ゼロ・トゥ・ゼロ   作:しづごころなく

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筆者はせっかちなので、時間は爆速で経っていきます。どうしても書きたい話があるんです。


“勿忘草は記憶の彼方“

 「お会いできて光栄の至り!我は治安官の青衣と申す者!治安局戸別訪問サービスに、如何なる御用がお有りか!?」

 

 「うっそだろ、キャラじゃない……」

 

 何でこの人、こんなに明るいんだ。それと、何で僕の新居に他人行儀で訪問に来てやがる。

 

 

 「うむ…?……お主、ハル!!」

 

 直前までまるで別人であったかのような反応を見せ、青衣は僕の方へ飛びついてきた。とりあえず家に招き入れ、粗茶を出して落ち着いてもらう。

 

 「ハルよ……色々と言いたいことはあるが、最初に言わせてもらうぞ」

 

 「せめて、お別れの言葉くらい直接伝えるべきではないか…?」

 

 寂しそうな表情で、お茶を嚥下しながら青衣が呟く。これは実に正しい意見だ。僕が何故そうしなかったのかなんて、理由は一つに決まっている。もし直接話すなんてしちゃったら、後悔が残ってしまう。

 

 「…恥ずかしかったし、何より、ずっと居たいと思うっちゃうでしょ。本音で面と向かって話し出したらさ」

 

 つまり、僕は逃げたのだ。自分の関係を切るのが嫌で、それでも切るべきだし切らなければならないと理解していた。自分のやらなければいけない事のために、手紙という手段を使ったのだ。

 

 「……」

 

 「……ところで、青衣は何で僕を訪問してきたの?」

 

 沈黙に耐えきれず、質問をする。

 

 「……我の、愚痴に付き合ってもらおう……!!」

 

 今まで一番かというほどの気迫を見せた青衣は捲し立てるように文句を言い始める。

 

 「朱鳶がな、「市民の気持ちを理解する必要があります、これは先を見据えた計画です…!」というように気合いを入れて企画を作りおったのよ。作るのは良いのだが、内容が「治安官がそれぞれの家に個別で訪問し、必要なことを聞いて回る」というものでな」

 

 ああ、既に嫌な予感がする。消費者は常に自分の欲望に対して忠実だ。治安局ならより、自分の欲望をそのまま実現してくれると考える人はかなりいるだろう。

 

 「どいつもこいつも、礼儀というものを知らんのだ…!「もっと綺麗なお姉さんが良かった」とかほざく者に関してはスクラップにしているが、どう足掻いても無理な願いをされても困るというもの。青衣お姉さんも万能ではないのだぞ…」

 

 …どうやら「お姉さん判定されていない」という事実は青衣にとって地雷だったらしい。

 

 「しかも、であるぞ……」

 

 聞けば聞くほどネタが出てくる。青衣が満足するまでお話を聞いたところで、話がレールを切り替える。

 

 「そういえばお主、ここ数ヶ月、何をしておったのだ?何か、別な収入源を手に入れたのであろうが……」

 

 ここ数ヶ月はヴィクトリア家政として様々な、特にホロウ内での依頼を解決していたのだが…そういえば、忘れていた。僕の立場は、ヴィクトリア家政即ちホロウレイダーの一員だ。青衣のことだし直ぐには捕まえはしないだろうが、どう伝えたものか。

 

 「執事やってるんだ。意外でしょ」

 

 小さなクローゼットからタキシードを取り出す。相変わらずいいデザインだ。

 

 「……ほう、意匠の凝らされた服であるな。ちゃんとした企業に入っているとは、僥倖なことだ。青衣お姉さんは安心したぞ」

 

 「…治安局はやっぱり、あのテロ事件の処理で大変?」

 

 テロ、といえばいいのか分からないが、電子機器を一時的に落とさせるという犯罪を集団で行なっているところがあったはずだ。僕の家のテレビも一度止まったことがある。

 

 「……耳が早いな、お主。うむ、もう犯人は捕まえておるが、事後処理に追われておるよ」

 

 「そっか。どうにかなってるなら良かったよ」

 

 

 「…」

 

 やはり気まずい。会話が続かない。そんな気持ちを読み取ってくれたのか、「ふふ」と笑いながら青衣が口を開く。

 

