ちっ、くだらん…何が強くてニューゲームだ、クソッタレめ 作:ゴロリコン
新ツフル星の上空で、凄まじい打撃音が何度も響き渡る。
首都の上空では、ベジットと大猿と化したベジットベビーが凄まじい攻防を繰り広げて……はいなかった。
これは攻防と言うよりも、一方的にベジットがベビーを痛めつけているだけだからだ。
「よう王様。随分と苦しそうだが、手加減は必要かぁ?今なら特別大サービスで脚……いや、小指一本で相手してやっても良いぜ?」
『グッ!?ゴハッ!!ゲフゥッ!!こ、この俺様を見下してんじゃねぇぇぇっ!!じゅ、10倍界王拳ぅぅぅぅっ!!!!』
大猿と化したベビーの身体が赤いオーラに包まれる。星どころか宇宙全体が揺れているかと錯覚する程の凄まじい圧力を放っていたが、そんなベビーを見てもベジットはヘラヘラと笑うだけだった。
次の瞬間、ベジットとベビーの姿が同時に消える。そして……
『ぐぅわぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!』
情けない悲鳴をあげながら、大猿ベビーが地上へと弾丸のようなスピードで落下、激突し、その衝撃で地割れが発生し、周囲は大量の砂埃に包まれた。
あの一瞬でベビーはベジットに急接近して飛び蹴りを放ったが、ベジットはベビーを遥かに上回るスピードでそれを回避。
更にベビーが反応する暇も与えずに頭上に移動して脳天にエルボーを叩き込んだのだ。
結果、ベビーの10倍界王拳は一発で解除され、情けない悲鳴をあげながら地上に落下したという訳である。
「だから手加減してやるっつったんだがなぁ?」
『クッ……!!ぬおおおおおおおおおおっ!!!!』
あからさまにこちらを見下ろし、やれやれとでも言いた気に首を振るベジットに、ベビーは悔しそうに歯軋りをした。
そして身体中から血を流しつつも、雄叫びを上げながら右手に気の剣、スピリッツソードを纏い、ベジットに斬りかかる。
大猿の巨体もあって、もはやロボットアニメ等で見かける規模のサイズとなっていたベビーのスピリッツソードだが……それでもベジットには全く通用しない。
ベジットは少しだけ気を纏わせた小指だけで、自分よりも遥かに巨大な気の剣をあっさりとと受け止めてしまっていた。
「おいおい……せっかくこの俺の技を使ってんだからよ、もうちっと有効活用してくれよ。これじゃ俺まで情けなくなっちまうだろーが。」
『グヌッ……!!ググググ!!き、汚いぞ貴様ぁ!!が、合体なんぞしやがってぇぇぇ!!』
もはや完全に頭に血が上っているのか、狂ったように滅茶苦茶に気の剣を振い続けるベビー。
しかし、やはりベジットには通じない。小指だけで……それも時々欠伸をしながら迫り来る気の剣を完全防御していた。
「はっ、脳天にブーメランが突き刺さってるぜ王様?最初にポタラを使ったのはテメェだろうが。だいたい他人の身体に寄生しなけりゃ何も出来ねぇ奴の方がよっぽど卑怯なんじゃねーのか?」
『黙れっ!!お、俺は貴様等とは違うのだ!!俺は偉大なる使命の為、全ての世界の為に貴様等薄汚いサイヤ猿の肉体を有効活用してやっているだけだ!!感謝はされても卑怯だなどと言われる筋合いはないっ!!』
「やれやれ、ああ言えばこう言うって奴だな。言ってる事が滅茶苦茶過ぎるぜ……はぁっ!!」
『ぐわぁっ!?』
もはや付き合い切れんとばかりに左手から衝撃波を放ってベビーを吹っ飛ばすと、ベジットは右手にスピリッツソードを更に強化した気の剣、ギャラクシースピリッツソードを展開した。
「テメェの鈍刀との差を見せてやるっ!!」
『ヌゥッ!?』
背筋に冷たい物が流れ、急いでガードの体制に入るベビー。その直後、ベジットがギャラクシースピリッツソードを振り下ろした。
次の瞬間、ベビーのスピリッツソードは粉々に砕け散って離散した。更にベビーの右肩から左腰までが切り裂かれており、凄まじい量の血がベビーの身体から吹き出した。
『ウッ、ガハァッ……!?ウグァァァァァ……!!』
傷口を抑え激痛に苦しむようにベビーはその場に蹲る。そして同時にこう思った……「もう何をしても無駄だ、絶対にこいつには勝てない」と。
自分の技は奴には全く通用しない。負傷からの回復に加え、界王拳を使っても力の差は少しも埋まらなかった。
奴の身体を乗っ取ろうにも奴の身体に侵入する為の傷口は全く無い。いや、仮にあったとしても奴が大人しく寄生を許してくれるとは思えない。
自爆してこの星ごと道連れに……とも考えたが、自爆する前に消し飛ばされるのがオチだ。
つまり……完全な手詰まり。ゲームオーバーである。
(……いや、まだだ!!)
