林間合宿事件から2日後。ここはとある病院。そこには爆豪*1と葉隠*2と八百万*3と上鳴以外のA組の生徒達が緑谷のお見舞いに来ていた。
「助けよう」
「へ?」
突如として耳郎がそう言う。
彼女は聞いてしまったらしい。八百万がヴィランの1人に発信機を取り付けたことを。つまりそれは八百万に頼めばヴィランの場所が分かるということだ。
「待て!耳郎くん!プロに任せるべき案件だ!生徒の出て良い舞台ではないんだ!」
「んなことウチも分かってるよ。それでも!それでも!上鳴を助けたいんだ!」
「耳郎!お前って奴はなんて漢らしいんだ!俺も行くぜ」
「ああ、俺も行こう」
飯田・耳郎・切島・轟が口々にそう言う。
「ケロ………皆、上鳴ちゃんが攫われてショックなのよ。でも冷静になりましょう。どれほど正当な感情であろとルールを破るのならその行為はヴィランのそれと同じなのよ」
「……………今晩、ウチは病院前で待つ」
そう言って耳郎は出ていく。そして夜。
病院の前で耳郎・緑谷・轟・切島・八百万はいた。
「待て」
そしてそんな彼らを止めようと飯田は立ちはだかる。
「何でよりにもよって君達なんだ!俺の私的暴走をとがめてくれた…共に特赦を受けたはずの君達が何で俺と同じ過ちを犯そうとしている!あんまりじゃないか?」
「何の話をしてんだよ…」
切島がそう言うのを轟は止める。
「俺達はまだ保護下にいる。ただでさえ雄英が大変な時だぞ。君らの行動の責任は誰がとるのか分かっているのか!俺だって悔しいさ!心配さ!」
「飯田くん…」
「飯田…俺達だって何も正面きってカチ込む気なんざねえ。戦闘無しで助け出す」
「ならば、俺も連れていけ。ストッパーとして同行する!いわばウォッチマンだ!」
飯田はそう言い放つ。
そうして彼らはひと悶着はありながらも隠密活動で上鳴を奪還しようということで結論が一致した。
「さ、行こう」
耳郎がそう言うと彼らは受信機が示す場所、神奈川県横浜市神野区へと向かう。
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「ピカ?」
ここは神野区にあるヴィラン連合のアジトの一室。ペット用ベッドで寝かされた上鳴は微かに声を上げた。
「あら?上鳴ちゃんがおきたわよ」
「おはようございます上鳴くん、相変わらずカアイイですね。でももっと赤くしたらカアイイですよ」
「あらダメよトガちゃん。彼には役割があるんだから」
マグネとトガは上鳴の顔を覗き込みながらそう言う。
拉致された後に、彼は睡眠薬で眠らされた。
そして林間合宿襲撃から二日が経ち、ようやく起床したのだ。
「ピッカァ!」
上鳴は『アイアンテール』をマグネに振るう。
だがそれは部屋にいる黒霧によって防がれた。
「流石は雄英1位の男、良い判断です」
「危なかったわね。ありがと黒霧ちゃん♡」
「ヴィラン連合…………何の真似だ?殺すならさっさと殺せ」
「おい、落ち着けよ上鳴電気。何のために攫ったと思っている?」
そう言って上鳴に語り掛ける男がいる。死柄木だ。
彼は
「もしかして俺が可愛いからか?」
上鳴は精一杯考えて答えを導き出す。
「…………………違う。まずはこれだな」
死柄木はそれを否定する。そしてピカチュウの毛を2つまみほど毟る。
「おいゲノセクト、これが約束の品だ。お前の主に渡せ」
「感謝しよう死柄木殿」
そう言ってゲノセクトはピカチュウの毛を受け取る。
「黒霧、もう1つをドクターに」
「分かりました死柄木弔」
黒霧はワープゲートを介してドクターにピカチュウの毛を転送した。
「さて、話をしようか上鳴くん。単刀直入に行こう。俺達の仲間になれ」
「『ねごと』は寝て言え」
「まあそう言うと思ったよ。だが戦う前にこれを見てくれ」
そう言うと死柄木はバーのテレビをつけた。
そこにはある映像が流れている。
『では先ほど行われた雄英高校謝罪会見の一部をご覧ください』
「ピカ!相澤先生!根津校長まで!?」
画面の向こうにはスーツ姿の根津・相澤・ブラドキングがいる。
マスコミは雄英が再び襲撃された事、そして拉致被害者が出てしまった事を繰り返し報道していた。
特に体育祭で1位に輝き職場体験ではCMにまで出た上鳴がヴィランに拉致されたという事実は全国に酷く衝撃をもたらした。
「この度は我々の不備からヒーロー科1年生26名に被害が及んでしまったこと、ヒーロー育成の場でありながら敵意への防衛を怠り社会に不安を与えたことを謹んでお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」
