ピカチュウのヒーローアカデミア   作:でかすぎ史郎

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25話 雄英文化祭

 雄英文化祭当日、現在の時刻は午前9時45分。

 A組は10時にライブを控えているがライブ会場は既に完成している。今は最終確認の段階だ。

 全員、ライブ衣装に着替えており上鳴も「A」Tシャツを着ている。

 だが1つ問題がある。そう緑谷がいないのだ。彼が買い物にいったきり戻ってこない。

 

「ピカァ!何やってんだアイツ!」

 

「あのクソデク!舐めやがって!」

 

「どうしようお客さんは既に満員だよ」

 

「緑谷が来なかった場合はその分ずらすしかないな。皆、立ち位置の確認を」

 

 クラスメイト達も万が一に備えて対策を練り始めている。観客たちは既に満員御礼だ。開催を送らせて待たせるわけにはいかない。

 耳郎がダンス隊の立ち位置を改めようとした時、ようやくバタバタと走って来る音が聞こえた。

 

「あ、ようやっく緑谷が帰って来たぞ!」

 

「み、皆ごめん!買い物中に色々あって」

 

 緑谷はギリギリ間に合った。これには皆もほっと胸をなでおろす。

 なお彼は単純に遅刻したわけではない。雄英侵入を企てたジェントル・クリミナルとラブラバなる迷惑系ヴィランと死闘を繰り広げていたのだがこれはある事情があり言うことができない。

 事情を言えない緑谷はしばらくの間、クラスメイト達から「はじめてのおつかい」くんと呼ばれることになってしまった。哀れなり。

 

 そして10時。運命の時だ。

 多少のトラブルはあったものの全員が揃っている。後は楽しむだけだ。

 開始のブザーが鳴り、幕が開ける。そして舞台がライトアップされた。

 壇上にはAバンドの面々がいる。

 

「始まるぞ!」

 

「ヤオヨロズ―!」

 

「ピカチュウ!ピカチュウ!ピカチュウ!」

 

「どうせ身内ノリだろ……………」

 

 満員の観客。八百万や上鳴の名を叫ぶ危ない奴もいれば、こき下ろす目的の奴もいる。

 だがそれでもかまわない。練習してきたし自信がある、それに音で殺せば関係ない。

 

「いくぞゴラぁ!」

 

 まずは爆豪がドラムを爆破で思いっきり叩く。爆音とドラムの音で爆炎が立ち昇る。

 そしてバンド隊の楽器が鳴り響く。どれも練習した来ただけあって大したものだ。それらが重なることで音は更なる高みへと昇華される。その最初のイントロで観客は一気にA組の世界に引き込まれる。

 耳郎は息を吸い込んだ。

 

「よろしくおねがいしまァス!!!」

 

 耳郎の声と共にダンス隊が跳ねて、音楽と共に踊り始める。耳郎も『みわくのボイス』で「HeroToo」を歌い始めた。

 

(粒立たせる!粒立たせる!)

 

 上鳴も必死に尻尾でギターを弾く。これまでの努力を思いながら弾く。

 

「緑谷とレーザーだ!」

 

 緑谷が青山を投げ飛ばす。そして「ネビルビュッフェ」で会場を照らす。

 さながら花火のようだ。

 

「人間花火かよ!」

 

 会場は笑いで包まれる。投げ飛ばされた青山は尾白がキャッチだ。

 増強型らしいスピーディで正確な動きだ。

 続いて飯田のロボットダンス・女子チームwth峰田のダンス。峰田はニッコニッコだ。

 

「サビだ!ここで全員ぶっ潰せ!」

 

 ここでラストスパートをかける。ここから演出を派手にするのだ。

 

 峰田と瀬呂のもぎもぎとテープを骨組みにして轟が氷の架け橋を作り、その上を切島の「硬化」で氷を削りながら駆けまわる。

 そしてミラーボール青山と口田が操作した動物(ライトをつけてある)と葉隠が会場を照らす。

 これにより削られた氷がダイヤモンドダストのように観客たちに降り注ぐ。

 さらに八百万がクラッカーを作り祝砲を放つと色とりどりの紙吹雪が舞う。

 

「上鳴いくぞ」

 

