『鬼殺の刃~鬼と逢うては鬼を斬る、人と逢うては人を斬る~』プレイ実況 作:助亜黒宇
医療に携わる者として、または人として。止めるべき、だったのかもしれない。初めてその隊士を診察した時、どう決断すべきだったのか。いまだに思い出す。
絶望と失意のどん底で、殺意という希望に縋っている少年を、背中を押すべきだったのか、それとも引き留めるべきだったのか。背中を押したことが果たして正解だったのか。
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「何度か、診察に来るようお伝えしてましたよね?」
有無なんて言わせない。あえて疑問形で訊ねているが。どこか焦点の合わない顔で、何を診ていただくのかよくわからなかったので、などと言う隊士。今までもいなかったわけではない。ただ、怒り、あるいは憎しみだけでは戦い続けられない。どこかで疲弊し、心が折れる。そして殺される、または大けがをして、他の隊士の足手まといになる。
ならば止めるべきだ。でも、ここまで覇気のない人は見たことがなかった。生きているんじゃない、死んでいないだけ。ただただ殺意と復讐心だけで立っている、そう思わせる顔つきだったから。背中を押さざるを得なかった。
「そうですか。でも、症状を自覚してなくても疲労やケガは蓄積されますし、病気になるかもしれませんから、次からすぐ来てくださいね」
以後気を付けます、とうつむき加減で言う少年。次からはちゃんと来てくれそうな気配なので、お話を切り上げ診察する。
「じゃあ、診察するので、上の服を脱いでください。……はい、大丈夫ですよ。大きな出血も見られないですね。じゃあくるっと回って背中を見せてください」
指示におとなしく従う隊士。だったら最初から診察に来てくれればよかったのだが。その体は癸とは思えないほどの傷が。ただ、治りかけている様子だった。
「全集中の呼吸・常中が出来ていることはいいことです。努力が必要ではあるものの基礎的な技術ですから。でもきちんと休みましょうね?」
ぽかんとした顔を浮かべながらも、休んでいるつもりですが、と言い返してくる。話を聞けば、任務後にぶっ通しで訓練を行い、倒れるように寝ているとか。
「……それは、寝てる、と言えませんよ?」
わかっていたのだろう、うなだれる隊士。その顔を両手で包み込み、目線を合わせる。濁り切った目。どろどろとして、希望もなく、ただ絶望から逃れるように復讐心に身を焦がしているかのように。
そのまま両頬を揉みながら。
「今日はこの屋敷で寝てもらいます。1日様子見て明日には帰って大丈夫ですから、ね?」
思わず疑問調になってしまった。ほっぺを揉まれたのがそんなに驚いたのか、目を大きく見開いた後、涙を流した挙句、ウトウトし始めたのだ。まるで火のついたように泣き叫ぶ赤子が、母の手の中に抱かれたかのように。
どうしようか。まさか私の手の中、大泣きしてそのまま眠りにつくとは想定外すぎた。誰か呼んでもいいけど、自分で運んだ方が早い。そう決断した私はベッドまで彼を運ぶのだった。
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その後、彼はちゃんと診察に来るようになった。あの時、顔を両手で包み込んだ時から、絶望でどろどろとした目つきは鳴りを潜めてきていると思う。理由は知らないが。
最初の診察の時、なぜあんなに傷が生じていたのか。時間とともにわかってきたことがある。彼の最終選別の時はほとんど死者がでなかったらしい。なぜか、彼が鬼を殺しまわったから。
助けを求めた者からは颯爽と現れ、大した手間もかけずに切り伏せた、だとか。またある者は大の字で寝ころんでいた彼が、襲われるや否や切り伏せた、だとか。
最終選別の場でなんたる度胸か。傷を負えば戦いが継続できない。それにどんな血鬼術かわからぬ一撃を食らうべきじゃない。だと言うのに、彼はその身を挺して鬼を集めたのだ。自らの血の匂いで。結果として多くの人間が最終選別を生き延びた。
そんなことが出来たのは、最初の診察で感じたとおりだったのだろう。生きるのではなく、死ぬ場所を求めるような、そんな自暴自棄的な考えだったではないか。あるいは復習に焦がれたのか。もしくはその両方か。いずれにせよ、それがなぜ変わったのかはわからないままだった。
この時は自分自身、気づいていなかった。ふとした時に彼を目で追っていた、そんな事実に。
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上弦の陸討伐。音柱の宇髄さんを始め多くの人間がいたとはいえ、すごい成果だ。それでも彼は変わったとは思わない。最初の診察が大きすぎたのかもしれないが、変わったと思っていなかったのだ。
だから、唐突に言われた言葉に動揺したのだ。
口で言うほど鬼と仲良くなんて、チリほどにも思ってませんよね。
診察と炭治郎君たちとの訓練くらいでしか接点のない彼に見透かされたから、だろうか。
でも、当たり前でしょう?肉親を殺され、姉を殺され、妹同然に育ててきた子たちも殺された。そんな鬼と仲良くなんて出来るわけがない。すっと心を整理した私が思ったのは。
どこで気づかれたんだろう、ってことくらいだった。
そしてここで気づくべきだったのかもしれない。なぜ、彼に見透かされたことにいらだちを感じたのか、と。
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上弦の肆、上弦の伍が討伐され、鬼の出現が止んだ。そして始められた柱稽古。私は稽古をつけずに薬の研究を行うことになっており、その研究のため、■を受け入れる準備をしていた時に、唐突に彼がやって来た。
呼び出してもいないのに来るなんて珍しい。相談したいことがある、そう言われれば断ることまではできなかった。まさか、まさかだった。あんなことを言われるなんて。
好きです。俺と結婚してください。
思わず「へ↓ぁ↑?」なんて声が漏れたのは仕方ないだろう。いきなり結婚なのっ!?っていうかお付き合いだとかもっと事前にお互いを知っていかないといけないよね?えっ?結婚?本当に?じゃあこの屋敷に一緒に住むの?お布団買わなきゃ、ってか本当に私に言ってる?蜜璃ちゃんじゃなくて私?まぁ確かに私だって綺麗だと思うけど今言うことじゃないよね?年齢だって私より下だしもっとちゃんと大きくなってからじゃないの?家に入るってどんな感じなんだろう。子供は何人ほしいかな……。はっ、そういうこともするんだよね……。「こんなこと言われたの初めてで……」
でも、あの鬼を殺さずに家になんて入れない。
急に言ったんだから黙ってしまったのは悪くない。色々考えて、思わず殺意を放ってしまったことも私が悪いんじゃない。でも彼はそう受け取らなかったのか、返事は全部終わってから聞かせてほしい、と。なんとなく、もうすぐ大きな戦いが始まると思ったので、心残りを作りたかったんです、と。
こほん、と咳払いした間に精神を立て直した私は、じゃあ最後まで生き延びてくださいね、と返した。
そして、口を噤んでしまう。言う必要があるのか。あの鬼は強い。姉さんも殺されてしまったから。でもあの鬼を倒せないのに鬼舞辻無惨には届かないだろう。そして鬼舞辻無惨に届かなければ返事ができない。だから、伝えたんだ。あの鬼のことを。
漫画とアニメしか見てない……上に流し見なので難しい。