カヤちゃんが征く!   作:無名のカヤ推し

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Episode22:できれば、当たってほしくはなかったのですが

「できれば、当たってほしくはなかったのですが……」

 

 アビドス高校、対策委員会部室。アビドスへと戻った全員の表情は険しく、セリカやシロコは怒りを抑えるので精一杯、というような状態だった。

 

 闇銀行の襲撃は成功した。戦力的に高い能力を持つアビドスの面々に加えてミヤコ達SRT1年生。そこにバックアップとして先生の指揮や撤退をフォローするために灰色兎が手配してくれた部下と車両、加えて学校を特定させないためのダミーの襲撃衣装。もっとも、顔だけは独特な目出し帽だったが。

 

 それだけの戦力と支援が揃っていることもあり、銀行を襲撃して集金記録を回収するまでは5分もかからなかった。すぐさま目的のものを回収、闇銀行側が慌てて追手を差し向ける頃には全員が手配されていた車両で撤退していた。

 

 そうして。目的のものを持ってアビドス高校へと戻って確認してみれば、推測していたとは言えできれば的中していてほしくないそれは、的中していた。

 

 集金記録に記されていたのは、つい先日アビドスの面々が返済の名目でカイザーローンへと渡したクレジットが、そのままヘルメット団へと流されているものだった。つまり、アビドスの面々からすれば自分達は此方を襲う相手の資金源を提供していたということになる。それがわかれば冷静で居られないのは事実。セリカやシロコも完全に暴れ出す寸前だが、それを冷静にさせていたのはホシノ。そしてカヤだった。

 

「とりあえず、シロコちゃんとセリカちゃん。落ち着こうか。おじさんも頭にきてるけど、暴れてもどうにもならないよー」

 

「そうですね、まずは冷静に事態を分析してみましょう。 ……さて、この集金記録ですがかなりの情報を得ることができます。ひとつひとつ考えていきましょう」

 

「うん、そうだねえ。それでカヤちゃん、最初は?」

 

「まずは……結論は出ないかもしれませんが大きな謎から行きましょう。そもそも、どうしてカイザーはここまで手の混んだことをしてまでアビドスを手に入れようとしているのでしょうか」

 

 そう。既にFOX小隊やユウカ達から様々な情報を得ているカヤや先生ではあるが、そもそも何故ここまでしてカイザーがアビドスを手に入れようとしているのかということが不明である。

 

 わざわざアビドス高校を追い込むようにして、自らアビドス高校の維持を諦めさせるかのように手の込んだ事をしているその目的、それが見えてこない。

 

「カイザーがなにかの目的があることはわかりました。ですが、その目的が本当に見えません。……アビドス高校の皆さんに聞きたいのですが、カイザーが目的としそうなものや、何かに心当たりってありません?思いつきの予想でもいいです」

 

 うーん、とホシノ達は少しの間考え込む。だが、中々カヤへの返答は出ない。そもそも、アビドスという自治区は現在大半が砂漠地帯だ。カヤ達の来訪やミレニアムからの打診によって、砂の利用価値や産業などの事業に対して目を向けることとなったが、それ以前となると中々に難しい。

 

 かつてはキヴォトス最大規模を誇った自治区とはいえ、現在はたった数名。観光地として名を馳せたオアシスも今では枯れている。カイザーがここまでして欲しがるとすれば、それ相応のなにかなのだろうが、その何かについて思い当たる節が出てこない。

 

「あの……いいですかカヤ先輩」

 

「む、どうしましたかノノミさん」

 

 少し迷ったようにして言葉を発したのは、ノノミだった。

 

「その……あまり、実家のことは考えたくないのですが、昔実家がまだアビドスで事業をしていた時のことを思い出して」

 

「今は些細な情報でも欲しいです。あまり話したくなかったり思い出したくないかもしれませんが、できればお願いします」

 

「えっと、その……鉄道、なんです」

 

「鉄道?」

 

「はい。……実は私、元々は実家の意向でハイランダーに入学する予定だったんです」

 

