ナノハなの!   作:すどうりな

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『3』


No.7 雲は晴れず

 

 

 ナノハなのは事件って呼ばれた勘違い騒動、自分達の未来について語りあったその日の学校帰りの事。

 この日は色んな出来事が沢山ある日だったみたいで立て続けに様々な事があった。

 

 私達は塾へ向かう道の途中に傷ついたフェレットを見つける。 

 .......それは良い。

 

 フェレットの首には見たことある様な材質の赤い宝石がつけられていた。

 .......若干引っ掛かるものもあるがそれも良い。

 

 動物病院にフェレットを預けた際に獣医さんが見たこと無い種類だと言っていた。

 .......まぁ後であの杖を問いただせば良い。

 

 

 問題は今である。

 

 「ねぇアリサちゃん? あの娘迷子かな、さっきから塾の近くでキョロキョロしてる.......あ、私と同じ髪型だ」

 

 「キツネのお面に.......背負ってるのは楽器かな? こっちを向いて手を振ってるよ?」

 

 横断歩道を跨いだ向こう側にいる少女は何故此方側に手を振っているのか。 ヒントは彼女の格好にあった。

 私達と同じ位の背丈に髪はおさげ、何処かで見た様な黒い服に丁度あの杖が収まりそうな本来なら楽器を入れる筈のバッグ.......バレバレだ、あれで誤魔化してるつもりなのかと言う位にバレバレだった。

 

 思わず溜め息と一緒に頭に手を当てる。

 

 「なのは、すずか、ごめん。 ちょっと先に塾へ行ってて」

 

 「アリサちゃん? どうしたの?」

 

 「ちょっと用事が出来ちゃいそうなのよ、うん大事な」

 

 あの子は病み上がりで何をやっているのだろうか?

 私は信号が青になると同時に駆け出し横断歩道を一気に渡りきると驚いているお面少女の手を掴み急いで離れた場所に移動する。 

 

 お面少女は少しびくびくとしながら私の事を見ているが知った事ではない。 私は彼女のお面に手をかけ勢いよく外した。

 

 「.......ほらやっぱり」

 

 お面を外してみれば中にあったのは見慣れているようで.......やっぱり見慣れている顔だった。 自分が何をしているのか解ってはいるのだろう、罪悪感からか露骨に私と目線を合わせようとしない。

 

 ≪よく解りましたねアリサ、どうですか? あれならオリジナルと遭遇してもバレないでしょう?≫

 

 「あんたソレ本気で言ってるのならある意味尊敬に値するわね。 バレたらどうする気だったの?.......ナノハ」

 

 少女の荷物が機械音を発して何処か自信ありげに言ってきたので取り合えず皮肉を返しておく。 

 目の前の少女はナノハ、本来なら私なんかよりもずっと年上な筈の精神を持つ(筈の)彼女が一体何故あんな無茶をしてしまったのか。

 

 「.......アリサちゃんの顔が見たかったから」

 

 「はぁ、馬鹿ね。 家で待ってれば会えるわよ」

 

 「心配で堪らなかったの.......アリサちゃんが元気かどうか」

 

 「元気じゃなかったのはナノハの方でしょ、ずっと眠ってたんだから.......オリジナル(なのは)だってすぐ側にいたのよ?」

 

 「でもっ.......でも.......」

 

 今度は俯き顔すら見せなくなった彼女の頭を撫でながら使ってない左手でメールを打つ、内容はこうだ『家庭の事情で今日は休みますって先生に言っといて』.......送信っと。

 

 ナノハの手を引いて塾から更に離れていく。

 

 「アリサちゃん.......? そっちは塾じゃないよ?」

 

 「知ってるわよ、家に帰るんだから当然でしょ。 塾なんかより大事な用事ができたもの」

 

 

 そう言って私はナノハに笑いかける。 暗い表情をしていたナノハは不思議そうに首を傾げるばかりだ。

 

 「ふふ、意識のなかった妹が起きたのよ? やることなんて一つしかないでしょ?」

 

 

 

 ―――お祝いよ♪

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 ≪.......で、なんでコンナコトになってるんですか?≫

 

 「あはは.......わかんないよ」

 

