カヤちゃんが征く!   作:無名のカヤ推し

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Episode21:私は覆面ピョンピョン団のキャロット1ですよ?

「……なるほど。これは、大当たりを引きましたね」

 

 ブラックマーケットにある闇銀行。それこから少し離れた場所にある裏路地にて、カヤ達は先程見た光景について話し合っていた。

 

 偶然、とでも言うのか。彼女達が闇銀行の近くで見たのは、アビドス高校によく集金に来ているカイザーローンの集金担当者と、集金車両だった。様子をうかがってみれば、その担当者は闇銀行の守衛と話をした後、集金ケースを持って中へと入っていった。

 

 この時点で、少なくともSRTの生徒達とカヤ、そしてホシノはある可能性が高いと判断していた。だが、それについて明確な証拠はなく。ゆえにその懸念について話し合っていた。

 

 

「……ん。カヤ先輩、すごく嫌な予感がするんだけど。つまり、そういうこと?」

 

「まあ多分、シロコさんが考えている可能性が高いと思いますよ。もし、そうだとするなら……確かに色々と辻褄が合います」

 

「えっと、ごめん私はまだ状況がうまく読めないんだけど……どういうこと?先輩」

 

「セリカさん。先日、誘拐されかけた時、相手に対してなにか思うことはありませんでしたか?例えば……装備がやたらいいだとか、過剰なほどの何かがあっただとか」

 

「……それは、あった。武器とか、それからなんで高射砲なんてものを持ち出してくるのかとかとは思ったけど」

 

 つい先日、誘拐されかけたセリカをたまたま近くを通りかかった、現在アビドスに来ているカンナが助けるという出来事があった。そしてその際にセリカが感じていたのは、『明らかに生徒一人に持ち出すような戦力ではない』ということだ。

 

 普段から銃器を取り扱う彼女だからこそわかる。襲撃者の持っていた銃は静音性に特化された、特殊部隊が使用するような最新装備。そして、自分を狙うようにしてきたのは高射砲だった。これは明らかに生徒一人を襲うにしては過剰な装備だ。

 

 尤も、キヴォトスの治安維持を担う機関の中でもSRTに匹敵するトップレベルの実力者であるカンナを前にしては、それだけを揃えても無意味であったが。

 

「以前からあったという、ヘルメット団の襲撃。上質な装備に明らかに補給を受けていると言っていい頻度での襲撃。しかも、最近では違法武器まで持ち出してきましたし、この前の拠点襲撃を行った際には最新の戦車などの兵器も存在していました。ハッキリ言うと、ヘルメット団という不良集団が保有しているには色々とおかしな点があります。それが何かわかりますか?」

 

「――毎日のように襲撃してきたヘルメット団、それにあの拠点にあった違法武器に、最新鋭の兵器。そういえば、あの拠点はかなりしっかりと。要塞化でもするように作られていた。 ……それだけのことをするには、かなりのお金がかかる筈。 まさか」

 

 セリカの顔色が変わった。そして、彼女も気がついたことは恐らく当たっていた。

 

「ただの不良集団にしては、資金が潤沢過ぎます。頻繁な襲撃、ならまだわかりますがあの拠点や最新鋭兵器、そして違法武器まで来ると明らかにおかしい。そう考えると、資金や装備を提供している何者かが居る。 ……推測の域を出ません。ですが、先程見たあの光景を考えるとあくまで可能性ですが、最悪の想定も出来る」

 

 それが何か、と言わずともアビドスの面々は理解できた。つまり、まだ明確な証拠はないが、自分達が返済していた借金が闇銀行を通じて、自分達を潰そうとしている相手に流れていた可能性があるということだ。

 

 ただ、補足するなら。彼女達はまだ今の自治区の情勢について完全に把握しているわけではないのでまだ理解が追いついていないが、現時点でアビドスに対して手を出すことはかなり難しくなっている。ブラックマーケットのトップに、ミレニアムとの提携。この時点で、裏にいる存在はそう簡単には手を出せない。しかも、手駒として利用していた便利屋も連邦生徒会、防衛室へと寝返った。