 「しかし、お主もちゃんと生きれているようで安心した。我らはお主を信じる。いつまでも待つつもりだが、お主がその心の内を開ける気になったら、お主の精神に踏み入らせてもらえると嬉しい」

 

 精神的な差を感じる。僕の抱える「空っぽ」の悩みなど知らないはずなのに、それすら見抜いて、しかも僕を信じてくれる、というのだ。

 

 「…整理がつかない内は、言えないと思う。だから、それまでは」

 

 「…少なくとも我は待つぞ。いくらでも、な」

 

 

 

 「ここが、バレエツインズ…不気味ですね…」

 

 「洒落てる」

 

 ヴィクトリア家政は依頼者からの新たな依頼を受けた。内容としては、ここ「バレエツインズ」の清掃と管理。お金持ちの方が、どうやらここを投資先に選んだらしい。大胆だ。

 

 「ここの内部構造については、キャロットのデータは古いものしかありません。その改修も依頼に含まれています」

 

 ライカンさんはエーテリアスを処理しながら業務連絡を行う。キャロットのデータ集めなら、僕ならかなり早く行える。折角だし情報を回収しておこう。

 

 「じゃあ、僕だけ先行してデータ収集してきますね」

 

 「殊勝な心がけです。折角ですし、お任せします」

 

 ドアを開け、1人で奥に進む。調査開始。

 

 

 

 数十分経って、ハルが帰ってくる。キャロットのデータはかなり集まり、電気系統を纏めている部屋まで特定したらしい。

 

 「…ところで、リナさんはいつ?」

 

 「リナは、現在バレエツインズに侵入してきた何者かの尾行と調査を行っています。そろそろ帰ってくるはず…」

 

 そこまで言いかけたところで、エレンが目を開き、近づいてくる。

 

 「ねぇ、誰か来るよ」

 

 巨大な鋏をクルクルと回しながら、階段に向かって歩き始める。ライカンさんは何も言わず、暗に迎撃の許可を出す。

 

 「じゃあ、やっちゃうね」

 

 エレンが鋏を構え、投擲の姿勢。それが投げられる直前、ハルは階段の下を認識した。

 

 4人組。色は赤、黄、赤、ついでにボンプ。1人は猫耳を持ち、1人は機械の容姿。もう1人は白髪のエンジンのようなものを背負った……

 

 「…邪兎屋」

 

 視界の端で鋏が宙に放られ、向こう側に向かって飛来し始める。止めなきゃ───

 

 壁を蹴り、加速。空中で鋏に追いつき、剣を振るって空中で叩き落とす。ハルは見事に邪兎屋に背を向ける形で構えながら着地した。

 

 「ハル!?」

 

 珍しい、アンビーの驚いた声を聞き流しながら剣をしまう。さあ、ここからは僕の交渉術の見せ所……

 

 「カリンちゃん!!」

 

 指を指しながら猫又の声が明るく響く。階段を降りてきたカリンちゃんを見ての一言だった。ライカンさんも降りてきて、話を聞こうとする。

 

 「ハルに、カリン。こちらの方々をご存知で?」

 

 「お久しぶりです、猫又様に調査員様!あの時はお助けいただきありがとうございました!」

 

 カリンちゃんが知り合いなのは知らなかった。いつ会ったんだろう…。

 

 「ハル!お前その服どうしたんだよ!?」

 

 僕の服を見るべく僕を回転させながら品定めをするビリー。「ちょ、一旦ストップ…」とビリーの暴挙を止め、邪兎屋の皆んなに説明を始める。

 

 「ハル…いつの間にそんな服を着始めたの?」

 

 オレンジのスカーフを付けたボンプ、リンの入っている「イアス」までも僕を揶揄い始める。

 

 「えっと、まず、僕が働いてるのは『ヴィクトリア家政』っていうトコでね。簡単にいうと、お金持ちの人対象のメイドだよ」

 

 「聞いたことない名前ね」

 

 「ご存知ないのも仕方ないかと。我々は新エリー都の中でも限られた方にのみお仕えしておりますので」

 

 「あ、でも貧乏だから知らないって訳でもないんだよ。シンプルにコネがないと知れない」

 

