カヤちゃんが征く!   作:無名のカヤ推し

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――あの日の地獄で見た、英雄の背中。
――『私もああなりたい』と少女は願った。
――その瞬間。最果ての『神秘』が目を覚ました。

  "其れは、宿命(さだめ)を射止めた。"

 祝福しよう、少女よ。
 お前の末路は英雄だ。

■前書き
時系列的には銀行襲撃した直後くらい。
カヤちゃんは連邦生徒会長の光に焼かれて、『英雄』になりました。
彼女と同じように、そんな英雄の輝きと背中に焼かれた者も存在する。

祝福と乾杯をしようじゃないか。
彼女の末路は『英雄』だ。


SubStory:最果ての星は、誰か(笑顔)を守り抜くために 【前編】

「もしもしリン?どうしたんですか急に。例の頼んでいた調べごとに進展でも?」

 

『ごめんなさいカヤ、そっちについてはもう少し時間をくれるとありがたいわ。今回はちょっと……別件と言うか、なんというか』

 

「むむ?随分と歯切れが悪いですね。何か問題でも?」

 

 ブラックマーケットでの闇銀行襲撃。そこから判明した、様々なこと。同時に、アビドスの現状を打開するための方法も見つかった話し合いの少し後、突然カヤのもとに連絡が入った。

 

 相手は現在連邦生徒会長代行をしており、連邦生徒会を取り仕切っている七神リンからだった。

 

『カヤ、アビドスに戻って早々で申し訳ないのだけど……もう一度こちらに来ることは可能?一日でいいの』

 

「いやそれはまあできますけど。DUの連邦生徒会本部までは距離があるとはいえ、戦術ヘリのスカイレイダーなら一時間くらいでしょうし。モエさんに頼むことになりますが……」

 

『今回、実はSRTの生徒も数名同行して欲しいんです。モエと、それからミユも連れてくることはできますか?』

 

「ううん……?いやまあ、できますけど……」

 

『本当なら、RABBIT小隊全員に来て欲しいところなんですが……流石にそういう訳にも行きません』

 

「リン、あなたの疲れ具合から見るに相当なことがあったんですね?有事ですか?なら緊急ということで、全員招集します。アビドス高校の敷地内は要塞陣地化してベースキャンプにもしてありますから、一日くらいであれば……そうですね、ホシノさんに頼んで先生の警護については――」

 

『ああ、いえ。有事ではないんです。ある意味では有事かもしれませんが……』

 

「ふむ……とりあえずモエさんとミユさんを連れて行くことは可能です。先生の警護については、ミヤコさんとサキさんに頼むことになりますが、あの二人なら問題ないでしょう。それで、そろそろ何があったか聞かせてもらっても?」

 

 『ああ、私としたことが……本当、少し疲れてますね……』とリンは言う。ワーカーホリック気味な自分が言えたことではないが、ちゃんと休めているのだろうかとカヤは思う。

 

『……今からある映像を送ります。まず、それを見てもらっていいですか』

 

 その言葉の後、リンから送られてきたのは野外の模擬訓練場での映像だった。主観はドローンカメラと設置カメラによる映像のもので、生徒の顔などは遠く良くわからなかったが、その内容を要約するとこうだ。

 

 

 

 

 ――『たった1人の生徒が、模擬戦相手の数十名の特殊部隊の完全装備をした生徒を制圧して勝利しているものだった』

 

 

 

 

「……ほう。見事なものですね」

 

 

 思わずカヤも感嘆の声をあげるほどだった。そのたった一人の生徒の武器は、このキヴォトスであるメーカーが生産している対物ライフル、『MF TAC-50』というものだ。ただ、遠目でよくわからないが、恐らく専用にカスタムされているオーダー品にも見える。サブ武器として使用しているのは、ヴァルキューレのカンナも愛用している『第17号ヴァルキューレ制式拳銃』、その市販モデル。

 

 特にカヤが目を見張ったのは、その彼女の戦い方だ。そのたった1人で勝利した少女は、メイン武器を対物ライフルという長物に据えながら、前に出る戦い方をしている。それでいて、近距離でのライフルの取り回しや、走ったり飛んだりと動きながらの精密射撃。他にも様々な戦い方でとても大胆に相手を制圧し、近づかれれば素早くサブ武器とCQCで制圧していたのだ。

 

 薄金色の長髪をサイドテールにしており、背はミヤコと同じくらい。対物ライフルと戦闘中、それを武器にしたり盾にしたりしていた黒い大きなガンケースが特徴の生徒なのだが、カヤにはこれほど見事な戦い方をする生徒に覚えがない。

 

 これほどの実力者なら、ヴァルキューレかSRTだろうかとも考えたが、該当者が居ない。少なくとも自分はヴァルキューレとSRT、防衛室と連邦生徒会の構成員の顔と名前はすべて覚えているはずなのだが。

 

「細かいことを言い出せばまあ粗い部分はありますが……それでも素晴らしい実力なのは確かです。しかし、この生徒に覚えがありませんね。どこの生徒ですか?」

 

