ゼロ・トゥ・ゼロ   作:しづごころなく

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構想めっちゃ時間かかった〜。今話は短めですが、色々理由があって短めになっています。


幕のかかったお話

 

 ハルは色々あって、適当観の一員となった。これからそちら側の問題を、解決していく……という訳ではなかった。

 

 ハルには明確に、特務捜査班という帰る場所があった。

 

 当然特務捜査班指名の案件なんかがあれば、時間をかけてでもそちらを手伝いに行く。

 

 

 「ハル…お主が特務捜査班として捜査を行うのは中々久しぶりではないか?」

 

 「そうだね。…仕方ない形が多かったんだから許してほしい。単独行動ばっかだけどさ」

 

 「そこ!私語はダメですよ!」

 

 会議中の朱鳶さんが、わざわざ振り向いて注意してくる。怒った朱鳶さんが怖いのは知っているので、お口をチャック。

 

 「いいですか?おさらいしますよ。今回の案件は「讃頌会拠点の捜索及び一斉検挙」です。昨今衛非地区やエリー都周辺でも活動を広げている宗教集団「讃頌会」は謎に包まれている上、かなり厄介です。先日ようやくその拠点の位置が割り出されたところなので、それを叩き潰します」

 

 「大人数で仕掛けると事前に察知されて逃げられる、という案件が非常に多かったので、今回我々に白羽の矢が立った訳です」

 

 「少数精鋭で攻め込んで、情報収集等も行うということで良いですか?」

 

 熱心にメモを取っていたセスが、質問を繰り出す。真面目だなぁ彼は。

 

 「はい、その認識で正しいです。他に質問は?」

 

 

 

 

 こうして僕らはホロウに向かった。どうやら拠点はホロウの中でエーテルが安定している場所にあるらしく、見つからないのも妥当だ。

 

 「逃走が不可能なように、短期決戦が求められる。そうですよね?」

 

 

 示しすら合わせずに、拠点に突入。

 

 しかし4人を止められるほどの人材が襲撃を予測できていない場所にいるはずもなく。

 

 「ハルさん!こっち3人抑えました!」

 

 「ナイス、セス!青衣の方増援行って!」

 

 後ろからの攻撃を見ずに対処しつつ弾丸を足に打ち込む。悲鳴が上がるのを無視して、別の賛頌会メンバーを剣の柄で叩く。

 

 こうして再起不能にしたのち、奥へと進んでいく。

 

 「く、この、「始まりの主」に選ばれた私が、ここまで…?」

 

 コンクリの壁に背をつけ、朱鳶さんに銃を向けられていたのは、資料に存在した、ここにはいないはずの賛頌会「現当主」。全身を白装束で包み、素顔すら分からない。

 

 「朱鳶さん、これは?」

 

 照準をずらさず、朱鳶さんが返事をする。

 

 「どうやら完全に偶然みたいですね。私たちの突撃と、彼の来訪が、奇しくも同じタイミングでかち合ったという訳です」

 

 何らかの用があって偶然ここにきた賛頌会のトップをここまで追い詰められるとは。声からして男性だが、彼を検挙できれば一気に賛頌会は解体へと繋がるだろう。

 

 「既にあなた以外のメンバーはほとんど鎮圧済みです。諦めて投降しなさい」

 

 「く、こうなったら…!!」

 

 胸元から何やら、注射器を取り出す。嫌な予感がしたので、弾丸を放った。

 

 「は……!?」

 

 ぱりん、という音と共に注射器が男の手元で割れる。おそらく、雅が前に教えてくれた、サクリファイス化する薬、というやつだろう。要するにエーテリアスになる代わりに色々強くなるやつだ。

 

 「僕はヒーローの変身は待たない。敗因は潰すに限る」

 

 「助かりました、ハル」

 

 「ちいっ……!!」

 

  逃げられない状況をどうにかするため、男は逃げ出した。広いホロウへと。殺さないことを意識しつつ、弾丸を数発、男に向かって放つ。

 

 男の周囲から、エーテルが発生する。それらが自動で弾丸を弾いていった。

 

 (…攻撃の意思を自動判定してる?」

 

 注射器への攻撃はスルー。だが、これは弾く。任意発動か?…あの焦り具合、そうは見えないけど。

 

 実際、朱鳶さんの発砲も自動対応されている。近接を試みるべく、一気に距離をつめる。男の手を掴み、拳を振るう。どうやら腕を掴む、までは攻撃とは認知していないらしい。

 

 手をエーテルが弾く。…であれば。

 

 「朱鳶さん。僕を撃て」

 

 躊躇なく朱鳶さんが発砲。僕の方へと弾丸が向かってくる。即座に男を引っ張り、男の体にエーテルの弾丸を当てる。

 