 流れるように、ライカンさんが僕らがここにいる理由を話し始める。

 

 「私共が本日ここにいるのは……」

 

 会話の流れでカリンちゃんと猫又、ついでにプロキシの関係性についても知れた。僕が邪兎屋とデッドエンドホロウで合流する前に一悶着あり、その際にカリンちゃんが助けに入ったと。

 

 「良かったぁ〜、もう調査員のフリしなくていいんだね!」

 

 プロキシの自己紹介を聞いて、ライカンさんはコレが「パエトーン」であることに驚いている。正直言うと、僕は伝説を知るより先に本体を知っているので、いまだにピンと来ていない。

 

 「それで、プロキシ。君らは人探しが目的って言ってたけど、ここをある程度探索してみた内だと、あんまり手がかりはなかったよ?」

 

 「そんなぁ…」

 

 「すまない、リン。急なんだが、ニコが法廷には邪兎屋全員で出席すると書いてしまったらしい。ビリーたちも来るように言われてるんだそうだ」

 

 アキラの声が同じボンプから聞こえる。なかなかシュールな絵面だが、内容もニコのガバから発生したしょうもない物だった。

 

 これにより、邪兎屋はここから撤退せざるを得ない。ライカンさんの提案により、パエトーンとヴィクトリア家政は協力関係を結ぶことになった。目指すはアトリウム。

 

 

 サクサクとエーテリアスを倒しながら、上へ登っていく。ほら、すぐそこにも金色に尖った腕を振るう幽霊のようなエーテリアスが。

 

 「邪魔」

 

 顔を逸らして避けながら剣を突き刺す。それに合わせるかのように、電気が一瞬点滅した。

 

 「…さっきから多くない?コレ」

 

 エレンの指摘通り、先ほどから少しずつ停電頻度が縮まっている。ただの機械不良ならまだ問題はないが、もしアトリウム前のシャッターが自動で閉まったら面倒なことになるぞ。

 

 「…嫌な予感がします。このままだとシャッターが閉まる恐れがありますので、早足で行かせて頂きます」

 

 ボンプが走る。エーテリアスの山を掻い潜り、ライカンさんに補助されたりリナさんに助けられたりしながらも高速で上り詰める。

 

 「ショートカットさせてあげよう」

 

 ボンプを持ち上げ、階段を見ずに、その隣にあった空中の窓までジャンプ。僕の手を離れたボンプは感謝を述べながらも可愛らしい仕草でワタワタと走り抜けていく。

 

 「アトリウムはすぐそこだよ!」

 

 ライカンさんが先頭を行き、駆け抜ける。目の前にアトリウムへと繋がるシャターが見えたかという瞬間、シャッターが閉まり始める。

 

 「……!!」

 

 無言で最速を放ったライカンさんは、全速力でシャッターまで向かう。よし、この速度なら間に合う。…そう思った瞬間、上からエーテリアスが出現。その闇からの攻撃に気づいたライカンさんは止まらざるを得ず、一時停止する。

 

 「行くしかない」

 

 判断は一瞬だった。僕とプロキシだけでもシャッターの奥に駆け抜けた方がプラスなことが多いと考えた僕は、ボンプを持ち上げスライディングでシャッター奥に無理やり侵入する。

 

 狙い通りではあるものの、事前の妥協通り、ヴィクトリア家政と僕らは分離された。

 

 『ハル、ありがとうございます。素晴らしい判断でした。この先の情報を手に入れる方が我々にとっては先決…ハルがいればプロキシ様の安全も保たれるでしょう』

 

 壁越しでライカンさんの声が聞こえる。完全に独断だったが、正解の選択肢を選んだようだ。

 

 『…そちら側からこのシャッターを開ける方法はありませんか?』

 

 「…ごめん、ライカンさん。こっちからは無理みたい…そっち側からなら、電気室に行ければこの扉を復旧できるよ」

 

 「その電気室、ちょうど前にキャロットの収集終わってるところだよ。すぐに行けると思う」

 

 なんたる幸運。偶然にも僕は電気室のキャロットを収集し終えている。これなら早めに合流できるだろう。

 

 『分かりました。では、こちらは電気室に分かれて電気を復旧します。プロキシ様とハルは、安全に配慮して、周囲の探索を行なってください』

 

