“伽藍堂のリタルダント“
地を踏み締める音がホロウ内に響く。軽快でありながら効率的で、無駄がない。
「やっぱり嘘の通報なんじゃないの?」
匿名で入ってきた通報の内容は、「子供がホロウ内にいるのを見かけた」というもの。目撃場所はデッドエンドホロウ。デッドエンドブッチャーが居を構える巨大なホロウだ。ハルはかなりの時間探索をしたが、一切その気配はない。
「ま、1人で来て正解だったか。これに人数は捌けない」
とりあえず目撃場所を含め重点的に、されど全体的にパトロールを行う。
「は?」
遠くで僅かに揺れた服の一部。見間違えも有り得るほどの距離だったが、可能性がある以上行かない理由はなかった。
最短距離で服が揺れた場所に向かう。パイプを踏み締め、壁に移り、着地し、また跳ぶ。パルクールの要領で距離を詰めれば、すでに居たはずの場所には何も居なかった。
「…勘違いか?」
自分の考えが間違っていたのではないか、と思いつつも他に見る場所もなく、周りを観察する。
「……」
とある方向から、何者かが接近している。そちらの方をよく見れば、複数人の集まりがじゃれ合いながらこちらに向かって来ていた。
その集団のうちの1人が、こちらを指差すような仕草をする。赤いジャンパーに機械の体。
「ビリーじゃん」
赤い機体が加速を見せ、抱きつくかという速度でこちらに向かってきたので、それを軽くいなす。
「ハルーーー!!」
スレスレで避けたので、ビリーは勢いを殺しきれず、壁に衝突した。
「ごめんなさい、ハル。ビリーが迷惑をかけたわ」
ビリーほどの勢いはないが、明確に加速してこちらの方に来たアンビー。だが、邪兎屋の様子は普段と違った。小走りでビリーとアンビーを追いかけるニコの隣には、赤がメインカラーの二又の尻尾を持った猫のシリオンがいた。
「はぁ、はぁ…!あんたら、急に加速しないでよ……!!」
「……いいの?こいつ、治安官の服装してるけど」
息を整えながら体を上げるニコと、警戒する目で僕を見る猫ちゃん。
「いいのよ、ハルはホロウレイダーは見逃してくれるから。それよりあんた、ここら辺で子供見てない!?」
急に距離を詰め得ながら捲し立てるニコ。むしろそのセリフは僕が聞きたかったのだ。
「丁度、そういう旨の通報が入って見に来たとこ。そちらの、猫のシリオンの方は?」
「あたしは猫又。子供を探してるけど、あんたもなのね」
猫又。すごい偽名っぽい。でも、それを言うならジェーンさんも海外版名無し太郎みたいな立ち位置の名前なのでお互い様かも。
「まあじゃあ…」
「一緒に探そうぜ!!」
成り行きで、子供探しを協力し始めることになった。
話を聞いていれば、なぜ邪兎屋の皆んながここにいるのか分かってきた。依頼主である猫又の形見を探していて、探している最中に子供の影らしきものを猫又が見たため追っている、と。
猫又は明確に特徴を覚えていたので、どうやら本当にいるみたいだ。
しかし、探せど探せど見つからない。このホロウでの長時間の滞在は命取りだ。猫又に調子を上げさせられたアンビーとビリーは、全速力で探索を行うことにした。
しばらく走って、皆んなで休憩を取ることに。
「ここが、デッドエンドホロウの深部みたい」
既にそこまで潜ってしまったのか、と思いつつ僕も体を休める。そこまで疲れてないけど。
「疲れたにゃ〜…ここまでノンストップで走れるなんて、みんなすごい体力だ…」
「走れば追いつけると言いながら、最初に音を上げたのはあなただった。少しは自覚したら?」
アンビーと猫又の仲は、会話を聞いていればそこまで良好でないのは理解できる。意外に似たもの同士であることには気づいていないようだ。
立ち上がり、アンビーの頬を両手で摘む。
「はいはい落ち着いて、協力関係崩しちゃ意味ないでしょ」
「ふぇも、ふぇこふぁたが…」
思ったより面白くなってしまった。
「おい、ちょっと待った!」
ビリーが指を刺す。指の先には段ボールを壁にして、顔を出した子供がいた。
子供は何も言うことなく後ろに向かって逃走を開始する。それを即座に追いかけるビリー。僕も追うように走り出した。
どうにか追いついて、ビリーがエーテリアスに襲われる既のところで助けたと言うのに、ビリーは理不尽にも女の子からグーパンを喰らう。女の子曰く、「むしろこっちが助けてやった」。
直後、壁が割れる。姿を現したのは、いつかの日に出会ったデッドエンドブッチャー。相変わらず道路標識を槍にしてぶん回している。
戦闘は必至かに思われたが、少女の後ろにホロウの裂け目が突如発生。僕らはそこに吸い込まれた。
僕は女の子を抱え、ビリーが踏み台になっているのを見つつそのまま着地。
「は?」
おかしい。これは有り得ない。なぜ、人がホロウの中で生活圏を築いている?
