カヤちゃんが征く!   作:無名のカヤ推し

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模擬戦話は全中後編の三話、休日話は二話でお送りの予定です。


幕間:模擬戦、カヤvsホシノ 【前編】

「カヤ先輩とホシノ先輩ってどっちが強いの?」

 

 

 

 とある日の休日。アビドスでの生活に見馴染んできて、RABBIT小隊の面々も何事もない休日を謳歌しながらアビドス高校の部室でのんびりしていると、そんな言葉が放たれた。

 

 

 発端はシロコの何気ない言葉った。本人としても何気ない雑談のつもりだったのだろう。

 この時は、この後あんなことになるとは思いもしなかったのだ。

 

 

「唐突ですね、シロコさん」

 

「そうだよー、シロコちゃん。どうしたの急に?」

 

 当の二人も揃って、それぞれ椅子に座ってノートパソコンで休日なのに防衛室の仕事にハンモックでだらけたような状態になりながらお昼寝モードである。なお、部室に新たに備え付けられた軍用ハンモックはRABBIT小隊の備品だったものだがアビドス高校に譲渡されたものだ。アウトドア用品の販売でも有名なメーカーが軍事用に向けて作った用品で、寝心地も最高な逸品は今やホシノのお気に入りにしてベースキャンプである。

「ん……ふと思っただけ。前にミヤコからカヤ先輩の活躍を沢山聞かされたことがあって、すごく強いんだろうなと思って」

 

 『何話したんですか』とジト目をカヤがミヤコへと視線を投げれば『き、機密は話してません!公にされてる『暴走巨大ロボ鎮圧事件』や『神魔両成敗事件』とかについてです!』と返された。よりにもよって公にされているものの派手にやらかしたのを話されたなと思った。

 

 『暴走巨大ロボ鎮圧事件』は、ミレニアムで起こった事件だった。ある企業が秘密裏に開発していた汎用人型決戦兵器、なお動くだけで装備なし自爆装置付きが暴走。ミレニアム自治区を巨体の暴力で破壊して回るという事態になったのだが、これをカヤがなんとカイテンジャーと共闘して鎮圧。しかも何故かカヤがカイテンジャーのコスチューム、それも金色仕様を着てカイテンゴールドを名乗った挙げ句大暴れした珍事で話題になった。

 

 『神魔両成敗事件』は、トリニティとゲヘナの間に起こった抗争の事件だった。エデン条約を前にして、ピリピリしていた両校の不良学生が些細なことで喧嘩に発展。事態が大きくなり、両陣営合計100名を超える抗争へと発展したのだが、周囲の一般市民や生徒に対する被害が尋常ではなく防衛室が出動。両陣営全員がカヤ一人によって全滅させられた。なお、この事件をきっかけにゲヘナとトリニティの不良の間では多くの不良がカヤを神聖化して見るようになった者も居るとかいないとか。

 

「まあこれでも生徒会としての立場では防衛室の室長名乗ってますからね。それなりには荒事慣れしてないと、有事には対応できませんよ」

 

 巨大兵器を鎮圧したり、大量の暴徒を一人で壊滅させたり、更には機密でシロコには話してないが意思を持った超AIを何度も撃退したり、中には完膚なきまでに破壊した存在が居たり。百鬼夜行で怪しげな儀式によって呼び出された妖力なる力を持つ怪異を『根性が込められただけで何故か雷霆を纏うパンチ』で消滅させたり。他にも色々あるがそれはそれなりなのだろうかと、RABBIT小隊の面々は首を傾げた。恐らく先輩であるFOX小隊もこの話を聞けば首を傾げるだろう。

 

 

 ――『フレス、昔先輩と生徒会長にボコボコにされたんだよね?実際どうなの』

 

 ――『バケモノ バケモノ キガクルッテル アタマオカシイ』

 

 

