カヤちゃんの使ってる二丁拳銃のイメージ、レオンのレクイエムがイメージとしてピッタリでした。クソデカ超威力リボルバー……いいよね……。
「……本当ッ!どうかしてるわよ風紀委員は!ヒナは何をしているの!?」
「それは同感だけど今はこの状況をなんとかしないと!社長!左前方屋上、狙撃手!」
「ああもう!こうなったらヤケクソよ!」
アルの放った二発の弾丸が相手の屋上に居た二人の狙撃手をダウンさせる。普段は何かとぽんこつだの言われる彼女だが、実力に関してはゲヘナ内部でも上位に入る。特に、前に出られる狙撃手としての実力はピカイチだ。
土壇場になった彼女は強い。悪態をつきつつも遠距離にいる相手の狙撃手や主戦力、重兵器を無力化させていくが、数が数だ。便利屋68は4人に対してこの襲撃者は数十人規模である。
そう。ありえないだろうと思っていた事態が起こったのだ。
アビドス自治区内でのゲヘナ風紀委員の襲撃。それに彼女達は襲われていた。
しかし、アルと同じように悪態をつきながらもカヨコは思っていた。この部隊を指揮しているのは、恐らく空崎ヒナではないと。部隊の動かし方や戦い方がヒナのものとは違うのだ。
「流石にきついかなぁ……!カヨコちゃん、援軍は見込めそう!?」
「既にシャーレと防衛室長へは連絡済み!これ、立派な自治区への侵略行為とも取れるから多分すぐ動くだろうけどそれまでは耐える必要がある」
いつも小悪魔のような笑みや態度を見せているムツキも今はそんな余裕はまったくないというようにして襲いかかる風紀委員の生徒へと対応している。いくら便利屋の面々が才能に優れていると言っても圧倒的な数の前には疲弊していき押し込まれていく。
まさか、風紀委員が他自治区への侵略行為とも取れる作戦行動を起こしてでも、ゲヘナで不良生徒として手配されている自分達を捕まえに来るとは想定などしていない。しかも、ここはアビドスの市街地である。
自分達は目的としていた柴関ラーメンでの食事の後、満足と幸福の絶頂とも言える足取りでブラックマーケットへと帰ろうとしていた。そこを襲撃されたのだ。下手をすれば、こんな作戦を起こすくらいなのだから風紀委員会が柴関ラーメンごと砲撃していたかもしれないと考えるとゾッとするし、腹立たしさと怒りが湧いてくる。
「ッ!?社長!前!」
別方向への対応をしていたカヨコは、アルの対応している側を見れば、とても不味いものが見えた。敵の後衛陣地。そこからの手榴弾が複数投げられたのだ。
すぐさまアルは集中し、投擲された手榴弾に対して連続で射撃を行う。アルほどの実力をもってすれば、投擲された投擲物が見えていればそれに対してカウンタースナイプをすることなど容易い。しかし、今回はいつもとは訳が違った。
「しまっ――全員逃げて!」
短期間で数多くの自治区を渡ってきた疲労は抜けておらず、そこに今回襲撃されての対応。アルは万全の状態ではなく、投擲された内の2つほどの手榴弾を迎撃し損ねた。被害は抑えられたものの、それでも現在壁にしている横転したトラックからは退避せざる得ないだろう。
「あうっ……」
「ハルカッ!」
万全でないのはアルだけではない。便利屋の面々には疲労が蓄積しており、いつものようなコンディションを発揮できないでいた。結果として、僅かに反応が遅れたハルカは、慌ててしまい退避は間に合ったものの、爆風で吹き飛ばされ、敵の射線上に晒されることとなった。
「――あ」
当然、風紀委員の生徒が構える武器の照準は無防備なハルカへと向かう、別の遮蔽物に退避したアルがハルカを助けようと咄嗟に動くが、間に合わない。
もう駄目だ、とハルカが思うと同時に思ったのは。アルと、他の面々に対する申し訳ない思いだった。そうして目を閉じて、集中砲火に晒される覚悟をした瞬間だった。
『うわぁッ!?』
『ば、爆撃ッ!?どこから!?』
