カヤちゃんが征く!   作:無名のカヤ推し

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今年も拙作をお読み頂きありがとうございました。
今後とも楽しんでいただければ嬉しい限りです。
それでは、皆様よいお年をお過ごしください。


Episode19:ん……政治って難しいね

 色々大きな話はあったものの、灰色兎の邸宅を後にして一行はブラックマーケットでの情報収集を行っていた。

 ホシノが受けた提案については、ネフティスの関与については伏せられたがアビドスのメンバーへと説明された。結果、ミレニアムとの提携。そして一般事業のための生徒と斡旋、そして借金の肩代わりについても説明がなされ、最終的にアビドスの面々からは理解を得ることが出来た。

 

 状況は、明らかにアビドスにとってはいい方向へと傾こうとしていた。それだけではない、もし全てが上手く行けばアビドス高校も今後、他の自治区同様一般的な学区として成立することが可能になる。

 

 アビドス高校は、ホシノ達が気がついていないだけで計り知れない需要がある。ゲヘナほど無秩序ではなく、トリニティのように陰湿さがあるわけでもない。ミレニアムのようにガチガチの学術学区というわけでもなく。いわば、『普通の学区』なのだ。アビドス高校のメンバーは仲間意識が強く、手を取り合う絆を大切にしている。同時、それぞれの自主性や個性を受け入れることを是としている。それはひとつの青春そのものであり、ありふれた青春がある場所なのだ。それを見れば、キヴォトス基準であるが何気ないものに見えてただ普通の学生としての在り方を望む生徒には、需要はとても高いのだ。

 

 

「私、ブラックマーケットってものすごく治安が悪いイメージだったんだけど……割りとしっかりしてる場所なのね」

 

「ん……セリカ、私もそれは思った。お店にしても路上の露店にしても普通に商売してるし、確かに落書きがあったりするけど道路とかも結構きれいだし整備もされてる」

 

 シロコとセリカがそんなことを話しているが、それは初めてブラックマーケットに来たホシノやノノミ、アヤネも同様の意見だった。話に聞くブラックマーケットとは、無法地帯でありとても恐ろしい場所というイメージだったのだが実際はどうだろうか。確かに、今歩いているのはメインストリートのひとつということもあるのだろうが、整備も行き届いており見渡してもそこら中でいざこざが起こっているわけでもない。

 

 活気だってある。歩いてみれば、ハンドメイドのアクセサリーのようなものを売っていたり、何やら摩訶不思議な格好をした戦隊モノのBDを売っていたりする露店では店主と店先を見ている生徒が親しげに話していたりしている。なお、先生はとある露店で特撮系のBDやプラモデルなど、ホビー系が並んでいる露店を見かけてふらふらと足を向かわせていた。

 何をしているのかと思い慌ててアビドスの面々やミヤコ達が追いかけようとすれば、その先生に追従するようにしてカヤも動いていた。結果、二人揃って目を輝かせて露店の前に立ち止まり、暫く店主と話しながら入り浸り、挙句の果てに二人揃ってポケットマネーから大量の品物を購入すると言った有り様だった。確実に後日、ポケットマネーと言えどユウカに怒られるのは明白だった。なお、二人はそれでも反省していない。

 

 なんとも言えない表情をしていた先生とカヤ以外の面々だが、決して収穫がなかったわけではない。買い物ついでに二人は店主に聞き込みをしていた。

 

『いらっしゃい!希少な特撮BDに限定プラモデル、他にも色々揃ってるよ! ――おや?カヤの嬢ちゃんじゃないか!っと、ウチは真っ当な商いですぜ?連邦生徒会で捕まるようなものは何もないぜ?』

 

『お久しぶりですね、実はちょっと聞きたいことが――勿論、タダでとはいいませんよ』

 

 などと言葉巧みに、買い物ついでに情報を聞き込みしていた。

 

 カヤと先生が聞いたのは、最近流通している違法な武器のことは勿論だが、ブラックマーケットの最近の動向や住民から見て些細なことでもおかしいと感じたこと、その他にもこのブラックマーケットという場所に住んでいなければわからないという情報だった。

 

 結果、妙なことが幾つか判明した。

 