 

「……ん。こうなったら、やるしかない」

 

「え?シ、シロコ先輩?やるって……何を?」

 

 

 

 

「ん。銀行を襲う」

 

 

 

 シロコは言葉足らずだったが、要するに証拠を押さえてしまえばいいということだ。今考えていることは全てたらればであり明確なものがない。なら、それをハッキリさせるために証拠を押さえればいい。

 

「まあ……確かに、手っ取り早くはあります」

 

「カヤ先輩まで!?」

 

 セリカとモニターで中継を見ているアヤネも目を見開いて困惑している。それもそうだろう。今はシャーレといえど、連邦生徒会防衛室の防衛室長でもある相手がとんでもないことを言いだしたからだ。

 

 が、それを見てもSRT1年生の面々は慌てる様子はない。むしろミヤコは何かを察したように、ゴソゴソと鞄を漁り始めた。

 

 

「ん、流石カヤ先輩。話が分かる」

 

「いや実際ある意味一番いい方法なんですよ。恐らく闇銀行の記録って紙媒体なんです。だから、モエさんに頼んでハッキングしてもらっても目的のものは手に入りません。そして、今はまだ銀行窓口や事務所にあるかもしれませんが、今確保しないとセキュリティがもっと厳しい所に保管されるでしょう。ハッキングが無理な以上、確保するなら今です」

 

『いやいや待ってください!?せ、先輩って防衛室長でしょう!?』

 

「アヤネさん。今の私はシャーレの部員です。それに、私もたまに非行をしたくなる時があるんです。そう、炬燵に入って蜜柑を貪ったり、夜中にラーメンの屋台に行って好みのトッピングをこれでもかと乗せてみたり」

 

 アビドス高校でのアヤネの叫びは虚しく、返されたのはそんな言葉。非行どころの騒ぎではない、いくらキヴォトスが無法地帯でも銀行を襲うのは立派な犯罪である。流れが最早銀行を襲うという流れに傾きつつある中、アヤネは同じ1年生。希望にすがるようにしてミヤコへと訴えることにした。

 

『い、いいんですかミヤコちゃん!あなたの上司こんなこと言ってますよ!?』

 

 だが、それも無意味で。

 

 スッ、と迷いなく取り出されるのはウサギの刺繍がされた複数の色違いの目出し帽。迷うことなくそれを被るミヤコ達1年生組。そしてそれぞれが、本気の眼をして武器と装備のチェックを始めた。

 

 加えて。どこから取り出したのか、一緒にアビドス高校にいるモエまでもが、部室にある鞄から目出し帽を持ってきていた。

 

「ミヤコ?誰ですかそれは。 私は覆面ピョンピョン団のキャロット1ですよ?」

 

『私の中での連邦生徒会とSRTのイメージが殺伐としたものになっていく……!せ、先生……!』

 

 こうなったら先生だ。そう思い、アヤネが言葉を投げれば。

「教師としては止めたいけれど……でも、状況が状況だよね。物理的な証拠である以上、確かにここで抑えないと、証拠を手に入れるチャンスはもうないかもしれない。 ――カヤ、今回は目を瞑るよ。けど、これだけは約束して。銀行のお金には手を付けないこと。警戒し過ぎかもしれないけどそこから足が付く可能性もあるし目的は金銭ではないからね。そして、従業員や一般住民には被害を出さないこと。約束できるかな」

 

 先生としても、本来止めるべき立場だ。いくらここが無法地帯だといっても、銀行強盗など犯罪だし、生徒にそんなことをさせるわけにもいかない。だが、ここでアビドスの一件についての決定的な証拠を抑えるチャンスを逃すのもいただけない。

 

「ご安心を。私もミヤコさん達も特殊作戦のプロです、完璧にやってみせます。やるからには徹底的に、です」

 

「ぎ、銀行強盗!?はわわっ……私はどうしたら……」

 

