カヤちゃんが征く!   作:無名のカヤ推し

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幕間:模擬戦、カヤvsホシノ 【中編】

「これは面白いですね、奇しくも同じ髪型です」

 

「んー、こればかりはどうしようか悩んだんだけどねえ。でもいつものだと、ちょっと動きづらいし。被ってるけどごめんね?」

 

 暫くして、二人が訓練スペースに登場した。

 

 先に現れたのはカヤだ。最早シャーレでは馴染となった、FOX小隊の制服に桃色のポニーテール。そして、両腰のホルスターにはシャーレに加入してからまだ一度も抜かれていない、彼女専用に連邦生徒会長が送った二丁の大口径拳、天をも貫くという意を込められたSagittarius(サジタリウス)という銃。

 

 銀色の2丁拳銃は常軌を逸していた。全長は320mm、グリップには連邦生徒会のエンブレムが刻まれている。まず普通の生徒には扱えない代物であるのだが、それを彼女は2丁持っている。つまり、片手でそれぞれ運用するということだろう。

 

 次に現れたのは、ホシノだった。だが、その姿にその場全ての人間が。特に、アビドスのメンバー達は目を見開いて驚いていた。

 いつも彼女が持っているタワーシールドに、愛銃である『Eye of Horus』を片手に。腰のホルスターには一丁の拳銃が収められている。そして、髪型もポニーテールにして纏め上げられており、普段の気の抜けたような、だらけた姿はそこにはない。昼行灯としての姿は一切なく、その立ち振舞だけで本気であることが伺えた。

 

 ホシノとしては、本来ならば防弾ジャケットなども着用してのフル装備なのだが今回はあえて着てこなかった。その理由は、カヤ相手に極端な重装備は不利になるだろうと考えたからだ。だからこそ今回は最低限のもの、プロテクターだけを装備してジャケットは着てこなかった。

 

 対峙する二人は、よく似ていた。背格好も髪型も。それこそ、一見すれば姉妹にも見えるような構図だ。会話だって戦闘前のものとは思えない和やかなものだが、二人からは観客である者達から見ても本気が見て取れるオーラのようなものが感じ取れた。

 

「いいんですか?そのプロテクターからして、本来ならもっと重武装の筈なのでは?」

 

「うへー……カヤちゃんにはバレちゃうよねえ。うん、そうだよ。でも敢えてできるだけ軽くした」

 

「ほう?」

 

「――フル武装で行くと、多分"私"は不利になる。そうしてカヤちゃんとの戦いは、そんな不利な要素があるだけで致命傷に繋がる」

 

 ホシノはカヤの戦う姿を見たことはない。だが、アビドスに来てからの彼女を観察して推測した。どのような戦い方なのか、どういったスタイルなのかを。公になっている彼女の解決した事件などについての情報も確認した。そこから得られる情報を全て戦い方に結びつけて考えた。

 

 そうして、行き着いた答えは――機動力と攻撃力に特化した軽量型だ。

 

 現在両手に持つ二丁拳銃はアビドスに来た頃から確認していた。すっぽりと覆うような、黒いホルスターに殆ど見えないように収納されていて、それが抜かれたことは今回までに一度もなかった。だが、その二丁拳銃と数々の解決してきた事件、そうして普段の装備から軽量型と結論付けたのだ。

 

 

「正直に言うとさ、今震えが止まらないんだよ。きっとこれが、武者震いってやつなんだろうね」

 

 

 不知火カヤ。その名を知らぬ者はこのキヴォトスには居ない。連邦生徒会最高戦力、ブラックマーケットの悪ガキ、モモフレンズマニア。巷ではいろいろと言われているものの、誰もが口にすることがある。もっとも、前者は本人にとってはあまりよく思っていない言葉のようだが。

 

 

 ――連邦生徒会長の認めた後継者

 ――『悪の敵』にしてキヴォトスの守護者

 

 

 そんな相手と自分が今対峙しているのだ。後輩達には話したことはないが、自分も一年の頃は暴れに暴れていた。そんな頃でも、不知火カヤの名前はキヴォトスに轟いていた。

 

