ピカチュウのヒーローアカデミア   作:でかすぎ史郎

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21話 タッグマッチ

「炎と風の熱風牢獄か。いいアイデアだ。並みのヴィランであれば諦め………泣いて許しを請うだろう。ただそうでなかった場合は?撃った時には既に次の手を講じておくものだ」

 

 今回の試験にヴィラン役として抜擢されたNo.10ヒーロー、ギャングオルカは巻き起こる炎の竜巻の中でそう言う。

 轟と夜嵐は最初は妨害しあったものの最終的には何とか協力して『ほのおのうず』を作り出しギャングオルカを閉じ込めて見せたのだ。

 だがそれはギャングオルカの必殺技『ちょうおんぱ』アタックで無効化されてしまったが。

 そして彼はサイドキックを率いて上鳴の方へと迫る。

 

「貴様が雄英の覇者である上鳴だな。イヤホンジャックから話は聞いているぞ」

 

「ピカァ………2対1かよ」

 

 ギャングオルカは『こわいかお』(本人にそんな意図はない)で空中にいる上鳴を威圧する。

 万事休すかと思われたその時、『じならし』が発生した。

 

「耳郎!」

 

「加勢しにきた!」

 

「ほう、イヤホンジャックか」

 

 耳郎が加勢しにきた。これで2対2のダブルバトルだ。

 サイドキック達は他の受験生達が対処している。

 

「耳郎、やるぞ!『ひかりのかべ』」

 

「ええ!胸を借りる気でいきますねギャングオルカ!」

 

 戦いが仕切り直しになった。

 先制したのは拘束用プロテクターがない上鳴だ。『かみなり』がギャングオルカ目掛けて降り注ぐ。彼の個性は「シャチ」、水タイプなので電気技は効果抜群だ。だがそれはシンリンカムイの枝によって防がれる。さながら『ひらいしん』の如くだ。

 お返しにギャングオルカの『ちょうおんぱ』が放たれる。しかしそれも『ひかりのかべ』と耳郎の『ちょうおんぱ』で相殺される。

 

(これは千日手か。別に倒さず時間稼ぎに徹してもいいわけだが、出来れば倒したい。……………あのプロテクター、かなり動きづらそうだ。おそらくはハンデ。そして耳郎の『じならし』で素早さも下がっている!)

 

「ピィィィカァァァ!『エレキボール』!」

 

 ギャングオルカ達は拘束用プロテクターと『じならし』で素早さが下がっている。つまり素早さの差があるほど威力が高くなる『エレキボール』がよく効くということだ。

 シンリンカムイとギャングオルカがそれを相殺しようとするが威力が高すぎて相殺しきれない。彼らはそれをモロに喰らう。

 

「………………グッ、見事だ。先ほどの『ほのおのうず』と合わせて中々にダメージを負った。だがまだまだ!」

 

「知ってますよ。トップヒーローは甘くないって。でも大丈夫、耳郎がいる」

 

「『バークアウト』!」

 

 耳郎は『バークアウト』を放つ。彼女はヴィランっぽい、つまりは悪タイプでもあるギャングオルカの下で悪技(『バークアウト』)のコツを掴み、圧縮訓練でそれを形にしていたのだ。

 これにてようやく彼らにトドメを刺せた。

 

「拘束は俺に任せろ!『エレキネット』」

 

 そう言って上鳴は行動不能になった2人を『エレキネット』で縛り上げる。そして彼らは残ったサイドキック達の無力化などを行い時間を消費する。

 

『えー、只今をもちまして配置された全てのHUCが危険区域より救助されました。誠に勝手ではございますが、これにて仮免試験全行程は終了となります!』

 

「見事だ、イヤホンジャック・上鳴、見事だ。まさか倒されるとはな。予想もしてなかったぞ」

 

「ギャングオルカ、貴方達に拘束用プロテクターが無かったら負けてたのはこっちでしたよ。しかも轟と夜嵐との連戦、むしろ強すぎです。それでお願いがあるのですが遺伝子の一部をくれませんか?僕の個性の強化に必要なんです」

 

「む?別にいいが」

 

 そう言って彼は爪の一部を削りとり上鳴に渡す。そして彼らは試験会場を立ち去った。

 

『集計の後、この場で合否の発表を行います。怪我をされた方は医務室へ。他の方々は着替えて、しばし待機でお願いします』

 

 アナウンスの通り上鳴達は更衣室へと向かい制服へと着替えて会場へと向かった。

 

「こういう時間、いっちばんヤダ」

 

「分かるぜ。でも耳郎なら大丈夫だ」

 

「…………………ありがと」

 

 着替えが終わり、待機時間が続く。

 採点基準が明かされていなかったこともあり、自分たちの行動がどの様に採点されていたのか不明だ。だからこそ緊張してしまう。

 

