神野の悪夢と呼ばれる事件から月日が経った。オールマイトは事実上の現役引退・神野区は半壊・スーパーヴィランAFOはオールマイトに倒され特殊刑務所タルタロスに移送された。
しかし死柄木達を筆頭にヴィラン連合のメンバーは黒霧のワープゲートで逃走されてしまい予断を許さない状況にあった。
そこで雄英は対策を講じた。具体的には全寮制への移行である。雄英敷地内、校舎から徒歩5分の立地にハイツアライアンスという施設を建設し生徒達をそこで生活させることにした。
そして今日は記念すべき入寮の日だ。そこには相澤とA組全員が集まっている。
「とりあえず1年A組、無事にまた集まれて何よりだ」
「皆許可が降りたんだな」
「私は苦戦したよ」
「ピカ、俺もだ」
ガスで直接被害にあった葉隠と捕らわれの身になった上鳴は親を説得するのに苦戦したようだ。
だが最終的にはなんとかできた模様だ。
「無事に集まれたのは先生もよ。会見を見た時は居なくなってしまうのかと思って悲しかったの」
「…俺もびっくりさ。まぁ…色々あんだろうよ」
蛙吹の言う通り、相澤には雄英教師の職を辞する覚悟があった。しかし根津校長やオールマイトから留まるように請われたことで辞職を取り止めていた。
曲者揃いのA組を纏められるのは相澤しかいない。彼とクラスを良く知るもの達はそれを良く分かっていた。
「さて、これから寮について軽く説明するが、その前に一つ話がある。大事な話だ、いいか。耳郎・轟・切島、緑谷・八百万・飯田。この6人は、あの晩あの場所へ上鳴救出に赴いた」
この名前を挙げた6人は無断で現場へと向かい連合の隙をついて上鳴を助けるというとんでもないことをやったのだ。
テレビクルーが撮影に来る前だった為に一部の関係者以外は知らない事実ではあるが相澤にはちゃんと報告されていた。
それを聞いた時の相澤は思わず卒倒しそうになったそうな。
相澤の言葉にA組の面々は心当たりがあるような表情をする。知らなかった者はその場に居合わせることが出来なかった葉隠と爆豪くらいだ。
「その様子だと行くそぶりは皆も把握していたわけだ。色々棚上げした上で言わせてもらうが、オールマイトの引退がなけりゃ俺は上鳴・葉隠・爆豪以外を全員除籍処分にしている」
実際、あの場にはリューキュウがいたので彼らがいなくても何とかなっただろう。
彼女にはそれだけの実力が備わっている。
むしろ救出に失敗してしまい7人がオールマイトの脚を引っ張っていたら平和の象徴は魔王により殺されていただろう。そうなれば日本は地獄だ。
「正規の手続きを踏み、正規の活躍をして信頼を取り戻してくれるとありがたい。以上!さっ!中に入るぞ元気に行こう」
(((いや待って無理です…行けないです…)))
相澤の説教は彼らには効果抜群だ。A組の面々は脚を止めて項垂れる。
そうして彼らは寮の中へと入っていく。
「1棟1クラス。右が女子棟、左が男子棟と別れている1階が共同スペースだ。食堂や風呂・洗濯などはここで行え」
「中庭もあるぞ」
「豪邸やないかい…」
「麗日くん!」
たった数日で建設された寮だが人手はエクトプラズム・土台はセメントスがいるのでご機嫌な新築だ。麗日に至っては豪華さのあまり失神した。
「各自、事前に送ってもらった荷物が部屋に入っているから、とりあえず今日は部屋でも作ってろ。明日また今後の動きを説明する。以上、解散」
こうして生徒達は各々、荷造りをすることになった。
(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)
そして荷造りが終わり通常の学校生活が始まる。彼らはいつもの教室で相澤先生の話を聞いていた。
「まずは仮免取得が当面の目標だ。この試験に合格すればお前らタマゴは晴れてヒヨッ子…セミプロへと孵化できる」
「おお!テンションが上がるな!」
クラスのテンションが上がる。
だがそう簡単にはいかない。
「ヒーロー免許ってのは人命に関わる責任重大な資格だ。当然、取得の為の試験はとても厳しい。仮免といえどその合格率は例年5割を切る」
「仮免でそんなキツイのかよ」
「そこで今日から君らには1人最低でも2つ………必殺技を作ってもらう」
「学校ぽくてそれでいてヒーローっぽいのキタァァ!」
クラスは仮免の難しさを吹き飛ばす勢いで盛り上がる。