 初耳だ、というようにして目を見開いて驚いたのはセリカとアヤネだ。シロコは過去に聞いていたのか、動じずに真剣に話を聞いていた。

 

「それにあたって、その。 ……実家の事業のこととか色々と勉強させられたことがあって。その時、実は結構お転婆だったというか。勝手に出歩いたりしてたこともあったんです。その時にアビドス高校を訪れたりもしてました」

 

「いやあ~ノノミちゃんと初めて出会った時はびっくりしたよねえ~。まさかネフティスの令嬢だなんて思わないしさ」

 

「懐かしいですね……。私も、簡単には実家を抜け出したりは実はできなくて。その時に抜け出す手引をしてくれた人がいるんです。私にも本当よくしてくれた、世話係みたいな人だったんですが……その人から、ハイランダー入学にあたって色々教えてもらっている時にちらっと聞いた話があるんです。 ――ネフティスはアビドスの線路の権利を確保していると」

 

「その線路について、今の権利はネフティスのままかどうかはわかりますか?」

 

「すみません、今はどうかわかりません……。ご存知の通りネフティスはアビドスでの事業に失敗して、今は撤退しています。推測ですが、中途半端のまま路線関係の事業は放置されていると思います」

 

「ふむ……なるほど。確かに、ない話ではありませんね。 他には?何かありませんか」

 

 続けて、考え込むようにしていたアヤネがおずおずと手を上げた。

 

「未調査領域が怪しいんじゃないかな、とも思いました」

 

 ピクリ、と。カヤが反応を見せた。だが、それに気がついたものは一人を除いていなかった。

 なにかに反応した、そう感じたのはホシノだけだった。

 

 未調査領域。それは、アビドスにおける大半が砂漠化した地帯の中でも深部の場所を指す。

 

 アビドスの気候と地形は極めて厳しい。砂漠特有の環境もそうだが、時期によっては日中と夜での寒暖差が凄まじく、万全の装備をしていなければ最悪の事態にもなりかねない。

 

 そうして。カヤにとっての絶対に消えない傷。かつて太陽のような笑顔を持っていた先輩が見つかったのも、未調査領域だった。

 

「未調査領域は、謎が多く殆ど調査も入っていないと聞きます。そこに何かがある、とか……?考えすぎでしょうか」

 

「それもない話ではないんですよねえ……。アビドスはかつてはキヴォトスにおいてもトップレベルの規模を誇った自治区です。過去のアビドスの残した何らかの遺産……とも考えられます」

 

 少しカヤは考え込んだ後、今度はホシノへと視線を向けた。

 

「現状、推測の域を出ずとも可能性はいくつかあります。その上で今アビドスが行えるとして、最善手は何だと考えますかホシノさん」

 

「んー……カイザーは手段や目的はともあれ、アビドス自治区を狙ってるわけでしょ?手を出せなくするのが一番だとおじさんは思うけど ――ん?あれ、まさか」

 

 ホシノは何かに感づいたようだ。対して、カヤも糸目のその表情の上に悪い笑顔を浮かべている。それを見ているアビドスの面々やSRTの面々は頭の上に疑問符を浮かべているようだったが。

 

「大正解ですよ、ホシノさん。要するにカイザーが手を出せない。もしくは出しにくい状況を作ってやればいいんです。先日の便利屋や今までのヘルメット団、彼女達からしても『手を出したら不味い』と思わせるくらいの状況です」

 

「……なるほど。あるよね、その方法が」

 

「はい。 ――ミレニアムとの提携です」

 

 その言葉で怒り心頭、という状態だったセリカやシロコも気がついたようだ。

 

 アビドスには現状、カイザーに太刀打ちできる手段がある。ホシノ達は存ぜぬことだが、ネフティスがカイザーからの地権関係の話をすべて拒否しているのもひとつだが、アビドス高校として現状を打破できる手段。それが、ミレニアムとの提携だった。

 

