少し短いですが前後編に分けます。後編は明日です。
追記:ポケモンの名前誤字ってた… 本当に申し訳ない…
<Side:クロン>
騒がしいメルボタウンの街中で、人気が少し減った道を地図を見ながら僕たちは歩いていた。
「あそこがおいしい木の実パイのお店だね。ケーキ屋の転生者の人からもらったレシピを発展させてるんだって」
「モッ!」「モペッ!」
今日はスポーツ祭の2日目、ネグとモルペコもスポーツ祭の競技の観戦よりも食べ物優先らしく、僕たちは人気競技の間に同期の皆に教えてもらったグルメを回る事にしていた。
先日、飢餓状態のモルペコを拾ったが何とか回復してくれていた。ずっとそばで世話をした僕の事が気に入ったらしく、こうして一緒に出歩く程度には仲良くなれたと思う。ネグとはすぐ仲良くなり、モルペコがお兄さん風に構ってくれていた。
この子は腹ペコになってもあまり暴れない。飢えた状態に慣れてしまったらしく、元からおかしなホルモンのバランスが更におかしくなってしまったようだ。
お腹が空いても元の状態のままぐったりしたり、お腹がいっぱいになっても悪状態となり必死に食べ続け吐き出してしまうことがあった。
…きっと今まで大変な目に会ってきたんだろう。
そんなモルペコを元に戻すため僕ができそうな事で思いついたのが、
「皆でグルメを楽しんでもっと仲良くなろうよ」
「モペペ」「モー」
生きるためだけじゃくなくて、楽しむための食事を行い、心の方から癒す事だった。
「にしても、監視なんて本当にいるのかな?」
僕はまだこの子に完全には認められていないようで、手持ち扱いではない。それにどこから来たか分からない野生のポケモンに注意するのも分かる。ただ、何かに巻き込まれる可能性があるからと監視役が付いているらしいが…
「ダメだ… 全然分からない」
「モー?」
少し悔しいが、僕たちの経験不足なのだろう。後、せっかくのお祭りに大変な仕事を押し付けて申し訳なさも感じる。
「ダメダメ、今日は楽しまないとっ!」
気持ちを切り替えつつ、お店の扉を開ける。どんな味なんだろうか?
スポーツ祭の少し前から、滅びた未来の世界(ダンジョン)の一つがトラリア地方と空間の位相が近い場所に存在していた。
その世界では、人間は既に外へと旅立っていった。残った一部の人間も全ていなくなってしまった。それでも人間たちは自分たちの負債を押し付けてしまったポケモンのために何かを残そうと考えた。
そして、世話する人がいなくなっても、ゴミやガレキ以外のおいしいものが食べられるようにと食べ物を渡す転送装置を作り上げた。
そのポケモンは汚染されたゴミを食べながらも時折、人間がくれたおいしいものを食べられるのが楽しみだった。仲間が減り、人間もいなくなってしまって寂しかったが、彼らが残してくれたもののおかげで孤独に耐えられた。
ある時、転送装置から食べ物が出る頻度が減ってきた。近くの食べ物は全てなくなってしまったのだ。そして転送装置は設定通りに効果範囲を広げていった。
ある島から食べ物がなくなった。人工島のシェルターの備蓄がなくなった。近くの海の食べられるものがなくなった。近い地方の街の食べ物がなくなった…
ソレが自身の地方の汚染されたゴミをたくさん食べ、人が住めるようになった時には多くの地方の食べ物がなくなり、その影響でこの世界のポケモンたちも数を大きく減らしてしまった。
それでも、ソレは止まらない、転送装置も止まらない。
ソレが特別な個体で食べ続ける限り生き続けられる事、転送装置が壊れながらも動き続けた事、この2つがソレにとって幸運だったのか不幸だったのかは誰にも分からない。
ただ、転送装置が元となったポケモン交換システムのように
そして長く生き残り続けたソレ、アクジキングは既に正気を失っていた。
ただ、尽きぬ食欲だけが暴走する怪物となってしまった。