人数は実に100人ほどはある。ビリーによれば、ここの人たちが連絡を取れないのはヴィジョンのジャミング装置のせいだと。
「マジだ。僕のも治安局まで繋がらない」
トランシーバーを治安局まで繋げようとしてみたが、読み込みだけが空を切る。
一緒に会話をしていた、助けた子の祖母が僕に問う。
「治安官さん、よね?もしかして、この様子をご存じないのかしら?」
怖気がした。まるで、僕がこの様子を知っているのが普通みたいじゃないか。
「昨日は孫とお隣さんが痺れを切らして、ヴィジョンの監視拠点に行こうとしたのさ。そしたら治安官さんに止められたんだよ。確か…近くで爆弾の調整をしているから人を通せない、と言っていたそうだよ。それで準備が整ったら、列車で迎えに来る、とね」
「お婆さん、それ多分偽物だ」
僕はいくら記憶を掘り返しても、治安局がヴィジョンのプロジェクトに協力していると言う話を思い出せなかった。つまりそんな事実はない。
「治安局は市民を最優先して動く。そんなプロジェクト第一の動きなんかしないはずだ」
「そうね。…そうなると、ヴィジョンからすると、ここの住民は爆破して仕舞えば無いのと一緒、ってことかしら」
ニコがそう結論付ける。
「ニコ…あんたはこれからどうするつもり?」
猫又の質問に際して邪兎屋は短い話し合いを行い、見事に「協力する」と言う方向で話が落ち着いた。
「ハル…あんたはどうする?ここから協力すると、治安局のルールにも反することになるし、私達に任せて帰るべきだと思うわ」
迷いが出る。
確かにここでホロウレイダーと協力したと言う事実が明るみになったら、僕の退職は免れないだろう。
特捜班の皆との写真にヒビが入る想像をする。グロテスクな話だ。僕の居場所が無くなれば、僕はまた1人だ。もとより空っぽだが、そんな空っぽな人間が何処にも居れないのは、すごく寂しい。
それでも。
当然バレないと言う可能性も大いにあるが、しかし、それ以上に。
「治安官として、目の前の人を救えるのに救わない選択肢はない」
僕は、手を差し伸べたかった。助けたい人を助けると言うこと。これが、僕の今までの、そしてこれからの行動原理だ。
「ハル…」
「あんたもう、最高なんだから!!!」
あまりに嬉しかったのか、僕の方に飛びついてくるニコ。邪兎屋のみんなも飛んできた。嘘だろ、団子状態だ。
僕がニコからの抱擁に対し理性を働かせている間に話は着々と進み、猫又が援軍を呼びに行った。
委任状を皆でかき集め、あとは援軍待ちとなったその時。
「確かに想定外のことはあったけど、策を思いついたよ!」
下の方から聞こえた音声。目を合わせれば、丸っこい体の、オレンジスカーフのボンプ。自信ありげに、胸を張っている。
「この声は…プロキシ!」
「みんな、お待たせ!」
一緒に並走してきた猫又。これまでの経緯を聞いてみると、どうやら列車自体を止めようとしたが、中に治安官の服装をしたヴィジョンの増援で一杯だったと。
そこで2人が思いついたのが「住民を列車に乗せてホロウを抜ける」という救助ルート。そのためにはまず列車を奪い、引き返し、住民を乗せてホロウを突破する必要がある。
「プロキシの言ってたプランはいいと思うわ!さっすが、知恵と勇気の「パエトーン」ね!」
「え」
「?」
僕が出した惚けたような声に、ニコがこちらの顔を覗く。今のは聞き捨てならない。そういえばRandom Playの2人のプロキシ名は聞いたことがなかったのだが、もし、今出てきた名前がそうなのだとしたら。
「もしや、こいつが、「パエトーン」…?」
治安局ではさんざっぱら名前が登場するプロキシの1人だ。依頼料は高額な代わりに、必ず達成することが有名な、伝説のプロキシ。
「ちょっとニコ!言わないでよー!!バレちゃったじゃん!」
「思った以上に、大犯罪者じゃねーか…」
まさかあそこの2人がパエトーンだなんて、思いもしなかった。また、守秘義務が増えてしまったようだ。
しかし僕がその事実を飲み込むのを待たず、話はどんどん加速する。
「とにかく、今は一刻も早く列車を奪って、住民たちをここから連れ出さなきゃ!さあ、出発するわよ!」