確かに残された手はない。どう足掻いてもこいつには勝てないし、自分は遠からず殺されるだろう。
だが、こいつの完全勝利なんて、そんな事絶対に認めない。許さない。
この薄汚いサイヤ猿に……自分達ツフル人から全てを奪ったあの忌々しい男、ベジータ3世の倅なんぞの思い通りにだけは死んでもさせはしない。
ただで死んでなるものか。せめて……せめてこいつの大切な物を道連れにしてやるっ!!
『く、クククク……ま、負けたぜ……き、貴様の勝ちだ。』
「あ?なんだ急に。テメェに目の前の現実を受け入れるだけの器量があったのは驚いたがよ。」
『これだけボロボロにやられれば、認めざるを得ないさ……完敗だ。遠からず俺はお前に殺されるだろう。だがなぁ……!!ただでこの俺が死ぬと思うなよっ!?貴様等の守ろうとした地球を道連れにしてやるっ!!』
「ん?」
額に人差し指と中指を当て、瞬間移動を発動するベビー。
一瞬で戦場から離れたタワー上空まで移動すると、残された気を全て両手に収束し、即座にファイナルかめはめ波の発射体制を整えた。
『超ファイナルかめはめ波ぁぁぁぁぁ!!!!!!』
地球を消し去るべく、両腕を突き出し、己の中で最強を誇る超ファイナルかめはめ波をベビーは放った。
いや、放ったつもりだった。だが実際には、両腕を地球に向けて突き出したその瞬間、何故か自分の両腕が宙を舞っていた。
その時のベビーは、世界全てがスローモーションに見えていた。何故か宙を舞う両腕、血を吹き出す両肩、そしていつの間にか目の前に現れ、気の剣を振るうベジット。
「生憎だったな……テメェみてぇな小悪党の行動パターンなんざ見飽きてんだよ。」
『ア……アアァ……!?グッ、グギャァァァァーーーー!!!!!』
ベビーの最後の悪あがきも、所詮はベジットの予測範囲内でしかなかった。
そもそもベビーがどれだけ全速力で動こうと、そのスピードはスローも良い所で、ちょいと本気を出せば追いつくのにコンマ数秒も必要ないのだ。
「しかし、とことんまで性根が腐ってやがるなテメェ。地球人達は今はテメェの手下じゃねぇか……それをヤケクソで道連れにしようなんざ、ツルフ人の王が聞いて呆れるぜ。所詮、テメェは王の器じゃなかったって訳だ……!!」
『だ、黙れぇ……!!』
「黙るのはテメェだ、屑野郎。テメェのその邪悪な魂、この俺が跡形も無く消してやるっ!!!!」
真紅のオーラが怒りによって大きくなり、更に荒ぶって行く。そしてベジットはまず左手に青緑色の球形状の気を球形状に収束させ、ファイナルシャインアタックの構えを取る。そして同時に右手に赤い気を球形状収束させ、両手に展開した二つの気をくっつけるように一つに重ね合わせると、より巨大な黄色の気の塊となり、そのまま両腕を腰に引き、かめはめ波の構えを取った。
「ファイナル……シャインッ!!!!」
青緑色のスパークを纏った真紅のオーラより高めつつ、その間にも両手の間に収束された気の球には更に気が増幅されており、美しい黄金の輝きを周囲に放っていた。
そしてベジットの気が高まっている影響か大地は割れ、空は荒れ狂い、そして砕け散った大量の岩の破片が重力に逆らって浮かび上がっている。
『ひ、ヒィィィッ!?や、やめっ』
「かめはめ波ぁぁぁあああっーーーー!!!!!!」
ベジットの咆哮にも似た叫び声と共に両腕が前方に突き出されると、限界までチャージされた黄金のエネルギーがベビー目掛けて一斉に放出される。
その極大のエネルギー波は大猿ベビーの全身を一瞬にして飲み込み、両腕を失った今のベビーでは防ぐ事も出来ず、悲鳴一つ上げる暇も与えられず、ほんの一瞬で塵一つ残さぬレベルで身体が消し飛ばされてしまった。
