にゃがみはら市のコンツェルト   作:WASA-B

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「ま、要するにストーカーってことね〜」

 

あっけんからんと言ってのける妹君だが、いやはや楽しそうだな。

ロングスカートの彼女──八木沼 夕子は果たして本当にストーカーだった。最初はしどろもどろに誤魔化そうとしていたが、我儘姫君が八木沼氏のPixelを奪ってからはまあ出るわ出るわ。トイレの後ろ姿まであったのは流石に引いたね。

 

人生で初めてストーカーの実物に会ったわけだが、これ(・・)が男性で私が女性であればと考えると、その恐怖は想像に難くない。

しかしまあ残念なことに、私の危機察知能力は致命的に欠落している為、まあそんな人もいるかくらいにしか考えていない。愚妹はその愚かさ故に愚妹だが、その妹にしてその兄あり、である。

 

さて、今後の処遇について決めねばならぬのだが、どうすればよいのか皆目見当がつかない。本来であれば割と普通におまわりさんこいつです案件であるが、こんな幼気(いたいけ)な少女? を突き出すのはどうも気が引ける。

 

「私が言うのもなんだけど、女の子って得ね」

「なんだ妹よ」

「べつに」

「……えと。ジブン、どうなるんですかねェ? って訊いてもいいですかぁ……?」

「どうしようかねえ」

「……あー、試しに付き合ってみるとか?」

「カヒュッ!?」

「ふむ」

 

ストーカーと付き合ってみた、とか今時(こんじ)炎上系ユーチューバーでもやらないんじゃないか? 流石は愚妹、頼りになり過ぎる。

 

「いやいやいやいや、ジブンが言うのもなんですけど、ストーカーですよ!? そんなやつ普通は関わらない方がいいのでは!?」

「そうして欲しいのか?」

「あっいやっ、それは……」

「なんか見ててほっとけないのよねー」

「まあ、それはそう」

「エット、エッ……?」

 

とりあえず店を出よう。流石に長居し過ぎた。

 

からからと引き戸を引き外に出る。

 

「ありがとうございぁしたー!」

「ごちそうさまでした」

「おいしかったです!」

 

さて。3限は選択のスペイン語だが、もしかしてこのストーカー君はまっったく同じ講義を取っているのだろうか。そうだとしたら逆に今日の今日まで気付かなかった私の無関心さに驚く限りだな。

 

「一応確認しておくが、次のコマは何だ?」

「スペイン語、です」

「先生は?」

「あっ。山川先生ですね。……はい」

「……そういうことなの?」

「えーあー。……そうです」

 

そっかあ。思ったより凄いなあ。

ここまで来ると、取っている32単位中必修の18単位を除いたうち、何単位被せてるのか逆に気になるな。

 

「ねぇお兄ちゃん、とりあえず行こうよ」

「そうだな。まあ話は4限終わってから、じっくりと、しましょう」

「はい」

「LINEと電話番号は交換しましたから、逃げないでくれると助かります」

「はい」

「お兄ちゃんなんで急に丁寧口調?」

「ちゃんとして貰わないと困るから」

「あっそうね。一応機嫌悪くはなってるんだ」

 

要らんこと言わなくて宜しい。

こうしてファーストエンカウントは終了した。

ちなみに3限と4限は出席をとるタイプのコマなので陽向は校内の敷地をうろうろしてもらう事にした。またなにか問題を起こさないことを切に願う。




あけましておめでとうございます
だいぶ空きましたが。
今後ともよろしくお願いいたします
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