ピカチュウのヒーローアカデミア   作:でかすぎ史郎

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22話 インターン直前

「君たちまとめて俺と戦ってみようよ!」

 

「「「え………ええ!?」」」

 

 それは通形による唐突な提案だった。

 A組達は面食らう。

 

「俺達の経験をその身で味わった方が合理的でしょうイレイザーヘッド!」

 

「…………………好きにしな」

 

 相澤も許可をだした。ならば誰も止める者はいない。

 そういうわけで皆、制服から体操服に着替えて体育館γへと向かう。

 

「ミリオ………やめた方が良い。形式的に「こういう具合でとても有意義です」と語るだけで充分だ。皆が皆、上昇志向に満ち満ちているわけじゃない。立ち直れなくなる子が出てはいけない」

 

 体育館の壁を前に天喰は静かにそう言う。彼は1人で戦う通形ではなくA組の心配をしている。それはつまりそれほどまでの戦力差があるということだ。

 

「待ってください………我々はハンデありとはいえプロとも戦っている。そしてヴィランとの戦いも経験しています」

 

「そんな心配されるほど俺ら雑魚に見えますか?」

 

 常闇と切島が反論をする。彼らも戦いを得ることで強くなっている。

 それ相応に自信があるのだ。

 

「いいね、血気盛んで。一番手は誰かな?」

 

「僕………行きます!」

 

「問題児!いいね君!やっぱり元気があるなぁ!」

 

 謹慎3日でついた差を取り戻すのだと息巻いていた緑谷が先頭に立つ。彼が先鋒だ。

 そして近接に自信がある者たちが近くに控え、後衛には遠距離攻撃持ちが控えている。ちなみに上鳴は波動に電気袋を弄られている。

 

「よっしゃ!先輩そいじゃあご指導、よろしくお願いします!」

 

 切島の挨拶と同時に緑谷が全身をフルカウルで強化して駆けだす。

 次の瞬間。通形の衣類が落ちた。

 

「あー!!!」

 

「今、服が落ちたぞ!」

 

「ああ失礼、調整が難しくてね」

 

 耳郎が顔を真っ赤にして叫ぶ。意外と乙女だ。

 下着まで全て落ちた通形は慌てて下着とズボンをはき直した。

 その隙を見逃すほどA組は甘くない、緑谷はすかさず顔面を蹴り上げる。だがその蹴りは通形の顔を通り抜けて空振った。続く遠距離攻撃も全てがすり抜けて気が付くと通形はその場から消えていた。

 

「いないぞ!」

 

「まずは遠距離持ちだよね」

 

「ギャアアア!」

 

 すっぽんぽんの通形が後衛にいた耳郎の前に出て来た。彼女は大声を上げて顔を隠す。

 

「ワープした!?すり抜けるだけじゃねぇのか!?どんな強個性だよ!」

 

 切島がそう言いながら後衛の盾になりに行こうとするが………既に遅く、後衛は通形の腹パンを受けて僅か6秒足らずで全滅してしまった。

 

「おまえらいい機会だ。しっかりもんでもらえ、プロも含めて通形ミリオは俺の知る限り最もナンバー1に近い男だぞ」

 

 相澤の言葉にクラスは戦慄する。それはつまり仮免で戦ったギャングオルカやシンリンカムイ以上に強いということになるからだ。

 

「何したのかさっぱりわかんねぇ!すり抜けるだけでも強いのにワープとかそれってもう…無敵じゃないすか」

 

「何かからくりがあると思うよ。「すりぬけ」の応用でワープしてるのか「ワープ」の応用ですりぬけているのか。どちらにしろ直接攻撃されてるわけだからカウンター狙いでいけばこっちも触れられる時があるはず。とにかく勝ち筋を探っていこう!」

 

「探ってみなよ!」

 

 そう言って通形は地面に沈んだ。そして一番後ろにいる緑谷の背後を取った。だがそれは緑谷にとって予測済みだ。返しの蹴りが炸裂しようとする。

 

「必殺ブラインドタッチ目つぶし」

 

 だが予測という分野においては通形の方が上だ。緑谷の蹴りをすり抜けると通形は指を緑谷の眼球に突っ込ませる。これには緑谷も反射で目をつぶるがその指は緑谷の顔をすり抜けていく。

