ピカチュウのヒーローアカデミア   作:でかすぎ史郎

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20話 仮免試験

 ヒーロー活動許可仮免許試験の当日。

 上鳴達、1年A組は試験会場の国立多古場競技場に来ていた。既に試験会場には多くのバスが到着しており、試験を受けに来た学生たちで溢れている。

 集まっているのは学生だけではない。会場の警備として配置されたのかプロヒーローらしき人物もチラホラ見えたる。未来のヒーローを守る為に公安委員会も全力だ。

 

「降りるぞお前ら。まずは受付だ。その後でコスチュームに着替えて試験の説明会と言う流れだ。ついてこい」

 

「はい!先生!」

 

 A組は相澤を先頭にして動く。彼らは体育祭や数々の事件でで有名になった。勿論目立つわけで彼らが並んでいるとざわめきが大きくなっていく。

 

「おい!あれみろよ!」

 

「雄英だ!」

 

「しかも上鳴がいやがる。ということは………Aか」

 

「A組ということはエンデヴァーの息子もいるな」

 

「あれがピカチュウ、画像にたがわぬ可愛いさ」

 

「あいつが拉致されてなきゃオールマイトは………」

 

「神野区だって半壊はしてなかったさ」

 

 ざわめきは様々な感情を内包している。そこには好意も敵意も含まれている。

 上鳴の評価は賛否両論だ。世間では将来有望なヒーローの卵ともオールマイトを終わらせた男とも評価されている。

 

「やっぱ目立つな俺ら。特に上鳴は」

 

「ふん!失礼ね!気にしなくてもいいよ上鳴、アンタは悪くない!」

 

「そうですわ。悪いのはヴィランです」

 

 葉隠と八百万は怒りをあらわにする。彼女達も上鳴(被害者)を批判する人間が極一部なことは分かっているが、それでも友人兼クラスのマスコットが責められるのは許せないのだ。

 

「別に気にしてないぜ。大半は俺が可愛すぎる事への嫉妬だろ」

 

「……………そのポジティブさ見習っていきたいね」

 

 耳郎が少しドン引きしながら上鳴のポジティブさを褒める。

 そうして士傑や傑物と絡んだりなどがありながらもA組は恙なく受付を済ませてコスチュームに着替える。そして大部屋に案内されるとそこには多くの受験生がいた。その数は合計1540人である。

 そして壇上に1人の男性が立った。

 

「えー………ではアレです。仮免のヤツをやります。あー…僕はヒーロー公安委員会の目良です。好きな睡眠はノンレム睡眠です。仕事が忙しくて碌に寝れない…!人手が足りてない…!眠たい…!そんな信条の下、ご説明させていただきます」

 

 なんとも締まりのない流れで試験第1種目の説明が始まった。

 曰く、的当てとのことだ。

 ①受験生は好きな場所に3つのターゲットを身に着けて6つのボールを携帯。

 ②相手のターゲットにボールを当て、3つ全てに当てられた者は脱落。

 ③3つ目を当てた者が撃破したことになり、2人撃破した者から先着100名が合格。

 というルールだ。

 

「先着で合格なら…同校で潰しあいはない…むしろ手の内を知った仲でチームアップが勝ち筋…!皆あまり離れず一塊になって動こう」

 

 試験開始1分前。試験場となる地形が公開されると緑谷はクラスメイトたちにそう提案した。

 なぜならばA組は雄英体育祭というイベントによって個性・弱点・スタイルが割れたトップ校。間違いなく集中して狙われる。

 

「フザけろ、遠足じゃねぇんだよ」

 

「バッカ、待て待て!?」

 

「ピカァ!切島待ってくれ!俺もついてくぜ!」

 

「俺も。大所帯じゃ却って力が発揮出来ねぇ」

 

 しかし天上天下唯我独尊の爆豪が離脱。切島と上鳴もそれに付いていく。

 そして『マイペース』な轟も離脱。

 

「やべぇよクラスの3強が消えたぞ緑谷!」

 

「でも大丈夫!圧縮訓練を思い出そう!負ける気はしない」

 

 緑谷は峰田を落ち着かせる。そうして仮免試験が始まる。

 一方の上鳴達はというと………

 

「このコスチューム。爆豪と切島かこれ?」

 

「………む?貴様は雄英の上鳴か。いかにも、私の個性によるものだ」

 

 上鳴は爆豪と切島を追いかけていた。そして上鳴が彼らの下に到着した頃には肉倉の手によってグロテスクな肉塊へと変形していた。

 肉倉の個性は「精肉」。自分が揉んだ他者の肉体を肉塊へと変化させる。他者の肉体は丸くする程度だが自分の肉体は自由度が高く切り離して操作をしたり巨大化が可能だ。

 

