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「そういや錦木、昨日の晩飯何食った?」
「え、今?」
硝煙漂うビルの中、赤でも青でも白でもない至って普通な格好をした少年からの唐突の質問に、赤い制服の少女―――
結論から言うと、此処は戦場である。
銃声と怒号が響き渡る戦場だ。少年少女は現在進行形で、その敵から身を隠している最中だ。
そうであるにも関わらず、特別声量を落とす事もなく平然と話し掛けてこられたのだ。そりゃ困惑もする。
「ちなみに俺はラーメン食った。二郎系」
「うわー、良いなー。何処の店?」
「『小二郎』って名前の店。名前と量が見合わない事で有名」
二郎系ラーメンの店の中でもかなり有名で、その名前に似合わない量の多さで知られている店である。
デフォルトで野菜の多さとチャーシューの量が凄まじいのだ。少年はそれを晩飯にしたらしい。
そのラーメンの凄まじさを知っていたのか、千束はぎょっとした顔で少年を見た。
「えっ、あのラーメン食べたの!? 全部!?」
「頑張った」
「一言に全てが篭ってるなぁ…」
瞳から光を失った少年の顔は虚無であった。
頑張ったという、ただそれだけの言葉には、しかし本当に頑張ったのだと言う真実が重く詰まっていた。
千束も苦笑を浮かべるばかりである。
「だからね、ぶっちゃけ動けるか怪しいんだよな」
「ちょちょ、それは勘弁してよ! 結構頼りにしてるんだから」
「え、マジ? やったぜ、めっちゃやる気出てきた」
「単純だなぁ」
「あ、でも今日は銃
「はいぃぃぃ!?」
突然語られる真実に、つい大きな声が出てしまった結果―――
「居たぞ! 柱に隠れてやがる!」
「撃て、撃ちまくれー!」
敵に居場所がバレてしまった。
ドドドドドッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!
銃声が重なり、数え切れない程の弾丸が2人が隠れる柱を攻撃する。
ボロボロと崩れていく脆い柱の裏で、千束は遺憾の意を示した。
「ちょー!」
「え、悪いの俺?」
「君がとんでもないカミングアウトするからじゃんか!」
「えー。仕方ないじゃん、腹一杯になると頭回らなくなるもんでしょ?」
「だからって銃忘れる事ないでしょー!? 本当にリリベルだったの!?」
彼女の反論は尤もである。ぐうの音も出ない完璧で完全な正論である。
元はリリベルと呼ばれる組織に所属していた少年は、隊で列を成して銃火器を用いて仕事を行う兵士の一人だった。
にも関わらず、少年はどうやらリリベルの時から忘れ物が激しかったらしい。戦場に武器を忘れるなど何事か。
「失礼な! しっかりリリベルだったぞ、俺! リリベルの時から偶に忘れてたっつーの!」
「それダメじゃん! しっかりリリベルしてないじゃん! なんでリリベルの時からやってるのに直さないんだよ、バカー!」
「バカぁ!? お前バカっつったな!? あーあ、もう知らんっ! どうぞどうぞ、御一人で無双してくださいな! バカなんで好きに遊んでますから!」
「めんどくさいなぁ、もう!」
やいのやいのと言い争う二人。
その日は、二人の親の様な人にこっぴどく叱られてしまったとの事だった。
ちなみに、敵の撃退は何とか成功させた。
Direct Attack―――「DA」の通称で呼ばれる、テロリスト等の犯罪者達を暗殺する事でテロや犯罪を未然に防ぐ治安維持組織。
事件など起こる事がないと言われるこの街の治安を守る国家機密の組織には、二つの実働部隊がある。
少女だけで構成された
そのリコリスには最強の存在があり、それに対してリリベルには最弱……ではなく、しかしある意味では最凶とも呼べるかもしれない凄まじいバカが居た。
リリベル随一のバカ。そう呼ばれる少年―――
これは、喫茶店の顔を持つ支部に置いていかれたリリベル随一のバカと彼女達の物語である。