 アリサちゃんが取り仕切って始まった私のお目覚めパーティーは屋敷中の使用人を巻き込んだ想像以上の盛り上がりを見せた.......んだけど。

 

 「にゃによしゃめじまぁ.......わらひのしゃけがにょめにゃいにょ!?」

 

 「お嬢様そう言う訳では」

 

 「じゃあぐいっといきにゃしゃいよ! ぐいっと!」

 

 「.......うん、わかんない」

 

 始めの内こそ普通のお祝いパーティーだったんだけどアリサちゃんが間違えてお酒を飲んで一変、一気に会社の飲み会ムードになってしまった。

 アリサちゃんの飲酒を止めるべきデビットさんはすぐそこで酔い潰れていたのだから、アリサちゃんはもう止まらないとばかりにジュースと勘違いしてお酒をウワバミの様に飲み干しあんな感じになってしまっていた。

 

 「.......血は争えませんな」

 

 「あ、鮫島さん。 お疲れ様です」

 

 男だった時のノリでお酒を飲んでしまわないように注意しながら飲み物を調べていると鮫島さんがいつの間にか私の近くにきていた、酔いアリサちゃんからは解放されたみたいだ。

 チラッとアリサちゃんの方を見ればメイドさんを自分と同じソファに座らせて絡んでいる。 

 

 ≪血は争えないどころか一番早く親が酔い潰れてますよ≫

 

 「いえ、旦那様の方ではなく奥様の方です。 奥様はお酒を飲まれると人が変わってしまいますから.......丁度あんな感じに」

 

 ≪.......なるほど≫

 

 奥様.......私にとっては義理の母にあたる人『アリス・バニングス』さん。 名前だけはアリサちゃんから聞いた事がある人でアリサちゃん曰くぽやぽや合法ロリ。 

 一体どんな人なんだろうか? ロリ、というからには相当身長の低い人なのかな?

 私はそんなことを考えながらちびちびとジュースを飲んでいた。

 

 「そういえば、私まだあったことないなぁ.......アリスさんに」

 

 「奥様も会いたがってましたよ。 絶対可愛い服を買いに連れて行くんだ、と言って張り切っておりました」

 

 「.......お手柔らかにして貰えると良いなぁ」

 

 男性の頃は解らなかった女の子の服が沢山ある理由がちょっとだけ解った気がした。

 

 

 

 

 それから暫くしてアリサちゃんの頭がカクンカクンと揺れ始め終いには頭を机の上にのせて眠りはじめてしまった。 デビットさんは言うまでもなく眠り続けていて使用人の人達も何人かは眠ってしまっている。

 

 「風邪ひいちゃうよ、アリサちゃん」

 

 起こしてしまうのも悪いと思い部屋には運ばずタオルケットを上にかけてあげた。 

 

 「ナノハ.......」

 

 私の名前を寝言で言い身動ぎしたあとにアリサちゃんの顔はニッコリと笑みを作った、それを見て思わず私も微笑んでしまう。

 

 アリサちゃん、一体どんな夢を見ているんだろう.......。

 

 「ありがとう.......ナノハ.......」

 

 「どういたしまして、おやすみなさいアリサちゃん」

 

 周りを見れば鮫島さんや他の使用人さん達はもうお片付けを始めていた。 料理を下げたりアリサちゃんにお酒を飲まされて酔っ払ってしまった同僚を手当てしたり。

 

 さて、私も料理を下げたりして片付けないと。

 

 「ねぇレイジングハート、こういう時に使える魔法とかないのかな? お皿がひとりでに動き出して勝手に洗われるとか」

 

 ≪そうですね.......マスターが今のところ使える魔法ですとあまり適した物はありません、お皿を綺麗サッパリ消滅させる魔法ならありますが≫

 

 「普通魔法って言ったら生活方面の魔法が多いと思うんだけど......ちょっと恐いよ?」

 

 ≪残念ですが現実は非情ですね。 恋の魔法や杖を振っただけで何でも出来るファンタジーは存在しません.......元々戦争用の技術が多かったみたいですから≫

 

 「あんな事できちゃう力だもんね.......」

 