『皆さん、長いことお疲れ様でした。これより合否の発表を行いますが、その前に一言。今回の採点方式ですが、我々ヒーロー公安委員会とHUCの皆さんによる二重の減点方式であなた方を見させてもらいました。つまり………危機的状況でどれだけ間違いのない行動をとれたかを審査しています。とりあえずモニターをご覧下さい。合格の方は五十音順で名前が載っています』

 

 目良は試験結果をモニターに映した。合格者の名前がズラリと並んでおり、受験生たちは必死になってその中から己の名前を探す。

 当然、その中には上鳴電気の名前もあった。プロヒーローを倒したのだから当然である。

 

「あったぁ………」

 

 どうやら他のA組達も受かっているようだ。2人を除いて。

 

「轟………落ちたの!?」

 

「爆豪もか…」

 

「A組の三強の内、2人が落ちてんのかよ!?」

 

 そんなクラスメイトたちの驚く声が聞こえた。A組の不合格者は轟と爆豪。学校では成績トップクラスの彼らが落ちてしまっていたのだ。

 

「ピカァ………爆豪、暴言は改めようぜ」

 

「黙ってろ」

 

 爆豪は静かにキレる。彼の性格からして救助活動らしいことはほぼしてない。むしろ暴言を吐いたことで大幅に減点されていた。

 まあ順当である。轟も夜嵐とのいざこざもあり納得であった。ちなみに夜嵐は轟の近くにやってきて全て自分のせいだと深く頭を下げて謝罪をし2人は和解をした。

 

『えー、全員ご確認いただけたでしょうか?続きましてプリントをお配りします。採点内容が詳しく記載されておりますのでしっかり目を通してくださいね』

 

「上鳴みしてー」

 

「いいぜ」

 

「わっ!凄い90点!」

 

 上鳴の点数は高い。なにせ空が飛べて怪力があって『エレキネット』で建物の保護などができるのだ。

 こうして二次試験落ちした人への救済措置が発表されるなどもあり仮免試験は終わった。

 

 ◆◆◆

 

 夏休みが終わって新学期。これまでは仮免試験に向けての訓練ばかりだったが、今日からは普段の授業も加わってくる。

 上鳴は朝早くから起きて時間をかけてブラッシングを行う。彼の毛並みはこういう細かいケアによって成り立っているのだ。

 そして彼は1階にある共同エリアへと降りていく。そこにはランチラッシュ特製の朝ごはんを食べに来た生徒達が複数いる。

 

「ピカァ、おお緑谷と爆豪、朝から精が出るな」

 

 緑谷と爆豪が寮の共同スペースを掃除機で掃除していた。普段は仲が微妙な2人による珍しいコンビだ。

 

「しかし、爆豪がここまで真面目になるとはな。俺なんか感動したよ」

 

「うるせぇ!アホ鼠!好きでやってるわけじゃないわ!」

 

「だよな、で何があったんだ緑谷。なんか2人とも絆創膏を貼られているが」

 

「いや………その………」

 

 緑谷が上鳴達に詳しい事情を説明した。

 

「喧嘩して」

 

「謹慎~」

 

 芦戸と葉隠が朝ごはんを食べながら驚く。緑谷と爆豪は皆が寝静まった後に寮を抜け出して殴り合いの大喧嘩を繰り広げたそうだ。その件は無事に露呈して相澤先生から罰を下され謹慎処分にされたらしい。

 そういうわけで彼ら抜きでA組は始業式を迎えることになった。

 

「最近は私自慢の毛質が低下しちゃってね。ケアにも一苦労なのさ。これは人間にも言えることさ。亜鉛・ビタミン群を多くとれる食事バランスにしているもののやはり一番重要なのは睡眠だね。生活習慣の乱れが最も毛に悪いのさ。みんなも毛並みに気を遣っている際は睡眠を大事にするといいのさ」

 

 根津校長がものすごくどうでもよくてありえないほど長いスピーチをして生徒達を『さいみんじゅつ』にかける。だがここにそれを無効化する男がいる。

 

「ピカァ!為になるぜ!」

 

 そう、上鳴だ。彼は校長と同じ鼠で毛並みに気を遣っているからか感動してそのスピーチを聞いている。なんならメモまで取っている。

 耳郎はそれを見て少し引いている半分、上鳴の撫で心地がよくなるなら別にいいかと思ってそれを見ている。

 

「御迷惑おかけしました!」

 

「デクくんお勤めご苦労様」

 

 始業式から3日後、爆豪より一足先に緑谷の謹慎が解かれた。彼は謹慎中につけられた差を取り戻すのだと息巻いている。

 

「じゃ、緑谷も戻ったところで本格的にインターンの話をしていこう。入っておいで」

 

