滅相もない、この様に私は笑顔が素敵な一般ホロウ調査員で……   作:マジキチスマイル

7 / 8
零号ホロウ

 

 零号ホロウ リンボとも言われる旧都を落とした悪しきホロウ……であり、新エリー都に現れるホロウの大元と呼べる存在。

 

 重力すらも知っちゃめっちゃかに成った内部は、未知と可能性の塊。

 

 調査協会側も、調査するのには人手が足りないようで外部から試験に合格したものを特別に独立調査員として雇うことがある。それほどまでになりふり構っていられないということなのだろう。

 

 中には、ホロウレイダーが身分詐称して調査員をやろうとしているのを見過ごして使い潰そうとしていたり……まぁ、テルには心底どうでもいい話だ。

 

 ……今日はそんな、零号ホロウ調査の為の試験、その試験管と受験者の万が一の護衛の為に、テル・ラジーラは零号ホロウへと訪れていたのだが……

 

「私が今回、責任をもって同行させていただくことになる協会の調査員です。所謂『試験管』と思ってくれても良いですよ。そして……こちらが万が一の護衛としてついてくださる、テル・ラジーラさんです。」

「……ども。」

「は、始めまして!リン……です!」

 

 まさかの知り合いが来た……試験管さんが十分に気を付けてという内容の言葉を呟いている間も、テルは一体どういう巡り合わせだと目元を黒く染める。

 

 ……確かに、零号ホロウについての私見の情報は渡した。だが、まさかこんな形で会うとは思わなかった……どんな正面衝突だこれは。

 

 テルは只管知らんぷりを押し通す……目の前の人とは初対面ですけど、何か?みたいな顔で事に打ち込む。

 

 リンも、あくまで知らない体で進めてくれるようだ……いや、と言うかそういう約束だ。リンとアキラがパエトーンでありプロキシである事実は、テルは知っている。

 

 リンとアキラもテルがホロウ調査協会の人間だというのは分かっている。

 

 故に、三人は仮に仕事で出会った時には、面倒事を避けるために飽くまでも始めましてと言う体を崩さない事を約束している。

 

 とは言っても、そんな事故みたいな事は今までのなかったのだが……まさかこんな所で相まみえることになるとは。

 

「――と、言う訳で!リンさんの動きをしっかり審査させてもらいます!テルさんも、飽くまでも護衛なのでよほどの緊急事態でない限り、手をたさないようにお願いします。」

「わ、わかりました!」

「……あいよ。」

 

 テルは、一抹の不安を覚えながらもリンを横目に見る……リンは任せてと言わんばかりに自信満々な目をしている。それはいいが……

 

 ……何事も無く、出来るのなら何事も無く、普通に終わってくれないかと、願うのだった。

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――試験は滞り無く進められ、何事もなくチェックポイントを通過していく。試験官はリン――基、その意識とリンクしたボンプの動きを見て、気真面目に採点していた。

 

 ボンプとの意識と知覚の共有。それこそが、リンとアキラを伝説のプロキシ、パエトーンとしてたらしめている要素の一つである。

 

 細かい仕組みは、テルは昔にアキラに教えてもらった記憶があったが、全くもって理解できなかったし、なんて言ってたのかすら忘れてる。覚える気もない。

 

 そんないい加減なテルとは反対に、必死に厳密に採点をする試験官を真面目だなぁと思いつつも、テルは自身の持った幅広な大剣を握りながら待つ。

 

 テルは自分は果たして必要なのかと一瞬疑問に思うが、その疑問と油断こそが零号ホロウでは命取り……何度も教えられてきている。

 

 ……やがて、リンと同期しているボンプがトテトテと歩いてやってくる。まるで疲れたと言わんばかりに額の汗を拭うような仕草をするのだ。

 

『ふぅ……疲れた。』

「休憩するかい?」

『いんや、まだまだ……!!』

 

 テルの誘いをリンは拒否する。その間も、試験官は採点内容をチェックしてらし合わせていた……すると、ボンプの持っている支給品のカウンターから音が鳴る――四回ほど。

 

「鳴ってんぞ?」

『えっ、ホントだ……』

 

 ボンプと共にカウンターを覗き込むテル……すると、試験官が大慌てでカウンターを奪取し手に持って驚愕する。

 

「そ、それは……一回なら『反応アリ』2回だったら『高活性』3回なら『強烈』――四回なら――」

「……ッ!!」

 

 次の瞬間、テルも何やら嫌な感覚を覚える。理屈ではなく、何度もホロウへ出入りし、何度もエーテリアスとぶつかって来た男のプリミティブな感覚が告げていた。

 

――ヤバイのが来る。――

 

 その感覚が全身を這いずり回るのと同時に、試験官の持ったカウンターがひび割れて壊れる。周りにエーテルの怪しい光が灯っていく。

 

「こ、これは……!?」

「ッ!こっちだッ!」

 

 テルは大剣を構えながら、試験官を捕まえて物陰へと飛び移る。ボンプも素早く動いて物陰へと映る。

 

「い、今のは……?」

「この声……」

「あぁ……運がねぇ。」

 

