職場体験1日目、早朝。
上鳴は神奈川県横浜市にあるヒーロー事務所へと赴いていた。
そのヒーローの名前はドラグーンヒーロー・リューキュウ。
若くして絶大な支持を獲得する面倒見の良いクールビューティーにしてNo.9ヒーローだ。
上鳴がなぜこの事務所を志望したかというと、その実力もそうだが彼女がドラゴンだからだ。
かがやき様・シンオウ様を筆頭に伝説と言われる存在には『ドラゴン』タイプが多い。そして伝説に準ずる存在すらも上回る600族にも同様に『ドラゴン』タイプが多い。
つまりポケモン世界において強さの象徴はドラゴンなのだ。
まあ他にも志望した理由はあるのだが第一に彼女が『ドラゴン』であるという要素は大きいだろう。
「雄英高校から職場体験に来ました。上鳴電気です。よろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくね」
上鳴は事務所の人に案内されて応接室で挨拶をする。
それにドラゴンの爪のマスクをつけたリューキュウ本人が応答する。
そして彼女はヒーローの具体的な実務について簡単な説明をする。
「それで上鳴くん、貴方のヒーロー名はなにかしら?職場体験とはいえコスチュームを身に着ければ一端のヒーローよ」
「ピカチュウです」
「あら可愛い名前ね。貴方にぴったりだわ。改めてよろしくねピカチュウ」
「よろしくお願いします。リューキュウさん」
「それでなんでここを志望したのかしら?」
もちろんだが貴方が『ドラゴン』タイプだからですみたいなふざけた理由は言わない。
ちゃんとしたカバーストーリーは用意してある。
「それは…」
「ねぇねぇ!リューキュウ!それが新しい職場体験の子?」
応接室に誰かが入って来た。
「そうよ、ねじれ。紹介するわね上鳴。彼女は波動ねじれ。ヒーロー名はネジレチャン。貴方の先輩でインターン生よ」
リューキュウがそう言うとねじれはペコリと挨拶をする。
波動ねじれ、雄英高校3年生であり上鳴にとっては先輩にあたる。
そして仮免許を持っている実力者だ。1年とは違い即戦力でもある。
「僕がリューキュウさんの事務所を選んだ理由は彼女です」
「ええ!?貴方。ま、まさかねじれのことが好きで私の事務所に………」
突然の告白にリューキュウは混乱する。
まさかの展開だ。
「いえ、彼女のような雄英のインターン生を受け入れてる実績があるからここを選びました」
そう言うと上鳴はスマホのニュース記事を出した。
そこには【雄英インターンのネジレチャン、大事件を瞬時に鎮圧】と書いてある。
「あ!それ私が初めてヴィランを倒した時の記事だ!2年の時の奴だよねリューキュウ!」
「そんな前の記事を覚えてるなんて。やっぱりピカチュウはねじれのことが………」
ちなみにニュース記事は峰田のドチャシコヒーローインフォメーションからのものだ。
意外とバカにできない。
だがそのせいでいらぬ誤解を生んでしまった。
「というわけで、よろしくお願いしますねじれ先輩!」
「わー!よろしくね後輩くん」
ねじれは「先輩」という響きに大喜びして小躍りする。
雄英は他学年との繫がりが薄いのでこういう体験は新鮮なのだ。
そして彼女は早速、質問をしてくる。
「ねぇねぇ!貴方は体育祭で優勝したよね。どういう個性なの?分身したり電気を出したりしてたよね」
「個性:電気鼠です」
「電気鼠なのになんで分身するの?」
「…………………なんででしょうね」
「不思議だねぇ」
彼女のポワポワした雰囲気に思わず場が和んでしまった。
「オッホン、じゃあコスチュームに着替えてパトロールね」
リューキュウは咳ばらいをして彼らに指示を下す。
そして上鳴はコスチュームに着替えて彼女らと共にパトロールに出ることにした。
その傍らでヒーローの権限や法律などを教えて貰っている。トップヒーローの経験も踏まえて教えてもらえるこの時間は大変貴重だ。
「基本は犯罪の取り締まり。事件発生時には警察からの応援要請を受けたりとかね。それで逮捕強力や人命救助などの貢献度を申告、そして専門機関の調査を経てお給料が振り込まれるわ。後はCMやイベント出演などの副業も……………って授業でやってるかしら?」
「はい、ですが生の声は重要だと思ってます」
「あらお上手ね。……………!ピカチュウ、ヴィランよ。市民の避難をお願いできる?ねじれはバックアップを」
「は、はい!」
悪の気配を悟ったのかリューキュウはドラゴンに変身する。
だが上鳴は気づけなかった。
彼は戦闘においては間違いなくプロだがヒーローとしてはまだまだ未熟である。
「銀行強盗だ!誰か捕まえてくれ!」
「ヒャッハー!この世の金は全てズルズキン様のものだぁ!」
「そうはさせないわ!ハッ!」
「ぐえ!」
リューキュウは迅速に移動しヴィランに『ダブルウィング』を喰らわせる。
効果は抜群だ!一瞬でヴィランは鎮圧される。
(凄いな。これがNo.9ヒーロー、前世の俺と同じくらいには強いかも)
上鳴はそう思いながら市民を落ち着かせている。
「救助・避難、そして撃退。ヒーローに求められる基本3項。通常、救助か撃退のどちらかに基本方針を定め事務所を構える。私は撃退を基本方針にしているわ。管轄を知り尽くし僅かな異音も逃さず、誰よりも現場へ駆けつけ、市民がいれば遠ざける。それがヒーローとしての基礎よ。わかったかしら、上鳴?」
「ピカ!」