 当事者である元敵対超AIにモエが小声で聞いてみたら彼女の近くを浮遊している黒い機械鴉から返されたのはそんな言葉だ。やはりそれなりではないのではないのでは?と思った。

 

「最近はデスクワークも多いですし、現場行こうとするとリンに止められることも多かったんですよね……。随分と鈍っているかもしれません。まあホシノさんじゃないですかね?」

 

「いやあ~連邦生徒会最高戦力とも言われるカヤちゃんに褒められるなんておじさん照れるよ~。でもおじさんなんて全然だよ、カヤちゃんには敵わないって」

 

「いえいえ」

 

「いやいや」

 

「――いえいえいえ」

 

「……いやいやいや」

 

 ははは、と何やら不穏な笑い声が室内に響く。いつの間にかカヤはノートパソコンを閉じており、ホシノもハンモックから身体を起こしていた。なお、二人揃って笑顔である。

 

「カヤちゃん頑固ってよく言われない?いいじゃんそっちが強いってことで」

 

「いえいえ私などもう鈍りっぱなしで、ホシノさんのほうが強いですよ」

 

 もしこの場に二人にとっての先輩であるユメが居れば『ひぃん……』と涙目になっていただろう。

 

「……ん。もしかして、私地雷踏んだ?」

 

「シロコ先輩……多分そうだと思います……」

 

 しまった、というような顔をするシロコに『あちゃー……』と呟くアヤネ。二人揃ってニコニコの笑顔で牽制し合っている状況である。先生を頼ろうにも、間が悪く現在野営地のヘリの中でリンと会議中である。

 

「あーもう!じれったい!カヤ先輩もホシノ先輩も、それなら模擬戦でもして白黒つければいいじゃないですか!」

 

 

 そこに火、というよりはガソリンをぶち込んで火をつけたのはセリカだった。彼女はストレートな、真っ直ぐな性格だ。だからこそ、白黒つける手段として模擬戦という手段が出てきたのだろう。

 

 そしてお誂えなことに、今のアビドス高校には模擬戦を行える場所がある。グラウンドを整備して設置しているRABBIT小隊の野営地だ。訓練用にと広場のようなスペースも作ってある。

 

「ふむ、模擬戦ですか。 ……いいですね、セリカさん。採用です」

 

「いいねえ、おじさんもかの防衛室長の実力を見てみたいと思ってたんだよねえ」

 

「いいでしょう、最近デスクワークが多いですから体を動かすのも悪くありません」

 

「おじさんも昼寝したから今は絶好調だよ? ――それに、たまには後輩にいいところ見せないとね」

 

 それぞれ自分の中のなにかに火がついたのか、メラメラと闘志を燃やしている。

 

「折角です。体を動かしたらお腹もすくでしょう。丁度お昼前ですし、負けた方は柴関を全員分奢るというのは?」

 

「いいのそんなこと言っちゃって?おじさんが勝ったらトッピング盛り盛りにしちゃうよ?なんなら餃子や炒飯もつけちゃうよ?」

 

「その言葉、そのままお返ししますよ」

 

 なんだかとんでもないことになってしまった、と部室内の全員が思った。特に、引き金を引いてしまったシロコと火に油を注いでしまったセリカは『どうしようこれ』と呟いていた。

 

 模擬戦は1時間後、それぞれが万全の態勢で行うこととなった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「私が会議してる間にどうしてこんなことに……?」

 

「ん……ごめんなさい先生……」

 

「ごめん先生……」

 

「いや、シロコとセリカが謝ることじゃないし別にやるなと言っているわけじゃないんだけどね。それじゃ、ルールを説明するよ」

 

 ルールは、武器はそれぞれ普段使用しているものを使用しても構わず、相手が行動不能となるダメージを負うか、サレンダーした時点で決着。また、一度手放した武器は使用不可。相手の完全武装解除でも勝利となる。 

 

「そういえば、シャーレに所属してからカヤ先輩が戦うのって初めてな気がしますね」

 

