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たきながリコリコに所属する事になってから、早くも一週間が経過した。
仕事覚えが早い事もあってか、たきなは喫茶店としてのリコリコでもよく働いてくれている。まぁ、愛想に関しては本人の性格もあるのでまだ厳しい所ではあるが、そこはご愛嬌だ。
彼女も喫茶店リコリコの一員である。そんな彼女には、一つ気になる事があった。
「木蔦さんは、何故リコリコに居るんですか?」
「へ?」
リリベル随一のバカ――――――そんな不名誉で知られる少年が、何故このリコリコに所属しているのか。
それが、気になって仕方なかったのだ。
「いや、お前知ってるでしょ? 俺がその、アレよ。アレだから置いて行かれたって」
「貴方があまりにもバカで、その所為で隊を乱したから置いていかれたのは知っています」
「おい言うんじゃねぇよ! 敢えてアレってぼかしてただろうがよ!」
「事実ですので」
「ほんまムカつくこの後輩……!!!」
「ですが、やはりおかしいと思います」
リリベルは、リコリスのそれと比べても最も軍隊らしい組織だ。リコリコが少女兵であるとするならば、リリベルは訓練に訓練を重ねた子供質で構成された軍隊である。
そんなリリベルにおいて、バカであるが故に隊を乱す存在を置いていくだけで済ませるものだろうか?
答えは否だ。
リリベルという組織を乱す危険因子を生かす必要など、何の意味もない。寧ろ組織に悪影響を及ぼすばかりの筈だ。
だからこそ、彼が生きて此処に居る事がたきなには不思議だった。
「え、それ遠回しに死ねって事? 流石に酷くない?」
「い、いえ。そういうつもりで言った訳では……」
「だよね!? 良かったー、流石に友達から死ねとか言われたら傷付くわ。泣いて塞ぎ込む所だった」
「メンタルクソザコですね」
グサッ! と、鋭い言葉が木蔦くんの弱々豆腐メンタルに刃を突っ込んでいく。
クソザコ…年下からクソザコって言われた……錦木にだってそんな酷い事言われたことないのに…………。
つい泣きそうになってしまった。だが泣かぬ。泣けぬ。泣くのは―――そんな酷い言葉を教えた奴を引っぱたいてからだ!
「口悪いなお前! 誰だ、お前にそんな言葉を教えたのは!」
「ミズキさんから」
「おっけぃ、アイツしばき回したる…! おい飲んだくれババアッッッ!!!! テメェ井ノ上になんつー言葉教えてんだしばき回すぞゴラァッ!!!」
「事実を伝えて何が悪いってのよ、このバーカ!」
「バカじゃねぇって何度も言ってんだろうがッ! この行き遅れがァ!!!」
「はぁーッ!?」
「やんのか、お゛ぉ゛ん? いいぜ外出ろよ……久々にキレちまったからよぉ…!」
バチバチと目から火花を散らしながら睨み合う二人。大人と子供のやり取りだろうか、これが。
まぁ、争いは同レベルの者同士でしか発生しないという言葉があるのだ。つまりは、この二人は同レベルでしかないという事だろう。
その場合、ミズキは大人であるにも関わらず、バカ呼ばわりされるだけでキレる少年と同程度という事になる訳だが。
あながち間違いではないので、それはそれで問題無い様な気もするが。
とは言え、流石にこのまま見過ごす訳にも良くないので。
「こら、二人共! 騒がしいぞ」
「ほらほら、せいよーくん。落ち着いて落ち着いて!」
千束にとっては、この二人のやり取りは実に慣れたものだ。わりと初期の頃から、いがみ合う事が多い二人だ。自然と、それを止める役目を担ってしまう。
まぁ、彼女が担うのは基本的に木蔦を引き剥がす役目なのだが。
「HA・NA・SE! 井ノ上に酷い言葉を教えたコイツを、俺はこの手でしばき回さねばならん!」
「ちょいちょい、あんたはたきなの父親かっての!ってか力つっよいなぁ、もう! たきな! たきなも止めるの手伝ってー!」
「手伝うって……どう手伝えば良いんですか?」
「へ? あー、そうだなぁ……前から抱き……いや、それはちょっとアレだなぁ…なんかヤだし………じゃあ、何か言ってあげて!」
「木蔦さん。いい歳して恥ずかしくないんですか? もう18なんですよね? あと少しで大人になるというのに、いつまでも子供みたいに振る舞わないでください。情けない」
「おうおうちょっと、いや結構酷くねぇか!? マジめっちゃ毒舌だけど木蔦くん君に何かしたかなぁ!?」
初対面の頃からわりと毒舌ではあったものの、この一週間を経て毒舌にさらに磨きが掛かっている。
元々が決して愛想が良いとは言えず、しかし良くも悪くも素直な性格だ。そんな彼女がこうもハッキリと毒舌を回すのは木蔦だけである。
というか、本部所属時代と比べても木蔦だけである。
「まぁ、木蔦さんなので」
「俺だから何? え、何なの? 俺ってお前の語彙力豊かな暴言のサンドバックか何かなの? そんな嫌われる様な事した俺?」
「いえ、嫌っている訳ではありません。ただ……木蔦さんなので、良いかなと」
「だからその『俺だから』って何なんだよォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!」
信頼されているのか、それともバカだから好き勝手言ってもいいかな、なのか。
まぁどちらにせよ、毒舌を回して良い理由にはならない気がするけれども。
「まぁまぁ、落ち着いて! たきなもせいよーくんを信頼してるって事でしょ! ね?」
「え、マジ? これあれか、ツンデレってやつ? 井ノ上もしかしてツンデレか?」
「えぇ、まぁ。悪い意味で信頼はしていますが」
「ごめん錦木、俺この歳になって泣きそう。後輩の言葉一つ一つがめっちゃ痛い……」
「わわっ、せいよーくん!? 本当に涙目なっねるじゃん! ちょ、たきなー! あんませいよーくんイジメないでよぉ! この人豆腐メンタルなんだからさ!」
「本当にクソザコですね」
それがトドメになった。
その言葉を皮切りに、木蔦の心の壁がそれはもうC4で爆発されてしまったかのようにガラガラと崩れていったのだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「本当に泣いちゃったよ!? あー、ほらほら。泣かないの泣かないの!」
「うっす」
「泣き止むのはやっ!?」
「いや、この歳になって頭撫で撫されるのは流石に恥ずかしくて……」
「えー、良いじゃん撫で撫で! ほらほらー!」
「ちょ、やめろって! 俺は犬じゃねぇんだぞこらっ、おーい!」
「ねぇ、私達何見せられてんの?」
「仲が良くて良い事じゃないか。たきな、餡蜜食べるか?」
「…いただきます」
今日も、リコリコは平和である。