 

 思ってしまった。夢想してしまった。

 もし、あの時。今のように彼女が力を貸してくれていればと。

 

 

「きっと全力でやったほうが、この後のラーメンが美味しくなると思うんだよね。 ――だから、手加減はしないよ」

 

「ええ、望むところです」 

 

 先生の主導のもと、カウントダウンが開始される。

 アビドス組、RABBIT小隊。それぞれが見守る中でカウントがゼロとなり。

 

 決戦が開始された。

 

 

 

     ◆     ◆     ◆

 

 

 最初に動いたのはホシノだった。それも、最初の一手から奇策とも言っていい手段を取ったのだ。

 

 タワーシールドを前面に。そのまま前へと加速してシールドバッシュの形でカヤへと距離を詰めた。同時、それに対応するようにカヤがとてつもない発砲音と共に両手の大口径拳銃を発砲した。

 

「うへぇッ……ちょっと洒落にならない威力だねぇ……!」

 

 通常の銃や兵器程度であれば、盾を構えているホシノの動きを止めることなど出来ない。そんなもの効かないとでも言うようにいつもの彼女ならば相手へと加速し、鎮圧してしまうからだ。だが、今回は違った。盾の後ろで悪態をつきながら、その加速を大幅に緩めた。

 

 威力が高すぎるのだ。タワーシールド越しに伝わる衝撃は手のプロテクターを貫通してとてつもない衝撃を伝えてきており、全力で踏ん張り耐え抜かなければホシノでさえ後退を余儀なくされるほどの威力。それが連射されているのだ。

 

 

 しかし、それは無限には続かない。カヤの持つのは拳銃。つまり、リロードタイミングを必要とする。

 

 距離を取るように走り、遠ざかる音とガシャン、という何かが外れる音がした。ここまでホシノが受けている弾数は合計で16発、そこから恐らく相手の持つ大口径拳銃はワンマガジン8発だと推測した。大きな情報を得ると同時、容赦なくホシノは前方へと加速した。盾を構えたまま、覗き撃ちの形で『Eye of Horus』を構え、いつでも撃てる状態にする。

 

 

「なるほど、そう来ましたか……!」

 

 

 単純な機動力だけで言えば、カヤのほうが上だろう。本人のバトルスタイルや身軽さ、装備の軽さ。その点においてはホシノと比べると圧倒的に有利だ。カヤは機動力に物を言わせていわば引き撃ちをしながらホシノを消耗させればいい。だが、今回はそれができない。

 

 今回模擬戦に使用しているのは、RABBIT小隊がアビドス高校のグラウンドに構築した野営地の訓練スペースである。広さはそこそこにあるとはいえど、円形のそのスペースの外縁には壁があり、しかも障害物らしいものは存在していない。つまり、勝負の環境はカヤにとっては不利なのである。

 

 カヤの戦い方は、高機動力を軸として射撃とガン=カタと呼ばれる銃と格闘術を織り交ぜた技術による近接制圧がメインだ。対してホシノは、バリスティックシールドとショットガンによる重装型の戦い方。しかも、本人がその気になれば盾を仕舞って機動力重視の戦い方にも変えられる。

 

 こうなってくると、不利なのはカヤだ。現在カヤは引き撃ちを強要されながら、外縁の壁へと追い込まれている。

 

「流石に、追い込みを抜け出させてくれはくれませんか」

 

「そうすると私がまた不利になるからね。逃さないよ」

 

 カヤからの、普通の生徒ならば直撃すれば身体が吹き飛ばされるほどの威力を持つマグナム弾による射撃。それを踏ん張り、バリスティックシールドで防ぎながらも追い込んでいくホシノ。そうして、同時に無作為の牽制射撃により、左右どちらかからの方向から追い込みを抜け出すのを防いでいる。

 

「うへぇ……やっと追い込んだよ……!」

 

 そうして追い込まれる。前にはホシノ、後ろには外縁の壁。左右どちらかに抜けようとしてもホシノが完全にガードしている上に、円形状の外縁でどちらわ動こうが再度ホシノが動くほうが早い。