そんなアクジキングのため、転送装置は食べ物が多い場所を探知し、交換する。壊れた装置はよく誤ってポケモンと食べ物を交換したが、元となったポケモン交換システム的に問題はないと判断された。
その後、探知したある場所の把握が難しくなった。転送装置は送ったゴミのログは蓄積しないが、送ったポケモンのログは蓄積する機能は残っていたため、そのログを解析し始めた…
<Side:クロン>
「♪~」
「おいしかったね木の実パイ」
「モペペ~」
久しぶりにあんなにおいしいデザートを食べた気がする。次はミツハニーのハニーキャンディーかな?これは教えてくれた皆の分として買うなら後でもいいかも。
他には… ミルタンクプリン、キョジオーンラーメンもどき、トロピウスジュース、ヤドンのしっぽ焼き… ポケモンとの共存を目指すこの街には結構おいしそうなものが多いかも。
「モ!モ!」
「モーペ」
近くの屋台に目を奪われたネグをモルペコが注意している。モルペコの方が我慢する側なのが違和感を覚える。いや、モルペコもよだれを垂らしてた…
「今日はお祭りなんだからグルメ以外の屋台も食べようか」
「「モ!」」
人気の少ない路地で買ってきた焼きそば、お好み焼き、焼き木の実などを広げる。2匹が目を輝かせてるいるのが分かる。遠くからはフットサルの予選をやってるのか、シュートが決まったという声と歓声が響いていた。
「じゃあ!皆で食べようか!」
「「♪~」」
それぞれが食べたいものを手に取り、口に入れようとした所で、
「なっ!」
視界が明けると、廃墟の中に僕たちはいた。広げたはずの食べ物はなく、ガレキだけが転がっていた。離れていても感じていた人気も急に感じなくなった。
「ここはいったい…」
「モペ…」
DOOOOO KAAAAAA GUUUUUU
あまり離れていない場所からは大きな鳴き声が聞こえてきた。皆でその方向をみると…
バクバクバクバクバク
僕たちが買ってきた物を食べる巨大な黒くて丸い何かがいた。ソレも僕たちに気付いたようで大きな口(?)を開けた。
「!!!」
全身に悪寒が走り、手に持った木の実を放りネグとモルペコを抱えて「でんこうせっか」でその場を離れた。その後、僕たちのいた場所にソレは口の中から炎、電気、氷、毒、衝撃、岩といった様々なものを放出し、近くの廃墟があっという間に崩れていった… え?
「何あれ!何あれ!何あれ!」
2匹を抱えながらひたすら走る。足に氷をかすめ、直線でなくジグザグに不規則に走る。それでも飛んできたガレキの欠片で全身を叩かれる!
「ペコ!」
モルペコが強く鳴き、腕から離れようとする。自分で走る気だと思い、力を緩めるが…
モルペコの顔を見て、強く抱きしめた。
「!!!」
「何で諦めた顔してんの!何で囮になろうとしてんの!出会って数日だからって見捨てられるわけないじゃんかぁぁぁぁ!」
必死に叫びながら走る。アレの速度は速くないようだが、時折空気を吐き出して高速移動してくる。状態異常のアイテムは手元にない、共念石も急な移動で落としてしまい助けも呼べない。
逃げられない! でも、ここで諦めたくなんかない!
さっき手元に残った焼き木の実を放った時は一瞬だが僕たちよりもそちらを優先していた。そして僕のカバンにはネグのおやつ用の木の実が2個ある。そして、この廃墟の中で唯一外観を保っている建物が少し離れた場所に見える。これらに勝機はあるはずだ!!!
アレが一度口を閉じたのが見えた。僕とネグ、モルペコの体が危機感で震えるのが分かる。あれはマズイ!ネグを建物の方へ放り投げ、空いた片手で木の実を上に投げるっ。
木の実を向いて上に傾いた口から、強力な毒の息吹が空中いっぱいに広がった。あれもしかして「ゲップ」なの!当たると苦しんで死ぬじゃ済まないでしょ!溶けるでしょ!
アレってアクジキングでしょ!僕ら食べるつもりなら手加減してよ!