サイドキックに後処理を任せながらリューキュウは上鳴に教授を行う。
「とはいえ、ピカチュウは仮免許もないから個性の使用は禁止よ。正当防衛並びに民間人保護の場合は例外だけどね」
そうして警察にヴィランを引き渡してパトロールが再開するかに思えた。
しかし、そうはいかない。
「リューキュウ♡」
「握手してください」
「サインお願いします」
リューキュウは一般人に迫られている。
「ネジレチャンも一緒だぞ」
「今年のミスコン頑張ってください」
「体育祭、3年の部で見たよ。頑張ってたね」
そしてそれはサイドキックであるねじれも同様だ。
だが今回は彼女達だけではない。
「体育祭で1位の子だ」
「ピカチュウちゃん。ハァハァ、君のチア姿のせいでおじさんは大変なことになっちゃったよ」
「エンデヴァーの息子さんと引き分けた人!」
「リューキュウの所に来てたのか。やるじゃないかリューキュウ!」
「尻尾で腕相撲していいですか?」
上鳴も割と有名人なので市民たちに詰め寄られている。
助けを求めようとリューキュウの方へと目をやるが。
「ファンサも立派なヒーローの仕事よピカチュウ」
「ピカ………」
リューキュウはそう言ってウインクをする。
そう言われたからには上鳴は全力でファンサービスをする。
そしてファンの1人が話しかけてきた。
「リューキュウのサイドキックなのかい?」
「いえ、まだ仮免許もなくて職場体験です」
「そうかい、仮免許が取れるように頑張らないといけないね」
「応援ありがとうございます」
「今のうちに古参アピールしたいからサインくれないかい?」
「ピカ!」
サインを書いたり、写真を撮ったり、握手をしたり、尻尾で腕相撲をしたりと大忙しだ。
かつてポケモンであった彼が初めて行うファンサはそれほど悪いものではなかったとだけ言っておこう。
(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)
その後のパトロールは特に大きな出来事もなく困っている人の手助けやファンサービスを行う程度だった。
そして昼になり彼らは事務所に戻り出前の昼食『ヴルストのせカレー』を食べている。
「そういえば、なんで僕を指名してくれたんですか?」
昼食を食べ終えた上鳴はリューキュウに質問をする。
当然の疑問だ。
「まあ下世話な話になるけど、はっきり言えば話題性だね。雄英の覇者を受け入れれば記者たちも取り上げてくれるだろうし」
「ピカァ………まあそれでも僕は構いません」
「というのが半分、もう半分は戦い方を見てもったいないと思った」
「もったいない?」
「本当だよね。私も1年の体育祭の切り抜き動画を見たんだけど違和感しかなかったよ」
ねじれがそう言って疑問を呈する。
「ねぇねぇ、なんで最終種目で分身の技を使わなかったの?あれを使えばもっと楽に勝てたよね?何か理由があるの?」
当然の疑問だ。『かげぶんしん』を使えば広範囲攻撃持ちである轟や爆豪はまだしも耳郎戦や飯田戦や有利に運べたはずだ。
だが上鳴はそれを使わなかった。
なぜかというと――
「ピカチュウ、おそらくだけど貴方は戦闘中に4つしか技を使えないのよね」
「御明察です」
リューキュウには『おみとおし』だった。
彼女はトップヒーローとしての直感で上鳴が一度の戦闘で技を4つしか使えないことを見抜いていた。
そして、ねじれは更に質問をしてくる。
「ねぇねぇ、それは誰かに決められたの?」
「………誰かに決められてはないです」
「じゃあ5つも6つも使ってもいいんじゃないかな?」
「………確かに!」
青天の霹靂だ。
彼の前世ではポケモンは技を4つまでしか使えなかった。それが世界の理だ。
だがここはポケモン世界ではない、ヒロアカ世界だ。
4つ以上技を自由に使っても良いのだ。
現にオールマイトやリューキュウは技を4つ以上持っている。
というか厳密に言えば上鳴はポケモンに限りなく近い人間だからポケモンではない。
「………ご飯も食べ終わったし事務所の裏手にある訓練場へと行きましょうか」
上鳴はうなずきリューキュウの後を追う。
彼女の事務所の裏手には広い森林地帯が広がっていた。
「訓練場は外なんですね」
「私の個性の関係で室内じゃ狭いのよ。じゃあ、とりあえず技を5つ使ってみなさい」
彼女の個性はドラゴン、背中の翼で空中を滑空する巨大な竜に変身をするというものだ。
「わかりました」
そうして上鳴は『10まんボルト』と『アイアンテール』と『チャームボイス』と『ボルテッカー』を使った。
そして『かげぶんしん』を使おうとするが。
「ピィッカァ!」
中途半端な状態で失敗してしまう。分身の数が少なく半透明だ。
前世でのポケモン生活が長かったが故に癖として4つしか技が使えないことが染みついている。
中々、それを拭うことは難しい。
「やっぱ無理でしたか」
「いえイケるわピカチュウ。全く出来ないならまだしも中途半端にできるのなら、そのうち練習すれば出来るということよ」
「わかりました!」
「じゃあ次は模擬戦と行きましょうか。ここは私有地だから個性の使用は自由よ」
彼女は巨大なドラゴンに変身する。
それが意味することは1つだ。
リューキュウと上鳴の模擬戦。
「わかりました。胸を借りるつもりでいきます」
彼がそう言うと速攻を仕掛ける為に『ボルテッカー』を使う。
だが……………
(上に飛ばれた!)