 そして次の瞬間には通形は鋭いボディブローを撃ちこみ緑谷をダウンさせた。

 

「カウンターを画策するよね。ならば当然そいつを狩る訓練をするさ」

 

 そうしてA組の面々は腹パンされてダウンする。そして残るは………

 

「君も戦うかい?雄英1位のピカチュウくん」

 

「ピッカァ!望む所だぜ!」

 

 上鳴は波動の可愛がりから離れて通形と向き合う。彼もただ波動に電気袋を弄られていただけではない。ちゃんと戦いの様子を見て弱点を推測していたのだ。

 

「じゃあ行くぜ通形先輩!ピカァ♡」

 

「なるほど音による攻撃か!考えたね!だけど問題ないよ!」

 

 上鳴は『みわくのボイス』を放つ。ちなみにこの技は『チャームボイス』の強化技である。耳郎とギャングオルカの遺伝子を取り込むことで進化したのだ。

 だがこの技すらも鼓膜を透過されてダメージを無効化されてしまった。

 

「さあ、行くよ!」

 

(音技も無効化か、おそらく先輩の個性は………)

 

 またも通形は地面に沈んでいく。

 先ほどは緑谷が攻撃直前に『カウンター』を仕掛けた。だが逆に一撃を貰ってしまった。ならば通形が攻撃直後に反撃をすればよい話だ。

 そして彼の攻撃手段は殴る蹴る一辺倒で範囲技を持たない。つまり『かげぶんしん』で翻弄すればいい。

 

「エクトプラズム先生と違って質量は持たないけど厄介な技だね!」

 

 そう言って通形は分身を攻撃する。その隙をついて背後から本体が攻撃を仕掛けた。

 

「もちろん予測済みさ!」

 

 通形の『まわしげり』が上鳴の頬に炸裂する。だがそれすら歴戦のポケモンにとっては予測済みだ。上鳴は2重3重に罠を張っていた。

 通形は微弱な電気に襲われた。

 

「グッ!痺れたね!体育祭でも見たことがない技だ!」

 

「『ほっぺすりすり』ですよ。目に見えないような微弱な電流で体を覆ったんです」

 

 上鳴は戦いに際して微弱な電流を常に体に巡らせていたのだ。それゆえに攻撃の時にどうしても実体化する必要がある通形の拳に電気が当たり攻撃に成功したのだ。

 

「うん!手強い!流石だね!」

 

 しかし通形も手強い。麻痺状態にさせたとはいえダメージレースで優位に立っているのは通形の方だ。

 恵まれた肉体にインターン先のサーナイトアイ事務所で学んだ予測と格闘術、まさしく彼はトップに一番近い男だ。

 

「そっちこそ、流石はビッグ3!何の個性です?」

 

「俺の個性は「透過」さ!」

 

 戦いの中で通形は質問に答える。それと共に攻撃は激化していく。

 彼は麻痺状態だというのに全く動きが衰える様子がない。

 

「全身で個性を発動すると俺の体はあらゆるものをすり抜ける。すなわち地面もさ。そして落下中に個性を解除すると地面に弾かれてワープするんだよね。体の向きやポーズで角度を調整して弾かれ先を狙うことができる!」

 

「ゲームバグ的な感じですか」

 

 通形の連撃は止まらない。上鳴の口数は分身と共に少なくなっていった。

 

「イーエテミョー!この個性の扱いは難しいんだよね。壁1つ抜けるにしても片足以外を発動、もう片方の足を解除して接地、そして残った足を発動させすり抜け。簡単な動きにもいくつか工程がいるんだよね」

 

「急いでる時ほどミスりそうですね」

 

 通形のフェイントを交えた連撃に上鳴は追い詰められていく。目に見えないレベルの微弱な電流でのカウンターも何度か決まるがそれでも素の肉体の耐久で耐えてくるせいで有効打にならない。だからといって強力な電流でカウンターを狙おうにもそれはすり抜けられてしまう。

 

「そう!案の定、俺は遅れた。ビリッけつまで圧倒今に落っこちた。服も落ちた。この個性で上を行くには遅れだけは取っちゃダメだった!予測!周囲よりも早く!時に欺く!何より予測が必要だった!そしてその予測を可能にするのは経験!経験則から予測を立てる!」

 

 そうして上鳴は取り押さえられた。つまりいつでも通形が攻撃できる状況だ。誰がどう見ても上鳴の負けだ。

 

