【魔法少女はここにいる】 〜たまたま声をかけた女の子が勝手に魔法少女に変身して悪の組織と闘い始めた時のマスコットの気持ちを述べよ〜 作:私貴方私(Y-ou@so-soなフリー)
みんなも飼ってるペットをこっそり服の中に隠して学校へ連れてくる妄想したことあるやろ?
私が『ぴーなっつ』と名付けられて数年。
宇宙船が墜落した影響で記憶が曖昧になっていた私は、ただのペットとして少女と共に過ごした。
ペナルティによって変更されていた『極拘束形態アバター』は、どうやらこの世界の
おかげで怪しまれることなく、この無防備な状態をやり過ごせた。
しかし、記憶をなくした私に対し、この刷り込みとも言える状況が『とある変化』をもたらした。
「ミヤコ。もっとピーナッツちょうだいな。ウチあれないと生きてけへんねん」
『変化』というのはピーナッツ依存症のことではない。
「まさか『ぴーなっつ』が喋れるハムちゃんやとは思わへんかったわ。でもダメや。ハムスターにはピーナッツはカロリー高いらしいからな。回し車耐久もう3セットやったら考えとくわ」
「うう、ミヤコのいけず。けちんぼ。でもピーナッツ食べたいからやるわ」
アバターの自動翻訳機能が『関西弁』を摂取し過ぎて、ウチの思考にまで侵食してきてる。
学習開始してから1ヶ月以内やったらフィルタで除外できたやろけど、あいにく記憶が戻ったのは事故から数ヶ月後や。
ウチの頭はすっかり関西人にやられてもうた。
「へぇー、ぴーなっつは別の世界から来たハムちゃんなんやね。そっちの世界にも関西あるんか」
「もうそれでええわ…」
彼女は事故現場で気絶してたウチを拾い、今日まで守ってくれた少女。
名前は『ミヤコ』。
この超強力な関西弁ウィルスの元凶や。
ウチは記憶が戻った拍子に色々喋ってしもたようで、ミヤコにはウチが喋れる存在やと知られてる。
そしてなぜか、
『異世界関西のハムスター王国から脱走してきた王女様』
やと勘違いしてる。
異世界関西ってなんやねん。
まあええわ。
中学生なんて多感で妄想が溢れる時期やしな。
お姉さんなウチが大人の対応を子供に見せるんは当然の義務や。
ミヤコはめっちゃええ子や。
この子が魔法少女になったりせんかな?
年齢的にまだまだチャンスはありそうやし。
記憶を取り戻してからのウチは、ミヤコの家を拠点にして、当初の目的通りに魔法少女を探す活動を開始した。
まずは装備を回収するため、ウチが乗って来たオンボロ宇宙船を探したんやけど……。
現地民によってゴミの不法投棄と判断されたらしくてな。
処分されてたわ。
そんな殺生なことある?
手元に残った装備は、頭に直接ぶち込んでる『魔法少女探索レーダー まほここ』と『アバター生成器』のみ。
あとは、自前の『魔法少女を探し出す執念』と『魔法少女を嗅ぎ分ける嗅覚』くらいやな。
まあ、これだけあればなんとかなるやろ。
ウチは決意を新たに最初の行動に出た。
「なぁなぁミヤコぉ。ウチも学校連れてってぇな」
「え、なんで学校なんていきたいん?何も面白ないであんなとこ」
ミヤコは渋い顔をしてる。
返す言葉にも少し毒がある。
学校とやらがあんまり好きやないらしい。
もしかしてボッチってやつなんか?
「いやぁ、ウチの国とどう違うんかな思て興味あんねん」
「せやけどなぁ。ペットなんて学校に連れてったらセンセに怒られそうやし」
悩むミヤコ。
もうちょい押せば行けそうやな。
ミヤコが魔法少女適齢期ってことは、ミヤコの同級生も魔法少女適齢期ってことやねん。
つまり、『最も効率的に魔法少女を探せる』ってことやね。
これを逃す手はないやろ?
