滅相もない、この様に私は笑顔が素敵な一般ホロウ調査員で……   作:マジキチスマイル

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暴走特急

「見つけたぁっ!!!ふひはははははははははははぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

 狂気、悪鬼、それらを混ぜ込ぜにした満面の笑顔……大剣を逆手持ち掲げてて、喜ばしげにあの青のエーテリアスを見る。

 

 嗚呼、10年ほどか?……この時を長年待った。居るのかどうかすらわからない存在を追い続けた。

 

 追い掛けて、走って、走って、走り続けた。あの青のエーテリアスを叩き斬らんと。それで妹が戻ってくるわけでも、望んだものが手に入るわけでもない。

 

 無駄な努力とも、意味の無い事だとも思われるだろうか?しかし、やらなければ前に進めないということは誰にでもある物だ。

 

 誰かのためでも、妹の為ですらもない。自分自身が零へと立つために必要な事……それが、テルにとっての仇を取ると言う事に他ならない。

 

 ワガママか?身勝手か?上等だ。それらを全てひっくるめて抱えられなきゃ、仇討ちなんて考えやしない。

 

「ひひひひっ!!!ははははははぁぁぁっ!!!!」

「て、テル……さん?」

『い、いったん冷静になって――……?」

 

 そんな高笑いするテルを宥めるリンのボンプは、そんなテルの横をすり抜けて、瓦礫の上に立つ影を見た。装に身を包んだ狐耳の少女だ。

 

『あの人……?』

「……。」

 

 彼女は、高笑いを掲げるテルを高みから一瞬流し目で見下ろすと、またその場からニネヴェを追って走り去っていく。

 

 テルはそんな影に視線にも気づかずに一通り笑い終える……すると急に肩を下ろして、先程まで甲高く響いていた笑い声もすんっと止んでしまう。

 

「うぇ……えぇ……?」

「あぁっ……ははっ。」

 

 試験官はそっとテルの表情を覗き込む……その表情は、先程の悪鬼の如く笑顔は真反対……少しばかり澄んだ様な表情だった。

 

 ……リンに試験官は、一体目の前の男がどんな精神構造をしているのかすら分からなくなっていた。急に狂笑し、急に冷静になる……スイッチの切り替えが鋭いのか、はたまた唯のキチガイか。

 

 すると、少し遅れて先程の狐耳の少女と同じ様な制服をきた三人組が駆け足でやってくる……若干、引き気味で。

 

「えっ……えぇっと、大丈夫……かなぁ?」

「あ、貴方方は……?H.A.N.Dの……?」

「……六課の連中か。」

 

 驚く試験官と、大剣を軸に体を動かすテル……H.A.N.Dの対ホロウ六課と言えば、危険度の高いエーテリアスやホロウの対処を専門とする、執行官とも呼ばれる凄腕集団だ。

 

「はい、対ホロウ特別行動部第六課です。現在、緊急の鎮圧任務を実行しています……こちらのエリアで、情報のない極超級と()()()のエーテリアスが確認されました。」

 

 未確認――その言葉を聞けば、テルは若干眉をひそめる。心当たりがある……あの青いエーテリアスにほかならないだろう。

 

「よって、貴方の任務が何であれ遊撃部隊として本作戦の支援に当たるように願います。これは対ホロウ六課副課長による、正式な招集です。」

 

 

「……未確認って言うのは?」

 

 テルが核心を突くための問いに対して、六課斥候、浅羽悠真が答える。

 

「見たろ?ホーネットを吸収してる青いエーテリアスの事だ。あんなタイプ、零号ホロウじゃ見た事が無いんだけどなぁ、いつでてきたんだろ?」

「……だろうは、奴ぁ()()()()()()()()()()()()()()()()()からな。」

 

 サラリと事実を告げるテル……周りからは何で知ってるんだと言う目線が向けられる……すると柳は眼鏡を少し光らせて、テルに問いかける。

 

