滅相もない、この様に私は笑顔が素敵な一般ホロウ調査員で……   作:マジキチスマイル

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テル君の過去とか目的とかについて一気に色々触れます。


零号ホロウ編
妹って……いいよね。


 ビデオ屋『Random Play』

 六分街にある最近では滅多に少なくなったレンタルビデオショップ。

 

 こじんまりとした店だが、サービスと品物の良さは六分街どころか新エリー都でも中々の物だ。

 

 店主兼従業員のアキラとリンの兄妹の性格も相まって、地元で愛されるなくてはならない店の一つだ。

 

 今日もそんな店の中……店主の一人であるアキラが居ない中、妹たるリンが頭を悩ませながらビデオの配置を考えていた。

 

「えっと……これは……ここで、これは……こっちが良いかな。」

 

 いや、でもコレのほうがバランスが……なんて、こだわりにこだわって配置している中、カランカランとベルの音と共に扉が開く。

 

「!!いらっしゃいませ!」

 

 リンが咄嗟に入り口の方をみると入ってくるのは赤茶色の髪をした、猫背気味な一人の青年だった。リンは、この青年の事をよく知っている。

 

「あっ、テルさん!」

「おっす、リン。」

 

 『笑顔の素敵な男性』こと『デストロイヤー』ことテル・ラジーラ。彼は、店に入るやいなや、少し辺りを見渡すと一つ問いかけた。

 

「なぁ、アキラ居るかい?」

「お兄ちゃんですか?少し外に出てて――」

「そぉかい……いや、何、ちょっとアイツに話があってね。」

 

 そう言ってテルは頭を掻く……まぁ、居ないものは仕方がない、リンの口ぶりからしてそう遠くには行ってないし、すぐに戻ってくるだろう。

 

「……邪魔かもしんねぇが、アイツが来るまで待ってていいか?」

「ぜぇんぜん!……と言うか、テルさん背縮みました?」

「最近猫背でな、矯正しようと頑張ってんだが……上手く行かねぇや。」

 

 テルはそう言って乾いた笑いを漏らす……すると、テルは並びに並んだビデオの棚を見て、相変わらず感心を覚える。

 

「相変わらず圧巻だな。流石お前らの店だ。」

「っ!じゃあ、少しビデオ覗いていきません!?最近新しいのが入荷してて――」

「あぁ悪ィ、俺配信サービス派何だよ。」

 

 テルはそう言ってリンの誘いをバッサリ切り捨てる。別にビデオがどうこうって訳じゃなくて、ただ単に配信派なだけだ。

 

 普通のビデオ屋で言ったらぶん殴られそうな発言だが、そんな事は互いに先刻承知……もはや恒例行事みたいなものだ。

 

「えぇ……やっぱり……残念だなぁ……」

 

 リンはそう言ってしょんぼりした顔をして、心底残念そうに俯いて手に持ったビデオを撫でる。

 

 テルはやりにくそうに頭を掻くと、コホンと一息ついて呟く。

 

「まぁでも、配信もやるまでが長いからな、なんかオススメ二三くらい見繕ってくれねぇか?」

 

 テルがそう言えば、リンは顔をパァッと明るくしてまるで赤子のようにはしゃぎながらうんうんと頷く……こうして、しょんぼりするリンに負けて、結局テルがビデオをレンタルするまでが恒例行事だ。

 

 決してテルがチョロい訳では無い。互いに知らず知らずの内に良いカモになっている訳では……無い!!多分!

 

 リンは嬉しそうに新作棚の中からテルが合いそうな、好きそうな作品を只管に吟味する……ビデオ屋として、客に勧めるビデオに半端な真似はできないのだ。

 

「う〜ん、悩むなぁ〜!テルさんって割と王道系好きそうだし、嫌でも…………最近入ったやつだと、この痛快娯楽復讐劇とか――!!」

 

「ただいま。」

 

 リンが盛り上がり熱が入りそうになるタイミングで、裏方の扉が開いで、銀髪の青年――リンの兄であるアキラが顔を出してきた。

 

 リンは思わずずっけそうになり、これからなのに……なんて今にも言いそうなふくれっ面でアキラを見る……まぁ、当人訳わからないのが当然なので小首を傾げるのだが。

 

「もぉ!お兄ちゃんってば!」

「……この場合、理不尽って言葉は適応されるのかな?」

「されんじゃねぇか。」

 

 テルは肩を窄めて、そう呟いた……すると、アキラはテルを見て呟く。

 