 

 しかしホシノもノーリスクでここまで追い込んだわけではない。若干だが息は切れているし、バリスティックシールドを持つ左手は痺れていて動作に支障が出ている。カヤからの超威力のマグナム弾の連射、本来まともに耐えられるはずがないそれを無理矢理踏ん張って耐えたのだ。そして、カヤとしてもそれは予想外だった。

 

「正直予想外でした。これ、普通の生徒なら一発食らうだけで身体が吹っ飛んで気絶するんですが」

 

「そのトンデモ弾頭を涼しい顔で平然と連射してるカヤちゃんがおかしいんじゃないかなぁ……」

 

「むっ、失礼ですね。私はこれでも年頃の学生ですよ?人を人外みたいに言わないでください」

 

「人外なんだよねぇ……!」

 

 追い込んでいるとは言え、疲労を見せているのはホシノだ。

 

「――ならば、正面突破と行きましょう」

 

 逃げ場などもうない、というように距離僅かに数メートルという状態でホシノはショットガンを発射。後ろにも左右にも逃げられない、そんな状況でカヤもまた動いた。

 

 前に出たのだ。

 

「なっ……」

 

「盾、お借りしますね」

 

 恐らくカヤが動いたのは、ホシノの発射と同時。だが彼女は、まるで雷霆のような速度で急接近し一気にホシノへと肉薄した。そして、ホシノか構えていた大盾を蹴って空中へと跳んだのだ。

 

 ホシノの不運は、覗き撃ちの状態で大盾を斜めに少し傾けていたことだ。結果として、それをカヤに足場として利用された。そのまま空中で身を翻したカヤは、二丁の拳銃をホシノへと向けた。頭上、空中からの直撃コース。まともに入れば、ホシノといえど隙を晒すことになる。そうなればそのまま攻勢を掛けられて詰みだ。

 

 しかし、そうはならなかった。

 まだ終わらない、というようにホシノもまた反撃に出た。

 

 それは、彼女からすると本能的なもの。反射だったのかもしれない。

 彼女は、刹那の間にカヤが確かに空中で銃口をこちらに向けたのを見た瞬間。

 

 

 持っていた大盾をなりふり構わずカヤへと投げつけたのだ。

 

 

「――貸してあげたよ?カヤちゃん」

 

「人に物を貸すのに投げつけるのは失礼じゃないですかね!?いや今の本当危なかったですよ!?」

 

 直撃していればいくらヘイロー持ちといえど骨への損傷は確定。左手が痺れ、動きに支障が出ているとはいえホシノが全力で投げたことからそれ以上もありえたかもしれないそれをカヤは瞬間的に照準を投げられたそれへと変更、銃撃を以て迎撃することで遠く離れた側の外縁方向へと弾き飛ばした。

 

 互いに軽口を叩き合っているが、カヤとしては今のはかなりヒヤリとした。まさか、あれだけ大きな大盾を投げてくるとは思わなかった。しかも、それを行うということはアドバンテージを捨てるということにほかならないのだ。

 

 この模擬戦において、開始前に先生からルールの説明が行われた。その中には、『一度手や身体から離れてしまった装備を再度拾って使用禁止』というものがあった。つまるところ、相手の武装を全て解除してしまえば勝ちとも取れる。

 

 互いの装備的にホシノの大盾というのはかなりアドバンテージのある武装だったはずだ。本人のスペックとあわさり通常なら防御不可能の弾頭を防いでしまうほどの頑丈さと堅牢さ。最初接敵した時。カヤはそれが最も厄介だと思うと同時に付け入る隙だとも判断していた。だからこそ対応されたものの、空中を取るという奇策に出た。

 

 そのアドバンテージを、ホシノは躊躇なく捨てた。もし、ここで躊躇していたならばこの時点でカヤに攻勢を許し、敗北は濃厚だった。

 

 

「……読み切られてましたか」

 

「直感、だけどね。嫌な想定ってのはついついしちゃうもんだよ。 ……昔嫌なことがあるとどうしても、ね」

 

「なるほど。ですが、大きなアドバンテージを失いましたね」

 