 朱鳶さんの弾丸はエーテルでできている。致命傷にはならない。だが、動けなくなるくらいには痛い。

 

 動けなくなった隙を見て、手錠を取り出す。掛けようとしたその時。

 

 「主よ…!!」

 

 男が力任せに、建物から飛び降りようとした。僕は手を離さなかった。だが、火事場の馬鹿力か、男は僕すらも巻き込んで、建物から半身を乗り出す。

 

 ここはホロウ。壁のない建物が多いから、落下しようと思えば簡単だ。どころか、ホロウの奈落など、誰も知らない。

 

 だから。僕はつい、手を、

 

 

 離さなかった。

 

 

 

 僕ならどうにかできる。やってやる。落下しながら上を振り返る。エーテルの渦を放つ。無理やりその引力に引っ張られ、z軸を持ち上げる。

 

 くそ、だが、これじゃ届かない。無理だ。ワンチャン、エーテリアス化か?

 

 「ハル!!!」

 

 僕らが落下した階の、一つ下の階。その壁が壊れ、手が伸びた。

 反射的に、その手を取った。

 

 無骨だが、何処か温かい。

 

 「青衣」

 

 と、その腰を引っ張るセス。

 

 「マジで、助かった…」

 

 落下死は結構痛いのだ。出来れば避けたい。いつの間にか気絶していた賛頌会当主の男と一緒に救助され、一見落着。

 

 ちなみに後の取り調べにて、男は「あれはいいな…」などと支離滅裂なことを喋った後、自害したそうだ。

 

 信仰心も行きすぎると酷いね。

 

 

 特務捜査班は結局、後処理として賛頌会を調べ、「当主」は世襲であり、当代が死亡すると自動で別の誰かに移り変わることを知った。

 まさか同じ案件で衛非地区に関わることになるとは思っていなかったけれど。

 

 僕が適当観に戻ったころ、衛非地区はポーセルメックス、という企業の話題で持ちきりだ。何でも、不当労働だの、薬の副作用を言わずに配布するだの、治安局的にはアウトでしかない案件ばかりだ。

 

 だが、この一件にもどうやら賛頌会が関わっているらしく、ポーセルメックスだけを吊し上げれば済むというものでもないらしい。

 そもそも企業への制裁は「黒枝」の仕事であるので、僕は自己判断を行わないのが良いだろう。

 

 「お前さんのエーテルを操る技術は、明らかにオーバーパワーだ」

 

 「まあ、そうかもしれませんね」

 

 儀玄さんは僕によるエーテルの使い方を聞いて早々、こう言った。空気中のエーテルを取り入れ、練り上げ、指向性を持たせ、体を通して放つ。

 

 「エーテルの本質を掴まねば、そのような芸当は出来やしないだろう。私でも無理だ」

 

 エーテルの性質変化は非常に多彩だ。爆発、幻覚、侵食、電気…エネルギーであるから、その形をさまざまに変質させる。

 僕もきっと、掴めばエーテルを何にでも変えられる日が来るかもしれない。

 

 「お前さんはどこで、エーテルの本質を掴んだ?」

 

 僕はまだ、掴みきっていない。そう言いたいところだが、一般のそれを逸脱するのは間違いない。だが、これは言えない。

 

 これはあくまで予想だが、おそらく、僕の死に戻りは、エーテルと非常に関わりが深い。

 

 そも、時間を遡るなどという、膨大なエネルギーはエーテルくらいじゃないと生み出せない。

 加えて、僕の異常なまでのエーテル耐性。これはおかしい。

 

 だが、もし、死に戻りという記憶の移動現象に、エーテルを伴うとすれば。

 もし、記憶というエーテリアス化しようのない概念が、エーテルに慣れていれば。

 

 僕はエーテルを手足のように動かす…までは行かないが、かなり仲がいい。これが、沢山のエーテルと付き合ってきたからという理由からなら。

 

 「…ハル?」

 

 「はい」

 

 まあ、予想だ。ただ単に、何百回とホロウを駆けてきたから、とか。才能だから、とか。そんな陳腐な理由の可能性も大いにある。

 

 死に戻りという能力に再現性があって。それが、僕ではない悪意を持った誰かの元に渡ったとして。

 

 僕はどうやって、死に戻りの使い手を倒すのだろう?

 




一応この小説を書き始めた時にしてあった構想を少しだけ放出。原作の進み方によって矛盾したりする可能性を考慮してそんなに「決め切らない」ようにしています。そんなに気にしなくても大丈夫ですよ。

死に戻り:エーテルが由来の力らしい。本編の始まりの主が同様にして人を蘇生したり出来るが、その能力と比べると、天と地ほどの「格の違い」があるとかないとか。

あ、前書きの内容なんですけど、今日か明日にもう一話出ます。話を切るために、今話を設けました。
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