『あれは……ヘリ?た、退避ー!機銃掃射が来る!』
突然耳に聞こえたのは、空気を切るヘリの音。そうして、次に聞こえたのはゲヘナの風紀委員会を襲う大量のマイクロミサイルによる爆撃と、機関榴弾による機銃掃射だった。
慌ててアル達が駆け寄り、ハルカの無事を確認すると同時。カヨコの持つ携帯端末。カヤからタブレットと共に手渡されていたそれが着信を知らせる。
『流石に想定外で驚きましたが……なんとか間に合って良かったです。後はこちらで引き受けます、便利屋の皆さんは撤退してください』
この状況において何よりも心強い声が。連邦生徒会最強にして、キヴォトスの守護者と呼ばれる相手の声が聞こえた。
◆ ◆ ◆
正直な所を言えば、カヤは怒りを通り越して呆れ果てていた。それは、このような行動に出たゲヘナ風紀委員会に対してだ。
空崎ヒナがこのような愚行をするとは思わない。そもそも恐らくヒナに対してはマコトから直接何かしらの言葉が言われているはずだ、『アビドスには手を出すな』というものが。しかし、それはヒナ個人に対してのもの。ヒナとて、それを理解していても風紀委員会の所属生徒に対して理由も説明無しにアビドスには手を出すなとは言えなかったのだろう。だからこそ、指示の範囲内でアビドスへの不良生徒の取り締まりは指示していなかったのかもしれない。
とするなら、この作戦を決行したのはヒナではない誰かだ。指揮官としての権限を持ち、これだけの大部隊を動かせる存在。となると、そんな生徒は自ずと絞られてくる。
「――ゲヘナ風紀委員会へと告げます」
モエの操縦する機動航空兵器。スカイレイダーから降下したのは、カヤとRABBIT小隊の三名。そして、先生とアビドスのメンバーの内ホシノを除く4名だ。急なことで、ホシノは別件で不在にしていたため居るメンバーだけで現場へと急行した。
「こちらはアビドス高校所属の奥空アヤネです。そちらの当自治区。市街地に対する攻撃は明確な自治区に対する侵略行為です。明確な説明がない場合、そう取らせてもらい然るべき対応をさせていただきます。指揮官の方。ご説明をお願いします」
最初に明確な狼狽えを見せたのはゲヘナ風紀委員会の構成員達だ。その原因は、アビドス高校からの声明が原因ではない。生徒達の視線はミヤコ達、そしてカヤへと向けられていた。
SRTの生徒と敵対する恐ろしさはゲヘナ生達も理解している。特殊訓練を受けた精鋭集団であり、並大抵の生徒では太刀打ちは叶わない。加えて、不知火カヤである。
"まるでシャーレが。もしくは別のなにかが介入してくることが想定外だった"というように動揺を見せるゲヘナの生徒達。確かに、シャーレが現在アビドスで活動しているというのはあまり知られていない。基本的にシャーレは依頼内容を公的に公開して行き先を告知してから活動を行うわけではなく、先生の判断で依頼を受けメンバーを選出。準備ができ次第出発という形を取っている。
先日のヘルメット団や便利屋が雇っていた傭兵から情報が拡散し、アビドスにシャーレが居るという話が広まっている可能性は大いにある。キヴォトスは学園都市らしく、話題性のあることについては瞬く間に広がる。だとするなら、ゲヘナ風紀委員会もその噂を耳にしている可能性は高いだろう。
しかし。この反応は何だろうか。まるで『想定していない何か』があったかのような反応だ。
『私からご説明させていただきます』
声が響く。同時、ホログラムによって投影されたのは、一人の生徒の姿。恐らく指揮官の生徒だろう、と先生は考えていると。
「……あれって制服なんでしょうか。随分と過激ですよね」
「おいやめろミヤ……RABBIT1、聞こえるぞ。たしかに破廉恥だとは思うけどさ……」
「ゲヘナに行ったリリィ先輩が心配ですぅ……」
『あー、通信越しに失礼するね。流石の私も露出趣味はないかなあ……ちょっとあれは……』