「そう言えばテル。いつもの大剣はどうしたんだい?まさか、筋力落ちて持てなくなったのかな?」

「抜かせよ、車ん中だ。お前こそその女に刺されそうな面、もうちとどうにかできなかったのか?」

「なぁんで二人共挨拶がそんな喧嘩腰なのかなぁっ!?」

 

 リンは出会ってそうそうバチバチな雰囲気のテルとアキラを見て嘆く……リンからすれば、テルは兄であるアキラの友人。

 

 なのだが、何故だかこの二人すぐに煽り合うのだ……かと言って仲が悪いのかと聞かれれば全然そんなことはなく、寧ろ良好……少なくとも、一緒にお茶やコーヒーを嗜んで雑談する程度には仲がよいのだ。

 

 初手煽り合いも、当人達は当人達なりのコミュニケーションで軽口の範疇らしいのだが……何故それがこんな煽り合いに出力されるのかはリンも分からない。

 

「……さて、テル。話があるんだろう?裏に来なよ。」

「オーケー。」

「なんかさっきの煽り合い見てたら喧嘩の前触れみたいに聞こえるんだけど!?」

 

 この話の流れだと、所謂「後で裏来いや?あぁ?」みたいなコテコテのヤンキー物みたいな会話となってしまう。

 

「これでもホロウ調査員で戦闘要員だぜ俺ぁ……喧嘩でコイツに負ける要素ねぇよ。」

「リンが気にしてるのはそこじゃないと思うけど……まぁ実力行使じゃ勝てないね。実力行使なら……ね。」

 

 仲が悪い訳では無いのに、このバッチバチに牽制し合っているのは……一体何なのだろうか?リンは二人の関係性がなんだか益々分からなくなってくる。

 

「……と言う訳で、リン。ちょっと僕はちょっとこのゴリラと話があるから、店番少しの間頼むよ。」

「う、うん……」

「ダァレが脳筋クソッタレゴリラだ。」

「そこまで言ってないよ。」

 

 そんな風に話しながら、テルとアキラは店の裏へと行ってしまう……残されたリンは、男同士のはしゃぎように、何処か面白くないものを抱えつつも、またビデオを並べるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 場面を変えて、店の裏路地……そこでテルとアキラの二人は、先ほどまでの煽り合いが嘘のように神妙な面持ちで会話をつなげていた。

 

「聞いたぜ、なんでもプロキシのアカウントリセットしたみたいだな。何かあったのか?」

「まぁ……ちょっとしたトラブルがあってね。」

「お前がしくじるなんて珍しいな……」

 

 アカウント……と言うのは、ただのインターノットのアカウントではない。アキラやリンがしているもう一つの仕事――違法なホロウレイダーをサポートするプロキシとしての仕事。

 

 その中でも、アキラとリン達がコツコツと積み上げて伝説と言われたプロキシアカウント、パエトーンとしてのアカウントを、二人は消去したのだ。

 

「まぁ、ゼロからスタートになっただけさ、それに知ってる人なら知ってる話だからね。」

「それだけお前らを頼りたいホロウレイダーも多いって事か……まいるね、どうも。」

 

 そう言って頭を掻くテル……そんなテルに、アキラは微笑みながら意地悪く問いかける。

 

「君も、その違法なホロウレイダーに味方するプロキシと、こうして捕まえもせず話しているのは…どうなんだい?」

「俺ぁエーテリアスをぶった斬るだけだ。逮捕だなんだってのは他の部署の仕事だろ。」

「……君も君で中々酷いよな。」

 

 半ば職務放棄にもみえる態度……バレたら間違いなくクビ……いやそうなったらホロウレイダーになって、またホロウに潜るだけになるだけだからそう変わらないな。

 

 しかし彼がここまでになる理由を、ホロウとエーテリアスに固執する理由をアキラは知っている。故にそこをこれ以上咎めることもしない、つつくこともしない。

 

 すると、テルはまた頭を掻きながら、語る。

 

「……一つ報告がある。今度零号ホロウの調査が始まるから、また探ってみるのもアリなんじゃねぇか?」

「零号ホロウ……か。うん、分かった、助かるよ。」

 

 零号ホロウとは、旧都を飲み込んだ強大なホロウ。その力は絶大であり、強大。現在、この、零号ホロウの調査と鎮圧が当面の課題と言われるほどには、大きな壁である。

 

「君も参加するのかい?」

「当然のパーペキだ…………んで、お前の方どうだったよ?」

「――()()()()()()()()()()()()()()()、ゼロから始めてまた噂を調べ直してみたけど、類似する物はないね。」

「そう……か。」

 

 ――これが、テルがホロウ調査員になった理由の一端、パエトーンと頼ってまで情報を得ようとする理由、そして只管にエーテリアスを斬る訳の一つでもある。

 