 まず、最近マーケットガード。それも、カイザーコーポレーション傘下のガードの配置数が増えているということ。加えて、そのガードが俗に言うヤのつく組織との抗争なども増えているという。また、ヘイローを持つ生徒に対しても『怪しげなバイト』と称して、そのカイザー傘下の人間が運び屋のようなことをやらせる違法バイトも増えたという。

 

 まだ明確な証拠はない。だが、この時点でほぼ確定でカイザーは黒だ。アビドスに武装した戦力を差し向け、便利屋に襲うように依頼したのは全てカイザー。手がかりを掴むにつれてアビドスメンバーは冷静さを失いそうになっていたが、それを比較的落ち着いているホシノが宥めるという状況になっていた。

 

 

 そうして、現在は一旦休息も兼ねてマーケット内を歩きながら露店を周り、各々興味のある店を見ていた。

 

 

「まあぶっちゃけますけど、ブラックマーケットって半ば連邦生徒会公認なんですよね。公には許可してないので、グレーという扱いではあるんですけど」

 

「ん……どういうこと?カヤ先輩」

 

「そうですね、必要悪って奴ですよ。ブラックマーケットのような柔軟性のある存在でなければできないこともありますし、多くのキヴォトスの住民はブラックマーケットを必要としています。ここはモノが集まる場所です、探せば大抵のものは見つかるので、自分の自治区では手に入らなくともここでは見つかることがよくあります。もっとも、行き過ぎた商売や明らかなぼったくりみたいなものは、このブラックマーケットを治めている人達に『お話』と称して連れていかれますけど」

 

「そう考えると、ある程度の秩序……ルールのもとにブラックマーケットは成立しているってこと?」

 

「そうです、大正解ですよシロコさん。ブラックマーケットは無法地帯というのは事実ですが、無法地帯にはその場所なりの秩序があります。それがあるからこそ、他の自治区や連邦生徒会との均衡が保たれ、多くの人から必要とされているんです」

 

「ん……確かに、こういった場所は便利。聞いた話だと、ネットショップみたいなものもあるみたいだし」

 

「ああ、ショッピングサイト『savannah』でしょうか。熱帯とか雨林とかみたいな呼ばれ方もしてますが、かなり有名なサイトですね。主な販売はブラックマーケットを牛耳ってるさっきの灰色兎さんや、他のトップの方々が運営してる企業で、個人でのマーケット登録をして出店している商店や住民も居ます。注文すれば大体翌日か翌々日には到着、サブスク……有料会員登録で音楽とか動画とか色んなサービスが利用できたりと、恐らくキヴォトス最王手のショッピングサイトですね」

 

「あまりアビドスから出ないから知らなかった……もしかして、ノノミはよく利用していたりするの?」

 

 話を振られたノノミはといえば、肯定するようにして笑顔で首を縦に振った。

 

「はい、よく利用しますね~。食品に化粧品、トレーニング用品もそうですが、各種弾薬や武器のアタッチメントなんかも取り扱ってますからね~。ただ、希少品とか珍しいものはやっぱり、直接ブラックマーケットに足を運ばないと手に入らないですね」

 

「まあ、そうですね。さっき私や先生が買っていたものも希少品で、ああいった珍しいものは基本的にネットショップには出回りません。理由は色々とありますが。なのでそういったコアなものは直接此処に足を運ぶしか無いですが、基本的なものはネットで買えてしまいますね」

 

 

 実際、カヤの言うショッピングサイト『savannah』とはキヴォトスでは最王手のネットショップだ。日用品から弾薬、装備やアタッチメント。挙句の果てには車両やその装備等まで買えてしまう。しかも、取り扱っているものは基本的に生産元が明確なものであったり、有名企業の製品である。

 

 利用する客層はとにかく幅広いが殆どの自治区の生徒はまず利用したことがある、というほどに有名である。

 

「私はキヴォトスを害する『悪』を決して許しません。ですが、人々が必要としていて、それがキヴォトスに害をなさないのならばその限りではありません。そしてそれは、『必要悪』だと思っています。だからこそ、各自治区も連邦生徒会も、企業連合だってブラックマーケットの存在を表面上ではグレーとして有耶無耶にして、実際は認めているのが実情です」

 

「ん……政治って難しいね」

 

「難しいですし面倒ですよ。でも、それを望んでやっているのが連邦生徒会(わたしたち)です」

 