「まあ、先輩が出たら全部終わっちゃうもんな……。今回のアビドスへの派遣だって、FOX小隊の先輩たちとカヤ先輩が私達に経験を積ませる一環という意味合いでも決めたらしいしな」

 

 そんな話をしているのはミヤコとサキだ。モエとミユもうんうん、と頷いているのだがそれに対して疑問を投げかけたのはアビドスメンバーだった。

 

「あの、ミヤコちゃん達。カヤ先輩がすごい強いっていうのはよく耳にするんだけど……実際どんな感じなの?ニュースとかの情報しか知らなくて」

 

「実際の戦いは模擬戦を見てもらうとして……そうですね。カヤ先輩は、その実力から連邦生徒会からある制約を受けているんですよ」

 

「制約、ですか?」

 

「『何れかの自治区の学園に所属してはならない』というものです。各自治区、特にミレニアム・トリニティ・ゲヘナにはこのキヴォトスにおいても最高峰の実力を持った生徒が居ると言われています。上位の自治区のバランスは、そういった戦力によって均衡が保たれているという部分もあります。……ですが、カヤ先輩は何処かの自治区に所属した時点でそれを崩壊させます」

 

 ミヤコから返された言葉にアヤネは唖然とした。そもそも、学園に所属するのを禁止される生徒が居るなど信じがたいことだった。それだけではなく、たった一人の戦力で自治区間のパワーバランスを崩壊させるなど、到底信じられない。

 

「私も直接お会いしたことはありませんが、連邦生徒会長は相当な実力者だったそうです。というよりは、なんでも完璧に出来る方だったそうです。そんな生徒会長が、有事の際に現場に供として連れて行っていたのはカヤ先輩だけだったそうです。もっとも、二人揃って色々やんちゃもしていたらしいですが」

 

「カヤ先輩だけって……ど、どうして?だって連邦生徒会には戦力だってある。その権限で、当時ならSRTも動かせたはず」

 

「――連邦生徒会長についていけるのが、先輩だけだったからですよ」

 

 思わずそれを聞いていたアビドス組はぞっとした。現在失踪中の連邦生徒会長がなんでもできてしまうスーパーマン、つまるところ超人だったというのは有名だ。そんな彼女がただ一人共としたということは、つまりそれは連邦生徒会長の足を引っ張らない程の実力の持ち主で、かつ絶対の信頼を置いていたということだ。

 

「私が知る限りですが、組手や模擬戦という限定された条件で先輩と戦ってまともにやりあえそうなのは、FOX小隊の隊長であるユキノ先輩か、ミレニアムのネル先輩、それからゲヘナのヒナ先輩……といったところでしょうか。トリニティについてはちょっとわからないですね、私達はあまり向こうとは交友がないのとカヤ先輩がなんかトリニティを少し避けてるみたいなので」

 

「全員超がつくほどの実力者じゃないですか!?もしかしてミヤコちゃん、その人達と面識が……?」

 

「ええと、まあ。あります。ユキノ先輩は直属の上司というか、私達にとってFOX小隊は師のようなものなので。ネル先輩のところには昔RABBIT小隊がブートキャンプという名目で送られたことがあって、実は私達全員ネル先輩一人にボコボコにやられました。ヒナ先輩はよく連邦生徒会本部には報告に来るのでお会いする機会も多くて。一度お相手してもらったことがありますが、やっぱり私達小隊全員でも息すら乱すことは出来ませんでした」

 

 

 『ネル先輩の時は本当辛かったですね』

 『だって私達ボコボコにされた後そのまま地獄のブートキャンプだもんな』

 『ヒ、ヒナ先輩も……やばかったです……』

 『私ドローンモニターで見てたけど、ミユの狙撃全部回避するってあれおかしいよ……時々片手間感覚で羽で弾いてたし……』

 

 