 テルが持っているのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そのエーテリアスは、世間に広く知られている訳でも、対策が急がれる訳でも、世界の終わりを招くほど強大な訳では無い。ただ、テルにとっては必ず始末しないといけないだけの相手なのだ。

 

 そして、その姿形や存在は()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 テル以外誰も会ったことがない、だからその脅威も、畏怖も、力も、弱さも、何もかもがわからないままなのだ。居るのかどうかすらさえも……

 

「……テル。こんな事を君に言うのは心苦しいけど、少し無謀が過ぎると思う。」

 

 アキラの言葉に、テルはピクリと体を強張らせて反応する。

 

「……奴の見た目は脳に刻み込んである。」

「分かってる。『エーテリアスとは思えないほど肉ついた見た目』『発光する胸部と頭部』『色は青』……だけど、分かっているのは本当にそれだけだ。」

 

 テルは何も言わない。言葉も返さない、頷きもしない、目を開いてアキラを観ようともしない、ただ俯いて話を聞くだけだ。

 

「大体の容姿が割れているとは言っても、ホロウの中にいる特定のエーテリアス一体を探すなんて、砂漠から一粒の砂を見つけ出すよリ気の遠くなる作業だ……何より、そのエーテリアスが駆除されていない保証もない。」

 

 アキラの言葉のとおりだ。ホロウの中から特定のエーテリアスを探すなんて作業、出来るわけがない。もし他の治安維持部隊や調査局に始末されていたら、最早それで終わりだ。

 

「……。」

「……テル!」

「逆によぉ、お前……リンちゃんにもしもの事がって、その時が来た時、お前は納得できるか?」

 

 テルはアキラにそう問いかける。アキラは言葉を口にしようとするが、言い淀んでしまう。

 

「……俺にゃ無理だった。何度お気に入りのビデオ見ようが、仕事に打ち込もうが、ゲームに明け暮れようが……無理なもんは無理なんだよ。」

 

 テルは思わず拳を握りしめる……やらなきゃ前に進めないこと、それはどんな人間にも必ず付き纏うものだ。どんなに逃げようとしても、必ず捕まえに来る。それから逃れる為には、進む為には決着をつけるしかない。

 

「だから……だからァッ!!」

 

 静かだったテルはそう語気を荒げると……また口角を上げて笑みを浮かべながら、悪鬼の如く笑いながら、意志を示すように言葉を発する。

 

「だから!!俺は俺から()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

 ……家族がホロウ災害に巻き込まれて、エーテリアスに殺された、あるいはエーテリアスと化した。

 

 そんなのはよくある陳腐な話だ。仇を討とうと、こんな思いをする人を減らそうと調査員や治安局に入る者もいる。

 

 そして、多くのものが仇を諦める。こんな事は無駄だと思い知る。

 

 嗚呼、だがそれでも尚、テルは絶対に諦めない……必ずあのエーテリアスを見つけ出して、この手で葬り去ってみせる。

 

 居ないのら探し出す、居なくても見つけ出すと言わんばかりの勢いだ。

 

 アキラはそんなテルを観れば、もはや何も言えない。言う気すらも起きない。

 

「済まなかった、少しお節介が過ぎたみたいだ……それに、僕らもある種似たような物だからね。」

 

 どうしても成し遂げたい事――それは、リンやアキラにも覚えがある。止めるのは、少し無粋だったのかもしれない。

 

「……けど、無理はするなよ。」

「そこまで軟くねぇよ俺ぁ。」

 

 そう呟いてテルは頭を掻くと、店内へと繋がる扉へと手を掛ける。

 

「……リン、最近元気か?ちゃんと飯食わせてるか?ちゃんと寝させてるか?」

「お母さんかな?心配いらいないさ……と言うか、本人に直接聞けば良いだろう?」

「そぉかい。」

 

 そう言って、テルは扉を開けて店内へと戻る……アキラは頭を抱えるような仕草を取ると、全くもって変わらないテルに呆れを覚えた。

 

「全く……友達が心配してるって言うのに、ブレないなぁ君は。」

 

 そんな事を呟くと、少し遅れてまた店の中へと戻るのだった。

 

 

 

 

 




テル:笑顔が素敵なチェスト系主人公。キャラ設定練ったら何処ぞの夜明けのなんたらになった人。エーテリアス絶対殺すマン。

アキラ:テルの友人。互いに軽口(と言うか煽り合い)がつける仲。気の置けない友人と話すアキラも書きたかった。

リン:妹。カワイイカワイイネ
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