「おうよ!」

 

 そう言って砂藤が麗日の手によって浮遊状態にある上鳴を投げ飛ばす。つまりは空中ギターだ。可愛いがギターを弾きながら空を跳ぶ。会場は大興奮だ。

 そして耳郎は感極まって思わずアドリブをしてしまう。だが問題はない。彼らは曲と一体化している。なおアドリブ常習犯の爆豪は「お前がすんのかい」とツッコんだ。

 

「いいぞ!A組ぃ!」

 

 歌い、弾き、踊り、演出し曲は終わった。直後に観客からは大歓声が上がる。元から期待していた生徒はもちろん、こき下ろす目的で来ていた者達ですら1つとなり大きな興奮に包まれていた。

 無論、それはエリにも届いた。心を支配していたオーバーホールの闇は消え去り、笑顔を取り戻す。

 

「ピッカァ!やったな耳郎!」

 

「だね!」

 

 ライヴが終わり上鳴達は幕の裏側にいる。上鳴は汗だくの耳郎にそう言うと彼女も満面の笑みを返した。そして尻尾と手でハイタッチをする。

 ライブは大成功だ。これ以上はないという結果を残した。

 

「アンコール!アンコール!」

 

「もう一回やってくれ!」

 

「ジロ―!ジロー!ジロー!」

 

 会場からはそんな声が聞こえてくる。

 5分に満たないライブだったが1曲では満足できなくなるくらい見事なものだったのだ。ボルテージは最高潮、熱気は未だに会場に渦巻いてる。

 A組の視線は耳郎に向けられる。期待の籠った視線だ。

 

「どうする?耳郎、俺ははやりたいけど」

 

 上鳴はポケモンだ。それゆえに『アンコール』されたからにはもう一度やるしかない。

 

「やったろ!」

 

「「「おー!」」」

 

 満場一致の賛成であった。

 そうして観客からの『アンコール』を受けて彼らはまた曲を奏でる。会場は更に大盛り上がりだ。

 耳郎はヒーローと音楽と言う選択肢からヒーローの道を選んだ。ミュージシャンである両親は「自分の仕事で他人に何をもたらせるか。そう言う意味じゃ音楽もヒーローも同じね」と言って快く応援してくれたが、耳郎は音楽の道を諦めたことに後ろめたさを感じていたのだ。

 しかし今日この日、彼女は両親の言葉を心で理解した。

 

『アンコール』も終わり大盛況の中、舞台の幕は閉じ、A組の面々は喜んで一息つく。皆、疲れているが笑顔は満点だ。

 だがまだやることがある。そう片付けとミスコンだ。

 

「俺はこれからミスコンだ!応援よろしくな!」

 

「あ……………うん、ガチでやるんだね」

 

「そりゃなぁ!行くぜ!ピカッ!」

 

(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)

 

「失礼します」

 

 ミスコン会場に併設されている参加者控室の扉をノックして上鳴は中に入った。これでミスコン出場者、9名が揃うことになる。

 雄英のミスコンは通常ならば各局のマスコミも取材にやってくる大イベントだ。今年は関係者以外立ち入り禁止の為に取材陣は雄英の報道部のみだ。

 

「あ、上鳴じゃん。全然来ないから与太話だと思っちゃったよ」

 

「A組のライブはどうだった?」

 

 入室した上鳴に話しかけてきたのはB組ミスコン参加者の拳藤と付き添いの柳だ。

 拳藤は既にドレスアップを済ませて待機している。というか上鳴以外の参加者は掛け持ちなどしてないので時間に余裕があるのだ。

 

「大成功さ!」

 

「やったね!それで、その、まぁ、頑張ろうね」

 

「ピッカァ!」

 

 拳藤は言葉を選びながらも応援の言葉をかける。

 上鳴の存在は色々とセンシティブなのだ。

 

「あ!ピカチュウだぁ!ねぇねぇ、ピカチュウは男なのになんでミスコンにいるの?」

 

 上鳴に向けて声をかける声尾がする。ドレッサー前の椅子に座っている水色髪の女子が此方へと近づく。3年の波動だ。彼女の辞書にセンシティブと言う字はない。

 