長い長い列車を前にして、深呼吸を入れる。僕の仕事は一つ。誰にもバレずに、列車にいる守衛を高速処理する作業だ。殺しは必要ないので、気絶優先で。
「行こう。邪兎屋のみんなは五分後に突入して。それまでには終わらせとくよ」
列車の上に乗り、内側に入れる入口を探す。扉があった。静かに開いてみれば、僕の存在にすら気づかない、治安局の服装をした誰か。ああ、服の着方が甘すぎる。これは、確実に偽物だ。
「…」
上から落ちながら、関節を蹴り、口を手で塞いで発話不可能にする。直後に首に衝撃を与え、気絶させる。1人終わり。
同様に、スニークを行いながら敵陣を荒らす。10人ほど倒したかと言うところで、五分が経過した。
「結構前の方まできたし、上等なもんじゃない」
数分後、数ですら優った邪兎屋withハルは、高速でパールマンを捕獲した。
「だ、誰でも構わん!どんな手を使ってでも、こいつらを阻止しろーー」
捕まったパールマンはギャアギャアと喚きながら、僕らの列車強奪計画を阻止しろと叫ぶ。
直後。治安局の服装をした偽物が、堂々と発言する。
「ぱ、パールマン長官、ご安心を!新エリー都へ続く唯一の路線を爆破しました。これで奴らは、もう出られません…」
「なんだって!?」
まずい、かなりの量の増援が後ろから来ていると言うのに、状況がややこしくなった。こうなると、全員僕が倒すという可能性すら視野に入れなければならない。こうして僕らは、列車内に逃走、パールマンを使って突撃をやめさせた。
電車内で、猫又が何かを見ながら笑っている。
「何、それ?」
つい気になって、話を聞いてみた。
「これ、あたしの形見。さっきの戦闘で、たまたま見つけたやつ」
懐中時計のようなデザインの写真入れには、猫又と白髪の男、おそらくシルバーヘッドであろう2人が写っていた。そのシルバーヘッドは治安局の指名手配に遭っているので、猫又には胸の空く思いがする。
「いいんだ。別に治安局が悪いわけじゃない。むしろ、あんた…ハルみたいなルールを破ってでも正義を貫ける人がいるって知れて嬉しかった」
一度本音を話し始めたからか、溢れるように、つらつらと言葉の波が音を作る。
「ニコ。今なら謝れるから、謝っておく。実は、あんたたちを騙してたんだ。赤牙組に形見を奪われたってのは、嘘。あたしは組に引き取られた孤児だった」
「昔の赤牙組には、みんなで故郷を守ろうっていう誓いがあった。でも、組はだんだん酷くなって、あたしも組を抜けた。でも、どんなに失望しても、あそこはあたしにとって、一番家に近い場所だったんだ。だからあたしは、復讐のために邪兎屋のあんた達をデッドエンドホロウに連れて行った」
「だけど、あんた達の姿を見て、もうあたしには復讐する理由がないんだって気づいた」
顔を上げた猫又の顔は、いつも自殺による死に戻りを結構する前に、僕が生きていることに安堵して、自分が代わりになれることに安堵して見せる顔とよく似ていた。
「覚悟はできてる。あたしがヴィジョンと交渉してくる」
結局僕らが閉められた電車の壁を破壊したのは、猫又が既にパールマンを連れて単独交渉を開始し始めた時だった。
「エーテル適性のない住人をどうやって電車に乗せて移動するか…ねぇ」
現在の議論はこれだ。先ほどホロウを通らない唯一のルートを爆破されたので、僕らは絶対絶命の最中にあった。
「ホロウが縮めばいいんじゃない?」
「おお!確かに!エーテリアスを片っ端から倒していけばーー」
「それ、3000体くらいは倒す必要があると思うよ」
3000。雅ならともかく、この戦力なら絶望的な数字だ。僕が頑張っても100まで行ければいい方。
「でも、デッドエンドブッチャーを、ここに運ばれた大量のエーテル爆薬を使って倒せばーー」
「行ける、はず!」
×362
調子に乗っているビリーを咎めるかのように槍を投げてきたデッドエンドブッチャー。戦隊ヒーローのお約束なんてのはホロウでは関係のない戯言だ。
今回のゴールは、パエトーンを乗せた爆薬付き電車が到着するまで死亡者なく時間を稼ぐこと。時間稼ぎは得意分野だ。
剣を抜き、飛んで来た気迫のあるデッドエンドブッチャーを眺めながら、構える。初撃をどうするか考えている視界の端には、槍に体を貫かれるアンビーの姿があった。
は?