 今日の一限はLHR(ロングホームルーム)だ。この時間でクラスの委員長を決めたりヒーローネームを考えたりなどをしている。

 前置きもほどほどに相澤はドアの向こうから呼びかける。すると待っていましたとばかりにドアが開いた。

 

「職場体験とどういう違いがあるのか。直に経験している人間から話してもらう。多忙な中、都合を合わせてくれたんだ。心して聞くように。現雄英生の中でもトップに君臨する3年生3名………通称ビッグ3の皆だ」

 

 現われたのは3人の生徒たち。順に、ガッシリとした筋肉質の金髪男子、捻れた水色のロングヘア女子、細身の黒髪男子である。

 ヒーロー科最高峰の雄英高校。その中でも更に頂点に位置する生徒たち、ビッグ3。それが彼らだ。

 

「やっほ~ピカチュウ!」

 

「ピッカァ!」

 

「なに、知り合いなの?」

 

「ああ、職場体験で出会った先輩さ」

 

 そう言って上鳴は耳郎からの疑問に答える。

 ロングヘア女子ことねじれとは既にリューキュウの事務所で出会っている。

 

「じゃ、手短に自己紹介よろしいか?まずは天喰から」

 

 相澤が黒髪男子こと天喰にそう促した。天喰はA組達を『にらみつける』。まさしくファイヤーの如くだ。A組達はその雰囲気に気圧される。

 しかし彼は次第にカタカタと震え始めた。

 

「ダメだミリオ………波動さん………ジャガイモだと思って臨んでも頭部以外が人間のままで依然人間にしか見えない。どうしたらいい…言葉が……出てこない。帰りたい………!」

 

 天喰は急に泣き言を言って、クルリと背を向けてしまった。どうやら視線がキツイのはただ緊張していただけらしい。黒板を前に震えている彼の姿はとても雄英ビッグ3には見えない。

 その、あまりにも残念な様子に尾白が問いかけた。

 

「雄英…ヒーロー科のトップ…ですよね…」

 

「聞いて天喰くん!そういうのノミの心臓って言うんだってね!人間なのにね!不思議。彼はノミの天喰環、それで私が波動ねじれ、今日はインターンについて皆にお話ししてほしいと頼まれて来ました」

 

 天喰に代わり波動が説明を始める。だが彼女も癖が凄い、故に話は一瞬で脱線する。

 

「ねぇねぇ、ところで君は何でマスクを?風邪?オシャレ?」

 

「これは昔に……」

 

 波動は障子に声をかけた。彼は常に口元を隠すマスクをかけている。それは過去のとある出来事が原因なのだが、彼が事情を話す前に波動の興味は既に別なモノに映っていた。

 

「あと、あなた轟くんだよね!?ね!?何でそんなところを火傷したの!?」

 

「それは………」

 

 障子の次は轟に質問をする。その質問はかなりセンシティブだ。彼の火傷は父であるエンデヴァーのせいで精神を病んだ母に熱湯をかけられたものだ。

 

「芦戸さんはその角折れちゃったら生えてくる?動くの?峰田くんのボールみたいなのは髪の毛?散髪はどうやるの?蛙吹さんはアマガエル?ヒキガエルじゃないよね?どの子も皆気になるところばかり!不思議!」

 

「幼稚園児みたいだ」

 

「オイラの玉が気になるってちょっと!ちょっと!セクハラですって先輩!」

 

「違うよ」

 

 純粋無垢な波動に芦戸はほっこりする。

 そして玉について聞かれた峰田は大興奮だ。瀬呂のツッコミも八百万のドン引きもなんのそのといった様子だ。

 

「合理性に欠くね?」

 

「イレイザーヘッド安心してくださいトリは俺なんだよね!前途!?」

 

 話が脱線しまくる状況にイレイザーヘッドはビッグ3に軽く注意をする。

 これに慌てた金髪男子こと通形が前にでていきなり耳を手に当てA組に尋ねた。しかし「ゼント」という謎の掛け声に困惑している。

 

「多難!っつってね!よぉし、ツカミは大失敗だ!ハッハッハッハ!

 

 本当に前途多難だ。全く持ってビッグ3としての風格が感じられない。

 

「何が何やらって顔してるよね。必修ってわけでもないインターンの説明に、突如現われた3年生だ。1年から仮免取得だよね、フム、今年の1年生って凄く元気があるよね………そうだねぇ………何やらスベり倒してしまったようだし…………

 君たちまとめて俺と戦ってみようよ!」

 

 そう言って通形は腕を上げた。

 雄英最強と電気鼠の戦いが今始まろうとしている。

 




 仮免試験が長引いたのは上鳴が爆豪についていかなかったからですね。
 原作では上鳴達が救助した人が最後の救助者だったので。

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