 アリサちゃんを助けに行った時に私が使ったらしい力.......記憶は何故か曖昧だけれど酷い事をしていた気がする。 

 それに今日アリサちゃんと合流する前にレイジングハートに頼んで見せてもらった現場は凄い有り様だった。 円形に綺麗に貫かれた壁に小さなクレーター、血はなかったけれどもきっとデビットさん達が掃除してくれただけなのだろう。

 

 「恐い力だね、まるで自分が爆弾にでもなったみた.......い?」

 

 ≪ですが必要な力です。 丁度今のように≫

 

 違和感、口で表すのが難しい本当に違和感としか表現出来ない何かを感じた。 ざわざわと私の中を駆け巡った違和感はやがて不快感に変わり私に何かを催促してくるようだった。

 

 「レイジングハート.......これって」

 

 ≪魔力反応が二つ.......いえ三つ。 町のど真ん中ですね、しかも結界すらナシですか。 行った方が良いですね町に被害が出るかも知れません≫

 

 「私以外にも魔法を.......戦いになると思う?」

 

 ≪相手の出方次第です≫

 

 私は鮫島さんに事情を話して家を出た。 

 私以外の魔法使い.......一体どんな人なんだろう。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 暗い真夜中、ピカピカとひかる桜色が私の目に映る。 空から見てもはっきりわかる綺麗な桜色.......そういえば魔力って何で桜色なんだろうという疑問が出てくるが後回しだ、今は重要な事じゃない。

 

 「見えたよ! レイジングハート!」

 

 ≪こんなに派手に撒き散らしながら戦闘して何を考えているんでしょうね。 なるほど、この魔力光は.......結界を張ります! 術式の構成は此方が行いますのでマスターは魔力を注いでください!≫

 

 「うん!」

 

 レイジングハートの先っぽに出てきた小さな円、私は其処に何時かの夜を思い出しながら魔力を注ぎ込む。 魔力を吸う度に大きさを増す円だがその速度は非常にゆっくりだ、もしかすると注ぎ込む魔力が足りないのかも知れない。

 

 .......急がなきゃ。 私は焦る気持ちのまま魔力の出力を上げた。

 

 ≪魔力充填率95%.......100%、結界を展開しま.......? マスター?≫

 

 「もっと大きく.......もっと強く.......」

 

 ≪マスター! もう魔力を注ぎ込む必要はありません!≫

 

 「.......ふぇ?」

 

 レイジングハートの言葉に急いで魔力の供給を止める。 するとどうだろう.......目の前にある円は何時の間にか比べ物にならないくらい大きく複雑な模様を刻んでおり、未だに巨大化を続けていたのが漸く止まる。

 

 ≪.......マスターは砲撃でも行うつもりですか?≫

 

 「えっと.......わ、解んなくて.......ごめんなさい」

 

 ≪......帰ったら魔法の練習ですね。術式構成を変更、範囲を拡大することにより消費魔力を増やします≫

 

 直後、円の中に大きな桜色に光る球体が現れた。 球体は爆発的な速度で辺りを包み込むように広がり向こう側で魔力を使っていた誰かを範囲に納めても止まらず広がり続け.......町一つが結界の中に入ってしまったのだ。

 

 ≪結界魔法は何も術式の大きさがそのまま範囲になるわけではありません.......帰ったらまた疲れて眠ってしまいますよ?≫

 

 「.......お祝いしてもらったばかりなのに」

 

 ≪心配せずとも何日も意識が戻らないという事はありません、しかし片付けの手伝いはしない方が良いですね途中で意識が無くなってしまいそうです≫

 

 またアリサちゃんに心配をかけてしまうと思っていた私は少し安心して先程まで桜色の魔力を撒き散らしていた場所を見た。 光はもう収まってしまっていて向こうも戦闘が終わったようだった。

 

 向こうで戦っていたらしい誰かを目を凝らしてよく見ようとする。 

 

 白い服に.......何かを持っているのまでは解った。

 

 「レイジングハート、あの人私と同じ服着てない?」

 

 ≪逆ですよマスター、貴女が同じ服を着ているんです。 マスターの見ている映像を拡大しますよ?≫

 

 「うぅ.......あれ変な感じがしてあんまりやりたくないんだけど」

 

 会話が終わるか終わらないかという所で視界の右側に違う映像が流れ込んできた、レイジングハートの言っているとうり拡大映像のようだ。

 

 視界の先では此方を興味深くジーっと見つめる誰かの姿があった。 

 本当に私と同じような服を着ている、白を基調として青いラインが入ったやはりコスプレのような服.......違いと言えば胸のリボンが金色の金属の装飾に変わっている程度だろうか?

