滅相もない、この様に私は笑顔が素敵な一般ホロウ調査員で……   作:マジキチスマイル

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閑話
治安員とホロウ調査員


 

 その日、新エリー都のヤヌス区で共生ホロウが開くという事件が発生した。なんでもない、ごくありふれた事だ……特に、新エリー都では。

 

 しかし、そんなホロウに巻き込まれた市民達はありふれたでは済まされないほどに恐怖を感じ、忘れられない経験となる。

 

 このヤヌス区に開いた共生ホロウにも、当然巻き込まれた一般市民がいる……そして、それを助けるために動き出す組織もまた然り。

 

 今回動き出したのは、新エリー都の治安局の部署の一つ特務捜査部が動き出す事となった。

 

 

 

 

 

 だが、そんな事はつゆ知らず開いたホロウに自ら入り込むとんでもない大馬鹿が居る。

 

 その男の名はテル・ラジーラ……デストロイヤー、笑顔の素敵な男を異名にするホロウ調査員だ。

 

 彼は、特務捜査部に命令が下るよりも先にホロウへと飛び込んだと言う……その理由は唯の一つ。ホロウの中に存在する化け物、エーテリアス狩りだ。

 

ヂィェェェストォォァァァ!!

 

 手に持った黒鉄の大剣を振るって、周りに迫りくるエーテリアスを薙ぎ倒していく。その後ろには、姉妹らしき幼い二人の少女が居た。

 

キィィィィェェェェェ!!

「ひっ……」

 

 その少女達は、頭を丸めてひたすらに縮こまる。

 エーテリアスの恐怖というのもあるが、一番は……とても良い笑顔で大剣を振り回すテルを恐れているから、と言うのが挙げられる。

 

 掛け声を上げながら笑顔で大剣を振り回すその姿は、最早どちらが化け物かわからないほどだ。

 

 しかし、そんな怯える少女達を無視してテルは大剣を使い、近づいてくるアルペカといった雑兵のエーテリアスを叩き切り吹き飛ばしていく。

 

 切り裂かれたエーテリアスは、上半身と下半身が分かれ回転がかかった勢いのまま吹っ飛び消滅する。

 

 やがて、エーテリアスの討伐が終わりテルを額に汗を拭いながら、後ろにいる少女達を見る。

 

(さて、どーするか。)

 

 今回もいつものように突撃して、目の前のエーテリアスを薙ぎ倒して進んでいくと見つけたのが、この姉妹と思わしき少女たちだ。

 

 ホロウ調査員としてはここで脱出の手助けをするのが善行。

 

 しかし、姉妹達には完全に怖がられているようで、少し声をかけようとしただけで「ひっ」も声を上げられ怯えられている。

 

 テルはがどうしようかと頭を掻く……なお、彼は少女たちがここまで怯えている理由の半分が、テルの悪鬼の如く戦い方の性であることは分かっていない。

 

 

 しかし、テルガ頭を掻くのとそれと同じタイミングで、ホロウに生まれた裂け目から二人の少女が入ってくる。

 

 一人は赤のメッシュの入った髪をした生真面目そうな女性、もう一人はツインテールの三節棍を持った女性だ。

 

「一般人!?……大丈夫ですか!?助けにきました!」

「随分な獲物を持っているの。」

 

 生真面目そうな女性は一目散に怯える少女達にかけより、三節棍を持った少女はテルの獲物へと目を配りながら彼に近づく

 

 ――確かに、テルの獲物は異常だ。広い剣幅を持った黒鉄の大剣。普通なら何かしら仕掛けを仕込ませるのを、この大剣には何もない。

 

 ただ只管にデカく固く鋭い剣。それがテルの獲物だ。

 

「治安局の人間か。ホロウ調査員、テル・ラジーラだ。」

「特務捜査班、青衣じゃ。」

「同じく都市秩序部捜査課、班長、朱鳶です。」

 

 テルと二人の少女は互いに挨拶を済ませると、怯えている少女たちの方へと目を配る。少女達は未だに体を縮こまらせて、震えていた。

 

 青衣は、少し目を細めながら呟く。

 

「大分怯えているようじゃな……」

「それはそうです、まだ幼いのにホロウ災害に巻き込まれたりしたら……誰でもこうなります。」

「まぁ……そう、か。」

 

 三人は幼くしてホロウ災害に巻き込まれた少女達を哀れむような目で見る。……すると、不意にテルが言葉を紡いだ。

 