「……どうやら、何かご存知のようで?」

「知ってる事だけなら知ってる。」

「誤魔化さず、全てお話ください。」

「……俺も詳しくは知らん、十年近く追ってきて、一度も残り香すら掴めなかったエーテリアスだからな。」

 

 正直、こんな所で会えるとは嬉しい誤算この上ない……生きてれば、良いこともあるもんだ。

 

「わかってんのは、零号ホロウ発端じゃないのと、人や物質を喰らうって所か。」

 

 すると、ホロウ六課の蒼角が小首を傾げて問いかける。

 

「エーテリアスが……食べる?」

「あんたらも見たろう?青いエーテリアスがホーネットに触れて吸収するのを……あれと同じ様に、触れた人間を結晶化させてそのまま吸い込むんだよ。」

「そんなエーテリアスが……いえ、そもそも貴方がそこまで知っているのに、何故未確認のままだったのですか?」

 

 最もな疑問だ……いくら残り香の一つも得られなくても、少し位情報として残っているはずだ。それすら無いというのは……不自然になる。

 

「生きてるやつで俺ともう一人以外に見た奴が居なかったからなぁ、どの機関にも信じてもらえなかったよ。」

 

――その内の一人(師匠)はどっか行っちまったしと、言葉を付け加えた。すると、試験官が何処が意気揚々と気合を入れて口を挟む。

 

「と、兎に角、やむを得ない事態の様ですね……本来の任務は中止として、コレより目標を『全力で対ホロウ行動部を支援する』に変更します!テルさんも、そちらの方向で進めてください!」

「……あぁい。」

 

 何処か癪に触るが、まぁあの青のエーテリアスを追えるなら致し方なし…………と思おう。

 

 横でいつの間にか半強制的に参戦が決定付けられているリンとアキラのボンプが居るが……まぁ、残念だったねとしか、かける言葉がない。

 

 


 

 

 

「ヂィィエストォォォォォォ!!!!!!!」

「……猿叫だね、ほぼ。」

「なんか凄いなあ、私も真似してみようかな?」

「蒼角、辞めてください……本当に。」

 

 対ホロウ六課にリンのボンプ。ついでにテルを含めた一同は、ニネヴェと未確認のエーテリアスを追って、零号ホロウの中を駆け抜ける。

 

 六課の面々が想定外だったのは、たまたま声をかけただけの一般ホロウ調査員が、かなりの即戦力だったと言う点だ。

 

 今も先陣を切り、文字通りエーテリアスを両断しながら猛り声―もうほぼ猿叫―を上げる。笑顔を浮かべながら只管に叩き伏せて、前へ突き進む様はたょっとしたイカれだ。

 

 ……だが、実力は確か……正直、何故ホロウ調査協会の一般ホロウ調査員の立場にいるのか全く理解できない。

 

 どう考えても、こんな捨て駒みたいな役割ではなく、もっとマトモな席を用意してもあれるような技量だと思うのだが。

 

「ヂィィエストァァァァォォォォォォ!!!!!!!」

 

 ……しかし、この叫びだけはどうにかならないものか。柳は駆け抜け、エーテリアスを始末しながらテルに問いかける。

 

「あのっ!その猛り声どうにかなりませんか!?」

「あ゛ぁ゛っ!?」

「控えめに言って煩いんすけど!!」

「はははっ!そいつぁ結構な事だな!」

 

 悠真の指摘に対しても、テルは大笑いしてはねのける。

 

「結構じゃない!結構じゃないんだけどなぁ!?」

(とき)の声は喧しく景気よくしろってのが師匠からの教えでね!」

「さてはアンタの師匠碌な人じゃないな!?」

「違ぇねぇ!全くもって違ぇねぇなぁ!!……!!」

 

 悠真のツッコミに対してもそういい切るテル。何故だろう、この男だけなんか、色々と違う気がする。

 

『ンナンナ……(私は慣れちゃったけど、やっぱり煩いよね……あれ。)』

 

 ボンプ、基リンもそんな事を思う。そもそも、意志があるか怪しいエーテリアスに鬨の声は意味があるのだろうか?……まぁ、正直この手の輩は理由あるなし関係ないのだろうが。