(メディア嫌いの相澤先生が……………俺が弱いばかりに)
上鳴は衝撃を受ける。いつもは小汚い相澤先生が身なりを整えてメディアに出ている。それが如何に異常なことかはそれを見ている本人が良く分かっている。
『NHAです。雄英高校は今年に入って4回、生徒がヴィランと接触していますが今回生徒に被害が出るまで各ご家庭にはどのような説明をされていたのか又、具体的にどのような対策を行ってきたのかをお聞かせください』
「悪者あつかいかよ………」
「不思議なもんだよなぁ上鳴くん。何故ヒーローが攻められている!?奴らは少ーし対応がズレてただけだ。守るのが仕事だから?誰にだってミスの1つや2つある。現代ヒーローってのは堅苦しいなぁ」
「………………」
「人の命を金や自己顕示に変換する異様!それをギチギチと守る社会。敗北者を励ますどころか責め立てる国民。俺達の戦いは「問い」ヒーローとは正義とは何か、この社会が本当に正しいのかを1人1人に考えてもらう」
「USJの時とは随分とキャラが違うな」
「あの時は悪人を演じる必要があった。雄英を馬鹿なチンピラでも襲撃出来るってことを示して、慢心したヒーローたちを戒める目的があった」
「上鳴くん、改めて聞こう。俺達の仲間になれよ。我々は悪事と呼ばれる行為にいそしむただの暴徒ではない。君を攫ったのは偶々じゃない………」
「うるさい!『アイアンテール』+『かげぶんしん』」
上鳴は会話を打ち切り『アイアンテール』で牽制を行ってから『かげぶんしん』で翻弄を行う。
「というか最初の目的は爆豪だろ!あんな粗暴な奴はヴィランになりそうだから攫おうとした!そんで俺しか攫えなかったから仕方なく俺を仲間に引き入れてるだけだ!言っとくが俺はまだ戦闘許可解けてないぞ!」
ヴィラン連合の面々は戦闘態勢に入る。
「どーもォ、ピザ〇ラ神野店ですー」
瞬間、全員がその言葉に反応して扉を振り返った。
そして次の瞬間、ドアと反対側の壁が壊され、オールマイトがやってきた。
彼はいつもの笑顔ではなく修羅の如き形相だ。
「先制必縛ウルシ鎖牢!」
ピ〇ーラ神野店はオールマイトだけではない。シンリンカムイを始めとしたヒーローががヴィラン連合の面々を捕らえた。
「チッ、こんな木の枝くらい」
「逸んなよ!」
荼毘は抵抗して鎖牢を燃やそうとする。しかし、すかさず現れたグラントリノが彼の頭部を蹴り意識を飛ばした。
グラントリノは吸った空気を足の裏から噴出させることが出来る「ジェット」という個性の持ち主だ。
彼はかなりの高齢だが技のキレは落ちていない。
「怖かったろうによく耐えた。ごめんなもう大丈夫だ上鳴少年」
「ピカッチュ!オールマイト!」
「黒霧!持ってこれるだけ脳無を持ってこい!」
死柄木が指示を下す。しかし何も起こらなかった。
「すみません死柄木弔…所定の位置にあるはずの脳無がない」
「ヴィラン連合よ君らは舐めすぎた。少年の魂を、警察のたゆまぬ捜査を、我々の怒りをここで終わり死柄木弔!」
既にベストジーニスト率いる別働隊が脳無格納庫を襲撃し脳無を確保してある。
「終わりだと?ふざけるな始まったばかりだ!正義だの平和だのあやふやなもんで蓋された掃きだめをぶっ壊す。そのためにオールマイトを取り除く!仲間も集まり始めた。ふざけるな…ここからなんだよ…………黒ぎっ…」
「うっ…」
「忍法千枚通し!この男は最も厄介…眠っててもらう」
黒霧はエッジショットの個性「紙肢」で眠らされた。これでヴィラン連合は完全に追い詰められた。
「もう逃げ場はねぇってことよ。なぁ死柄木、聞きたいんだが…お前さんのボスはどこにいる?」
「ふざけるな!こんな…こんなぁ…!こんな…あっけなく…ふざけるな…失せろ…消えろ…」
「奴はどこにいる死柄木!」
「お前が嫌いだオールマイト!」
その時、ヴィラン連合でもヒーローでもない男の声がした。「もう大丈夫。僕がいる」という声が。
そして謎の黒い液体が死柄木の周りから突如として出てくる。そしてそこから脳無が出て来た。
1体だけではない、2体・3体・4体と次々に脳無があふれ出てくる。外部からの干渉であることは間違いないがそれを止める手立てはない。
「エッジショット!黒霧は!?」
「気絶している!コイツの仕業ではない!どんどん出てくるぞ!」
「ビガ!?なんだこれ!?体が飲まれっ!」
次の瞬間にはヴィラン連合と上鳴の体が黒い液体に包まれる。そして彼らの体は覆われていき姿を消した。
