襲撃後、保健室。
「まさか回復系の技まで持ってるなんてねぇ」
「リカバリーガールには及びませんよ」
USJでの激闘後、上鳴はリカバリーガールの治療を受けていた。そして自らのタマゴ技『ねがいごと』を併用したのもあって彼は全快していた。
てんてん てろりん♪*1というわけだ。
「アンタ、誰かに個性を貰ってたりしないだろうね?」
「………なんのことです?」
リカバリーガールは探りを入れる。
彼の個性は異常だ。個性:電気鼠だから俊敏な動きと電気を扱えることまでは分かる。だが尻尾の硬化・声による精神攻撃に加えて治癒まで行えるのは少々違和感がある。
彼女は彼がAFOの影響下にあることを疑ったのだ。
「いや
だがすぐにその思考は間違いだと結論付ける。
あの魔王がこんな目立つスパイを送り込むわけがないからだ。
それに上鳴はヴィランと『ゆうかん』に戦ったのだ。彼には間違いなくヒーローの精神がある。
「その発言は僕の個性が複数あるように見えるからそう言ったんですよね……………複数個性といえば敵がそんなことを言っていたような」
「それは本当かい!」
「ええ、死柄木って奴が「せっかくの複数個性が形無しだ」とか言ってましたね」
「そうかい………」
リカバリーガールは考え込んだ。それはつまりAFOかそれに近い存在が動き出した可能性が高いということだからだ。
その時だ、ある男が保健室に入って来た。
「すまなかった上鳴少年!私が不甲斐ないばかりに!」
その男は土下座をした。
彼こそは平和の象徴オールマイトである。
「ピ?いいんですよオールマイト先生、後遺症もなかったですし」
「だが私に教師としての自覚が足りないばかりに迷惑をかけてしまった」
上鳴は本当に気にしてない。ポケモンとはバトルで傷つくものであり、歴戦のポケモンである彼にとってそれは慣れたものだ。
それよりも彼には気になっていることがある。
「それよりリカバリーガール。個性を与える個性があったりするんですか?」
「リカバリーガール、まさかあの件を彼に!?」
「断片的にだけど知らせたよ、話の流れでね」
そう言ってリカバリーガールは今までの話をオールマイトへと伝えた。
「………上鳴少年、かつて私は他者から個性を「奪い」「与える」ことのできる個性のヴィランと戦ったことがある。そして奴を討ち取ったはずだったのだが奴は生き延びて敵連合のブレーンとして動き出している可能性がある」
オールマイトは端的にかつ、負傷の件やOFAのことは伏せて事実のみを伝えた。
「なるほど」
「迷惑をかけておいて更にお願いするのは都合の良すぎる話だとは思う。だけど今の話は言わないでくれ。社会が混乱してしまう可能性がある」
「わかりました」
上鳴は首を縦に振る。
彼に余計なことを『おしゃべり』する趣味はないので情報漏洩は大丈夫だろう。
(個性、つまり力を与える個性か。まるで伝説のポケモンだな)
ポケモン世界ではソルガレオ・ルナアーラ・ホウオウなど
そうして上鳴はオールマイトからひとしきり謝罪を受けた後、警察からの事情聴取を受けてから家に帰ることになった。
(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)
襲撃された翌日、雄英は臨時休校になったが2日後は違う。雄英は再び歩みを進める。
「上鳴、大丈夫?」
上鳴が教室に到着するなり生徒達から心配を受けた。
「大丈夫だ。見ろよこの電気袋を」
上鳴は電気袋から雷を走らせる。
だが電気袋の調子など本人以外誰も分からない。微妙な空気が流れた。
「まあ元気そうならそれでいいよ」
「ピカ?………そりゃどうも」
そうして朝のHRが始まり相澤が教室にやってくる。
そして彼はこう言った。
「まだ戦いは終わってねぇ」
その言葉にクラスは静まりかえる。
「戦い?」
「まさか…」
「まだヴィランが!!?」
空気が張り付く中、相澤は答えを言う。
「雄英体育祭が迫っている」
「くそ学校っぽいの来たぁぁぁ!!!」
A組は入学当初から除籍されそうになったりヴィランに襲撃されたりなど学校とは縁遠いイベントが続いてきた。
だからこそ学校らしいイベントへ参加できる嬉しさもひとしおである。
「ヴィランに侵入されたばっかなのに大丈夫なんですか?」
生徒からそんな指摘が出て来た。正論だ。
雄英の体育祭は日本のビッグイベントにして、かつてのオリンピックにも取って代わったほどの規模がある。
ヴィランが襲撃して直ぐの情勢で数万人も招き入れるのはあまりよろしくないだろう。