その後、結局ミヤコからは断られてしもた。
でも問題あらへん。
ウチの身体は『はむすたー』。
つまり、いくらでも潜り込めるってことやねん。
憂鬱な月曜日の朝。
ミヤコはいつものように制服のブレザーを羽織り、いつものように朝食を取り、いつものように母親へ声をかけて家を出た。
なんだか少し肩が重い。
大嫌いな月曜日だからだろうか?
彼女は肩を回すが違和感は無くならない。
横断歩道を通り、橋を渡り、長い坂を登り、学校の校門が見え始めた頃、ミヤコは何となくポケットに手が触れた。
彼女はポケットの中をゆっくりと覗き込んだ。
「ぴーちゃん。こんな所で何してるん?」
「あちゃ、もうバレてもたか」
ウチの潜入能力もまだまだらしい。
あとちょっとのところでミヤコにバレてもうた。
しかし、ミヤコは柔らかく微笑みそっとポケットを覆うように手を置いた。
「しゃあないなぁ。今日だけやで?もう今から帰ったら遅刻やからな」
「よっしゃ! ミヤコはやっぱりええヤツやな。このまま学校にいるヤツ全員ひん剥いて魔法少女か確かめたろうや!!」
「……やっぱりコイツその辺に捨ててこうかな」
「ぐへへ、魔法少女候補がこんなにおるなんて学校っちゅうのはパラダイスやな」
「ちょっ! あんたいつの間にそんなとこ入ったん!?」
あの後、ウチはミヤコによってカバンの中に封印されてたんやけど、今はミヤコのブラの中にいる。
なんか邪魔なクッションがあったから、それ外したらちょうど良いくらいのスペースを確保できた。
温度もちょうど良いくらい。
「ウヒョー。あの子とか魔法少女のリーダーにぴったりやん。あっちのボーイッシュな子もええな。あっちのほんわかしてる子はテクニカルな戦い方しそうやな。ちょっとミヤコ、足場不安定やから寄せてくれへんか?」
「早退しよかな…」
ウチは子供だらけの教室に大興奮。
さっそく教室で授業を受けてるミヤコの同級生達を値踏みした。
一人一人が魔法少女になった時、どうやって戦うか妄想するのが堪らなく楽しい。
しかし、ウチは失念してた。
ハムスターとしてのウチの習性。
ぷちっ
ウチは咄嗟に外れたブラの切れ端をそれぞれ掴む。
間一髪でそれが外れるのを抑え込んだ。
ナイスウチ。
ミヤコはプルプル
ウチもプルプル
「じゃあ、この問題は…ミヤコ解いてみろ」
!?
先生がミヤコを指名した。
今は数学の授業中や。
指名されたら黒板まで行って直接答えを書く必要がある。
でもこの状況で立ち上がるのは不味い。
……。
「分からなくても良いから、分かるところまで書いてみろ。分からないところを見つけるのも勉強だからな」
……。
ミヤコ、無理やで。
動いたらウチの筋力的に耐えきれへんて。
…。
「はい、先生。私がその問題解きたいです!!」
動かないミヤコを見かねたのだろうか?
別の女子生徒が元気よく手を挙げ、先生が何かいう前に黒板へ答えを書いてしまった。
キーンコーンカーンコーン
「正解、サチはしっかり理解できてるな。じゃあ、授業はここまで、みんな宿題忘れるなよ」
授業が終わり、先生が退室する。
そして、先ほど代わりに質問に答えてくれた女子生徒がこちらへやってきた。
「ミヤコちゃん。大丈夫?体調悪いなら保健室まで付き添うよ」
「サチさん…その、そうやなくて……」
ミヤコは胸を押さえている。
しかし、サチの目にも切れてしまったブラの残骸がうつる。
「……ああ、なるほどね。取り敢えず保健室行って先生に相談しよ」
ミヤコが保健室へ連れて行かれる。
なんや、ちゃんと友達おったんか。
なら何の心配もいらんかったな。
今回ウチがミヤコの学校に強引について来た『本当の目的』。
それはミヤコの学校嫌いの原因を突き止めることやった。ホントダヨ?