 

「そういや、アンタら自慢の虚狩りの課長は何やってんだ!?」

「課長なら極超級を追いかけてますよ!と言うか、すれ違ったでしょ!?」

「マジでか!?見えてなかったなぁ!!…………嗚呼、()()()()()()()!ニネヴェだ!」

 

 テルの言葉と同時に、空を浮かぶニネヴェを旋回するホーネット……そして、瓦礫の上を突き進みながら、ホーネットを蹴散らす六課課長星見雅の姿が見える。

 

「あんな所に……」

 

 皆がニネヴェ、そして星見を眺める中……テルは視界を全力稼働させて、目当てのエーテリアスを探す……だが、既にニネヴェの周りには働き蜂のホーネットしか居ない。

 

(何処にいった……?逃げられたか?)

 

 せっかくのチャンスを棒に振るったかと焦るテル……だが、そんなテルの焦りは杞憂に終わる。テルがニネヴェの方から正面に視線を移せば……()()

 

 青い女性的無いなフォルムを持つ、未確認のエーテリアス。それが、悠々と道の上に立ちはだかり、ニネヴェに対して手をかざしていたまるで、獲物の品定めをする様に。

 

 その片手には、本来ニネヴェを旋回しているはずのホーネットが捕まっており、その身体は青いエーテリアスに触れられた先から結晶化し、まるで吸い込まれるように崩れて消えていく。

 

 ……確かに、この光景はエーテリアスが食っていると表現していると間違い無いだろう。だが、だからと言って六課が止まる理由はない。

 

「未確認ですか、私達はこちらの対処を。」

「しょうがない、やりますかぁ……」

「よぉし、頑張って――」

 

「居たァッ!」

 

 だが、テルには止まる理由は愚か、突き進む理由しか残されていなかった。

 

 一度落ち着いたのに、再びテルはその瞳孔をガン開き、大きく口角を上げながら、誰よりも早く動き始める。

 

 地面をしっかりと踏みしめて蹴り上げる……そして、目にも留まらぬ速さで接近し、目の前の仇を斬り下ろす。

 

「ヂィィェェェストォォォォォ!!!」

「―――――!!」

 

 エーテリアスはその一撃を片手で重々しく受け止めると、攻撃を横に()()()()受け流す。エーテリアスをかするように、テルの大剣が打ち下ろされた。

 

「ッッッ!!!」

 

 だが、テルは初手が外れようとも攻めの姿勢を辞めない。今度は大きく脚を上げてその膝蹴りをエーテリアスへと喰らわせる。流石に咄嗟だったのか、これには対処できずに腹部にクリーンヒットする。

 

「――!!」

「っぱ、捕食と攻防は両立しねぇみたいだな……触れた物全部ノーリスクで食えるなら、初撃で大剣を結晶化させて食えた筈だもんなぁ……?」

 

 正直、初撃で大剣が食われたら流石に撤退を選ぶつもりだったが……どうやら、その必要はないらしい。後ろで勝手を叱咤する声もあるが、知ったこっちゃあない。

 

「なぁ、満腹になったか?俺はまだまだっぽい……なぁ!!!ヒヒャハハハハハハハハハ!!!!

 

 十年ぶりの再会だ。積もる話もあるだろう。だから、兎に角一杯――――

 

「ぜってぇ……ここで殺すッ!!!」

「―――!!」

 

 語り合おう。

 

 

 

 

 





青エーテリアス:なんかエーテリアス食ってたらいきなり襲われたんすけど……怖っ。

テル:情緒の切り替えがヤバい奴。急に大爆笑した後に急に落ち着くのはヤバイって。

様子を見てたアキラ:ちょっと色々最悪の事態が重なって頭を抱える。

六課組:ちょっと余りにもテルが()()()()。話の節々から多分何かしらの因縁はあるんだろうなと想像は出来ている。

課長:なんか下に(色んな意味で)ヤバイのが居るな……位の認識。
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