ベビーを消し去っても尚エネルギー波の放出は続き、新ツフル星を脱出して宇宙の彼方まで飛び出して行ったが、やがて放出の勢いが弱まり、完全に止まると、ベジットは先程までベビーが立っていた地面を見下ろした。
ベビーの気は完全に消えている。死んだと考えるのが普通だろう。
だが、ベジットは呆れたように溜息を漏らすと、額に人差し指と中指を当て、瞬間移動を発動し、その場から姿を消すのだった。
※※※
「ベビー様!!」
首都から少し離れた地点にあるスペースポートで、ブルマが接近して来るベビーに手を振っている。そう、ベビーはまだ生きていた。
先程、ファイナルシャインかめはめ波で消し飛ばされる直前、ギリギリのタイミングではあるが肉体を放棄し、見事脱出する事に成功していた。
そしてベジットに見つからぬよう必死になって気配を殺し、命からがらここまで逃げ延びてきたと言う訳である。
「こうなっては已むを得ません。遺憾ながらこの新ツフル星は放棄し、地球に逃げ延びてから体制を立て直し、改めて憎きサイヤ人どもに決戦を挑み……」
「黙れ、この役立たずが!!退けっ!!」
「ああっ!?」
邪魔なブルマに平手打ちをして無理矢理払い除けるベビー。幸いブルマの命には別状は無く気絶しただけのようだ。
(今はとにかくここから……いいや、この太陽系から離れなくては……!!その後は我が神と合流し、奴を超える肉体を与えて貰うしか方法はない!!クソッ、この俺様がサイヤ人なんぞから逃げ出す事になるとは……)
急いでこの星から逃れるべく、宇宙船に乗り込もうとするベビー。
だがその瞬間、乗り込もうとしていた宇宙船に気功波が叩き込まれ、宇宙船は爆散してしまう。
「なぁっ!?」
「言った筈だぜ、テメェみてぇな小悪党の行動パターンなんざ見飽きてるってよ。」
今この場で最も聞きたくない男の声がベビーの耳に入って来た。慌てて振り返ると、そこにはベジットが腕を組んだ宙に浮かび、こちらを見下ろしている。
「き、貴様ぁ……!?」
「フッ、それにしても、王様の癖してこんなコソ泥のように逃げ出そうとしてるとは、随分と滑稽な姿じゃねぇか全次元の王様さんよぉ?まっ、所詮裸の王様でしなかったテメェにはお似合いの末路って奴か。」
「クッ……!!」
「さぁて……それじゃあ今度こそ逃げられねぇように跡形も無く消し飛ばしてやる。あばよ、ベビー……ん?この気は……へぇ。」
掌を翳し、気を収束するベジット。だがその時、こちらに接近して来る気を感じ取り、何かを閃いたようで、そのまま腕を下ろした。
突然攻撃を止めたベジットにベビーは内心で首を傾げるが、そんな彼等の前に未来世界のトランクスが姿を現した。
「父さん!!悟空さん!!」
「貴様は……トランクス!?」
「よぉ、トランクス。どうやらザマスと偽悟飯の方は倒せたようだな?」
「はい。と言っても、殆ど悟飯さんとピッコロさんのおかげなんですが……」
「確かに悟飯もピッコロも随分と気が上がってたな。こんな屑野郎よりも今のあいつ等とやり合った方が楽しめそうだ。」
「それで父さん……こいつはベビー、なんですか?前とは姿が……」
「こいつがベビー本来の姿だ。器になってた別世界の俺の身体の方は俺が跡形も無く消し飛ばしたから、命からがら寄生先を捨てて逃げ出したんだろうよ。さぁて、トランクス……こっから先はお前の仕事だぜ?」
「えっ?」
「所詮、俺達はこの世界から見りゃ他所者でしかねぇ。本当なら、お前が一人でこの世界を護らなきゃならなかった筈だ。だからこそ、せめてこの戦いの決着はお前の手で付けるんだ。やれるな?」
「父さん……はいっ!!」
(や、やった!!まさかこの土壇場に来て、このようなチャンスが巡って来るとは!!)
