転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件 作:友(ユウ)
新たにユウヤを仲間に加え、訓練に精を出す武達。
訓練も半年を超え、かなり体力や身体能力が上がってきている。
そんな中、
「ジェイ、少し良いかしら?」
武達の訓練を眺めていた俺に、レモンが話しかけてきた。
尚、その両隣りにはメイドさん型のWシリーズが控えている。
「どうかしたのか?」
とりあえず聞き返すと、
「あなたに頼まれてた、彼らの機体を決める為に特性を調査しててわかったことなんだけど………どうやら武と純夏の2人には『念動力』の資質があるみたいなの」
「念動力だって!?」
その言葉に俺は驚く。
「ええ。特に純夏の方は、あのクスハ・ミズハに匹敵するかもしれない潜在能力があるわ」
「マジか…………」
予想外の事に俺は頭を悩ませる。
「そうなると、流石に宝の持ち腐れにさせるのも何だからなぁ……………」
「悪いけど、私は念動力については専門じゃないわ。まあ、データはあるからT-Linkシステムを組む事ぐらいは出来るけど…………」
レモンがそう言う。
「再現できそうな機体の中で、念動力が使えそうな機体は?」
「グルンガスト参式かヒュッケバインMk-Ⅲと言った所かしら?」
「なるほど…………一先ず両方とも建造に入ってくれ。どちらの機体も念動力が無くても動かせるようにすることは可能だろうから、無駄にはならないはずだ」
「了解よ」
平然と返事をするレモンだが、グルンガスト参式もヒュッケバインMk-Ⅲも相当な高性能機だから、今建造中の4機も含めて、結構な負担になると思うんだが。
「心配しなくても、カーペンターズとハロが居るから負担はかなり軽減されているわ。マキナやレイナも居ることだしね。彼女達が仲間になってくれたのは大助かりよ」
俺の心を読んだかのようにそう言うレモン。
「………悪いが頼む。それから、いつもありがとう」
「別に。私も結構楽しくやらせてもらってるから、礼を言われる事じゃないわ」
レモンはそう言うと立ち去って行った。
それからまたしばらくが経ち、時折現れるゾンダーを倒しつつ武達の成長を見守っていた。
そして、俺達はタケル達を連れ、オービットベースの格納庫へ来ていた。
格納庫内は、照明が落とされているので真っ暗だったが、
「これが、お前達の機体だ」
俺はその言葉と共に照明の電源を入れた。
「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」
照明の光に8人は思わず目を庇ったが、徐々に慣れていき、腕を退かすと、彼らの目の前に7機の人型機動兵器が存在していた。
「これがお前達の機体だ。先ず、一番左にあるのが冥夜の機体、量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ改だ。汎用性の高いタイプNに日本刀型のシシオウブレードを装備したものだ」
「ゲシュペンスト………」
冥夜が青い機体を見上げる。
俺はその横にある2機の赤い機体に視線を移し、
「その横にあるのがビルトビルガーLタイプとビルトファルケンLタイプ。この2機はセットで動くことを前提とされた機体で、ビルトビルガーは近接格闘戦に優え、ビルトファルケンは射撃に特化した機体だ。それぞれ慧と千鶴に任せようと思っている」
「ビルトビルガー…………いいね」
「ビルトファルケン………これが、私の機体………」
更に次の機体に視線を移す。
「その横にあるのが量産型アシュセイヴァー狙撃戦仕様。壬姫の狙撃能力を生かす為にスナイパーライフルを装備させ、機体も狙撃用に調整してある」
「わ、私の機体………!」
更にその横に視線を移し、
「更にランドグリーズ・レイブンだ。火力が高く、後方からの制圧に向いた機体だ。まあ武装も多いからパイロットの判断力が求められる機体だが………こいつは美琴用と考えている」
「これが僕の機体………結構ゴツイね」
そしてその横にある紺色の機体に目を移すと、
「そしてヒュッケバインMk-Ⅲ。重力制御システムであるグラビコン・システムを搭載し、重力兵装が使える機体だ。当然こいつには高い技量が求められるから、お前達の中では操縦技術が最も高いユウヤに任せようと思う」