「これは示威である。今試験は異例の少数採用。オールマイトが引退し時代は節目。本来であればヒーローは増員して然るべきではないか?すなわちこれらが示唆するは有象無象の淘汰。ヒーローと言う職をより高次のモノにする選別が始まったと推察する。私はそれを賛助したくこうして諸君らを排している」

 

「試験そっちのけでやることじゃねぇだろ」

 

「徒者が世に憚る方がおかしい。さあどうする?ヒーローとしての精神にあふれている貴殿は見逃してやらんでもないが………」

 

「まあ問答はこれくらいにしようぜ。俺はヒーローとして爆豪姫と切島を助けたい。アンタはそれを防ぎたい。じゃあ戦うしかないだろ?」

 

「なるほど道理だ」

 

 そうして肉倉は自らの肉片を飛ばす。それを上鳴は躱す。

 

『動き予測、1m右ロト!』

 

「サンキューROTOM!ピィカァヂュー!」

 

「ぐあ!!!」

 

 上鳴は『10まんボルト』が肉倉に直撃する。『こうかくレンズ』のAIからの補助を受けた上鳴の技はほぼ必中技といっても良い。

 

「爆豪は下水道みたいな奴だけど割と真面目にヒーローやろうとしてるぜ。切島だって俺を助けに敵地に乗り込むようなバカいい奴だしよ!そいつらを有象無象扱いするんじゃねぇ!『アイアンテール』!」

 

 怒りの一撃が肉倉の腹に炸裂し気絶する。これにより肉倉の個性は解除され爆豪と切島が解放された。

 

「ありがとな上鳴!」

 

「誰が姫だアホ鼠!」

 

「ピカ!まあ助かったんだからいいじゃねぇか。さ、ちゃっちゃと合格するぞ」

 

 そうして彼らは余裕で仮免1次試験を突破するのであった。

 

「っしゃあああああ!」

「スゲェ!こんなんスゲェよ!」

「雄英全員一次通っちゃったぁ!」

 

 ここは仮免試験の控室、そこではA組が全員が受かったことに生徒達は大喜びだ。

 そんな話をしていると、通過者も規定人数へと達したようでアナウンスが流れる。

 

『えー、では一次試験を通過した100人の皆さん。これをご覧下さい』

 

「さっきのフィールドだ」

 

「なんだろうね?」

 

 控室のモニターには先ほどの試験会場の様子が映しだされた。不合格者たちは全員撤収済みだ。

 次の瞬間各地で『だいばくはつ』が発生した。

 

(((何故!)))

 

 突然の出来事に受験生達はツッコミを入れる。

 建物は爆破で瓦礫が飛散、一部からは火災も発生、山も土砂崩れが起こり市街地を侵食している。まさに災害のお手本のようだ。

 

『次の試験でラストになります!皆さんにはこれからこの被災現場でバイスタンダーとして救助演習を行ってもらいます』

 

「パイスライダー?おいパイってエロいな」

 

「ピカ?いや峰田、これは新しいお菓子だ」

 

「現場に居合わせた人のことだよ。授業でやったでしょ」

 

 アホなことを言っている峰田と上鳴に葉隠からツッコミを受ける。

 アホの上鳴はともかく峰田は賢いので知っているはずだ。故にボケだろう。ツッコミを受けるのも道理だ。

 

『ここでは一般市民としてではなく仮免許を取得した者として………どれだけ適切な救助を行えるか試させて頂きます』

 

「む、人がいる」

 

「ああ!老人に子供!?アブねぇ!何やってんだ!」

 

 モニターに人影が映った。老人から子どもっぽい体格の人までいる。服装をわざとボロボロにして血糊まで着けている徹底ぶりだ。そんな人々が荒れ果てたフィールドを闊歩していた。

 

『彼らはあらゆる訓練において引っ張りダコの要救助者のプロ!HUCの皆さんです。傷病者に扮したHUCがフィールド全域にスタンバイ中。皆さんにはこれから彼らの救出を行って貰います』

 

 本物の人間を救出されることでリアリティを高めているのだろう。建物の爆破といいこの試験にはかなりの予算が割かれている。

 つまり、それだけ未来のヒーローについて期待しているという証左だ。

 

『尚、今回は皆さんの救出活動をポイントで採点していき、演習終了時に基準値を超えていれば合格とします。10分後似始めますのでトイレなどすましといてくださいね』

 

 そう言ってアナウンス終了する。

 

「ねぇ、上鳴………これって」

 

「ああ、神野区を模している」

 

 耳郎は上鳴に問いかける。生で神野を見た彼らは知っている。現地の空気感を。

 嫌でもあの時のことを思い出してしまう。

 そして10分が経った。

 

『ヴィランによる大規模破壊が発生!規模は市内全域!建物倒壊により傷病者多数!道路の損壊が激しく救急先着隊の到着に著しい遅れ!到着するまでの救助活動はその場にいるヒーロー達が執り行う!1人でも多くの命を救い出すこと!』

 