思考が止まる。脳髄をぐちゃぐちゃにされるような、久しぶりの感覚。ああ、忘れていた。
死に戻らないでいられたから、忘れていた。どうやっても、僕らの大切な現実なんて、こうも簡単に崩れるんだ。
『貴方なら死に戻らずともーー』
そうだな。ルーシー。君の言う通りだ。別に死に戻らなくたっていい。でも。でも。でも。
これはだめだ。
銃声。
×363
アンビーの懐に迫る槍を足で叩き落としながら、表情には見えないが明確に怖がっているアンビーを落ち着けるべく頭を撫でる。
「油断禁物。映画の世界じゃないから、一秒後にはバッドエンド行きだよ」
「…私としたことが、油断していた。ありがとう、落ち着いた」
僕の方もだ。でももう、油断はない。もう死なない。さっきの感覚は、帰ってこなくて結構だ。
「…もうなんなら、倒しちゃおうか」
行動開始。
アンビーは戦慄する。自分の命を救ってくれた、鮮烈な青髪の青年が、以前とは比べ物にならないほどの強さを発揮する。
避けては斬り伏せ、腕に乗り、また斬り伏せ、侵蝕を放ち、見事な太刀筋で斬る。
「これ、俺たちいらないカンジ?」
やることがなくなった、とでも言うような感じで両手を上げ、気だるそうにする。デッドエンドブッチャーは、突如現れたハルという脅威を処理することに集中を裂き、まるで自分達のことなど見えていないかのようだった。
「…私たちは治安官になってからのハルをほとんど知らない。この1年で加速度的に成長したのは、目に見えているわ」
急所を斬るべく、目を重点的に斬りつけるハル。何十回もの目への攻撃は、流石に応えたかデッドエンドブッチャーは動きを止める。
「みんな!!!今!!火力叩き込め!!!」
「任しな、あん時の恩を返してやるぜーーっ!!」
ハルの急な指示にビリーは一発で切り替え、ノリノリで銃を発砲している。
「ああっもう、そうなるなら先に言いなさいよーー!!」
アンビーとニコは遅れて参戦。動きを止めているデッドエンドブッチャーにとって、3人分の特大火力は明確にダメージがあった。
「まだ。僕がいる」
剣をデッドエンドブッチャーの脳天に突き立て、体の上を走り出すハル。ブッチャーの体を捌くように、剣を差し込んだまま肌を切っていく。
「〆」
脳内のイメージを雅に合わせる。僕が知る限りの最大限の超絶技巧。再現率はまだまだ低いが、それでも、再現ができるくらいには練習してきた。
「居合」
十数回ほどの斬撃が遅れてブッチャーに届く。ハルが剣を納める頃には、ブッチャーはその体を床に沈めた。
「本当に!?私たち、デッドエンドブッチャー倒しちゃった!?」
「やめて、ニコ。それは、フラグ」
地が揺れる。エーテルがブレる。微かに聞こえる大地の蠢く音。周囲のエネルギーすら力にしたみたいに、デッドエンドブッチャーの周りにエーテルが集まっていく。
「これ…第二形態ってやつじゃねえの!?」
どひゃー、とオーバーリアクションをかますビリー。しかしその予想は間違いなく正しかった。
デッドエンドブッチャーの背中から、腕が伸びる。さらにもう一つ伸びる。
「GYAAAAA!!!」
号哭によって発生する空気の揺れ。明確な、デッドエンドブッチャーの第二形態だった。
「…………ふぅ」
ハルには、もう1段階、覚醒が残されている。そのためには一つだけ、足りないピースがあった。しかし、それが埋まるより先に、ハルは、限りなく現在の段階における実力の限界点に到達していた。
まだ、変貌は起こさない。それでも。明確な一線は越えなくても。ハルは、その一線の、限りなくギリギリに、今、立っていた。
×363
心の臓が落ち着く。自身の抱える情熱に引っ張られつつも、頭だけが酷く冷えている。宇宙で叫んでいるみたいだ。
先ほどまでの戦闘で、自分の調子が限りなく良いことは気づいている。今なら本当に、このエーテリアスを倒せるかも知れない。
鮮明になっていく視界を三人称で見つめながら、脳内に掛かる無音の、リズミカルなドラム。