「ああああああああ!!!」
ひたすら叫んで建物へ逃げる。途中でネグをまた抱えようとしたが…
「モ!」
「モペ!」
2匹が拒絶し、モルペコは腕の中から抜け出す。彼らは僕の目を真っ直ぐ見ていた。
「…うん、皆、僕を信じてついてきて!やばそうなのは指示するよ!」
「「モ!」」
背後から、攻撃が来るのを感じながら1人と2匹で「でんこうせっか」で駆け出す。その時、ネグの体が光っていた。
「まさかっ!」
走りながらも光のシルエットは少し大きくなり、光が収まるとそこには…
「パモッ」
少し大きくなりパモットとなったネグがいた。
皆で廃墟を駆け出す。僕は両手が空いて走りやすく、物を投げやすくなったなった。2匹も体の小ささを活かして、廃墟の隙間を通って攻撃を防いでいる。それでも一度攻撃受けた場所はすぐに崩れるので、走り続けるしかない。
また口を閉じたのが見え、攻撃が止む。「ゲップ」は連発できないようだが、熱気のようなものを肌に感じる。
「皆、コッチ!」
落ちている大きな看板を壁として立て、更に残った柱の陰に隠れて、2匹を抱きしめる。その直後に「ねっぷう」が通り過ぎていった。
「ぐぅぅぅぅぅ」
柱で隠しきれなかった腕が焼ける!壁越しでも背中が熱い!それでも2匹を必死に抱きしめる。
アクジキングが口内から再び別の攻撃が放出され始めたのを見て、再び皆で駆け出す。
建物に近づくと攻撃が少し控えめになった気がする。ここを攻撃に巻き込みたくないようだ。すると、的が大きな僕に狙いを絞り…
「っ!」
「あくのはどう」を放ってきた。避けられないので廃材を盾にするのが間に合った!でも、攻撃の余波で吹き飛び、痛みとは別に副次効果で体がひるんで動けない!
「パモッ」
それでも、ネグが木の実を投げてアクジキングの気を逸らしてくれた。僕が同じ事しても効果が薄いと考え、進化して腕が使えるようになったネグに木の実を渡しておいたのだが…
「ありがとうっ ネグッ!」
最高のタイミングで助かった。そして、皆で唯一無事な建物へ飛び込んだ。
「なに…これ…」
建物の中はモニターが付いた大きな機械があった。まだ動いている感じがし、触るのをためらってしまう。これは一体何だろうか…
ズン ズン ズン
建物を壊さないようにアクジキングがゆっくりとここに近づくのが見える。この建物の中で接近戦になってしまうと僕らに勝ち目がない…
もしかして判断を間違えてたのか…?
アクジキングが建物に入る前、機械から音が鳴る。その音を聞いて足を止めて、僕らへの興味が薄れるのを感じた。
そして、建物近くの残骸が消えて、見覚えのある箱が現れた。確かアレはオレンの実の箱だった気がする。でも、あんな大きかったけ?
「あーやっと選ばれたかな?待つ間退屈で眠りそうだったよ。眠れないけど」
箱の中から声が聞こえ、アクジキングに向けて何かが放たれるのが見えた。
「我ながらヒドイ恰好だ… 食べ物扱いされるためだからってコレはないよ」
壊れた箱の中からは新人歓迎会で紹介された前線組の一員にして、前の臨時講師だったルキさんの師匠である人が見えた。
「社畜さん!!!」
「やぁ、久しぶり。ここ2日間不眠で箱に詰められた『元』社畜だよ」
木の実の汁やハチミツでべとべとで、甘い匂いが漂う姿で助けが現れた…
かっこつかないなぁ!!!
・・・
建物の外では社畜さんがボールから出した6体のポケモンと戦っている。ヨルノズクが「リフレクター」、社畜さんが「ひかりのかべ」を張り、飛んできた岩や氷を素手で逸らしていた。
他のポケモンが「おにび」「やどりぎのタネ」「あやしいひかり」「のろい」をしたけど、効果があるように見られない。いや、効果は少しあるけどすぐに回復されてる?
ここに隠れていてほしいと言われたが、任せっきりにしたくない。アドレナリンが切れて痛み始めた全身を無視して歩く。
「モー」
「大丈夫、少し調べるだけだから」
この機械があのアクジキングにとって大切な何かだという事は分かった。社畜さんが現れた時を考えると、僕らもこの機械でこの廃墟に来たと考えられる。なら戻る手掛かりもあるはずだ。
モニター近くにある錆びついた蓋を無理やり開ける。そこにボタンはなくパッドがあり、イチかバチか手を当ててみた。
『おかえり。この星に人間が戻ってきて嬉しいよ。突然だが私の願いを聞いてくれないか?』
「えっ!」
モニターは壊れて薄い明かりしか出てないが、雑音交じりにスピーカーから人間の声が聞こえてきた。録画されたデータだろうか…
僕らは痛む体を休めながら、流れ始めた話を聞くことにした。
社畜「箱の中でずっとスタンバってました…」