 そう言って控室は展開し二次試験が始まる。

 

(道が荒れてるかもしれないな。ならば『こうそくいどう』ではなく………)

 

 そう言って上鳴は背負っているピンク色の小さな板を置く。

 そしてそれに乗った。

 

「ピカァ!『そらをとぶ』で行くぜ!」

 

 板はサーフボードのようなものだ。そしてそれを磁力で操作して『そらをとぶ』。

 これは発目が開発した軽量鉄板で出来た特殊装備だ。

 

「『ソウルビート』!」

 

「俺は飛べるから水難エリアに向かう!みんなは?」

 

「ウチは飛べないから土砂崩れの方にいく!」

 

「ケロ………じゃあ私と同じね」

 

「おう!長所を活かして頑張ろうぜ!」

 

 上鳴と蛙吹は水難エリアを目指す。他のA組も彼らに続くように走り出した。

 また、他校の生徒たちは慣れた動きで救助活動に向かっており、特に経験豊富な者たちは判断が速かった。

 

「ここまでを暫定危険区域に設定する」

「いやもっと広くだテロだぞ。被害がでかくなるかも!」

「とりあえず道とヘリの離発着場をつくる。どいてろ!」

「救護所は控室で」

「トリアージはとりあえず私がやります」

 

 直接的な救助はもちろん大切だが、救出後のことも重要となる。彼らはそれらの環境を適切に整えていた。ヒーローとは人々を助ける為にあらゆる事をこなさなければならない。

 こればかりは経験に劣るA組が不利だ。

 

「ひぃぃ!落ちる!助けてぇ」

 

 上鳴が水難エリアへと向かおうとする途中、高い建物の上で落下しそう(な演技をしている)男性を見かけた。

 

「ピッカァ!大丈夫だ!『エレキネット』」

 

 早速『エレキネット』の粘着性を利用して建物が倒壊しないように保護を行う。そして『そらをとぶ』で男性を安全な地上まで連れて行く。

 ちなみに『エレキネット』は瀬呂と峰田の粘着性があるコンビの遺伝子を取り込んだことで習得した。

 そうして被災者は『そらをとぶ』で回収、倒れそうな建物は『エレキネット』で保護、邪魔な瓦礫は『アイアンテール』で破壊、傷病者は『ねがいごと』で応急処置、暗い場所は『10まんボルト』で明かりを確保して順調に救出を行った。

 だが何事も順調にはいかない。

 

 上鳴が『そらをとぶ』で傷病者を救護所まで連れて行った時、突如として近くの試験会場の壁が爆破した。

 

「市井の人々を守るため、ヒーローには複合的な動きが求められる。すなわち救護、そして対ヴィラン」

 

「ヴィランによる大規模破壊が発生、そりゃいるよな」

 

『ヴィランが姿を現し追撃を開始!現場のヒーロー候補生はヴィランを制圧しつつ救助を続行してください』

 

 アナウンスが会場全体に轟く。救護所の近くにはヴィランに扮するプロヒーローが大量だ。

 

「先制必縛ウルシ鎖牢!」

 

 腕から多数の枝を伸ばして多くの受験生達は拘束される。

 

「ギャングオルカに!シンリンカムイだ!」

 

 現れたのはギャングオルカとシンリンカムイ、そして彼らのサイドキック達だ。

 

「おいおい、プロが2人もいるとか厳しすぎるだろ」

 

「それがプロの世界だ。先制必縛………」

 

「『はやてがえし』!」

 

 上鳴はシンリンカムイにカウンターを喰らわせて技を抑止する。『はやてがえし』の効果は必ず先制出来て当たれば必ず怯ませる代わりに、相手が選んだ技が先制技ではない場合は失敗するというものだ。

 シンリンカムイは自分で「先制」と言ってしまったので判定が先制技になってしまった。

 

 ちなみにこの技は砂藤と尾白などの格闘遺伝子を取り込んで習得した。

 

(シンリンカムイを倒して向こうの加勢に行きたいが………こっちも一筋縄ではいかない)

 

 近くではギャングオルカが轟と夜嵐と交戦中だ。だが状況は芳しくない。お互いに妨害しあいあろうことか言い争いまで始めた。そして彼らはセメントガンと音波攻撃を喰らって行動不能に陥っている。

 そして上鳴とシンリンカムイの相性は悪い、なにせシンリンカムイは草タイプなので電気技が半減だ。

 

(こりゃあマズいな)

 

 ギャングオルカにシンリンカムイという格上相手の2対1。

 絶望が迫っていた。




上鳴チュウがサーフボードで空飛ぶ案は原作289話でモブヒーローがサーフボードっぽいので浮いてたのから着想をえました。
ちなみにサーフボードがピンクなのはポケカネタです。決してポプラに洗脳されたわけではありません。
ヴィランがギャングオルカだけではないのは上鳴チュウにとっては余裕過ぎだからですね。

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