「ヒュッケバイン………俺の機体か………」
俺は最後の機体に目を移す。
今までの機体は約21m前後と、この世界の戦術機に比べれば比較的
大型ではあったが、次の機体は約60mと更に3倍近い大きさを誇っていた。
「で、最後が武と純夏の機体。グルンガスト参式だ」
「……で、でけぇ…………」
「ふわ~……おっきい~~~」
呆けた声を漏らす2人。
「こいつは他のメンバーの機体であるパーソナルトルーパーとは違い、特機と呼ばれる分類に入るロボットだ」
「特機?」
「ま、言い換えればスーパーロボットってヤツだ」
「スーパーロボット………何かカッコいい!」
純夏が興奮した声を上げる。
「機動力と運動性こそパーソナルトルーパーに劣るが、そのパワーと耐久力は比較にならない。キングジェイダーやガオガイガー以外の勇者ロボとなら張り合えるだろう。更にコイツはGラプターと呼ばれる戦闘機と、Gバイソンと呼ばれるドリル戦車に分離が出来る。戦況によって使い分けてくれ」
「なるほど、戦術の幅が広がりそうだ………!」
武は興奮した面持ちだ。
「と、言う訳でこれからはシミュレーター訓練にも精を出してもらうから覚悟するように」
「「「「「「「「了解!」」」」」」」」
実機を見せられてテンションが上がったのか、全員は元気よく返事をした。
この世界に来て1年近くが経った頃。
この日、日本と国連にとって命運を分ける大規模な反攻作戦、『明星作戦』が開始された。
横浜ハイヴの殲滅と本州島奪還が優先戦略目的の、この世界の運命の大きなターニングポイントだ。
「ッ……………!」
その様子を、もどかしい様子でメインオーダールームのモニターで見ている武達。
俺はそれを見て、
「………………そろそろお前達も、実戦訓練に出ても良い頃だろう」
「「「「「「「ッ!?」」」」」」」
その言葉に、武達が一斉に振り向く。
「先に言っておくが、G弾の発射を止めることは出来ない。あれは世界の運命の大きな転換期だ。それを止めてしまえば、この世界に何が起きるか分からない。だから出来ることは、現地で戦う戦術機部隊の援護と、G弾に巻き込まれる者を減らす為に、周囲に呼び掛ける事位だ」
「ジェイさん………!」
「このまま黙って見ているのも、もどかしいのだろう?」
俺の言葉に武達は笑みを浮かべ、
「「「「「「「はい!」」」」」」」
一斉に走り出し、格納庫へ向かった。
「マクロス・ブレイバーに機体を搭載後、発進。横浜沖に着水後、実戦訓練を開始する!」
一応建前とは言え、そう宣言した。
【Side 三人称】
横浜。
武達の故郷であるその街は、現在BETAの巣でもあるハイヴのモニュメントが聳え立つBETAの支配地域となっていた。
太平洋側と日本海側からの艦砲交差射撃による後続の寸断に始まった明星作戦(オペレーション・ルシファー)は、文字通りの激戦であった。
何機もの戦術機が破壊され、何人もの兵士達が死んでゆく。
それでも帝国軍を始めとした連合軍は、BETAに支配された横浜を取り戻そうと必死に戦っていた。
ハイヴに直接攻撃する部隊から少し離れた多摩川防衛線。
前線が撃ち漏らしたBETAを東進させないための部隊だが、そこにいつだったかと同じように山吹色の瑞鶴の姿があった。
乗っている衛士も唯依である。
前線が奮戦しているお陰で、防衛戦まで辿り着くBETAは少数で、時折散発的に戦闘が発生するぐらいだ。
「ッ………!」
唯依はその事にもどかしさも感じていた。
前線では多くの衛士達が血を流しているのに、自分達はこんな安全な場所で何をやっているのかと。
だが、
『また来たぞ! 各機、戦闘準備!』
隊長からの報告に、唯依は気を引き締める。
むかってくるBETAは要撃級と戦車級の混成で数十体ほどの群れだ
『今度も数は大したことは無い。良く引き付けてから狙え! 無駄玉を撃つなよ!』
隊長からの指示に、唯依を含めた戦術機部隊は突撃砲を構えながらよく狙う。
「……………ん?」
そんな時、唯依は向かってくるBETAの群れの中に、今までと違う鈍い輝きを放つ個体が居るのに気付いた。
(何だ………?)