 

 「そういう訳で、ハル。2人きりになっちゃったね」

 

 この可愛らしいビジュアルで言われると全くキュンと来ない台詞であることが分かる。

 

 「そうだね。…あのリュックは、探してる人のとは違う?」

 

 視界に先ほどから入っていた、黄色い小さなリュック。それを指差しながら伝えると、「レインのだ!間違いない!!」と言いながら走って近づいていった。

 

 ガサゴソとバッグを漁り、中から取り出されたのは、カウントダウンが行われている爆弾にも見えるカセットテープ。

 

 「うわぁ!!」

 

 焦って手から離れるカセットテープ。パエトーンを守るべく、体でボンプを覆う。タイマーのカウントがゼロになって起きたのは、優雅な音楽の始まりだった。

 

 「…なぁんだ、大丈夫だよ、ハル!これ、ただの音楽プレイヤーだ!」

 

 いや。違う。…音楽プレイヤーなのは正しいが、「ただの」音楽プレイヤーではない。

 音もなく、いつの間にかパエトーンの背後で直立するエーテリアス。

 

 その姿はバレリーナのようで、ギザギザの鋼スカートは逆にその雰囲気を強くさせる。

 

 「危ない」

 

 足を踏み出し、加速し、エーテリアスに対し蹴りを行う。僕の存在に気づいたバレリーナは、攻撃を中止し、受け身の体勢をとった。

 

 「さて」

 

 「勝負だ」

 

 剣を抜く。地に足をつける。さあ、初手は決めた。

 

 居合の構えをとり、左足を摺りながら後ろに送る。日本刀でもないのに持ち手をしっかりと握り締め、イメージを星見雅と重ねていく。見様見真似…

 

 「シッ」

 

 居合斬り。僕も絶え間ない努力により、斬撃が遅れて飛ぶようになってきた。まだまだ手数も威力も足りていないが、かなり近い。このまま行けば、星見雅に限りなく近い存在になれる。

 

 エーテリアスの後ろまで駆け抜ける間に七発ほどの居合を行った。その斬撃をそのまま受けるエーテリアス。何が起きたのかわかっていないようだ。

 怒りをそのまま具現化するかのように、エーテリアスは浮かび上がる。落ちながら尖った足の先を刺突する攻撃。

 

 「モーションが分かりやすいんだよ」

 

 後ろにバク転しながら避ける。あれだけ上から落ちてるなら着地にも余裕がないはずだ。僕は剣をエーテリアスに突き刺した。

 

 「…まだまだ、ってか」

 

 先ほどの攻撃など無かったかのようにバレエを踊るエーテリアス。そのスカートの端からはエーテルの粒が飛んでくる。

 

 「……」

 

 全て避け切り、睨み返す。…長くなりそうだ。

 

 「おーい!!エーテリアス!!こっちだよ!!」

 

 ぶんぶんと腕を振りながら先ほどのカセットテープを掲げるボンプ。…なるほど、もしこいつがこの音楽に惹きつけられてきたのだと仮定するなら…。

 

 「えいっ!」

 

 ボンプは、ホロウの裂け目に向かってカセットテープを放り投げる。それを追いかけるようにエーテリアスは必死にホロウの裂け目に突入していった。

 

 「……助かったよ、あれに誘き寄せられてたんだね」

 

 「えっへん!ホロウの裂け目を見つけられてよかったよ…!」

 

……

 

 何か、おかしい。何がおかしい?何も認識していないのに、全神経が、全細胞が、後ろに向かって刀を振れと命令する。何故?分からない。分からない。

 

 でも、とりあえず、振らなきゃ。

 

 

 爆発音。目の前で広がる大きな炎。皮膚に広がる熱の感触。…僕は、第六感で、飛来物を斬ったらしい。だが、その行為に驚くよりも、炎の隙間から僅かに見えた後続のミサイル。これを、止めなければ。

 

 

 パエトーンに当たりうるもののみ選定して、最低限で斬りながら突撃する。これを撃った人為的犯人を特定し、僕は高速でねじ伏せた。

 

 