『カヤ……『オリュンポス総合学院』は知ってますよね?』

 

「そりゃまあ。というかウチにも何人か居たでしょう、オリュンポスの高等部への進学蹴って連邦生徒会入った人。ハイネさんなんかその筆頭じゃないですか」

 

『……その中等部の3年生で、()生徒会長の子なんですよ』

 

「いやすごいエリートじゃないですか。……ん?元?どういうことです?」

 

 『オリュンポス総合学院』。幾多の自治区と学園があるキヴォトスにおいて、その中でもトップレベルのエリート校でありお嬢様学校でもある学校である。特殊作戦や執行作戦といった荒事専門の最高学府をSRTやヴァルキューレの公安局や特務局、科学や技術ならミレニアムと言ったものが上がるが、オリュンポスはどの分野にも特化していないが総じてのレベルが高い。だからこその総合学園なのだ。

 

 総合学園というその名の通り、あらゆる方面の総合的なことを学べ、そのための専門コースも用意されている。そして、キヴォトスでは数少ない高等学校の上、大学もあり初等部からエスカレーター式で大学まで行ける、超エリートにしてお嬢様学校である。

 

 なお、連邦生徒会内では有名な話だが体育室長であるハイネが普段の本人の立ち振舞や、ヘルメット片手に『今日も一日、ご安全に!』『ヨシッ!』などと言っている姿から想像もできないが実は超のつくお嬢様であり、オリュンポスの中等部時代は成績優秀の王子様系キャラで通っていた。

 

『単刀直入に言うのだけど、その子。進学先をSRTに考えているそうよ。もしくは連邦生徒会防衛室』

 

「それはなんとも……いや、うーん。ウチに来てくれるのは嬉しいですよ?だって防衛室、万年人手不足で大忙しですし。カンナさんに頼んでヴァルキューレから人手回して貰っても全然足りませんし。だから予算多めに貰ってますし設備だってかなりいいの貰ってるんですけど。しかし、SRTへの進学は……いや不可能ではないですし嬉しいですよ? ――ですけど」

 

『……ええ、そうね。はっきり言ってしまえば、今のSRTに進学するのは相当の変わり者か物好き、としかいいようがないわ』

 

 大前提として、SRTの敷居は極めて高い。キヴォトスでも屈指の難易度を誇る学科試験、そして厳しい試験官が担当する実技試験を潜り抜けて適性があると判断されてその狭き門を潜る生徒はとても少ない。ミヤコ達の世代でも、彼女達4人を抜くと他に合格したのは6名。数百人という志望者が居て、合格したのは10名という狭き門である。

 

 そして現在のSRTは、連邦生徒会長の失踪を受けて休学処置を受けている。全ての学習については自習という扱いで、BDを使って自ら行わなければならず。SRTという学校として実技訓練などの実戦訓練を行うことも出来ない。だから、その方面についてはヴァルキューレの公安局や特務局の訓練に参加させてもらい、SRTの生徒各々がこちらも自分でやっている。

 

 中にはそれぞれの伝手を出し合って、ゲヘナの万魔殿の不良生徒制圧任務や実戦訓練。トリニティの救護騎士団の救護訓練への参加。他にはゲヘナとトリニティそれぞれに存在する部隊であり、最も抑止力のある部隊と言われている『狂犬部隊』や『神聖十字騎士団』の訓練に参加する者まで居る。

 

 今のSRTは、進学を希望することは出来てもそこで学ぶことについては自ら学びに行かなければならないという状況なのだ。無論、SRTの生徒達は精鋭だ。後輩を無碍に扱うことはしないし、学びたいと言えば喜んで教えてくれるだろうしヴァルキューレや防衛室への橋渡しもしてくれるだろうが。

 

 そんな現状のSRTに志望するのは、ハッキリ言って物好きである。もしくは、相当の信念や熱意を持っているからだろう。だが客観的に考えれば、オリュンポスという進学を蹴ってSRTや防衛室を選ぶのはかなりの変わり者である。

 

 

『もうひとつ、というかこっちがある意味問題なのだけれど……この子、SRTや防衛室を志望するにあたり経験を積みたいから、ということでシャーレへの参加を希望してきたの』

 

「いやいや中々ぶっ飛んでますね!?私でも驚きますよ!?」

 

『……それを本人が学園側に伝えたら、『生徒会長が不在になったら困る』なんて言われるものだから』

 

「嫌な予感がしますね、ものだから?」

 

『――生徒会長辞めてシャーレへの参加を希望しに来まして』

 

「うーん気持ちは嬉しいですけどなんとも複雑な気持ちですね! ……なるほど、つまりその子の対応のために私とRABBIT小隊数名を呼びたいと。しかし、シャーレの案件なら先生を通すべきでは?」

 

 そう。シャーレとは基本的に、先生の指示で動くことが多くその組織の最高責任者は先生である。入部届には当然先生は目を通すのだし、何故先生ではなく自分達を呼ぶのかと疑問する。