「ヒフミさんはそうですね、被り物をかぶって適当に指示をするような演技をしていてください。やることは全てこちらでやります。 ……しかし巻き込むことになってしまうのはご容赦頂けたらと。どうか、これで」

 

 そうしてカヤがヒフミに近づいてスマホを見せると、瞬間。彼女の目の色が変わった。

 

 そこには、モモフレンズのそれぞれのキャラクターが描かれた、複数の色違いのタンブラーが写っていた。

 

 ヒフミが目の色を変えたのは理由がある。それは、モモフレンズの人気が出始めた時、記念して作られた限定1000セットのタンブラーセットだ。モモフレンズそれぞれのキャラクターが描かれており、しかもキャラクターの絵を貼り付けただけのグッズと違い、かなりしっかりとした作りのものであり、各キャラクターそれぞれのイメージカラーのタンブラーがセットになっている。ファンのグッズとしての価値も高いことに加えて実用性まであるという逸品だった。

 

「実は2セット持っていまして。 ――未使用品です」

 

「……全力で演じさせていただきます。ペロロ様に誓って、全力でやらせていただきます!」

 

「流石ですね同士ヒフミさん。是非、防衛室にいらしてください。もっとすごいものが沢山ありますから」

 

 これは未来の余談だが、ヒフミが休日になってはD.U.地区へと足を運び。頻繁に連邦生徒会の関係施設に出入りしていることをとあるトリニティのトップが知ることになり、疑心暗鬼になるのは別の話である。本人は純粋に、モモフレンズのグッズやファンメイドの作品を見に行っているだけである。

 

 また、大のトリニティ嫌いとして有名な防衛室室長代理ととても仲良くなりよく勘違いされるあるトリニティのトップに続いてトリニティにおいて実質彼女とコネクションを持つ希少な生徒となるのだが、それは未来の話である。

 

「さて、やるからには徹底的にやりましょう。そのためには……協力者が必要ですね」

 

 そうしてカヤが取り出したのは、シャーレの制服のポケットに仕舞っている携帯端末。そのままタッチパネルを操作し、何やら電話をかけているようだ。

 

 

 

「……あ、もしもし組長さんですか?先程ぶりです。ちょっとお願いが」

 

『まーたよからぬことを企んでるだろ嬢ちゃん……まあいい。それで、何だい』

 

 カヤが連絡したのは、先程まで話し合っていたこのブラックマーケットの重鎮。灰色兎だった。

 

 

「実は闇銀行を襲撃しようと思いまして。それにあたって逃走用の車の手配と変装用の装備をお願いしたく」

 

 そのお願いに対して、それはもう灰色兎は頭を抱えた。なんてことをしているのだ。そもそも防衛室長がお忍びでなにをやっているのだと。

 

 結局彼は、深い溜息の後、事情を説明してもらうことを条件に、逃走用の車と工作用の部下の手配、加えて銀行を襲うための変装用の服と装備一式を手配したのだった。

 

 




■あとがき
 ヒフミはファウトではなくビッグ・ファウストになりました。覆面水着団と覆面ピョンピョン団に謎の覆面テロリスト(カヤちゃん)を仕切るのはファウストであるという噂が流れ、更にブラックマーケットの裏社会に存在する悪名高い集団やシンジケートを取りまとめている裏社会の姿なきボスとして伝説になるとかなんとか。

 拙作における『神秘覚醒』持ちはカヤちゃん含めて複数いますが、潜在能力がぶっちぎりでヤバイのがミヤコ。『天地宇宙の航界記、描かれるは灰と光の境界線』と言って伝わるかは不明。純粋な戦闘能力ではカヤちゃんやユキノがトップクラスですがこっちはちょっと別の方面で次元が違う。まっすぐで頑張り屋で人誑し、そして先輩に愛されるミヤコにとってはもってこいの神秘。


 実は裏では執筆と添削が進んでおり、原作の最終章あたりまでは添削前のものやプロットだけ完成しました。……ということで、アビドス編の最初でやったような各編の予告もついでに作ってみました。蛇足になるので、アンケートを取ってみて検討したいと思っているのでご協力お願いします。
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