「………参りました」

 

「うん!それで長くなったけどこれが手合わせの理由、言葉よりも経験で伝えたかった。インターンでは我々は「客」ではなく「サイドキック」!プロとして扱われるんだよね!そこでは一線級の経験が得られる!俺はインターンで得た経験を力に変えてトップを掴んだ!ので怖くてもやるべきだと思うよ1年生!」

 

 周囲からは拍手が巻き起こる。

 雄英最強の彼がかつてはビリであり、インターンによって最強になったというのはロマンある話だ。

 そういうわけでLHRの時間は終わる。そして授業は恙なく進み明日になった。

 

(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)

 

「1年生のヒーローインターンですが昨日協議した結果、校長をはじめ多くの先生が「やめとけ」という意見でした」

 

「えー、あんな説明会までして!?」

 

「でも全寮制になった経緯から考えたらそうなるか…」

 

「ザマァ!」

 

「爆豪くん………参加できないからって」

 

 相澤から帰りのHRで残念な報告がされる。切島と上鳴は残念がり爆豪が喜ぶ。

 USJ襲撃に林間合宿襲撃と雄英は襲撃されすぎた。そこら辺がナーバスになるのは仕方がないのかもしれない。

 

「だが、今の保護下方針では強いヒーローは育たないという意見もあり、方針として「インターン受け入れの実績が多い事務所に限り1年生の実施を許可する」という結論に至った」

 

「ピッカァ!じゃあリューキュウはOKだな!」

 

「ガンヘッドさんとこどうなんやろー…」

 

「セルキーさん連絡してみようかしら?」

 

 故に実績が多いとこならOK理論だ。上鳴・麗日・蛙吹などインターンに関心のある生徒達は胸を高鳴らせる。

 そうしてHRが終わり上鳴は早速、リューキュウへと連絡を送った。結果はもちろんOKとのことだ。

 

「上鳴はリューキュウのとこだっけ?まあナンバー9ヒーローで波動先輩を受け入れてるくらいだしOKだよね」

 

「そうだな、耳郎は職場体験の時と同じくギャングオルカだな。OKは貰えたのか?」

 

「もちろん、受け入れ出来るってさ」

 

「流石はナンバー10ヒーローだな」

 

 彼らは寮の共同スペースで談笑をしている。

 どうやら耳郎はギャングオルカのインターンに行けることになったようだ。

 

「まだまだギャングからは学べることはあるしね。新技の構想も『バークアウト』だけじゃないよ」

 

「へぇ………そりゃ楽しみだ」

 

 上鳴の口角が上がる。

 なんだかんだで上鳴はネモ(戦闘狂)である。

 

「上鳴ちゃん、ちょっといいかしら?」

 

「ピカ?なんだ梅雨ちゃんと麗日さんや?お腹を撫でるのなら許可はいらないぜ」

 

 そう言って上鳴はお腹を出す。そして耳郎にわしゃわしゃと撫でられた。

 

「ケロ………それは後でやらせてもらうわ。貴方はリューキュウの事務所にインターンに行くのよね」

 

「そうだな」

 

「私達をリューキュウに紹介してもらえないかしら?」

 

 蛙吹は端的に要求を伝える。なんでも彼女達の職場体験先、ガンヘッドとセルキーはインターン受け入れの実績が多くなかったのでインターンのツテがないとのことだった。

 なのでツテを求めて上鳴の下へと来た。

 

「いいぜ、でもやっぱ筋は通すべきだと思うんだよな」

 

「筋?」

 

「俺じゃなくてねじれ先輩の紹介にした方がいい。先輩を差し置いて俺が紹介するのは何か違うと思うしな」

 

 そういうわけで彼らは3年の寮へと向かった。

 

「はあああ!なにこのモフモフで可愛い生物は!ねじれと同じくらい可愛い!」

 

 3年の甲矢有弓は上鳴の余りの可愛さに感動して手を抑えている。

 

「ピカ!ねじれ先輩はいますか?」

 

「ああ、ねじれね。じゃあ君はもしかして噂のピカチュウ?」

 

「そうだぜ!」

 

 そうして、甲矢は波動を呼んだ。

 仲介依頼の返事はもちろんOK。

 そうして波動・上鳴・麗日・蛙吹のインターンが始まろうとしていた。

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