 ぼやくテルの言葉とともに、ボンプが辺りへとそっと顔を出す……それを、治安官が抱えて止める。……その理由は一つ、見つかったらまずい事他ならない。

 

「うそっ……彼女が……?」

「……しゃがめ。」

 

 テルはそう言ってボンプを抱える治安官の体を縮こまさせる……すると、上空から一体の巨大な、あまりにも巨大すぎるエーテリアスと、付随する小型のエーテリアスが通っていく。

 

 ――そのエーテリアスの名は、巨大な方をニネヴェ、小型をホーネットと言う。あのニネヴェこそ、零号ホロウそのものであるとされるほど強大な力を持ったエーテリアスである。

 

 まるで女性的に丸みを帯びて、花のようなスカートのような部位も持つ肉質のある身体――

 

 その肉づいた女性的なあの様は、かつてテルから妹を奪ったエーテリアスとよく似た特徴を持っていた……と言っても、テルの妹を襲ったのはアレほど巨大ではない。

 

 色も、あちらは赤が目立つのに対して、テルが見たのは青一色な程には真っ青なエーテリアスだった。

 

 

 

 

 

 

 ―――嗚呼、よく覚えている。

 

 かつての住処を襲ったホロウ。その中を彷徨うテルとその妹の前に現れると……そのエーテリアスは、妹の身体へと触れた。

 

 ……そうすれば、そのエーテリアスが触れた妹の身体は徐々に結晶と、エーテリアスとなり、削れ取れた結晶はあの青いエーテリアスへと吸い込まれていった。

 

 妹は、皮膚と肉が結晶となり削れて行く身体の痛みを只管に感じながら、叫んでいた

 

 「痛い」と。「助けて」と。「お兄ちゃん!」と。「苦しい」と。「嫌だ」と。

 

 嗚呼、テルは何度その大剣を握っただろうか?何度助けようと、あの青いエーテリアスへと立ち向かっただろうか?

 

 だが、幼い、世も知らないガキの剣では、一切の手傷も負わせられず……何もできないまま、たった一人の肉親が痛みと助けを叫びながら結晶となり、あの青いエーテリアスに喰われて行くのを見ることしかできなかった。

 

 よぉく覚えている、今でも覚えている。死んでも覚えている……結局、テルだけが世話になっていた剣の師匠に助けられて生きながらえている。

 

 その師匠も、今や何処に居るのか行方知れずだ……全く、にてるからと言って思い出し過ぎだろうか?だが、そんな俺の些細な理由て思い出すほど、テルの中にはよぉくえぐり込んだ記憶だったのだ。

 

「……?」

 

 ……上空を通るニネヴェとホーネットを見つめるテル。流石に上にいすぎて良く見えないが……流石の迫力だ……しかし、何故だろう。ほんの少し、違和感を感じた。

 

 その違和感を言葉にしたのは、リンの同期したボンプだだた。

 

『……?テルさん、試験官さん?周りのエーテリアスの数減ってませんか?』

「えつ?」

 

 テルはよく目を細めて見てみると、ニネヴェを旋回して共生関係を保つホーネットが、()()()()()()()()()()()()()――まるで何かに吸い込まれるように。

 

 一体何がと思い、もう一度目を凝らして見つめる……その間にもニネヴェは、その場から通り過ぎて離れていってしまうが…………次の一瞬、()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 まるで、エーテリアスを喰らうように、ホーネットに触れて結晶化させて吸い込む、()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 女性的な丸みを帯びた、妙に生々しいエーテリアス、鋭く光る胸部と頭部。

 

 テルは己の瞳が開き、瞳孔が全開に何のを感じた。

 

 

 

 

 

 最初はカラフルに見えていた景色が、次第に青一色になり、動きは大きくスローに見えた。

 あの青いエーテリアスが、居た。

 

――居た………!!!――

 

 

 

 

 

――居た!!居た!!!居た!!!!――

 

 

 

 テルは通り過ぎたニネヴェを見送る様に物陰から瞬時に身体を出す…………そんなテルを゙察知したのか、ホーネットが一匹、テルへと向かった。

 

『テルさん!?』

「下がって!」

 

――居た!!居た!!居た!やった!居た!居たんだ!居た!居たよ!居た!!!居た!!居た!居たんだよ!!居た!!居た!!――

 

 テルには声が聞こえない、ホーネットの姿も見えていない。あの青いエーテリアスを目で追い、居たと喜ぶ事に全能力を使っているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、見えていないのにもかかわらず、テルは反射的に近づいてきたホーネットをあしらうように大剣を片手で振るい、ホーネットを切断する。

 

 両断されたエーテリアスはコロコロと地面を転がりながら消える。

 

「ふひっ……あははっ!」

 

 テルは不意に笑顔を零した。

 

 ()()なんて軽いものではない。

 

 瞳孔を全開にして、口角を大きく上げて、狂気も快楽も、達成感も、清々しさもまぜこぜにした……嗚呼、()()()()だ。

 

「見つけたぁっ!!!ふひはははははははははははぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

 




テル:仇みつけたぁ!!(オリジナル笑顔)

リン:何あれ……怖っ。
試験管:何あれ……怖っ。
駆けつけようとした六課:何あれ、怖っ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。