そうしてエクトプラズム・セメントス・ミッドナイトが教室に入って来た。
「必殺!コレスナワチ必勝ノ型・技ノコトナリ!」
「その身に沁みつかせた技・型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるか!」
「技は己を象徴する!今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ」
彼らは話を進める。
曰く、仮免試験では戦闘力は極めて重視される項目となっている。故に技の有無は合否に直結するとのことだ。
そうして生徒達はは体育館γ………通称TDLで圧縮訓練を行う流れと相成った。
「ピカァ!『アイアンテール』!『10まんボルト』!『ひかりのかべ』!『あなをほる』!『チャームボイス』!『かげぶんしん』!『こうそくいどう』!『ボルテッカー』!『かみなり』!」
上鳴はエクトプラズム(分身)の前で主要な技を一通り披露している。
「ドレモ素晴ラシイ練度ダ。ダガ『かみなり』ハ命中率ガ問題ダナ」
「はい!精進します!」
「フム、トハイエ一朝一夕デ解決スル問題デハナイ。コスチュームノ改良ヲシヨウ。校舎1階ノ開発工房へ行キ専門ノ方二聞クヨウ二」
そういうことで圧縮訓練後、上鳴は耳郎を誘って開発工房へと向かった。
彼らは廊下で談笑しながら進んでいる。
「ウチはスピーカーを足だけでなく腕にもつけようと思ってんだよね。装備が重くなるけど『ソウルビート』である程度カバーできるしね」
「俺は大技の命中率の安定かな。確か体育祭で峰田が命中率が上がるサポートアイテムを身に着けていたからそれをコスチュームに組み込む予定だ」
そうして彼らが工房のドアを開けようとした瞬間、ドアから爆発が起こった。
上鳴達は吹き飛んだ。
「思いついたものを何でもかんでも組むんじゃないよ発目!」
「フフフ、すみませんパワーローダー先生。あれ?貴方はいつぞやの!」
爆発を起こしたのは発目明だ。彼女は上鳴達と共に廊下に転がっている。
ちなみに彼女は体育祭で上鳴と騎馬戦で組んだことがある。
「ヒーロー科のえー、お名前忘れました」
「上鳴電気だ」
「なるほど!では私はベイビー開発で忙しいので!」
そう言って発目は開発工房へと戻ろうとする。
彼女にとって発明以外は興味の範囲外なのだ。
「待って!待って!コスチューム改良の件でパワーローダー先生に相談があるんだけど」
「コスチューム改良!?興味あります!」
その言葉を聞くと発目は途轍もない勢いで喰いついてくる。そうして彼らは案内をされた。
「ではまずこれを着てください!とっておきのベイビー!ゴリマッチョパワードスーツ!」
「あの………そうじゃなくて」
「筋肉の収縮を感知して動きを補助するハイテクっ子です。身長の低いヒーローように開発したものです。しかも黄色く塗装されてるので貴方にぴったりですね。」
上鳴はパワードスーツを着せられた。その見た目はまるでゴリチュウだ。
「ああ……………ウチの可愛い上鳴が8頭身でゴツくなった!………ダメダメ!ウチは絶対反対!」
こうしてゴリチュウパワードスーツ案は耳郎の決死の反対でお流れになった。
「えっと、俺は命中率の問題を解決したいんだけど」
「じゃあこれですね『こうかくレンズ』!体育祭の時よりも性能は格段にアップしてますよ。なんと独立思考AI:ROTOMによる補助機能つきです」
発目は上鳴にスカウターのようなレンズを差し出した。
「最高だ。コイツをコスチュームに仕込めるか?後はだな『そらをとぶ』為の……………」
「はい!お任せあれ!」
「ウチは腕にスピーカーを仕込みたいんだけど………」
「くけけけ……………それは俺に任せな」
「ありがとうございます!パワーローダー先生!」
そうして圧縮訓練と並行して発目とパワーローダーによりコスチューム改良は始まる。
「ㇷへェェェ!毎日大変だぁ!」
「圧縮訓練だからね」
「あと1週間もないですわ」
場所と時は変わり、ここは寮の共同スペース。そこでは女子会が開かれていた。
「私はコスチュームとサポートアイテムを新しく作ったんだ!これで冬を全裸で乗り切らなくても済むよ!」
「ん?葉隠って透明人間なのに服を着て大丈夫なの?」
「それが大丈夫!なんと私の毛髪を使った特殊素材なのだ!」