 カヤとしても、連邦生徒会とは言っても何だが頭のおかしい連中や物好きな生徒の集まりだ。役職持ちから一般生徒会員まで、誰もが自分の意志でそんな面倒な道を選んでいる。そしてわかっている、それぞれが望むものがあるからこそ、その道を選択しているのだ。

 

 今の連邦生徒会は連邦生徒会長が不在といえど、安々とは揺るがない。強固な地盤があり、道を指し示す指導者や先導者が居るのだから。

 

 買い物をしながら情報を得て、シロコ達とそんな話をしていてふと思うのは、アビドスとミレニアムが手を結んだあとのこと。そして、ブラックマーケットがビジネスの一環としてアビドスに事業進出した場合のことだ。

 

 きっと、忙しくて悲鳴をあげそうなのは、財務室のアオイと法定事務の関係で調停室のアユム、きっと不法駐留している生徒の関係で防衛室も忙しくなるだろうから現在室長代理のリリィだろうか。もしかしたら、建築関係のことでその方面にはとにかくすぐ飛びつこうとする体育室長のハイネは現場用の『安全第一』と書かれたヘルメット片手にアビドスに向かいそうだななどとも思う。もしそうなったら、差し入れ位はしようとカヤは思っていると。

 

 

 パァン!と。突然、銃声がした。

 

 

 銃声と同時、真っ先に動いたのはカヤとホシノ、そしてSRTの生徒たち。それに続くようにして驚いた様子を一瞬見せた後、シロコ達も警戒態勢に入った。

 

 

「うわぁぁあああ!つ、ついて来ないでくださいいいいいい!!!」

 

 

 直後、こちらに向かって走ってくる人影が一人。

 

 涙目になりながらも走るその姿は、奇妙な鳥のようなキャラクター。モモフレンズのペロロという存在を模したリュックサックに、白い制服。そしてそこに存在するのは、とある自治区の学園を指し示すエンブレム。

 

 

「だ、誰か助けてくださいいい!」

 

 その叫び声が聞こえた瞬間、カヤはすぐに動いた。

 

 

「――ええ、助けましょう」

 

 

 突然のことで足を止めるその生徒に対して、ノノミとミヤコが安否を確認する。動揺は見て取れたが、こちらが敵ではないとわかると安堵しているようだった。

 

 

 

「あぁ?なんだテメ……んん?何処かで見たような……」

 

「どけ!私達はそこのトリニティの金持ちお嬢様に用があるんだよ!サクッと拉致って身代金を――あれ、あんたどこかで見たな?」

 

 

 

「し、不知火……カヤ……?」

 

 

 三人居た不良の内、マシンガンを持っていた生徒と、アサルトライフルを持っていた不良はすぐに気が付かなかったようだが、もう一人。サブマシンガンを持っていた生徒は一瞬で顔色を真っ青にした。

 

 連邦生徒会の役員として公の場に出ていた時の服装とは違うし、髪型も違う。だが、その桃色の髪に糸目。そして、キヴォトスにおいて最強とまで言われるFOX小隊と同じ制服という特徴だけでも、すぐにその本人であるという答えにたどり着くだろう。

 

 そうして。その名前を聞いた瞬間、気が付かなかった二人の不良も目を見開いて顔色を変えた。

 

 

「おや、失礼ですね。まるで悪鬼にでも出くわしたような顔をされては私も些かショックです。別に今の私は防衛室としての執行権限はないのでどうこうするつもりはないですよ」

 

 その言葉を聞いてホッとした不良たち。そう、今のカヤには現場での防衛室としての執行権限を持っていない。今のカヤは出向中という扱いであり、所属はシャーレである。つまり、不良たちからすれば今すぐこの場で逮捕されるということはない。

 

 だが、ここはブラックマーケットである。幾ら実質公認されているグレーゾーンとは言え、この場所が無法地帯であることに変わりはない。例え無法地帯を統治する秩序があったとしても、その秩序がつまるところ今この不良たちがやろうとしていたことを肯定するかといえばそうではない。

 

「ところで、ブラックマーケットでは自衛のために銃火器の使用は黙認されるんですよ。私としては、助けを求めたあの少女のことを見捨てたくはないんです。 ……そういえば、先程誘拐だとか身代金だとか言ってましたね?」