 アビドスの資源調査や開拓、その名目でミレニアムはアビドスに対して協力的な姿勢を見せると明言している。それは現ミレニアムのトップである調月リオも『合理的かつ価値がある』と判断したものであり、セミナーのノアとユウカもミレニアムとしての視点から乗り気の姿勢でもあった、

 

 ミレニアムとの正式な提携は、アビドスとミレニアムとの協力関係だけではなく、その庇護下に入ることも意味している。もし、提携を結んだアビドスにカイザーが無理にでも干渉しようとすれば、少なくともミレニアムが動く。いくらカイザーでも、ミレニアムという巨大な力を持つ自治区と学校を敵に回すのは最悪の事態だ。

 

 

「今後の話し合い次第の所はありますが、現状のアビドスを縛っているのは借金です。ぶっちゃけた話をしますが、アビドスに対しての負債の内容はかなり怪しいです。恐らく叩けば埃は出ますし、それを根拠としてカイザーに対して減額を迫ることも出来るでしょう。加えて、もしミレニアムとの提携が成立すれば資源調査やその結果をミレニアムが買い取ることになります。その時点で、かなりの金額の返済が可能。そして、今後提携の関係が続けば今までとは比べ物にならない速度で返済が行えます」

 

「……まあ、おじさんもぶっちゃけるけどさ。正直、個人的なことで他の自治区がまだ信用ならない、って気持ちはあるよ。でも、シャーレを通してミレニアムの生徒会。セミナーの子達と話した感じ、少なくとも信用できるとは思ったし、それに向こうの生徒会長ってカヤちゃんの友達なんだよね?なら、信用してもいいかなとは思う」

 

「リオさんですね。最近ちょっと……というか結構アグレッシブになりましたが堅物ですし合理主義な面はありますが、ミレニアムの指導者としては極めて優秀な人物ですよ。前にも話しましたが、ミレニアムが重んじているのは科学や技術、研究、学術といったことです。少なくともアビドスの案件については、シャーレ所属のノアさんとユウカさんからリオさんに内容が報告され、承認が降りています。承認された、ということはリオさんも今回の案件についてミレニアムの益となると判断したということです」

 

 ミレニアムがアビドスについてメリットがあると判断した。つまりそれは、アビドスが対等な取引相手であると認めると同時にミレニアムという学区の庇護下に入れることで他からの手出しができなくなるということになる。自治区同士でのこのような契約については連邦生徒会は関与できない。だが、同時にその学区同士以外の自治区や企業が関与することも出来ない。

 

 ましてや、今回の場合アビドスに手を出せばその時点でミレニアムが敵となる。科学力についてはキヴォトス随一と言われるミレニアム相手に喧嘩を売れる企業や学区が、果たしてどれだけあるか。

 

「しかし、問題もあります」

 

「問題?」

 

「はい。借金についての減額や返済目処、これについてはミレニアムとの提携やブラックマーケットの灰色兎(アッシュ)さんと話をした事業斡旋により迅速に解決へと向かうでしょう。アビドスが抱える大きな問題は、解決に踏み出したと言えます。ですが、問題はカイザーです」

 

 相手は恐らくカイザー・コーポレーション。並大抵の企業であればミレニアムが出てきた時点で撤退を余儀なくされるだろう。だが、カイザーの場合少し違う。追い詰められてかなり強引な手段に出てくる可能性はあるのだ。それこそ、強引にアビドス自治区を襲撃したり、汚い方法でアビドスの利権を確保しようとしたりだ。

 

「ここからはかなり危険な勝負です。カイザーが黒幕だと仮定して、ここまで追い詰められて何をしてくるかは不明です。軍事制圧であれば企業連合が動いて、徹底抗戦になるでしょう。無論、その場合企業連合はアビドスの味方になります。後は、もっと汚い方法を取ってくるか」

 

「……この前のセリカちゃんの時のあれみたいに?」

 