「俺は異形型とトランスジェンダーの為に戦ってます。これは人間にとっては小さな一歩ですが人類にとっては偉大な一歩なんです」

 

「……………………?そっかぁ!」

 

 どうやら波動には理解できない概念だったようだ。

 

「おやおや、今から準備とは随分と余裕のようですね!」

 

「どうもポリコレ最強カードの上鳴です。対戦よろしくお願いします絢爛崎先輩!」

 

 去年のミスコンの覇者にして美の化身、絢爛崎美々美が話しかけてきた。彼女は絢爛豪華な和装のミニスカをこれでもかと煌びやかに着こなしていた。

 だが上鳴も負ける気はしない。彼は異形・LGBTというこの世界のポリコレカードバトルで最強の手札を手に入れた。それに加えてCM出演での人気、素の可愛さ、電気という派手な個性。もはや勝利以外ありえない。

 

「オホホホ!美とポリティカルコレクトネスは関係ありませんわ!全力で戦ってあげましょう!」

 

 正論だ。

 

「望む所だぜ!じゃあ俺は着替えますんで!」

 

 そう言って上鳴は更衣室へと向かい着替えを行う。彼の服装はマダム・ピカチュウだ。美しさコンテスト向けの服装を美しさを競うミスコンで使うのは当然であろう。

 彼はその格好で控室に向かう。その瞬間、彼に目線が集まった。

 

「クッ!可愛い、男なのに………」

 

 波動の付き添いの甲矢は余りの可愛さに悩殺されてしまう。やはりピカチュウは強い。伊達に世界的人気キャラクターをやっていない。

 

「あ、上鳴さん!雄英報道部のものです!是非とも取材させてください!」

 

「ピカァ!良いぜ!」

 

 雄英報道部が取材に名乗りを上げた。彼らは雄英生で構成されるという特性上、ミスコンの取材を許された唯一のマスメディアである。ちなみに取材以外にも出し物やミスコンのネット配信なども行っている。来れない保護者やファン向けの配慮である。

 そうして報道部による取材が始まる。

 

「唯一のLGBT参加者ですがどのような思いで参加なされたのですか?」

 

「やはり進歩の為ですかね。超常発現以降、社会の混乱もありLGBTの価値観は停滞してしまいました。ですが時代も進み社会の混乱も落ち着きました。故に価値観をアップデートする、その一助となる為に参加しました。確かに僕だけLGBTで怖いです。ですが異形・LGBTの偏見へ対抗する1人の人間として私は戦い続けます」

 

 上鳴は綺麗事をくっちゃべる。別に彼にそんな意図は一切ない。

 コイツには可愛い自分が目立ちたいという意図しかない。

 

「なるほど!立派ですね!」

 

「本当かなぁ………?」

 

 新聞部の部員はそれをキラキラした目で見る。

 拳藤はそれを訝し気な目で見るのであった。

 

「そろそろ始まりかな」

 

「そんな時間か、どんとこい!」

 

 上鳴は勇ましくそう言う。

 開始時刻が迫り、観客のざわめきが控室まで聞こえるくらい大きくなってきた。ミスコン参加者9名、上鳴も含め1人残らず準備は終えている。後はパフォーマンスするだけだ。

 

「ん?耳郎からラインだ。『期待してるよ、頑張れ』フッ、当たり前だ」

 

「頑張ってねじれ!」

 

「うん!」

 

「一佳なら大丈夫!」

 

「ありがとレイ子」

 

 それぞれがそれぞれの思いを抱えながら彼女?らはミスコンの舞台に立つ。拳藤は緊張している。彼女は上鳴と違い物間に無理やり参加させられた口だ。ミスコンなんて自分らしくないとも思っている。だがそれでも全力で行う気だ。

 なお圧倒的アウェーの上鳴は全く緊張していない。ライブを経験したおかげだ。

 

 そうしてパフォーマンスが始まる

 

『1年ヒーロー科、拳藤一佳さん!華麗なドレスを裂いての演舞!分厚い板を見事に叩き割りました!強さと美しさの共存!素晴らしいパフォーマンスです!』

 

『3年サポート科のミスコン女王、絢爛崎美々美さん!高い技術で顔面力をアピール!圧巻のパフォーマンス!』

 