ベジットがトランクスに戦いを譲った事に、ベビーは心の中で大喜びしていた。
見た所トランクスは既に立っているのもギリギリと言った所だ。気も殆ど尽きていて、嬉しい事に身体の至る所に傷を負っている。これなら簡単に寄生する事が出来るだろう。如何に奴と言えど仲間の身体を人質に取られては手は出せまい……
だが、そんなベビーの内心を見透かすようにベジットは溜息を漏らすと、ベビーをギロリと睨みつける。その瞬間、ベビーはまるで金縛りにでもあったように身動きが取れなくなってしまった。
「ガッ……!?う、動けん……!!」
「この期に及んでつまらねぇ事考えてんじゃねぇぞ、ベビー。もしテメェがトランクスを乗っ取ろうとしたら、その瞬間テメェを殺すぜ。」
「うっ……!?」
「安心しろよ、俺が介入すんのはテメェが寄生しようとしたり、勝負から逃げ出そうとした場合だけだ。それ以外は何も手出しはしねぇし、もしもテメェがトランクスに勝てたら今回に限り見逃してやる。」
そう呟くと、念力による拘束が解除され、ベビーは脂汗を流し、呼吸を乱しながらもベジットを睨みつけた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……そ、その言葉、嘘偽りはないだろうな……!?」
「ああ、本当さ。テメェが勝てたら、な。」
(クッ……こ、こんな猿野郎の口車に乗るのは不快極まりないが、今はやるしかない……!!幸い、トランクスは殆ど満身創痍と言って良い状態だ!!今の俺でも簡単に倒せる……!!)
「行くぞ、ベビー!!」
「馬鹿め!!」
白いオーラを纏い、ベビーに斬りかかるトランクス。だが、ベビーはトランクスの剣を片手で受け止めると、カウンターで腹部に蹴りを見舞った。
トランクスは合体ザマスとの戦闘で消耗し切っており、今や超サイヤ人ブルーは勿論、通常の超サイヤ人にさえ変身する事が出来ない。それに対してベビーは本体に全くダメージは受けていない為、万全の状態で戦う事が出来る。
この差は大きく、トランクスはすぐに防戦一方となり、追い込まれ始めてしまった。
「クッ……!?」
「そんなズタボロの身体で向かって来るとは愚かな事だな、トランクス!!そのまま死ぬが良い!!」
「ま、まだだ……!!お前の支配からみんなを解放するまで、負ける訳にはいかないっ!!」
気合を入れ、剣を振るうトランクス。だが、ベビーは軽々とそれを弾き、トランクスの右頬にパンチを叩き込んだ。
「フン、まるで正義の味方のような発言だな、トランクス!!俺は地球を侵略する悪党で、お前はそんな悪党から世界を救う救世主と言う訳か?偉そうな事を言いやがって……思い上がるなよ、小僧がぁっ!!」
畳み掛けるようにベビーはトランクスに猛攻撃を仕掛けた。
そしてもはやトランクスはガードすらままならない程消耗しているようで、ベビーになされるがまま、一方的に嬲られている。
「この世界の地球にドラゴンボールを復活させたのは誰だ?ブラックに殺された貴様の母親や地球人どもを甦らせ、世界を復興させたのは誰だ?ブラックとザマスの人間0計画を阻止したのは誰だ!?そう、俺だ!!貴様ではない、全部この俺がやった事だっ!!俺こそが地球を救った救世主なのだ!!」
「うっ、ぐああぁっ……!?」
「そんな俺の偉業に比べ、貴様に何が出来た?何が救えた!?一人ではブラックにも人造人間どもにも勝てず、師を死なせ、母を死なせ、多くの仲間を守れずに犠牲にして来た!!この情けない弱虫め!!地球の平和を乱す悪党は俺じゃない、貴様の方だ!!貴様は所詮、救世主である俺に歯向かう悪党に過ぎん!!」
「ぐはぁっ!!」