 一般生徒の拉致や監禁、これはキヴォトスにおいても立派な犯罪行為だ。そうしてセリカはつい先日、何者かの手によってその被害に遭いかけた。もしあの時カンナによって阻止されていなければ、今頃どうなっていたかもわからない。そんな手段を取ってくる可能性があるのだ。

 

「正直警備が十分ではないアビドスにおいていつ何時そういったことが起こるのかわからないのは危険です。なので至急、ミレニアムとの契約と提携をしましょう。ついでに私からリオさんに頼んで、『アビドスの契約のための現地視察』という名目でも派遣員を送ってもらいましょうか。どちらにしても調査は必要でしょうし」

 

「うへー……それは心強いけど。でも、派遣員?おじさんはよくわからないけどどんな子が見に来るのかなあ」

 

「そうですねぇ……恐らくセミナーから一人と、後は私から頼んで戦力を一人といったところでしょうか。もしリオさんが今回の契約を重要視しているのであれば、C&C ――ミレニアム最強の部隊から、誰かしら送られてくる可能性もありますね」

 

 

 尤も。最高クラスの戦力で、それでいて単独行動が可能なほど完成された生徒や適性の持ち主。それを考えると、カヤにとってはC&Cでは二、三人ほどしか該当者が居ない。

 

 加えて、ミレニアムの最高戦力である彼女は現在、リオのとある計画のために動いておりアビドスに来ることは不可能だろう。とすれば、残るは二人なのだがリオの秘蔵っ子である彼女も現在、リオとヒマリのサポートと、時折暴走するリオのストッパーとなるため奮闘している。

 

 つまり消去法で行くと、一人しか居ない。天真爛漫なミレニアム最強部隊のNo.2。加えて言うなら彼女は現在、過度な疲労や暇な時間が続くと眠くなるというくらいで健康体だ。万全の彼女と仮に戦うことを仮定するなら、カヤでも嫌な顔をする。

 

 そんな彼女が恐らくはセミナーのメンバーの誰かの護衛、という形で派遣されるだろう。それを考えると、アビドスの布陣は更に盤石なものになるだろうとカヤは思った。

 

 




■ミレニアム最強部隊のNo.2
 拙作では自分の症状(本人としては『たまにこんなことがあるんだ~』くらいの感覚)についてカヤにぼやいたことがあり、それで大慌てしたカヤからネルに伝わった。ネルはそれはもう大目玉を食らわせて『すぐに病院行け!けどこういう症状はどうしたら……カヤ、なんかいい医者知らねえか!?』と言った。結果、カヤが主にキヴォトスの衛生安全面や医療関係のことをやっている連邦生徒会『保健室』の室長に連絡。その室長が直々に治療と対応に当たった。なお、大慌てしたカヤとネルの二人に連れられてきた本人を診断して唖然としたものの『私に治せぬ病はない』(ギュッ!)と言った。

 『保健室』の室長はキヴォトスにおける神医とも言われており、同時に悪徳医者やキヴォトスのブラックジャックなどと言われており連邦生徒会の仕事以外での医療関係のことは本来とんでもない金額を要求する上、自分が気に入らない患者は対応しないという捻くれ者。……なのだが、本人曰くカヤには返しても返しきれない大恩があるようで、その彼女きっての頼みなので格安で引き受けた。

 保健室長の治療と症状についての指導などのその結果、持ち前の第六感ともいえる素質を使いながら、眠くなるというリミッターの症状が出たら休むということを徹底することで症状の進行の阻止と才能をフルに活かすということに成功した。

■あとがき
 アンケート内容を確認しました。結果をもとに読者のみなさまのためにぃ~
 予告編を投下します。

 具体的には原作で言うパヴァーヌ、エデン条約前編、エデン条約後編、カルバノグの兎、あまねく奇跡の始発点の5つを予定しています。ただ、カルバノグはカヤが原作通りではないかつSRTが現存、FOXとRABBITがシャーレ側なので完全オリジナルストーリーになります。パヴァーヌもデカグラマトン編の影響で一度すべて書き直したのでかなり原作と乖離しています。予告なのでネタバレ注意、近日投稿予定。
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