『鬼殺の刃~鬼と逢うては鬼を斬る、人と逢うては人を斬る~』プレイ実況   作:助亜黒宇

5 / 11
裏話2

 藤襲山での七日間が終わった。何体の鬼を倒したのか、わからないほど殺した。

 

 -そう、殺した。殺してやる、そんな気持ちだったが、いざとなると手が震えた。心がざわついた。もう顔も思い出せない■■を殺した、そう考えて心を奮い立たせた。一体、二体と殺すうちに心はかさつき、五体も殺せば手も震えない。

 

 でも、淡々と殺すなんていけない。■■を奪ったという憎しみ、殺意を携えないと。(あいつら)と同じになってはいけないから。復讐であって、娯楽ではないから。

 

 筋肉の男から受け取った刀のまま、任務へ赴く。俺の殺意を受けて、任務が烏から降る。鬼は日光に弱い。だからあいつらがのさばるのは夜中だ。人目に付かず、こそ泥のように人の命を啜るゴミ。烏に追い立てられるように駆けつけ、索敵し、瞬く間に切り伏せる。人が生きているなら割って入り、鬼を殺す。

 

 もっと早く来てくれてたら!そんな叫びが胸を打つ。気持ちがよくわかる。俺もそうだった。隊士がもっと早く来てくれていたら、■は死ななかったかもしれない。もしかしたら■も、いや、■■全員死ななかったかもしれない。だから走り続けるのだ。

 

 人を助けるために、ではない。俺を助けるために。もう■■の顔を思い出せないから。思い出そうとすると、吐き気と頭痛で動けなくなるから。

 

 夜が明ける。任務が終わる。次はもっと早く殺せるように、倒れるまで刀を振るう。そうでもしないと寝れないから。血を洗い流し、殺意を込めて、目の前に鬼がいると思い込みながら、刀を振るう。呼吸を練り続ける。殺すためにできることすべて成していく。

 

 休み、休憩は、死んでからすればいい。苦しむこともできない■■に比べれば、苦しむことが出来るのは幸せなことだろう。夕暮れと共に目覚め、鬼を殺し、夜明けとともに家に帰る。ぶっ倒れるその時まで刀を振り続け、死んだように眠る。

 

 何度も何度も繰り返す。鬼を見つけ、殺意とともに刀を振るい、助けたはずの人から罵詈雑言を受け、現実から逃げるように刀を振るい、泥のように眠る。

 

 -心身ともに摩耗している。誰を、誰のために、いや、なんのために刀を振るうのか。眠るために刀を振るっていないか。わからない。■■とは一体なんだ?

 

 わからないまま刀を振るう。鬼を殺す。滅す。同じ黒服に身を包んでいるから仲間なのだろう、顔では認識できない。それほどに摩耗した精神の中、烏に療養を進められる。診察を受けろ、と。

 

 だが、……誰だったか。あの人たちはもう診察も受けられない。なのにおめおめと生き延びた俺だけがそんな喜びを享受して本当にいいのか。わからない。考えられない。今の自分には、与えられた任務に従って鬼を殺す以外がわからない。血の赤と宵闇の黒だけの世界。

 

 烏に付いていく。いつからだろう、どこへ、そんな情報が欠落し始めたのは。あるいは覚えていないだけだろうか。烏に付き従えば鬼がいるから。鬼を殺す、それだけ、だったのに。

 

「休むことも仕事、ですよ?」

 

 休んでいる。十分に休んでいます。泥のように寝ていますから。そう返した俺の顔を両手で挟み込み、覗き込んでくる。

 

 世界に、色が戻る。赤と黒の世界から引きずり出されて。

 

 人の温かさに、あるいはこの人自身の気持ちに。涙が止まらない。涙を隠すなんて人間らしい動きもできない。顔を包み込まれたまま、溢れる涙。拭われる。その手つきすら愛おしい。瞼が重くなってきた。そのまま、顔を支える手に身を任せて、眠りについた。

 起きてから診察してくれた人が、蟲柱、胡蝶しのぶであると知った。鬼殺隊の頂点の一人であると。

 

 それから烏に診察に行けと言われるたびに会いに行くことになった。しのぶさんとお話しした日はよく眠れるようになった。逆に、話ができない日は眠りに就きづらくなったが。些末な問題である。どうせ今まで眠れなかったし、むしろ人の顔がはっきりと覚えられるようになった。

 

 任務に同行する隊士の顔を覚えられるし、蝶屋敷でよく会う女の子たち、炭治郎さん、善逸さん、伊之助さんも覚えられた。特に炭治郎さんとは同じ水の呼吸であることもあり、よく訓練する仲になった。

 

 しのぶさんに会いたい。その気持ちは贅沢だろうか。感情を味わうことのできない家族(・・)はどう思うだろうか。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。