 

 スッ、とカヤが片手を挙げれば後ろからは銃を構える音がする。ミヤコ、サキ、ミユの三人が銃を構える音であり、その銃口は不良達に定められている。

 

「ここは無法地帯、ブラックマーケット。そんな場所で銃撃戦があって、数名が気絶して道の真ん中で倒れていても不思議なことは何もありませんよね。ここは無法地帯ですから、こちらが自己防衛で応戦して、そちらが気絶しているうちに大切な銃や貴重品なんてものが無くなっても誰も助けてはくれませんね?」

 

 事実、カヤの言う話はここでは珍しくない。ブラックマーケットでは、様々な事情を持つ生徒や住民がいる。当然、その中には明日の食い扶持に困っている者も居れば、自らの稼ぎのために追い剥ぎやスリを行う者も居る。

 

 もし、この無法地帯で気絶などすればどうなるか。最悪のケースだが、持っていた筈の武器や貴重品、根こそぎに身ぐるみを剥がされることになりかねない。そんなことになってしまえば、どこにも泣きつくことなどできない。ブラックマーケットで身ぐるみを剥がされた、などと言って助けてくれるものなど、殆ど存在しないのだから。ましてや、悪事を働こうとしていたなら尚更だ。

 

 そんな内容をちらつかせれば、交戦せずとも不良達の顔色は益々悪くなっていく。そうして、遂には悲鳴をあげながら何処かへと走り去ってしまった。そんな後ろ姿を見て、やれやれと言ったようにしてカヤはため息をついた。

 

 




■savannah
 所謂A◯azon。商品を流通させているのは、ブラックマーケットを仕切っているいわば『組』の方々と、提携している企業。個人出店も認められており、出店を出店する生徒も居る。音楽や動画サービスも充実しており、殆どの生徒や住民は利用したことがある存在。なお、レア物や限定品などの希少品はブラックマーケットに直接足を運ばなければ見つけられない。

■ブラックマーケットの治安
 下手な自治区より遥かにいい。ブラックマーケットを仕切っている人物達が治安維持やある程度の秩序の確保ために巡回する武装した獣人やロボットが存在しており、管理の行き届いた貸事務所などもある。現在の便利屋68の住まいはそのひとつ。

 無法地帯なのは変わらず、カイザー等の企業と怖い事務所の抗争があったり、生徒同士での銃撃戦は発生することもある。訳アリの生徒が逃げ込む場所とも知られているが、大抵は兎の組長さんに保護されたりしている。連邦生徒会や企業連合としても、所謂『必要悪』として認識されておりグレーゾーンとして扱われている。

■ブラックマーケットの悪ガキ
 ポケットマネーで希少品のコーヒー豆やモモフレンズのグッズ、その他コレクター品などを買い漁る生徒。昔は天真爛漫で空色の長髪を持つ生徒とよく買い物に来ていたらしい。最近は仕事仲間に頼まれてよく買い物に来ることもある。一体何処の防衛室長なんだ。


■今年最後のあとがき的なもの
『不知火カヤが会長に脳焼かれた結果光の殉教者になってキヴォトスを水戸黄門みたいに巡りながら勧善懲悪する』

『お供の助さん格さんポジはRABBITとFOX小隊の面々で色んな自治区に行って騒がしくしながら生徒の笑顔を守る旅みたいな』

『これにて一件落着!カーヤッヤッヤッ! みたいな黄門様みたいな笑い方で〆たりして』

 そんなインスピレーションから始まった拙作、最初は自己満足として書き始めたものの沢山の方にお読み頂き本当に驚くと同時に嬉しい限りです。苦労人ポジですがカヤの一番の理解者とも言えるリンの人気が高かったのは予想外でした。

 本来なら今年中にトリニティ編まで行けないかなとか思ってたんですが、ちょっと作者のリアル事情諸々でかなり遅れている状態となりました。来年も引き続き、可能な限り早めに投稿していけたらなと思っているので今後とも楽しんでいただければ嬉しい限りです。

 もしかしたら本編とは関係のない裏話的なものを書き殴ったものを今年中に投下するかもしれない。

 それでは、皆様よいお年をお過ごしください。
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