気を纏ったベビーの拳がトランクスの剣を真っ二つに砕き、続け様に放たれた左拳がトランクスの鳩尾に炸裂する。
その一撃が決め手となったのか、トランクスは激しく咳き込み、更に血を吐きながら腹部を抑え、その場に倒れ伏してしまった。そしてベビーはそんなトランクスを嘲笑うかのように見下ろし、勝利を確信した笑みを浮かべながら掌を翳した。
「ここで俺を倒し、地球人どもを解放したとして、また新たな脅威が現れた時貴様はどうする?また過去に助けを求めるのか?それとも、今度は別の歴史か?笑わせるな!!貴様のような何の力もない屑に世界を背負う事など出来るものか!!」
「っ……!!」
「何も守れず、何も救えず、哀れな弱者として生きていても惨めで辛いだけだろう?この俺が貴様の苦痛に満ちた人生に幕を下ろしてやろう。精々俺に感謝しながら死ぬんだな、トランクスぅっ!!!!」
トドメを刺すべく、ベビーはフルパワーの気功波を放った。だが、自らを消し飛ばさんと迫る気功波を見た時、トランクスの脳裏にこれまでの人生が走馬灯のように駆け巡った。
17号と18号との戦い、師である悟飯の死、過去の世界での戦い、父であるベジータとの出会いと、共に過ごし、修行をつけて貰った日々、17号と18号、そしてセルを倒した時、魔導士バビディとブロリーとの戦い、界王神の死、そしてゴクウブラックの襲来と、母の死……
そして、最後にトランクスの脳裏に浮かんだのは、かつて悟飯と界王神が自分に向けて送ってくれた言葉だった。
『トランクス、君はこの世界に残された……』
『トランクスさん、貴方はこの宇宙の……』
『『希望だ』』
「っ!!悟飯さん、界王神様……俺は、俺はぁっ!!うおおおおおおおおおおっ!!!!」
だが、トランクスはカッと目を見開くと身体を起こし、更に折れた剣に気を纏わせ、気の剣とする事でベビーの気功波を受け止め、そのまま弾き飛ばす事に成功した。
「ええい、見苦しい屑めっ!!まだ抵抗するか!?そこまで生き恥を晒したいとは、とことんまで無様な奴だ!!」
「俺は……!!俺は、自分の弱さを、恥も悔いもしない……!!俺はみんなを助ける為に戦い、みんなに助けられて生き延びて来た……それが俺だっ!!それが俺達人間だぁぁぁっ!!!!」
「な、なんだ、この光は……ぐわぁぁ!!」
力の限りトランクスが叫んだその瞬間、彼の身体から眩い光が放たれ、ベビーを弾き飛ばした。
更にトランクスの光に呼応するかのように、地球から無数の光がトランクスの下へ飛来する。
「これは……地球人どもの気か!?何故……!!」
「フッ……どうやら兄ちゃん達が上手く超神水を使ってくれたらしいな。」
地球に残した兄達が見事この世界の地球人達を正気に戻した事を確信し、笑みを浮かべるベジット。
そしてこれはベジットもトランクスも知らない事だが、実はこの戦いは地球全土に放送されていたのだ。
正気に戻った彼等は必死に戦い続ける仲間の……トランクスの放つ光を見て、誰もがその勝利を願い、心から応援した。その結果、彼等の思いはトランクスを助ける光となり、この場に降り注いだのだ。
いや、彼等だけじゃない。この星にいる悟飯達もトランクスの勝利を願い、力を貸していた。そして……
「受け取れ、トランクス!!」
「き、貴様!?」
「わりぃなベビー。少しだけ約束破っちまった。まぁテメェ相手に律儀に約束守ってやる義理もねぇが。」
ベジットも、トランクスに力を貸していた。
そしてみんなの力を……光を受け取ったトランクスは超サイヤ人から超サイヤ人ブルーへと再変身し、剣の刀身も青色に輝き始めた。
「感じる……父さんと悟空さん、悟飯さん達だけじゃない!!マイやみんなの力を……!!そうだ、この光は俺一人が生み出した物じゃない!!俺を支え、共に戦って来てくれた仲間達の想い、その全てが結集した光なんだ!!!!」