手応えはない。リューキュウは『そらをとぶ』で回避したのだ。
巨体に似合わず機敏である。
「体育祭の時といい凄い威力ね。既に必殺技として成立しているわ」
「それはどうも!」
上鳴は『10まんボルト』を放つ。
リューキュウのタイプは
「良い火力ね!でもスーパーヴィランならこれくらい耐えてくるわよ!」
彼女は怯む様子もなく『ドラゴンクロ―』を上鳴に向けて撃つ。
だがそれを彼は『アイアンテール』で受け止めた。『ドラゴン』技は『はがね』タイプには半減、要するに尻尾を一時的に『はがね』タイプにしたのだ。
だがそれはすなわち『ほのお』に弱くなるということだ。
リューキュウの口から『かえんほうしゃ』が放たれた。
「ピカッ!あちちち!」
「安心して弱火よ」
(やっぱ強い。今の俺にとっては圧倒的に格上だ。だけどここで無様にまけるわけにはいかない!)
「ピカァ♡」
上鳴は『チャームボイス』を使った。『フェアリー』技なのでリューキュウには効果抜群だ。
「グッ!音による精神攻撃!?やるわね」
(『チャームボイス』、『なきごえ』からの派生技。だというのに今の俺は『なきごえ』すら使えない。よく考えたらこれはおかしいな。というか『なきごえ』なんて技ですらないだろ)
「ピカァ!」
試しに上鳴は『なきごえ』を使う。今度は技として完璧な形だ。
リューキュウの攻撃力が1段階下がる。
「使えました!5つ目の技!」
彼は嬉しそうに『なきごえ』について説明する。
人生で初めて5つ目の技を使えたのだ。
見た目も相まって非常に愛らしく喜んだ。
「なら分身の技を使ってみなさい」
「はい、ピカッ!」
だがそれは上手くいかず不完全な分身が出てくる。
どうやら上手くいく技といかない技があるようだ。
「あら?まだ出来てないじゃない」
そう言いながら『ドラゴンクロ―』が上鳴を襲う。
それを完全な『こうそくいどう』で躱す。
(どうやら『こうそくいどう』や『なきごえ』のように上手くいく技と『かげぶんしん』みたいに上手くいかない技があるようだな。これを繰り返して4つ以上技を使うことに慣れていけば上手くいかない技も使えるようになるかも)
「………………体育祭で見せた速くなる技はできたわね。まあ練習あるのみよ。さあビシバシいくわよ!」
「はい!」
リューキュウが『ドラゴンダイブ』を放つ。
それを『ボルテッカー』で迎撃するが……………
「ピカァッ!」
競り負けてしまった。
そして上鳴は吹き飛ばされてしまった。
「ふぅ、やっぱ恐ろしい威力ね。私の鱗がここまで傷つけられるなんて。1年でこれなら順調に行けばトップヒーローになれるわ」
「こ、光栄です」
「じゃあ次は『そらをとぶ』練習ね」
「ピカ?」
(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)ピカチュウの技
『10まんボルト』『アイアンテール』
『チャームボイス』『ボルテッカー』
『かげぶんしん(中途半端)』『なきごえ』『こうそくいどう』
このコーナーも技制限撤廃の影響でもうそろそろ役割を終えようとしている。
リューキュウが炎を吐くのと横浜に事務所がある設定はオリジナルです。ドラゴンなら吐けるやろの精神。横浜なのはステインと絡ませやすくする為と横浜にピカチュウのマンホールがあるからです。
上鳴チュウを彼女のとこに行かせたのはインターン編に無理なく絡ませる為ですね。
文化祭の掲示板展開見たい?
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見たくない
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どっちでもええよ