唯依は疑問に思ったが、
『各機、攻撃開始!』
隊長からの攻撃命令が来たので、その通り引き金を引く。
放たれる無数の弾丸が、BETAの群れを蹂躙していく。
一通り掃討し終えると、
『各機! 掃討の確認を怠るなよ!』
隊長からの指示で、唯依は倒したBETAの残骸を見た。
先ほど見た鈍い輝きが気になったのだ。
すると、死んだBETAの残骸を押し退ける様に動く影があった。
「ッ! 隊長! まだ生きているBETAが!」
唯依は即座に報告する。
『チッ! 討ち漏らしが居たか……!』
隊長機がその影に突撃砲を向け、引き金を引く。
36mmの弾丸が複数発射され、その影へと向かった。
誰もが飛び散る血と肉片を想像していたが、
――ガギギギンッ!
甲高い音を立ててその銃弾が全て弾かれた。
『なっ!? 何だと!?』
その影が前に進み出てその姿が露になると、そこには鈍く光る身体を持った要撃級………
いや、要撃級の形をした機械の姿がそこにあった。
『な、何だコイツは!? 新種のBETAなのか!?』
隊長機は驚きながらも再び36mm突撃砲を発射する。
しかし、先程と同じく全て弾かれた。
『何っ!? ならば120mmで………!』
隊長機は弾丸を切り替え120mm砲を発射する。
その威力は突撃級の甲殻にも角度が良ければ効果が見込めるほどの威力なのだが、
――ガギンッ!
多少仰け反ったようだが、真正面から受けたにも関わらず、120mmの弾丸は弾かれていた。
『くっ! このぉっ!』
隊長機は近接用長刀を退くと、
『死ねぇ!!』
その鋼鉄の要撃級に飛び掛かり、折り下ろした。
だが、
――ガキィィィィィン!
再び甲高い音を立てて弾かれる長刀。
『馬鹿なっ!?』
長刀が弾かれた事で大きく体勢が崩れる隊長機。
その時鋼鉄の要撃級がその前腕を振り上げ、音もなく振り下ろした。
本来要撃級の前腕を喰らえば、戦術機が砕かれるか押しつぶされるかだが、どちらにせよ大きな音が発生するはずだった。
だが、今は何も音がしなかった。
その理由は……………
唯依達の目の前で鋼鉄の要撃級が前腕を振り下ろした軌跡に沿って隊長機に線が入る。
そして、ゆっくりとズレたかと思うと、上半身が崩れ落ちて残った下半身から血ともオイルともとれる液体が噴き出した。
『『『「ッ!?」』』』
その光景に絶句する唯依達。
鋼鉄の要撃級の前腕は、打撃ではなく、鋭いブレードになっていたのだ。
『う、うわぁああああああああああっ!?』
唯依の仲間の1人が叫びながら突撃砲を乱射する。
しかし、その全ては弾かれている。
鋼鉄の要撃級は全ての弾丸を弾きながら突き進むと、その戦術機に一閃。
容易く切断され、爆発した。
「ッ! 各機! 火力を集中させろ!」
『『りょ、了解!』』
唯依が咄嗟に残った仲間に指示を出す。
3機の瑞鶴からの36mmと120mmの弾丸に、鋼鉄のBETAは足を止められる。
「くぅぅ……! これだけの火力を集中して、足止めが精一杯とは………!」
唯依は、何とかして打開策を見つけようとした。
だが次の瞬間、閃光が走ったかと思うと、仲間の1機が爆発する。
「な、何がッ!?」
唯依が咄嗟に振り向いたが、弾幕が薄くなったことで鋼鉄のBETAは再び前進を始める。
そして次の瞬間、蠍のような形の要撃級の尾のような部分………
本来はレーダーのような役割を果たす感覚器であるが、その部分が光ったかと思うと、再び閃光が走り、僚機が貫かれる。
「今のはレーザー!? そんなっ……!?」