「まあ、そうだね。でもこうも取れるよ。軽くなって動きやすくなった、ってね!」

 

 再び仕掛けたのはホシノだ。ホルスターから拳銃を引き抜くと、それを盾を持っていた左手に持ち、右手にはショットガン。互いに両手に銃を持った軽量型という状況となり、彼女が仕掛けたのは近接戦闘だ。

 

「いい近接戦闘技術です。それにその反射神経、凄まじいですね。この距離で射撃を回避されるとは思ってませんでしたよ、っと!」

 

「流石にもう盾はないから直撃貰うと詰むんだよねぇそれ……!っああもう、鬱陶しい!流石に取らせてくれないか!」

 

 模擬戦のエリア外で見ている面々は言葉を失っていた。眼の前で繰り広げられているのは、自分達の目では追えないほど早く、激しい近接戦闘だった。カヤは口元は笑っているものの普段糸目の目は開いており本気状態、対してホシノもシロコ達の普段から知る先輩としてのホシノの姿は何処にもなく鋭い視線で目前の相手。カヤを捉え続けていた。

 

 まるで踊るような応酬だった。カヤがホシノを地面へと投げ飛ばし、追撃しようとすればホシノがカヤの足を狙い体制を崩す。銃のグリップを鈍器のようにして打撃されれば、それを無理矢理耐えながらホシノはカヤの胴体を蹴り飛ばす。

 

 殴り、蹴り、誘い、誘われ。

 互いに残った武器。銃を相手の隙へと撃ち込み、だがそれをどちらも凌いで再び探り合う。

 

「随分楽しそうだね、カヤちゃん」

 

「ええ、とても。まさか私とここまで戦えるとは予想外でした。多分ユキノさん以来ですね」

 

「ははっ……かのFOX小隊の部隊長にして、『審判者』とも言われる人と同じ扱いとは光栄だ」

 

 他愛のない会話。そんなことをしているが、二人は激しい近接戦の応酬の最中である。どちらも一瞬油断すれば一気に相手に攻めの口実を与え、それが自らの敗北へと繋がる。交わされる攻撃は全てが達人、プロの域とも言えるもので既に観客としてみている先生たちは何が起こっているかさえ把握できない。

 

「素晴らしい、素晴らしいですね……!最近ホシノさんほどに優秀な人材を一人捕まえましたが、ホシノさんもまた素晴らしい!どうです?防衛室に来ません?万年人材不足なんですよね、ウチ」

 

「カヤちゃんにそこまで評価してもらえるとは私も光栄だねぇ……!でもごめんね、私は ――今はアビドス高校の小鳥遊ホシノなんだ」

 

「……そうですか。いや、そうなのでしょうね」

 

 返された言葉、同時に何かを懐かしむような表情を見せたカヤに対してホシノは疑問を抱く。

 まるでそれは、アビドスを知っているかのようなものだったのだから。

 

「ま、すぐにとは言いませんよ。色々上手く行って、アビドスという場所を未来につなげた時に。そうですね、卒業後にでも勤めに来てくださいよ。きっと私、その頃でも防衛室に関わって働いていると思うので」

 

「カヤちゃんはなんというかずっと社畜してそうだよね……昇進を程よく蹴って現場駆け回ってるタイプだ……」

 

「よくわかってるじゃないですか、いやあ面倒なことは信頼できるリンに任せて現場に行くのは最高ですね!」

 

「よく怒られてるって言うけどそういうスタンスだからいつも怒られてるんじゃないかなあ!?」 

 

 

 傍から見れば、楽しそうに見えた。

 何故ならば。これだけの激戦を繰り広げてなお、二人は笑っているのだから。

 

 互いに愉しそうに。だが、明確に相手を打倒するために一手を繰り出してそれに対して応酬している。至近距離ではほぼ回避不可能のカヤの銃撃をただ直感で避け続けるホシノ。その応酬として返されるショットガンやハンドガンに体術を組み合わせた連続攻撃を捌くカヤ。どちらも規格外だ、一瞬の油断や僅かなミスが敗北へと繋がる極限の戦い。