「そう言えば、他に巻き込まれた奴は?」

「生体反応はここにいる人間で全員です。」

「沈む瀬あれば浮かぶ瀬ありじゃな。」

 

 要するに不幸中の幸いと言う事だ。たしかに、突発的なホロウ災害で、被害者がこの少女達だけだったのは不幸中の幸いだ。

 

 すると、朱鳶がテルへ目を向けると一つ頼み事をする。

 

「ラジーラさん、この娘達をホロウの外まで連れ出すのに協力していただけませんか?」

「……ま、ここであんたらだけに仕事押し付けんのもな。護衛なら任せとけ。」

 

 テルがそう言うと、朱鳶はご協力感謝しますと頭を下げる。

 

 テルは、安心させようと少女たちへ近づいくと……口角を上げて、目を細めて、最早悪鬼にも見えるような笑顔を向けながら言葉を紡ぐ。

 

「大丈夫だ、すぐに楽になるからな(外に出られる的な意味で。)」

「「ひぃぃぃ!!」」

「ちょ、ラジーラさん!誤解を生む表現ですそれは!」

「何故ここまで怖がってるのか少し理解できたぞ。」

 

 朱鳶は慌てながら少女達に近づき、青衣は達がここまで恐れおののいている理由に目星をつけた。

 

 

 ……しかし、青衣に朱鳶は、まだ真の意味では少女達がここまで怖がっている理由を理解していなかった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 テルに朱鳶、青衣は、少女達を連れてキャロットのインストールしされたボンプを頼りにホロウの出口へと走っていた。

 

 その合間、ティルヴィングやアルペカ、ハティ等といったエーテリアスに遭遇することもある。

 

 しかし、その気配を察知するやいなや斬り付ける者がいた。

 

ヂィェェェストォォァァァ!!

 

キェェェェェェイ!!!!!

 

ヂィィェェェェァァァァァ!!

 

 その様な雄叫びを、恐ろしいほどの笑顔を向けながら黒鉄の大剣を振るってエーテリアスを斬り飛ばすテル,ラジーラ。

 

 その姿を見て、朱鳶は唖然とし、青衣は中々やるなと舌を巻く。少女達は怯えながら言葉を漏らす。

 

「うぅ……こ、怖い……」

 

 

「なんと言うか……凄まじいですね。」

「……なるほど、噂に聞くデストロイヤーとはあやつの事じゃったか。」

「デストロイヤー……と言うと、『笑顔が素敵な男性』の?」

 

 朱鳶や青衣も、ホロウ調査員にずば抜けて大きな大剣を振るうホロウ調査員がいることは知っていた。その男がデストロイヤーや笑顔が素敵な男性と呼ばれていることも。

 

 実際に目にして、インターノット等に流れる噂が事実であるのだと改めて理解する……。

 

「ふぅ……よっしゃ。ザマァ見やがってバカヤロウ。」

 

 テルは口悪く消えたエーテリアスにその様に吐き捨てると、黒鉄の大剣を肩に担いで振り返る。

 

「出口までは後どのくらいだ?」

「あと僅かです。お陰でスムーズに進めています。」

「こりゃ、どちらが助けに来たかわからんの。」

 

 青衣はそう言うが、テルとしてはそれは否定したい気分だ。テルがここまで暴れられるのは、朱鳶や青衣が少女達を守ってくれているからだ。

 

 彼女達が居なければ、テルはもっと苦戦を極めていただろう……それどころか、戦い方的に少女たちを守れない可能性だってあるのだ。

 

テルがそのようなことを言葉にしようとしたとき………テルの後ろに突然エーテリアスが現れる。

 

「ッ!」

「危ないっ!」

「っ!?」

「きゃっ!?」

 

 朱鳶のサプレッサーK22からの銃撃、青衣は稲妻を纏った三節棍を叩きつけて、テルの背後に現れたエーテリアスを撃墜する

 

 テルは大剣を構えながら、少女を庇うように声を上げる。

 

「すまねぇ!」

「子細無い。」

「あれは……!?」

 

 3人は同じ方向を向けば、そのエーテリアスは起き上がる。片手が巨大な大剣となっているエーテリアス……デュラハンと呼ばれるエーテリアスだった。

 

 しかも、そのデュラハンのエーテル反応はどんどんと上がっていき……デュラハンの中でも上澄みであることが容易に予想できる。

 

「また面倒なのが……!?」

 

 テルは心の底からのボヤキを、目の前のエーテリアスにぶつけるのだった。

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