 その後、僕が疲れて休んでいる内に、ライカンさん達が追いついてきた。僕の隣に座る、気を失った反乱軍の制服の男達。それを見たライカンさんとリナさんは、彼らをホロウ外へと連れていった。

 

 「こわ…」

 

 

 

 この調査により、彼らは「レイン」がハッカーであることを利用して何かを行おうとしていたことが分かった。ライカンさんは結局、パエトーンと協力することにしたらしい。

 

 「彼らはまだバレエツインズを占領しております。正面衝突は避けられません」

 

 「案内は任せて!」

 

 反乱軍の戦闘練度は低い。そりゃあ軍隊での訓練を通っていないからそうなのだが、おかげで特に障害にぶつかることもなく僕らは中へと進んでいった。

 しかし。彼らから回収したパソコンの中には、衝撃の事実が載っていた。いや、正確には送信機らしいが。

 

 『ててて店長か!?まずいぜ!!飛行船が大変なことになった!パールマンの野郎がスーツケースを開けたかと思ったら、変なガスが充満して、呼吸機器が故障してた俺以外全員眠っちまった!!』

 

 「え」

 

 僕がつい出した驚きの声はさておいて話はどんどん先へ行く。

 

 『今んところは自動操縦になってるが、この飛行機のルートが、改竄されてることに気づいたんだよ!!今、こいつはバレエツインズのあるホロウに突っ込んでる!このままだと俺ら全員、ホロウに入っちまうぞ!』

 

 しかし、ニュースにもそんな話はないし、どこにも漏れていない情報のようだ、これはまさしく、ハッカーの仕事。彼らは、これをやらせたかったのだ。

 

 「急ごう」

 

 予断は許されない。僕が走り出したのに応じて、ヴィクトリア家政全員が走り出した。

 

 僕らはあと僅かでレインを失うところだったが、どうにか救出に成功、しかしそれを恨むように屋上へのルートが爆破される。パエトーンの出した別ルート、それは、先ほどのバレリーナがいるエリアを通るルートだった。

 

 

 「まだご満足いただけていないご様子…」

 

 目の前でゆらゆらと輪舞曲を踊るエーテリアス。点滅を繰り返す電気。流れるピアノソナタ。

 

 その体は、突如、二つに分裂した。

 

 「バレエツインズ…!!まさか、本当にいるとは…」

 

 「別に1人でも2人でも、倒せばいいでしょ」

 

 「ヴィクトリア家政には十分すぎるくらいです」

 

 戦闘、開始。

 

 

 屋上までやってきた時、すでに飛行船は衝突寸前だった。

 

 「待ってくれ…」

 

 僕の呟きだけが空を切る。邪兎屋の皆が死ぬのだけは嫌だ。この事態だって、できるだけ最善を選んだつもりで、選べていないかもしれない。ああ、くそ、こんなギリギリな。

 

 「……はぁっ!!」

 

 ライカンさんが僕以上の速度を持って加速する。僕には飛行機を操作するなんて出来やしない。そもそも僕にもっと力があって、反乱軍の奴らを牽制できたらこうなってないはずだ。

 

 例えば、僕じゃなくてここに星見雅がいたら。反乱軍は戦力差を恐れ逃げた可能性がある。

 

 僕に何か得られるものが残っているとすれば、やはり、戦闘力しかないのだろう。

 

 今回の事案で、パールマン含め僕の関わったビジョンの事件が、反乱軍がわざわざ飛行船のルートを変えたことからも分かるように、もっと面倒な陰謀に繋がっていることを理解できた。もし止めたいと思っても、今のままの僕の戦闘力では、1人に時間を割かせるだけの脅威はない。

 

 僕がもっと強くなれれば、満足に皆を助けられるはずだ。

 

 ライカンさんが月に照らされながらも宙を飛ぶのを見て、僕はそう思った。




「いや早すぎるだろ」という思いは分かるのですが、本編の会話と展開をただコピーするだけの作業は面白くないと思ってしまうので、申し訳ありませんがこんな感じですっ飛ばすことにしました。

次回、エージェント秘話。

ちなみにですが、過去に出したスレッドの時系列は「ハルが元治安官であることと青衣とニネヴェを倒した経歴があって仲がいいこと」が分かっているくらいだということにしておいてください。要するに治安局編あたりです。
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