 

 

 だが。強いて言うならば。

 勝敗を分けたのは、些細な偶然だったのかもしれない。

 

 

 

「ッ……しまっ」

 

 しまった。そう思った時には遅かった。

 

 近接戦闘での技量、相手を無力化・制圧するための技巧という点では二人の技術は拮抗していた。しかし、卓越した者同士の戦いでホシノはたったひとつ不利な点を抱えていた。それは、左手。ハンドガンを持っている手の痺れと違和感だ。

 

 ホシノにとっての想定外、それは、カヤの持つ武器の威力だ。急遽決まった模擬戦で情報が一切なかったというのもある。だが、そもそもの話としてカヤはアビドスに来てから一度たりとも自分の武器を抜いていない。いくら資料として戦闘能力の情報が残っているとはいえ、それは所詮情報媒体を通してのものだ。自らの目でみたものほどの信用性はない。

 

 そもそも、彼女の持つ二丁の規格外の拳銃については情報がほとんどない。彼女が制圧した現場での戦闘風景など情報として出回るはずもなく、ホシノにとっては全くの情報なしの状況での戦闘となった。

 

 並大抵の攻撃ならば受け切れる自信はあった。しかし、それを遥かに上回るほどにカヤの持つ武器の威力は高かった。大盾でなんとか防いでも、その衝撃がダイレクトに腕へとダメージを与えてくるなど想定していなかった。

 

 その結果として、ホシノの左腕は今は万全の状態ではなかった。痺れと痛み、違和感。明らかに反応も落ちている。それに本人も気がついていたからこそ、早めに勝負をつけたかった。アドバンテージである大盾を投げ捨てたのも、カヤ相手ではこれ以上は不味いと判断したからだ。

 

 

 

「少し痛いですよ」

 

「がっ……あぁぁぁぁあ!」

 

 

 激痛。それは、自身の左腕からくるものだと理解する。

 

 その痛みの中で理解する。完全にゼロレンジまで入られた。そして、左手の違和感をカヤが見逃すはずはなく。打撃武器としても使用している彼女の拳銃、それによりプロテクター越しに肘の関節を殴打された後、腕の関節を外されて体勢を崩された。そうして。地面へと押さえつけられる状態となり、頭の後ろに感じたのは――冷たい、銃口の感触だった。

 

 

「相手の無力化の時点で決着、そういうルールでしたね。この状況から、返す手段はありますか?」

 

「ッ……いたた。 ――残念だけどない、かな」

 

 

 瞬時に状況を確認する。激痛で一瞬だが意識が途切れていたとはいえ、ほんの僅かな時間だったはずだ。しかし、冷静に確認すれば左手に持っていたハンドガンも。そして、『Eye of Horus』も遠くへと弾き飛ばされていた。

 

 模擬戦の勝敗条件のひとつ。相手の完全武装解除、これも達成されている。加えて無力化による勝利。こちらも同様だ。

 

 

 

「……私の負けだよ、カヤちゃん。やっぱり、強いねぇ」

 

 

 同時に思うのは、圧倒的な強さだ。恐らくだが相手にはまだ余力がある。それに、今回のような制限付きの模擬戦でなければどうなっていたかもわからない。強い、あまりにも強いのだ。

 

 

 また、思ってしまった。

 あの時、彼女がもし来てくれれば――あの時の悲劇は回避できたのだろうか、と。

 

 




■カヤの武装
 銘は『Sagittarius(サジタリウス)』。連邦生徒会長からカヤに送られた、ワンオフの武器。平常時でも454カスールカスタムオートマチックみたいな銃を二丁ぶっ放しながらガン=カタしてヤンマーニしてくるのがカヤちゃん。神秘開放で某閣下の『まだだ!』が発動する。

 特殊な大口径マグナム弾を使用し、並大抵の生徒であればまともに一撃貰うだけで身体が吹き飛ばされるほどの威力を持つ。防御能力が高めのホシノですら全力で防ぐのがなんとかというレベルのため、他のキヴォトストップレベルの実力者であっても直撃すればただでは済まないというトンデモ武器。更に、この武器はカヤの全力でる神秘の発動にも耐え、神秘発動時の『神秘を武器として行使するための触媒』としての性能も持っている。