「ふ、ふざけるなぁ!?さっきまで死にかけだった癖に、雑魚どものパワーを少し借りたくらいで急に蘇りやがってぇ!!お、大人しく地獄に落ちやがれぇぇぇっ!!!!」
怒り狂いながら巨大な黒いエネルギー弾を投げつけるベビー。だが、トランクスは飛翔する事でそれを回避する。
「行くぞ、みんな!!ベビーを倒す!!俺達みんなの手で、地球を救うんだっ!!!!うおおおおおおおおおおおっ!!!!!!」
全ての光が、トランクスの身体の中へと吸収されて行く。そしてみんなの力が、願いが、トランクスを更なる高みへと導いた。
超サイヤ人ブルーのオーラが更に濃くなり、全身が光り輝き、瞳も通常の超サイヤ人ブルーの物とは異なる形状へと変化する。トランクスはみんなの力を得て、超サイヤ人ブルーを進化させたのだ。
「へっ、この土壇場で、あいつも殻を破ったようだな……」
我が子の成長を嬉しく思い、笑顔を浮かべるベジット。
そしてトランクスは、全ての決着をつけるべく、剣全体に更に高出力の蒼い気で覆い尽くし、ベビーへと突撃し、斬撃を食らわして行く。
ベビーも必死になって避けようとするが、元の戦闘能力はそこまで高くないばかりか、仲間達の光を受けて超サイヤ人ブルーを進化させた今のトランクスとでは絶望的なまでに力の差が生じてしまったのか、先程までとは一転し、一方的にトランクスの攻撃を受け、体中が切り刻まれて行く。
更にベビーは本来再生能力を持つ筈だが、どう言う訳か今のトランクスに斬られた事で生じた傷は、全く再生する事が出来なかった。
「き、斬られた傷が再生が出来ない!?な、何故だぁ!!こ、こんな屑野郎に、この俺様負けると言うのか!?」
「そうだ、お前は負けるんだ!!お前が見下して来た俺達の力に!!」
「寝惚けるなぁっ!!貴様のように一人では何も出来ない臆病者のゴミ屑野郎なんかに、この俺が負けるものかぁぁぁっ!!!!」
「確かにお前の言う通り、俺は一人じゃ決してここまで来れなかった!!一人だったらとっくに死んでいたさ!!それでも俺にはお前にはない、永遠に手にする事の出来ない力があるっ!!」
「ち、力だとぉ!?なんだ、それは!!」
「俺にはな、大勢の仲間が居るんだっ!!こんな俺の為に、今も必死になって力になろうとしてくれる人達がいる!!間違ったことをしたら、親身になって叱ってくれる人達がいる!!たとえ別の世界であっても、俺を助けようとここまで駆けつけてくれた人達がいる!!こんなにも沢山の人達が、いつも俺を支えてくれている!!」
トランクスの脳裏に、沢山の仲間達の姿が思い浮かぶ。マイやブルマ、レジスタンスや避難民の仲間達、ベジータや悟空と言った別の世界の仲間達、そして……悟飯と界王神。いつだって彼等はトランクスの心の中にいる。彼等と共に過ごし、繋いで来た絆は、決して折れない力をトランクスに与えてくれているのだ。
「だがお前はどうだ?結局、お前はいつも独りぼっちだ!!他人を操り、支配し、利用するだけで、本当の意味で信頼出来る仲間なんて誰一人居ないじゃないか!!現に今も誰もお前を助けようとはしないだろう!!」
「だ、黙れ!!黙れ黙れ黙れ、黙れぇっ!!独りぼっちだと!?仲間だと!?よりによって貴様がそれを口にするのか、サイヤ人っ!!ああそうとも、俺に仲間などいない!!必要もないっ!!俺にとっての唯一の仲間達は……何よりも守りたかった者達は既に!!貴様等サイヤ人によって奪い取られているっ!!」
「っ!!」
「だから今度は俺が奪うのだよ!!貴様等サイヤ人と地球人から、全てをっ!!貴様等の絆など、この俺の前では無力だと今一度思い知らせてやるっ!!!!」