唯依は思わず驚愕の声を漏らすが、帝国軍人として退くわけには行かない。
「くぉおおおおおっ!!」
攻撃を加え続ける唯依だが、その前進を止めることは叶わなかった。
通常の要撃級よりも俊敏な動きで唯依の瑞鶴の元まで辿り着くと、その前腕を振り上げた。
「ッ!?」
唯依は咄嗟に目を瞑ってしまった。
一瞬後には自分の命は刈り取られる。
そんな想像をしてしまう唯依。
だが、いつまで経っても衝撃は来なかった。
それとも既に自分は死んでしまったのかと、唯依は恐る恐る目を開けた。
そこには、紺色の大きな機動兵器の姿があった。
「なっ………!?」
驚愕の声を漏らす唯依だったが、巨大な刃が唯依の瑞鶴のすぐ横に突き刺さった。
それは、鋼鉄の要撃級の前腕だった。
見れば、鋼鉄の要撃級の前腕の片方が奇麗に切断されている。
そして、その紺色の機体の手には、紫の輝きを放つ光剣が握られていた。
すると、その刃が消え、その柄を腰の後ろのリアスカート内へ納める。
そして、背中にマウントしていた大きなライフルを持って鋼鉄のBETAへ向けると、輝く弾丸が放たれ鋼鉄のBETAを貫通。
直後に爆発して粉々になった。
その紺色の機体は一度唯依の瑞鶴に振り返る。
「あ………あ…………」
唯依はその強さに圧倒されるばかりで声にならない。
すると、その機体は唯依に背を向けると、そのまま横浜ハイヴの方へ向かって飛び去った。
その後には、ポカンと呆けている唯依だけが残された。
ハイヴへ立ち向かう戦術機部隊。
その1つに不知火で構成された帝国軍の戦術機部隊があった。
その部隊の隊長の名は沙霧 直哉。
慧との関わりが深い人物である。
置手紙を残して突如失踪した慧の行方を追っていたが手がかりすらつかめず今日という日を迎えている。
そして、彼らの部隊もまた鋼鉄のBETAと交戦していた。
彼らが遭遇したのは2体。
1体は要撃級の形をしたもの。
そしてもう1体は突撃級の形をした鋼鉄のBETAだった。
突撃級の形をした鋼鉄のBETAは突撃のスピードが目測で2倍ほどのスピードになっており非常に苦戦していた。
沙霧の部隊は精鋭ともいえる部隊なのでまだ死者は居ないが、攻撃が通用しない現在ジリ貧なのは当然であった。
「くっ! 一体何なんだコイツは!?」
『沙霧中尉!』
「駒木少尉! こやつは得体がしれん! 一度下がって体勢を立て直せ!」
『し、しかし………ッ! 沙霧中尉!』
「ッ!」
駒木の言葉に沙霧がハッとなった時には、鋼鉄の突撃級が目前に迫っていた。
(ここまでか………彩峰中将、申し訳ありません…………慧………君だけはどうか無事で………)
そう心の中で呟いた。
その瞬間、鋼鉄の突撃級の側面に、赤い突風が飛び込んできた。
その赤い突風の正体は、赤い装甲を持った人型機動兵器だった。
その右腕を振り被ると、そこに装備された巨大な大鋏が展開。
右腕を繰り出すと共に鋼鉄の突撃級を挟み込んだ。
その勢いのまま鋼鉄の突撃級を地面に叩きつけて引きずり、止まったところでそのまま鋏が閉じられて鋼鉄の突撃級が分断。
爆発して粉々になった。
「な…………!?」
その光景に沙霧は呆然となったが、
「ッ!? 後ろだっ!!」
沙霧は思わず叫んだ。
その赤い機体の後ろから鋼鉄の要撃級が迫っていたからだ。
鋼鉄の要撃級はその赤い機体に向かって前腕を振り上げ、飛来した閃光に撃ち抜かれて爆発した。
「ッ!? 今のはレーザー!? だが………」
沙霧が振り向けば、低空のホバリングで宙に浮くもう1機の赤い機体が手に持った大型ライフルを構えていた。