『3年ヒーロー科、波動ねじれさん!幻想的な宙の舞い!引き込まれてしまいました!』

 

 ミスコンは順調に進行されていく。パフォーマンスの順番はクジであり、上鳴は最後だ。

 歓声を聞く限り、絢爛崎と波動がトップを争っているようだ。CMに出たこともある拳藤も善戦しているがまだまだである。そして残りの参加者はLGBT枠の上鳴だ。どのような波乱が巻き起こるのか観客は様々な期待を寄せていた。

 

『さぁお次はLGBT枠として殴り込み!雄英体育祭の覇者、1年ヒーロー科、上鳴電気だぁ!』

 

「ピカチュウ!『しっぽをふる』してくれ!」

 

「上鳴ー!とりあえず頑張れー!」

 

「ふぉあああああ!」

 

 8人目のパフォーマンスが終わり、ようやく上鳴の番が回って来た。LGBT枠にも拘らず上鳴の人気は上々だ。なぜなら彼は可愛いから。そしてその可愛さはマダム・ピカチュウの服装のおかげで跳ね上がっている。

 司会に名前を呼ばれ上鳴はステージ奥から登場する。

 ミスコンのステージは凸のような形になっており、上鳴は上部先端から現れる。ステージの周囲は観客で埋め尽くされている。意外にも観客は男ばかりではなく女もいた。上鳴が出場するから女ファンが集まったのだ。

 

「ピッカァ♡♡♡」

 

「「「わぁぁぁぁあああああ!!!」」」

 

 上鳴は『みわくのボイス』でファンサをする。するとステージから歓声が沸く。

 

「ピカピカピカァ!」

 

 上鳴は『かげぶんしん』+『ひかりのかべ』で分身してから煌めく壁を貼る。これにより会場には光り輝く背景に大量のピカチュウがいる構図になった。

 派手さなら絢爛崎に負けないほどに煌めいている。

 

「ピッカチュ、ピッカチュ、ピッカッ、チュウ♡」

 

 そうして「ピカチュウのうた」を歌い踊る。

 声帯が大谷育〇かつ見た目がいいので、その様はとても可愛らしい。

 

『これはとてもかわいい!何の歌かはわかりませんがとても可愛らしい!』

 

「キャー上鳴ちゃーん♡」

 

「こっち向いてぇ~♡」

 

 会場は大盛り上がりだ。

 

「エリちゃん、肩車しようか」

 

「うん!する!」

 

 そうして通形はエリを肩車する。エリは頭1つ抜きん出る。更に通形が手を振って上鳴に此方に見るように促した。

 

(エリちゃん、来てくれたか!)

 

 そう言って上鳴は笑う。事情を知っている上鳴はエリに向けてはにかんだ。

 

「わあああ!」

 

「俺に笑ったぞ!」

 

「いいえ!ピカ様は私に笑ったの!」

 

『1年ヒーロー科、上鳴電気さん!光輝き分身して可愛らしいアピールでした!体育祭に続き文化祭の覇者になれるのか見ものですね!』

 

 巻き起こる歓声と共に上鳴のパフォーマンスは終わった。

 

『これにて全参加者のパフォーマンスが終わりました!投票はこちらへお願いします!結果発表は夕方5時!雄英文化祭シメのイベントです!』

 

 更衣室で上鳴はそのアナウンスを聞きながらAバンドにTシャツへと着替えた。このTシャツは制服よりもラフなので残りの文化祭はこれで行くつもりだ。

 そして彼は控室を出た。そこには耳郎がいた。

 

「おつかれ」

 

「ピカ!」

 

「すんごい可愛かったよ。演出も良かったしマジで優勝するかもね。ウチも上鳴に投票したし」

 

「ありがとな耳郎!じゃあ一緒に廻ろうぜ」

 

「うん!」

 

 そうして耳郎と上鳴は共に文化祭を回ることにした。

 ちなみに上鳴のミスコンの結果は波動、絢爛崎に続き3位だった。意外と女性票で伸びたらしい。

 




『ひかりのかべ』はコンテストでは美しさをアピール技ですね。だから無理やりにでもねじ込みました。

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