「ビリー。アンビー。ニコ。怪しいだらけ、知らないことだらけの僕を拾ってくれて、本当に感謝してる」
「言われればいつでも助けに行くわよ!今までも、これからも!」
ああ。本当に嬉しいことを言ってくれる。何もなくて、1人で、ただ生きたいというだけの理由で動いていた僕に最初に出来た友人と呼べるもの。
「あの時は君らが僕を引っ張ってくれていた。だから。今日くらい」
「僕が全部どうにかしてやる。任せろ」
僕が前を向き、1人で突撃を開始しようとすると、ビリーが肩を押さえる。
「俺さぁ…そのセリフ、どっかで聞いたことある気がするんだよなぁ…。しかも、スターライトナイトとかじゃなくてよ、ハルの声が一番しっくり来たんだ」
ああ、バレるものだな。今のは、懐かしい、昔の記憶。ビリーの目の前で、僕が初めて自殺を決行した時の、僕が言い放ったセリフ。ビリーは知らないはずだ。
「俺に鳥肌とかはねぇけど、そのセリフだけはゾワッとキた。俺にも手伝わせろよ!!友達だろ!!」
我慢ならん、と言いながらポーズをキメるビリー。
「私も手伝うわ。映画好きのよしみよ」
「別に引っ張るとかないわよ!助け合えば、あんなのチョロいわ!!」
ありがとう。じゃあ、簡単だ。
「ニコ、あと何分くらい!?」
「分かんないわよ!!知ってるなら教えて欲しいわ!!」
目の前に迫る腕を斬りながら距離を取り、また詰める。息が苦しくなってきた。みんな疲労が溜まっている。そろそろ限界がくるぞ。
「まだ…まだ…やれるぜ!!高性能だからな!!」
リロードと発砲を繰り返すビリー。エンジンからは蒸気が漏れ始めている。
「ニコ!!来たわ!!」
アンビーの声に合わせて、僕らは列車の通過地点から距離を取る。
「見てなさい、化け物。サプライズよ!!」
『まもなく列車が到着いたします。線の内側までお下がりください』
レールを轟音で走り抜く電車。その上にはボンプが腕を組んで鎮座している。列車が突撃する直前に地面に着地したパエトーン。
「fairy、仕事だよ!!」
ビリーとアンビーの攻撃に合わせ、アンビーの剣を避雷針にすることで雷を落とし、発火させる作戦。流石にここまで緻密に計算されていればうまく行くだろう。僕らは速やかに物陰に隠れる。
「3」
「2」
「1」
「0」
全く爆発は発生しない。一体どこでミスした?
「え?何も起きない?」
焦っている間に列車を持ち上げて起き上がるデッドエンドブッチャー。まずい、終わった。もう無理だ。あわあわと慌てる僕とビリー。
「なんとかしなさいよ!!」
『やり直します!4321、0!』
ぐわんぐわんと揺らされたボンプは焦ったようにカウントを捲し立て、今度こそカウントに合わせて落雷が起きた。
かくして僕だけ治安官なので途中離脱し、ヴィジョンの陰謀は暴かれ、この一件は終着点へと辿り着いた。
「すまないな、ハル治安官。証拠が出た以上、どれだけの成績があろうと、覆りはしないだろう…」
ブリンガー長官の悲しむような声。目の前には、いつ撮られたのかも分からないような、僕がホロウレイダーと会話する写真、或いはボイスレコーダー。
「別に良いですよ。そういうのを理解した上で協力してます。きっとあそこの皆なら、僕がいなくても十分回していけます」
証拠の出どころはプライバシーの侵害なので聞けないが、ここまで揃うこともあるのだな、と思った。僕はいまだに空っぽだ。元々いなかったはずの人間が消えたところで、そう支障はない。
僕は、1人になった。
「朱鳶、これはどういうことだ……!」
珍しく僅かに声が荒ぶっている青衣。朱鳶と青衣の間には、「辞表」とポップな字で書かれた封筒がポツリと置いてあった。
ハル「辞めまーーーす!!(別に自分くらいいなくても特捜班は回るし、誰も気にしないでしょ!!)」
→特捜班の空気が悪くなる
めっちゃサクサク進んでますがストーリーのセリフを書き続けるだけの作業はつまらなかったのでこうなりました。相変わらず展開早いけど許してね。