「ッ………あの機体の仲間か………?」
すると、沙霧を助けた機体も宙に浮く。
「ッ!? 待ってくれ! 君達は一体……!」
沙霧が呼び止めようとしたがその2機はそのまま飛び去って行った。
また別の戦場でも鋼鉄の要撃級が猛威を振るっていた。
数は5体。
その相手は日本の有する最新鋭戦術機『武御雷』。
しかし、その武御雷ですら、鋼鉄のBETAには太刀打ち出来なかった。
その中の赤の武御雷。
「はぁ……はぁ………この武御雷ですら、傷1つ付けれんとは………!」
それに乗る女性衛士、月読 真那。
冥夜の警護に当たっていた人物だが、その冥夜が置手紙を残して失踪。
置手紙には要約すれば『3年で戻る。心配するな』という趣旨が書かれており、冥夜の筆跡であることも証明されたが、警護対象が行方不明となればその責任は当然真那に向く。
この明星作戦に参加している事も、その責任を取る為の罰の1つなのであった。
「ここが………私の死に場所か…………だが、冥夜様の警護の役目を果たせなかった私には、相応しいのかもしれんな」
真那は天を仰ぎながら懺悔するように呟くと、覚悟を決めて前を見据える。
だがその時、真那の武御雷の前に青い機体が降り立った。
その姿は、真那の知るどのような戦術機にも思い当たるものは無かった。
すると、向かってくる5体の鋼鉄の要撃級に対し、その機体は腰に携えた刀の柄を掴むと、抜刀の構えを取った。
向かってくる鋼鉄の要撃級に対し、青い機体は動かない。
だが次の瞬間、青い機体は剣を抜き放った体勢で5体の鋼鉄の要撃級の後ろに移動していた。
そして、ゆっくりと刀を鞘に納め、鍔を鳴らした瞬間、5体の鋼鉄の要撃級は分断され、直後に爆発した。
真那は思わず言葉を失った。
だがそれは、その機体が鋼鉄のBETAを倒したからではない。
(い、今の太刀筋は………まさか!)
真那がそう思った時、その青い機体は真那の武御雷を一瞥すると、背を向ける。
「お、お待ちください!」
真那が呼びかけるが、その青い機体はその場を飛び去った。
「冥夜様!!」
真那は思わずその名を叫んだ。
しかし、その機体は止まらずに飛び去って行ってしまった。
「冥夜様…………」
真那はその名をもう一度呟く。
確かな確信をもって…………
また別の場所。
そこでは、2機の国連軍カラーの不知火が戦闘を行っていた。
その相手は鋼鉄の要塞級。
他の鋼鉄のBETAと同じく通常火器は全く通用せず、仲間が決死の覚悟で行った自爆特攻すらも表面に僅かな損傷を与えただけで大したダメージにはならなかった。
残った2機の不知火の衛士。
1人は平 慎二。
もう1人は鳴海 孝之。
2人は半年ほど前に正規兵となった新米衛士だったが、この明星作戦に参加していた。
「畜生………何だこの化け物は…………」
孝之が思わず呟く。
「あ~くそっ………! ここまでかよ………!」
慎二が諦めたように軽口をたたく。
「諦めるな……! って言いたいところだけど、こりゃ駄目かな………」
孝之も強気な発言をしたが、やはり弱気な言葉が出てしまう。
「孝之………それで結局お前はどっちが好きなんだ?」
「は? 何だよこんな時に!?」
「こんな時だからだよ。死ぬ前に聞かせろよ。水月と涼宮さんのどっちが好きなんだ?」
「それは…………」
孝之が何か言いかけた時、眼の前に鋼鉄の要塞級が迫った。
「ッ!」
(遥………水月…………ごめん………!)
孝之は心の中で2人に謝った。
その瞬間、
――ドゴォォォンッ!