ヒソヒソとそんな声が聞こえる。それはRABBIT小隊からのもので、彼女達が破廉恥だの過激だのと言っている対象は今しがた現れた指揮官の生徒だ。
「RABBIT小隊の皆さん、作戦中ですよ。 ――趣味趣向は人それぞれです。アコさんのあれはいつものことなんですよ」
RABBIT小隊を注意するのはカヤだ。今聞こえたアコ、というのが彼女の名前なのだろう。それにしても、カヤも結構抉るようなことを言うなと先生は思いつつも指揮官。アコの返答を待つ。
『ん、んんっ……。素敵なフォローありがとうございます、不知火防衛室長?』
「私は今は防衛室長じゃありませんよ。さて、続きをお願いしても?」
言いたい放題言われてプルプルと震えていたアコは咳払いをすると、そのままアヤネを見た。
『私達の目的は、アビドス自治区で確認されたゲヘナの問題児の生徒。便利屋68の捕縛です。そのため、止む得なく戦闘に発展、武力行使という形になりました。此方にアビドス自治区に対しての自治区の侵略という意図はありません。あくまで目的は便利屋68の捕獲となります。……といっても、先程のこちらとしても望まない戦闘で便利屋68には逃げられてしまいましたが。どうでしょうか、問題児生徒の捕縛に協力頂けないでしょうか』
「言い分はわかりました。ですが、この地域はゲヘナとアビドスの自治区境界線ギリギリとはいえ、市街地までの進行は明確な協定違反です。そちらに侵略の意思がない、と言われてもこれだけの大部隊を連れての作戦行為は、自治区境界線を超えた時点でそれだけでも重大な問題だと判断しますが?」
『ですから、申し上げた通り部隊の派遣は問題児の捕縛のためです。便利屋68は最近、かなり多くの自治区で活動をしており一度取り逃すと何処に行くかわからない現状です。なので、ここで取り逃すわけには行きません。こちらとしても、風紀委員としての職務がありますので』
「このまま進行を止めることはない、という認識でいいでしょうか?此方としては市街地にまで被害が出ている以上見過ごすわけにはいきません」
『平行線ですね、……はあ』
「――白々しいですよ、アコさん。その三文芝居を辞めたら如何ですか」
一触即発、という空気になりかけた時。アコに対して鋭い言葉を放ったのはカヤだった。彼女は少し苛立ったようにしながらもアヤネの横まで歩み寄ると、アコを見据えた。
「シャーレの部員として、先生の許可なく口を挟むのはあまりよくないんですが事態は市街地に被害が及ぶほどに深刻です。なので口を挟みますが、確認です。この作戦はヒナさんの指示ですか?」
『っ……。いいえ、これはヒナ委員長の指示ではありません。問題児生徒の捕縛を目的とした作戦は、風紀委員会の職務として私が立案しました』
「なるほど。確かに不良生徒や問題児としてリストアップされ、連邦生徒会の指名手配のデータベースに載る生徒に対しての作戦行為が他の自治区にまで及ぶ、ということはまあよくある話です。実際所属する自治区外やブラックマーケットに逃げられたら自治区の行政機関としては面倒この上ないですからね」
『わかっていただているのでしたら、是非協力を――』
「ですが、他の自治区で作戦行動が認められるのはその自治区の学区の権限を持つ人間に承認された場合です。ここがブラックマーケットならともかく、アビドスですよ。アビドス側が許可をしないのならば、立派な侵略行為です。アビドスは現在、連邦生徒会への要請権を持っていませんが本来ならこれ、要請出されて執行部隊案件ですよ?いや冗談抜きにリン代行も動きますし防衛室も調停室も動きますよこれ」
そう。おかしいのだ。もし本当に便利屋の捕縛を目的としているのなら、アビドスではなくブラックマーケットで襲撃をするはずなのだ。ただ、ブラックマーケットには独自の自治組織が存在しているため、その組織の介入があるリスクは大いにあるが。アコの言い分が本当に捕縛だけなのだとしたら、先程の説明にはおかしい点がいくつもあるのだ。