 当時のことを思い出すように、虚ろな目でそんな話をすRABBIT小隊の面々。何やら思い出したくないことを思い出させたようで、アヤネとしては申し訳ない気持ちになったが今はそれどころではない。つまり、不知火カヤとは少なくとも連邦生徒会長クラスの実力者であり、現在のキヴォトスにおいてもトップレベルの実力者クラスと見て間違いはないということだ。

 

 そんな相手と、いつものんびりとマイペースな先輩であるホシノが模擬戦だとしても戦う。大丈夫だろうか、という思いとどうなるのだろうかという思い。そんな気持ちでアヤネはそわそわとしていた。

 

 

 ただ。ノノミだけは真剣な面持ちで、目前の訓練用スペースを眺めていた。何故ならば。彼女は僅かながらに知っているからだ、かつての自分達の先輩を。今の先輩と比べると、別人と言っていいほどだった当時の先輩をだ。

 




 幕間ついでに生徒数人の備考。

■狐坂ワカモ 
 とある『神秘』を保有する生徒で元百鬼夜行連合学院所属。神秘に対する能力も覚醒している。現在は自主退学済みで、紆余曲折あって自治区上の所属はD.U地区連邦生徒会防衛室。現在の配備先はシャーレになっている。実力的にはユキノには及ばないがキヴォトス内では最上位レベル。シャーレ所属にあたり覚悟ガンギマリになってからは更に強くなった。ユキノを【戦闘:EX指揮:S統率:A知略:A神秘:EX】とするなら、覚醒ワカモは【戦闘:S指揮:S統率:A知略:S神秘:EX】くらい。武のユキノ、知のワカモという二大巨頭。統率と指揮、知力に優れており工作や計略の適正も高い。大局的に見た場合の影響力では、キヴォトス内最強クラスの影響力を持つ生徒。

 割と面倒見が良く、ユキノ程ではないが後輩に甘い。百鬼夜行についてはいい感情は持っていないようで、カヤには『あんな自治区、先生や上司であるあなたの指示でない限り二度と関わりたくありませんね』と吐き捨てるほど。ただ、どうやら当時可愛がっていた一人称が少し変わっている後輩が居たらしい。

■早瀬ユウカ
 ミレニアムの生徒であり、先生がキヴォトスにやってきた直後の騒動の後すぐシャーレを手伝ってくれると言い、そのまま所属した生徒。所属順で言えば諸々の手続きや政治的なことがあったカヤ達よりも早く、実は部員第一号。同時に、先生やカヤでさえ頭の上がらないシャーレの財政を管理している存在でもある。少しでもおかしな明細がシャーレに流れてきたら即座に先生やカヤにメールが行く。

■七度ユキノ
 現状、連邦生徒会が保有する戦力でカヤと同等クラスの最高戦力。最高峰の『神秘』を保有しており、能力覚醒済み。SRTが危険視された理由の一つに彼女の存在があるほど。プライベートでは後輩にとても甘く、謂わば後輩を甘やかすのが趣味。金銭の主な使い道は後輩に対してである。

 現在の立場は、休校措置という扱いになったSRTにおける生徒会長のようなもの。RABBIT小隊やFOX小隊以外のSRTの生徒は、それぞれ休校に伴う出向という名目でヴァルキューレや連邦生徒会の各部署での業務を手伝っていたり、G.U地区の警備を行っている他、設備自体は閉鎖されていないためSRTの学舎で自習という扱いで勉学や訓練に励んでいる。

■美甘ネル
 一度RABBIT小隊を教導した。RABBIT小隊はネルとの模擬戦以外ではアスナとの模擬戦でも負けている。曰く、アスナに対してあらゆる攻撃があたらない、攻撃が自分から避けていっていると錯覚する、未来が見えているのではないのかと思うとのこと。なお、本世界線でのアスナは最大の弱点であり致命的な問題をカヤの根回しで克服済み。たまに疲れて一気に眠くなるくらいでそれ以外の問題は起きていない。
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