 手に持っている杖もレイジングハートそっくりで.......簡単に言えばより機械的になった感じ? 杖というよりは機械と言った方がしっくりきそうだ。

 

 私にそっくりだった。 

 服、杖、髪形.......何もかもが私にそっくりだった。

 

 本当になにもかも(・・・・・)

 

 

 「.......っ!」

 

 

 逃げた。

 

 恐くて逃げ出した。 

 

 私の中の何かが崩れるような錯覚を覚えた。

 

 人が誰もいない結界の中のズレた町を、家を目指して全速力で飛んでいく。 寒くも無いのに身体が震えていた。 

 

 「レイジングハート.......なんであの子が魔法を使えるの.......? なんで.......なんで」

 

 ≪マスターは知っての通り『高町なのは』のレプリカ(・・・・ )です、マスターが魔法を使えるという事は当然オリジナルも≫

 

 「.......そう.......だよね」

 

 心の何処かで安心していたのかも知れない、魔法はオリジナルには使えない私の長所の一つだと。 

 お前に出来る事は彼女にも出来る、お前に出来て彼女に出来ない事は何もない、そんな幻聴が聞こえてくる様だった。

 

 そこでレイジングハートとの会話は止まった。 話す話題が思いつかなかったというのもあるが、あまり楽しく話したい気分ではなかったから。

 

 

 

 

 

 家に着く、音も無く静まり帰った家でアリサちゃんを見つけた。 アリサちゃんは相も変わらず大きなソファの上で幸せそうに眠り続けていて私の心を少しだけ落ち着かせてくれる。

 でも辺りに鮫島さん達の姿は無くて、またなにか起きているのではないかと少しだけ不安になった。

 

 「ねぇ、レイジングハートこれも魔法の.......」

 

 ≪.......≫

 

 レイジングハートは何かを考えこんでいるようで何も言ってくれない。 仕方なく私は辺りを調べてみようとして一歩踏み出した途端に目眩に襲われる。

 

 「あう.......結界.......解かなきゃ」

 

 魔法は維持するのにも魔力を使うらしく私の体からは未だに魔力が流れ続けていく感覚があった。 防護服(バリアジャケット)を解除すると同時に結界を作り出していた術式も解除する。

 

 「ナノハお嬢様!?」

 

 「ふぇ?」

 

 解除するとほぼ同時に突如目の前に現れた鮫島さんは驚いたように私を見ていた。 周りを見てみると使用人さん達も二人程鮫島さんと同じような顔で私を見ていた。

 

 そうか.......結界を張っているあいだは魔力がある人以外はいなくなっちゃうんだっけ。

 

 鮫島さんからすれば出ていった筈の私がいきなり目の前に現れた様に見えたみたいで、あまり驚かさないで下さいと叱られてしまう。 結界の仕様を忘れていた私が悪いので素直に謝った。

 

 それから鮫島さんは直ぐにお片付けを再開しているのを見て私も手伝おうとする。 

 が、いざ取り掛かろうとすると直ぐに眠気が襲ってきて手が止まってしまう。 思考も霧がかかったようにぼんやりとしてきて片付けどころでは無くなってしまった。

 

 「アリサちゃん.......」

 

 私はぼんやりとした思考のままでアリサちゃんの眠っているソファに腰をかけ、肘おきを枕に目を閉じる。

 自分の部屋には行きたくなかった。

 今日は少しでもアリサちゃんの側にいたかった、オリジナル(なのは)複製(レプリカ)でしかない私の身体が、何だか曖昧な.......夢の様に消えて無くなってしまいそうに思えて恐かったから。

 

 

 わたし、ちゃんと此処に居るよね.......アリサちゃん?

 

 

 

 

 

 

 




『No.21』
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