杞憂やったみたいで良かったわ。
Side:ミヤコ
「血は争えへんなぁ」
「いやいや、ハムスターにブラ噛み切られる運命の一族なんて嫌やで」
うちはサチさんに連れられて、保健室へ向かった。
この学校にある保健室の先生はうちの叔母だ。
よく知っている仲でもあるので、全部事の経緯を話す。
『ハムスターをこっそり学校に連れて来て匿ってたらブラを噛み切られた』
字面にするとやはり相当頭おかしいわ。
めちゃくちゃ怒られることを覚悟してたけど、叔母は予想に反して大爆笑するだけだった。
どうやら叔母も学生時代にこっそりハムスターを連れて来て盛大にやらかしたことがあるらしい。
生徒会選挙演説中、相棒のハムスターにブラを噛み切られたが、開き直って堂々としていたら何とかなったらしい。
叔母のあまりの猛者具合に落ち着きを取り戻したうち。
でも、ぴーちゃんは学校出禁。
あいつは後でしっかり怒らんとあかん。
躾けは飼い主の義務やからな。
「あんたは良い友達いて良かったな。うちん時は慰めてくれる友達おらんかったからな。ハハハ」
「いや、サチさんは別にそんな感じやなくて…」
「はい! ミヤコちゃんは面白くてカッコいいし、私も友達で良かったですよ!!
サチさんが満面の笑みで、うちの良いところを叔母さんに話していく。
何だか照れる。
関西から引っ越して来て、今までの生活からガラッと変わり、周りには知らない人ばかりになった。
『友達ってどうやって作ったっけ?』
分からなくなっていた。
友達のいない学校なんてつまらない。
でもうちにも友達がいたらしい。
友達になりたいと思っていたのはうちだけやなかった。
「ミヤコちゃん。今日一緒に遊ばない?新しい魔法少女映画の限定Blu-rayが手に入ったんだよ。一緒に見ようよ」
「魔法少女? うちはあんまりよく知らんねんけど」
「大丈夫。私が全部解説するよ」
サチさんは魔法少女が好きらしい。
ぴーちゃんも魔法少女が好きみたいだし、これを機に見てみるのも悪くないかも。
うちは関東に来て『初めての友達』と『初めてのお泊まり会』をした。
サッちゃん。
魔法少女は面白いけど、徹夜はしんどいわ……
■ おまけ
「へんしん! 魔法少女ブラシカさんじょー」
「やぁ、君。魔法少女?」
「きゃー、へんなタコ!!」
ピピピピピピピピ
またか。
なんでブザー鳴らすんや。
なんでなんや?
ウチ、魔法少女かどうが尋ねただけやん?
せっかくアバター機能のロックが解除されたから、人型になったのになぁ。
人型になれるようになったことで、ウチはミヤコに引っ付かなくても外へ出れるようになった。
このことはミヤコには秘密にしている。
無駄に心配させたくないしな。
こないだの事故はめっちゃ怒られた。
ウチの最近の日課は、『まほここ』が示す魔法少女率が高い子供に声掛けしつつ、観光地を巡ること。
この世界は意外と楽しめるものが多い。
見ていてぜんぜん飽きない。
しかし、『魔法少女探し』の方は全く進展がない。
今回も本物の魔法少女やなく、魔法少女アニメ好きのただの女児やった。
あの時感知した魔法少女の反応どこ行ったんやろか?
ん?
おおお、キタキタキタァああああ。
これやこれ。
やっぱり異世界ワープで『時刻情報』がズレてたらしい。
今、行くで魔法少女!!