「確かにお前がサイヤ人を恨むのは当然のことなのかも知れない!!だが、だからと言って無関係な地球のみんなを支配し、自由を奪って良い権利などありはしないっ!!奪われる痛みを知りながら、それを無関係な者達に味わわせている時点で、お前はもうかつてのサイヤ人達と同じ所まで堕ちている!!その事がわからないのか!?」
「ほざくな!!貴様等サイヤ人と手を取り合い、ぬくぬくと暮らして来た時点で、地球人どもも同罪だ!!まして俺がそこまで堕ちたと言うのなら、堕としたのは貴様等サイヤ人だ!!こんな事になったのも、全ては貴様等サイヤ人のせいだ!!貴様等さえ居なければぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
紫の気を纏ったベビーのパンチをバックステップで回避すると、トランクスはカウンターで気の剣を一閃し、ベビーの右腕を切り捨てた。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!??お、おのれぇ!!きぃさぁまぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「これで終わりだ、ベビィィィィィィッ!!!!」
怒り狂うベビーの反撃をあっさりと回避し、遂にベビーの腹部を気の剣で貫いたトランクス。ベビーも必死に剣を引き抜こうとするが、その圧倒的な力に少しも剣を動かす事は出来なかった。
「なんだ、この力は!?た、沢山の気が混じり合い、この俺の身体を抉るっ……!!」
「誰も信じる事の出来ない、哀れでちっぽけな王なんかに!!仲間との絆を信じる事の出来ない、可哀想なお前なんかに!!俺達の力を、絆を砕く事は絶対に出来ないっ!!!!」
「わ、我が神よ!!神の龍よ!!お、俺に力をっ!!この屑どもをぶっ殺せる力をくれぇぇぇぇ!!!!」
もはやなりふり構わず、ベビーは天に向かって助けを叫んだ。だが、どれだけ助けを求めても、救いの手が差し出される事はなく、何の返事も返ってくる事はなかった。
「これがお前が見下した者達の……!!俺達の、絆の力だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
「こ、こんなぁ!?こんな臆病者の屑野郎に、この俺がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!そ、孫悟空ぅ!!ベジータぁ!!トランクスぅぅぅぅぅぅぅ!!!!うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!!!」
青く輝く剣を切り上げ、ベビーを真っ二つに切り裂くトランクス。直後、ベビーの身体は眩い気の光に飲み込まれる。
その光の中で、身体が部品一つ残さずに燃やし尽くされている最中、ベビーは確かに神の声を聞いた。
ただ一言、『お前はもう用済みだ』と……
その身を焼き尽くされ、ベビーは光の粒子となって完全消滅した。そしてトランクスは空に浮かぶ地球を見上げ、地球に住まう仲間達に礼を言うのだった。
「ありがとう、みんな……」
「フッ……やりゃ出来るじゃねぇか。これなら及第点って所か……」
空を見上げるトランクスの背中を見て、ベジットは満足そうに笑顔を浮かべた。
それから程なくして界王神に連れてきて貰ったラディッツとナッパから超神水を受け取り、ブルマを始めとした新ツフル星に来ていた地球人達を元に戻すのだった……
てな訳で超サイヤ人ブルー進化は未来トランクスが習得しました。そして次回で未来トランクス編は完結となります。