雄譚の中の存在みたいなものだし。それに、ブラックマーケットのトップの1人って言っても、その灰色兎本人は極めて善性な人物だよ」

 

「そういえば、任侠がどうのって言ってたね」

 

「うん。あくまで噂で真意は不明だけど、ブラックマーケットに流れなければならなかった生徒に何の見返りもなしに衣食住を提供してあげたり、まともな仕事を紹介してあげたり。不良やスケバンみたいな子に寄り添って、話を聞いて理解者としてあろうとしたり。百鬼夜行では神格化されて見られてるんだけど、ブラックマーケットの不良や流れざるを得なかった生徒の多くからは、父親みたいに慕われてるって話だよ」

 

「……とんでもない人だね」

 

「おじさんから見てもとんでもない人だよ。だって……ブラックマーケットが必要悪であることを理解した上で、そこの支配者とも言える存在になって。それでもなお、そんな必要悪に流れざる得なかった生徒に寄り添おうとしてるなんて、とんでもなさすぎる」

 

「そんな相手が、もし協力してくれるなら……今回のヘルメット団の件も、何か掴めそうだね」

 

 

 そんな話をしているうちに、注文していたものを大将が持ってきてくれた。それぞれがそれまでの真剣な空気を霧散させると、待っていましたと言わんばかりに『いただきまーす!』と言って、食べ始めた。

 

 そうして、食事を始めて暫くした後。

 

 ガララッ、と。店の入口が開く音がした。

 

 入ってきたのは気弱そうな、紫色の髪をした一人の少女であり。

 

「あ、あの……ここで一番安いメニューっておいくらでしょうか……?」

 

 

 

 そう告げた。

 




・アビドスのオアシス跡地
水源が枯れてから、資源調査はされていない。また、どうやらオアシスの所有権は『カイザーではない』ようだ。更に、アビドスには点々とカイザー保有の土地ではない土地があるようだ。

・灰色兎
バケモノ。石川五ェ門のごとく銃弾を目にもとまらぬ疾さで斬り伏せ、キヴォトストップレベルでもない限り認識不可能の速度&無音で斬り掛かってくる。持っている刀もただの刀ではないらしい。かつて、カヤと連邦生徒会長に命を救われている。

・ミヤコ
柴関ラーメンで一番好きなラーメンは特製醤油ラーメン。大好きなご飯モノは海老チャーハン。RABBIT小隊は満場一致で海老チャーハンが大好きな模様。

■あとがき
一番安いメニューを求める生徒、一体何者なんだ……。





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