某感染症で延期した超常発生前の某オリンピックのように延期するべきなのではという意見が出るのも当然である。
「逆だ。開催することで雄英の危機管理体制が盤石だと示すって考えらしい。警備は例年の5倍にするそうだ」
(それは朗報だ)
上鳴は内心でそう思う。
彼はヒーローにもなりたいと思ってもいるが体育祭に憧れて雄英に入った人間?だ。
正直、中止か延期になると思っていたのでこれは僥倖である。
「何よりウチの体育祭は最大のチャンス。全国のトップヒーローもスカウト目的で見ることになる。当然、名のあるヒーロー事務所に見込まれた方が経験値も話題性も高くなるヒーローを志すなら絶対に外せないイベントだ。
お前ら頑張れよ」
相澤の言葉に生徒達は目線で応える。ここまで来た以上は言うまでもないだろう。
入試・個性把握テスト・戦闘訓練・ヴィラン襲撃という受難を乗り越えることで彼らの精神は頑強になっている。
(名のあるヒーローに見込まれてサイドキックになれば強い相手とも戦える。頑張らないとな)
上鳴にはポケモンとしての戦闘本能がある。つまり、より強い相手と戦いたい戦闘狂なのだ。
そうして時間は流れていく。
(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⌒,_ゝ⌒)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)
「体育館γの使用許可か………」
相澤はそう呟く。
放課後、上鳴と耳郎は職員室に来ていた。
ちなみに放課後のA組の教室には大量の人だかりが出来ていたが、ピカチュウの0.4mという小さい体と耳郎の平べったい体ならば『すいすい』と抜けることが出来るのでスルーした。
そして彼らは申請書類を持って相澤からヒーロー科が使える演習場の許可を貰おうとしているのだった。
(流石に襲撃後だから厳しいか?)
ヴィランの件の後処理と体育祭の準備で、忙しくて許可が出せないと言われる可能性もある。
「本来なら早めに帰れと言いたいが………やる気があるのに鍛えないのは合理的じゃない。俺の監督下でなら認めよう」
相澤は許可を出した。なんだかんだ言って甘い人間である。
彼は仕事用具を持って上鳴達と共に体育館γへと移動した。
「ビガガガガガガガガガァ♡ああアルセウスの母よ」
「な、何をしてるんだ?」
上鳴はカビゴンのように寝っ転がってリラックスしている。
彼の電気袋は耳郎のイヤホンジャックから一定の音波を受けて振動しほぐされていく。
教師としての仕事をしながらそれを見る相澤はただひたすらに困惑している。
「イヤホンジャックから一定の音波を出し続けて持続力と正確性を鍛えるトレーニングです」
「耳郎のは分かった。じゃあなんで上鳴はそれを受けているんだ」
「電気袋は軟らかいほど強力な電気を生み出すらしいんですよ」
ポケモンソードの図鑑説明によると【つくる 電気が 強力な ピカチュウほど ほっぺの 袋は 軟らかく よく 伸びるぞ。】とのことだ。
現にサトシのピカチュウのような強いピカチュウの皮膚(ほっぺ)は柔軟*3である。
つまり逆説的にほっぺの袋(電気袋)をほぐせば作る電気も強力になるのでは?という話だ。なので電気袋を柔らかくするためにイヤホンジャックによる音波マッサージを受けている。
ちなみに上鳴は前世でトレーナーから電気袋マッサージをよく受けていた。
「そうか、まあご自由に」
そう言って相澤はデスクワークに戻る。
個性とは千差万別、否定する材料もないので無視することにした。
そうして30分ほど彼らはこの行為を続けた。
「よしっ!電気袋マッサージは終わり!耳郎、個別に鍛えようか」
「つまりウチにも見せられないってこと?」
耳郎は少し不機嫌な顔をした。
「そうだな。体育祭では全員がライバルだ。それに耳郎は絶対に上に来ると信じてるからな。だからこそ見せられない」
「…………………言うじゃん。じゃあ期待に沿えるように頑張るとしますかね」
そうして彼らの『なかよくする』の時間は終わり、分かれて練習をし始める。
それを見た相澤はというと。
(青春だな)
白雲と山田との大切な記憶を思い出していた。
「ピィィィカァァァ!」
早速、上鳴は『エレキボール』を出した。尻尾から球状の電光が発生する。
だがそれをそのまま放つことはない。徐々に形状を変えていく。
球から楕円に、楕円から
(これじゃダメだ。もっと変形させないと新技は完成しない)
電気袋マッサージが
2週間の特訓で編み出す技など所詮は付け焼刃かもしれない。だがそれでも強豪揃いの同級生達に勝つにはこれが必要だ。