(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)
「ピカッ!臭い!なんだこれは?」
ここはヴィラン格納庫跡地。そこにはAFOと気絶したベストジーニスト達がいた。
「悪いね上鳴くん」
(…………………なんだコイツ!あれはベストジーニスト!?尻尾の震えが止まらない。間違いない!こいつは伝説だ)
上鳴はAFOの放つ『プレッシャー』の前に黙って震える事しかできない。
そしてそんな彼に続くようにヴィラン連合の面々も出て来た。
「また失敗したね弔。でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい。こうして仲間も取り返した。いくらでもやり直せ。そのために僕がいるんだよ。全ては君の為にある」
「なんなんだお前は!」
「ああ、自己紹介がまだだったね。僕はAFO。しかし君の個性はとてもいいね。彼に渡すのが勿体ないくらいだ」
「彼?いったい誰のことだ?」
「………………弔、そなえるんだ。来るよオールマイトが」
そうして彗星の如きパンチが放たれた。オールマイトのパンチだ。
「バーからここから5km余り、僕が脳無を送り優に30秒は経過しての到着衰えたねオールマイト」
「貴様こそなんだその工業地帯のようなマスクは!?だいぶ無理をしてるんじゃあないか?」
AFOの言う通りオールマイトは弱体化している。なぜならば5年前の傷に加えて緑谷にOFAを譲渡しているからだ。
故にAFOは出て来たのだ。今日、この神野区でオールマイトを屠る為に。再び、この国を闇から掌握する為に。
「ここは逃げろ弔、その子を連れて。黒霧皆を逃がすんだ」
AFOはオールマイトを吹き飛ばしながら黒霧に「個性強制発動」の個性を使いワープゲートを出現させる。
「逃がさん!」
「させないよ」
AFOはオールマイトを邪魔する。ヴィラン連合の面々は上鳴へと目を向ける。
「これはピンチかも『じゅうでん』+『ほうでん』!」
上鳴とヴィラン連合の戦いが始まる。荼毘と黒霧がダウンしているとはいえ人数差は相手の方が上、圧倒的に不利だ。
その瞬間であった。上空から何者かが飛んだ。
「上鳴!」
「え?耳郎!」
「来て!」
時間は数十秒前に遡る。
脳無格納庫近くに緑谷・飯田・轟・切島・八百万・耳郎がいた。
彼らは上鳴を助けるべく立ち上がったのだ。
「みんな、決して戦闘行為にはならない!僕らもこの場から去れて上鳴くんを助け出せる方法がある」
そう言って緑谷が説明する。
①タイミングはヴィラン達が隙が出来た瞬間に行う。
②緑谷のフルカウルと飯田のレシプロで推進力を得る。
③切島の硬化で壁をぶち抜く。
④轟と八百万で道を形成し、残りのメンツで戦場の上を飛ぶ。
⑤耳郎のイヤホンジャックで上鳴を持っていく。
以上だ。
「ピッカァ!」
上鳴は『ロケットずつき』で空を跳ぶ。そしてイヤホンジャックで抱きかかえられた。彼は6㎏ととても軽い、故に耳郎の耳たぶでも十分に抱きかかえれる。
そしてそのまま彼女の無い胸にダイブした。
「逃がすなぁ!遠距離ある奴は!?」
「あんたらくっついて!」
マグネがそう言ってスピナーとコンプレスくっつかせて磁力を付与する。
彼女の個性は「磁力」。人物に磁力を付与する能力だ。
それを利用して2人にS極を付与しコンプレスを飛ばした。
「反発破局!夜逃げ砲!」
「タイタンクリフ」
「っだ!」
だがそれはマウントレディが巨大化することによって防がれた。
「させるか!」
ゲノセクトが『そらをとぶ』で迫って来る。
しかし、それも『ドラゴンダイブ』で防がれる。
「リューキュウ!なんでここに!」
「ここは横浜よ。それに貴方が攫われたと聞いていてもたってもいられなくて」
リューキュウが助けに来た。そして上鳴達は抱えられる。
「おのれ!そいつは我が主に捧げるのだ!」
「しつこいわね!くらいなさい!」
リューキュウは『かえんほうしゃ』を放った。
そのまま彼は撃ち落とされた。
「オールマイト!このまま私は離脱するわ!」
「ああ!少年達を任せたリューキュウ!」
そうして上鳴達は安全な場所まで運ばれる。
「全く!無茶するわね!雄英生達!」
「すみません、リューキュウ。でもどうしてもウチ、上鳴を助けたくて」
「説教は後!」
「良かった上鳴!ウチ、ウチ、本当に心配して」
「耳郎、みんな、迷惑かけたな」
大粒の涙が神野の夜に溶けていく。
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