葉隠はそう言って語り出す。彼女の個性「透明化」は個性の関係でコスチューム無しで全裸というストロングスタイルだった。だが流石にそれは色々と危ないということで自らの毛髪を使い彼女が触ると透明化するスーツと武器を作ってもらったらしい。
要するにルミリオンのスーツのようなものだ。
「ジロちゃんは必殺技はどう?」
「うーん、新技は思いついたけど、まだ体が追い付いてないかな。少しでも個性を伸ばしておく必要があるわ」
「お茶子ちゃんは?」
麗日に質問が飛んでくる。だが彼女は上の空だ。。
「お茶子ちゃん」
「うひゃん!」
「お疲れのようね」
「いやいや疲れてなんかいられへん。まだまだこっから………の筈なんだけど何だろうねぇ、最近無駄に心がザワつくんが多くてねえ」
「恋だ!」
芦戸がそう言うと麗日は頬を赤らめてあからさまに慌てる。
どうやら図星のようだ。
「な、なに!?故意!?鯉?知らん知らん!」
「緑谷か飯田!?一緒にいること多いよねぇ」
「誰―!どっち!?誰なの!?」
「ゲロっちまいな?自白した方が罪軽くなるんだよ」
キャアキャアと麗日は女子達から追及を受ける。
だが彼女も攻撃されてばかりではない。すかさず反撃を行う。
「そ、そんなら耳郎ちゃんだってアレじゃん!神野の件で上鳴君を助けにいったじゃん!よく一緒にいるし恋してるんちゃう?」
「な!?それは!」
瞬間、女子のターゲットが麗日から耳郎へと変わる。
「グッへへ!響香ちゃん。アンタも上鳴との関係について吐いてもらおうか」
「ウチはそんなんじゃないし!」
「おーい!耳郎~!」
なんとタイミングの悪い…いや良いのか上鳴が女子会へと突撃してきた。女子達は笑みを浮かべる。とても異様なほどに。
「なっ!上鳴!?なんのよう?ここは女子の花園なんだけど」
「すまん。時間は取らせないから。お前の遺伝子を俺にくれ」
「えっ!えっ!?それは!その!子作っ………!いきなりなに言ってんの上鳴!?」
耳郎は頬を赤らめて動揺する。その様はまさにクリムガンのように真っ赤であった。
『こちら葉隠、どういうこと!?』
『こちら芦戸、おそらくは峰田あたりに碌でもない知識でも吹き込まれたのだと推測』
『とりあえず2人の仲を進展させるように尽力するよ』
『了解』
葉隠と芦戸はコソコソ話をしながらそう言う。彼女らは恋仲を作り出して自由に弄れる玩具を作りたいのだ。
「こづっ?何の話だ?俺は遺伝子を取り込むと技が新しく習得できる体質なんだ。だからお前の毛髪あたりをくれ」
林間合宿でラグドールに指摘されたように上鳴の個性には吸収という特性があることが判明した。
故に彼はA組や教師陣を筆頭に遺伝子を集めているのだ。
「ビックリさせること言わないでよ上鳴!それと、なんでウチにだけなの!」
「既に他のメンツで相性のよさそうなメンツは吸収済みだ。瀬呂のテープや峰田のもぎもぎとか常闇の毛とかな」
「な、なるほど」
『こちら芦戸、遺伝子ということはツバとかでもいいのでは?』
『こちら葉隠、ありうる。じゃあキスを誘発させることも………』
「上鳴くん、遺伝子を取り込むなら髪の毛じゃなくていいんじゃない?」
「ピカ?葉隠、どういうことだ?」
「キッス!キッス!キッス!」
「………えっ、お前!流石にそれは!?」
芦戸の「キッス」コールに上鳴は赤面する。前世がポケモンとはいえ今世の価値観に染まりつつある彼にもそういう知識はある。
「ウチらそう言う関係じゃないし!」
「これからだよね!」
「これからって………」
「ケロ…………上鳴ちゃんは耳郎ちゃんのことどう思ってるのかしら?」
蛙吹が爆弾発言をぶち込む。女子達は「キャアキャア」と盛り上がる。
「そりゃ好きだぜ」
『こちら葉隠、これは………』
『こちら芦戸、我らの勝利だ』
「あー、もう!さよなら!」
その空気に耐え切れなくなった耳郎はプラグで髪の毛を1本切り裂き上鳴に差し出してその場を後にする。彼らの仲の進展はまだまだである。
原作で塚内警部が「DNAを取り入れても馴染み浸透する個性じゃないと複数個性にはならない」と言ってましたがピカチュウの個性はその馴染み浸透する個性そのものです。
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