(だけど技を扱いきれてない)
技、つまり個性を扱いきれてない。
そう思った上鳴はある1人の男の言葉を思い出す。
(それでもやっぱり凄いよ。僕なんか個性を扱いきれてないし。タマゴが爆発しないような感覚で調整していきたいんだけどどうしても難しくて)
緑谷だ。彼はUSJに向かうバスでそんなことを言っていた。
「タマゴが爆発しないような感覚か………『エレキボール』は球、実質タマゴだ。この感覚でやれば………」
その実質理論は無理があるのではないだろうかという指摘はさておき、再び『エレキボール』を出現させる。
球から楕円に、楕円から円盤に変えた瞬間、爆発した。だが前より改善している。
(ありがとな緑谷、2回も助けられてしまった)
上鳴は内心で感謝を述べる。
「ピッピカチュウ!まだ続けるぜ!」
そうして上鳴は特訓を続け1週間後に新技『??????』を習得した。
だがそれに胡坐をかいて特訓を辞めることはない。
彼のポケモンとしての本能が体育祭で勝てと囁いているからだ。
(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)
青春の2週間はあっという間である。
時は過ぎていき体育祭当日になった。
その日の雄英には大勢の人が注目が集まる。
一般人からヒーローにヴィランまで、多種多様の人間が多種多様の目的でこの催しを鑑賞する。
そんな雄英の中にA組の生徒達はいる。彼らは体操着を着て控室で待機している。
公平を期す為にコスチュームの着用は原則として禁止。頼れるのは己の力のみだ。
「皆!準備は出来てるか?もうじき入場だ!」
そうして生徒達が列を作り始めた時であった。轟が緑谷に近づいてきた。
「轟くん………なに?」
「客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う」
「へ!?うっ、うん…」
「お前、オールマイトに目ぇかけられてるよな」
「!!」
緑谷はその発言を受けて動揺する。現に彼はオールマイトとよく話している。
「別にそこ詮索するつもりはねぇが……………お前には勝つぞ」
轟のその言葉を聞いて控室がざわつく。
「おお!クラス最強が宣戦布告か」
上鳴はそう言って囃し立てる。
彼が想定している強さランクは轟>爆豪≧上鳴の順である。
なので轟の半冷半燃と爆豪の爆破に対抗するために新技『??????』を編み出したわけだ。
「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのか………はわかんないけど…そりゃ君の方が上だよ実力なんて大半の人に敵わないと思う…客観的に見ても」
ネガティブな発言を口にするが緑谷の目はまっすぐだ。
そして彼は更に言葉を続ける。
「でも!皆…本気でトップを狙ってるんだ。僕だって後れを取るわけにはいかないんだ!
僕も本気で取りに行く!」
間違いなく最強である轟相手に言い返す姿は皆の決意を再確認させるには十分なほどに勇ましかった。
彼もまた一端の戦士なのだ。
「……………おお」
(緑谷………お前もどんどん実っていく。耳郎・轟・爆豪・緑谷、戦うのが楽しみだ!)
上鳴はネモくなりながらニヤリと笑みを浮かべる。
ポケモンのオリジンは戦い、故に体は闘争を求める。
こうして雄英体育祭は始まろうとしていた。
(⚫︎◕ ‧̫ ◕⚫︎)ピカチュウの技
『エレキボール』『なかよくする』
『ねがいごと』『??????』
不動だった『こうそくいどう』は遂にリストラ。
『エレキボール』は新たな技を生み出す技としての立場を確立した。
『ねがいごと』が発動するタイミングはポケモンユナイトを見習い2秒後に発動なので、この世界では2秒に1回体力の半分が回復するという超再生クラスのチート技と化している。
新技の『??????』はとりあえず字数だけ開示しました。
ちなみに上鳴チュウが使う技は1話に4つまでという自分ルールがあったりする。なんでも使えたら強すぎますからね。このルールが破られる時は本当に展開に窮した時です。
職場体験どうする?
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ポケモン世界からの刺客と戦う
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ステインと戦う
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どっちもやろう