 なお、特殊な工程を挟むため弾薬はカヤ本人にしか作れない。制作コストは経費で落としているがよくリンに『弾薬費使いすぎです』と怒られている。

■カヤとホシノの技量差
 神秘や特殊能力なしの純粋に技術だけなら、本気モードの状態で二人の技量差は殆どない。強いて言うならカヤは速度と攻撃力、ホシノは防御力と攻撃力に重点を置いている差はあるものの、単純な殴り合いならそこまで技量差はない。技量という点でカヤとやりあえるのは、ホシノ以外だとユキノ、ネル、ヒナ、ツルギといったキヴォトストップレベルの人材くらいである。実はこのメンバーで構成されるグループチャットが存在しており、日頃の業務の愚痴を各々零していたり激務を乗り切るための秘策、それぞれの学校の雑談などを話している。ホシノもここに放り込まれるしなんなら各自地区とのコネクションもできる。

 今回の模擬戦において情報という観点で不利だったのはホシノで、その点がある意味で勝敗を分けた。左手が万全の状態でかつカヤの武器の威力を把握していれば別の戦い方や装備のアセンブルもあった。その場合ホシノが完全に防御主体のカウンターに回り、カヤが攻めあぐねる展開となり拮抗する。最終的に先生の時間切れ宣言で引き分けになっていた。

■カヤちゃんの人材マニア発動
 本人がホシノの本気を見て、つい勧誘の言葉を投げてしまった。実はこの日の夜、私室で『アビドスの状況やホシノさんの昔のことを知っていて、あんなことを言うべきではなかった』と割と反省していた。ホシノは別に気にしていないが、カヤとしては軽率だったと割と本気で反省していた。

 なお、勧誘の意思は本気。防衛室は万年人材不足、次期防衛室長としてリリィがほぼ内定しているものの特に最前線に向かう人員はとにかく足りていない。カヤも卒業後は引き続き連邦生徒会関係で仕事を続けるつもりだが、間違いなく未来でも人材は足りない。なのでアビドスの現状がいい方向に軌道に乗って、ホシノが卒業したら真面目に勤めに来て欲しいと思っている。なお、ホシノもアビドスの諸々が解決されて落ち着いた状況ならスカウトを受ける。

■ホシノの本気を見たアビドスの面々。
 ノノミ以外は言葉を失ったし、あれは本当にホシノ先輩なのかと思った。ノノミは実は過去、シロコが入学前にある一件で誘拐されてホシノのガチギレ本気モードを見たことがある。ただ、今回の模擬戦はその時以上のものだと思ったという。

■リンちゃん
『またカヤですか!?今度は何をしたんですか彼女は!もう大抵のことでは驚きませんよ!?』

 苦労人。しかしカヤとの付き合いは連邦生徒会長を除けば最も深く長く、そして彼女のことを最も理解している。だからこそ、心の奥底では彼女を縛るものなど不要だと考えている。そう考えているためか、現在の代行としての力で色々とサポートをしていたりする。事実、カヤやユキノ、ミヤコ達のシャーレ出向はリンの手腕なしでは実現しないところがあった。カヤの理解者にして最大の後援者。

 それはそれとして、現場で色々やらかしまくる彼女によってよく胃にダメージを受けている。『どうして連邦生徒会本部に呼ばれたかわかりますね?』と満面の笑顔でお説教することもよくある。

■あとがき

 幕間で初めて戦闘らしい戦闘をした主人公が居るらしい。

 模擬戦ホシノは臨戦ホシノですが、一部の装備を不利と判断して外していました。事前にカヤの情報があればフル装備臨戦で戦っていた。完全に防衛に回ればホシノならカヤの猛攻を防げなくはないが、かなりキツいし持久戦に持ち込まれると限界を迎える。余談ですが、かなり先の話では暴走したテラー状態のホシノに対してクロコと一緒にカヤもそれ相応の神秘で対応することになる。

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