 

『先生には実は既に話はしてあるんです。ですが……今回に限っては、先にカヤ。あなたに会ってもらったほうがいいと思いまして』

 

「私に?それまたどうしてですか?」

 

『その子の学籍情報を送ります。確認して下さい』

 

 言われ、送られてきたものを確認する。

 

 名前は『天刻(あまとき)ミヤ』。オリュンポス総合学園中等部3年生で元生徒会長。成績は極めて優秀で、一年生の頃から首席を逃したことはないほど。そうして、カヤの目を惹いたのは。

 

「『アレキサンド・クロックワーク社』の社長令嬢……なるほど、驚きましたがあのカスタムされていたあれはそういうことでしたか。確かに、生産元の会社の社長令嬢であれば、ワンオフのものを作れてもおかしくありませんね」

 

 『アレキサンド・クロックワーク社』。キヴォトスにおける大企業の中でも超のつく部類のひとつであり、日常生活品から銃器や車や航空機、主力兵器まで。あらゆる製品の製品開発と展開をしている高い素質を持つ技術者の集まりの企業である。こだわりが強い製品が多く、値段は張るが性能は一級品のものを展開している。

 

 

 

『カヤ、その子の写真を見て何か思いませんか?』

 

「んん?写真ですか?ええっと……次のページですね。 ――ああ」

 

 最後の言葉の後、カヤは沈黙した。投影ディスプレイに表示されるのは、本人の写真と個人情報。カヤは、その写真に釘付けになったのだ。最初は目を見開いて、次いでに見せたのは。安堵したような、そんな声と表情だった。

 

 

 

 

 ――『怪我はしたけど、みんな無事で避難できたよ。みんな、お姉ちゃん達が守ってくれたお陰。だから本当に、本当にありがとう』

 

 

 ――『こんなものしか贈れないけど、どうか受け取ってください!』

 

 

 

 

 覚えている。

 忘れるはずなど、あるわけがない。

 何故ならば。あの時の事とあの子の笑顔は自分にとってのすべての始まりであり。

 

 

 自分が、初めて守れたと思った笑顔なのだ。

 

 

 あの時受け取った折り鶴は、今でも大切に保管している。友人であるリオに頼んで作ってもらった、小さなとても頑丈な透明な箱。そこに入れてそれを、防衛室の室長室の机の上に大切に飾っている。表示されている写真の少女は、確かにあの時と比べると随分と大人びた雰囲気になっているが、髪型や顔つきは変わっていない。写真を見て、すぐあの時の少女だと気がつくことが出来た。

 

 電話先でカヤが沈黙したことで、長い付き合いであるリンは察して彼女もまた沈黙した。懐かしさと安堵感。それを暫く感じたカヤは、電話先のリンに『……すみません。待たせましたね』と言う。

 

 

「あの時のあの子が……そうですか。なんというか、感慨深いものがありますね」

 

『……カヤ、気持ちはよくわかります。ですが』

 

「わかってますよ。私個人の気持ちと、シャーレへの件は別です。会って、そうですね。テストでもしてちゃんと真面目に判断する。その結果をリンへと報告して、最終的に私と先生で相談して決めるということでいいんでしょう?」

 

『はい。ちょっと色々複雑なことになっているので……アビドスの件で大変だと思いますが、お願いできますか』

 

「ええ、任せて下さい。 ……ふふ、顔を合わせるのはあの時以来ですか。楽しみですね」

 

 

 その時のカヤに浮かんでいたのは、期待という笑みだった。

 

 




拙作では特に重要な人物に関わる話を『SubStory』と表記しています。つまりミヤコとこの子はかなり重要な人物。『英雄』という存在に特に関わる人物達。祝福しよう、少女達よ。君達の末路は英雄だ。

■MF TAC-50
そのまんま。元ネタはマクミラン TAC-50。専用にワンオフ化されたものをミヤちゃんは使っている。

■ミヤちゃん
 本格的に出てくるのは次から。カヤちゃんの光に焼かれてしまった子であり、未来の『英雄』。
 喜べ少女よ。君の願いは叶う――祝福しよう、お前の末路は『英雄』だ。

■狂犬部隊
 ゲヘナの最終兵器部隊。好戦的かつ忠誠心の強い文字通り狂犬の如きメンバーで構成されている。ヘルシングの吸血鬼武装親衛隊みたいな装備をしている。忠犬で、万魔殿の幹部メンバーとマコト、ヒナ、リリィの言うことは忠実に実行するがそれ以外からの命令は聞かない。マコト直下の精鋭諜報部隊もこの部隊内に存在する。

■神聖十字騎士団
 トリニティの最終兵器部隊。なのだが、ティーパーティーの名令を聞かずシスターフッドのサクラコ、もしくは救護騎士団のミネの命令でしか動かない。狂信者の集まりであり、神の崇拝と他者の救済を第一に考えている。ヘルシングの十字軍みたいな装備をしている。
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