『ぐっ……それは……』
「それとも、アビドスが現在連邦生徒会への要請権を持っていないから多少無理な作戦行動をしても問題はない、と判断しましたか?まあ事実、連邦生徒会は動けないでしょうね。……ですが」
スッ、とカヤが片手を挙げた。同時、背後のRABBIT小隊3人が武器を構え、上空でホバリングしている戦闘機。スカイレイダーの武装がアイドリングを開始する。
「貴女方の本当の目的であるシャーレは違いますよ。現在我々はアビドス高校の依頼を受けて行動しています。つまり、我々はアビドス高校の戦力とも取れるわけです。そちらが進行を続けるというなら、シャーレとしても相応の対応を取るしかありません」
『……此方の目的がシャーレであると、見抜かれていましたか』
「過剰過ぎる戦力、無理矢理な自治区境界線超え。便利屋68やアビドス高校を相手にするには過剰過ぎます。それに先程の説明にもどうにも違和感が多い。とするなら、目的は別。 ――『先生』が狙いでしょう?」
アコのミスは幾つかあった。しかし、その中でも最も大きいのは敵対してはいけない存在。それが、アビドスに来ていることを知らなかったということだ。
不知火カヤ。その戦力を知らないアコではない。ましてや、たった一人で抑止力にすらなれる連邦生徒会最強の存在。キヴォトスの英雄。その相手がアビドスにいる、ということを知らなかったのだ。
へけっ……強欲ハム太郎なのだ……。いつもここすきや評価、コメントありがとうなのだ……!
でも強欲だからもっと欲しいのだ……そうすると作者も喜ぶのだ……へけっ……!
さておき。本編も外伝もかなり欲が出ているので頻度を上げていきたい所存。実は裏話をすると、最終章までのプロットと荒書きみたいなのは出来てて添削とか肉付けとか細かい所の状態にしてたんですけど作者、昨年体調崩したり多忙だったりで暫く触れなかった時期がありまして。今年に入って大分落ち着いたので、今年は頑張りたいなあと思ってた矢先に鋼鉄大陸とデカグラマトン最終でした。火がついた。
マルクトと三姉妹、預言者とデカグラマトンは救わねばならぬと思ったのだ……。これも全て、無名の司祭って奴のせいなんだ(草加スマイル)。
外伝の方はネタ帳がパンパンになるくらいネタはあるのでそれを形にしていったり、ふっと浮かんだものを吟味してそれもネタ帳に追加したりしていくつもりです。作者はマルクトも、三姉妹も、預言者達も、そしてデカグラマトンも幸せにしたいのだ。強欲なのだ。
ただ次のネタどうするかなって時にアンケートでこんな話どうですかってのはやるかもしれない。そのうち外伝の人物紹介ページとか公開する予定。
■アコのミス
カヤはアビドスにおいて、ホシノとの模擬戦以外ではここまでで一度たりとも戦闘行為や武器を抜くということをしていません。そして、便利屋のアビドス高校襲撃時点でカヤはこの時ワカモの手続きのため不在。ブラックマーケットには確かに同行していましが、これについてはゲヘナ側で確認されていません。アコが確認したのは、あくまでティーパーティーにアビドスに関しての情報が上がった、ということと、便利屋がアビドス高校を襲撃した、ということだけ。つまり、アコはアビドスにシャーレが来ているのは知っていても、姿が確認されているミヤコ達だけだったことから来ているのはSRTの一年生のみ。と判断したというのが最大のミス。
■便利屋が風紀委員に襲撃された案件
後日どこから情報が行ったのか山海経諜報部からキサキに報告が行った。満面の笑顔でフルパワー門主様がアップを始めて『ちょっと妾と話をせんかの?』とマコトに連絡が行った。外交モードのマコトがなんとか対応した。