凄まじい打撃音と共に、目の前の鋼鉄の要塞級が殴り倒された。
比喩ではなく、言葉通り巨大な拳で殴られたのだ。
巨大な腕が飛んできて。
「な、なんだぁっ!?」
驚愕の声を上げる慎二。
孝之が振り向けば、そこには飛んできた巨大な腕が戻って行き、ガチンと元の場所にはまり込んだ腕と、その腕の持ち主だろう巨大なオレンジ色のロボットが存在していた。
「巨大な………戦術機………?」
その巨大なロボットは、鋼鉄の要塞級を見据える。
その鋼鉄の要塞級は先ほどの拳の跡がくっきりと残っており、その威力の凄まじさを感じさせた。
片やBETA最大の大きさの66m。
片や謎の巨大ロボット60m。
大きさではほぼ互角だった。
だが、巨大ロボットが背中のドリルを腕に装着すると、ドリルが高速回転を始める。
周囲の大気を巻き込む程の高速回転だ。
巨大ロボットは、そのまま鋼鉄の要塞級に踏み込む。
すると、鋼鉄の要塞級は尾の鋭い衝角を伸ばしてきた。
だが、その衝角は巨大ロボットの装甲の前に刺さることなく弾かれる。
そしてそのまま巨大ロボットは、ドリルを装着した右腕を繰り出し、鋼鉄の要塞級のどてっぱらに巨大な風穴を開けた。
巨大ロボットは、鋼鉄の要塞級からドリルをゆっくりと引き抜くと、鋼鉄の要塞級は爆発。
粉々に砕け散った。
「す、スゲェ………」
「こいつは………一体………?」
慎二と孝之は、呆然と呟くしか出来なかった。
そしてまた別の場所。
ハイヴを攻める部隊の中では最もハイヴに近いところまで攻めることに成功していた部隊。
帝国軍の武御雷を中心とした部隊であり、その部隊を率いるのは、山吹色の武御雷を駆る篁 祐唯。
唯依の父親であった。
しかし、その部隊もまた多くの鋼鉄のBETAに囲まれていた。
「くっ……ここまで来てこれほどの新種のBETAに出くわすとは………」
祐唯は悔しそうに呟く。
現在持てる手は全て出し尽くした。
それでも多少のダメージを与えるのが精一杯であり、1体も倒すことが出来ないでいた。
祐唯は目の前の横浜ハイヴを見上げる。
ここまで来て、撤退するしかない事に唇を噛んだ。
その時、一筋の閃光が飛来し、鋼鉄の要撃級を貫き、爆発させる。
「な、何だ!?」
祐唯が声を上げると、再び閃光が飛来。
次々と正確無比に鋼鉄のBETAを撃ち抜いていく。
「これはレーザー!? いや、しかし……!」
その時、ドンッ!という砲撃音と共に砲弾が飛来。
着弾と共に周囲に居た鋼鉄のBETAが吹き飛ぶ。
その発射元は、彼らが居た場所から数㎞離れた場所にある丘の上。
そこに、スナイパーライフルを構えた機体と、茶色の装甲に重武装の機体があった。
戸惑っている祐唯に鋼鉄の要撃級が迫ってくる。
「ッ!」
祐唯は咄嗟に長刀を構えたが、そこに高速回転しながら飛来する物体があった。
それは、光の刃を出す巨大な手裏剣のような武器で、祐唯の武御雷に迫っていた鋼鉄の要撃級を切り裂いて爆発させる。
「ッ!?」
祐唯がそちらを振り向くと、紺色の機体が手裏剣のような武器をキャッチし、左腕に収めた所だった。
「あ、あの機体は………?」
祐唯が呟くと、その紺色の機体は手に持ったライフルから光弾を放ち、周囲の鋼鉄のBETAを次々と撃ち抜いて行った。
「何という威力。我々が歯が立たなかった新種を容易く……!」
祐唯が驚いていると、彼らを巨大な影が覆った。
祐唯が見上げると、そこには白亜の戦艦が空を飛んでいる光景だった。
「せ、戦艦が空を飛んでいる………?」
祐唯が信じられないような声で呟く。
すると、
『こちらはガッツィー・ジェネレーション・ガード所属、ジェイアーク! この戦場に居る全ての部隊に告げる! 米国が対ハイヴの新兵器を使用する情報を得た! 全ての部隊は直ちにハイヴから離れろ! 繰り返す! 戦場の全ての部隊は可能な限りハイヴから離れろ!』
全周波数でそう呼びかけられた。
「何だと!? それが本当なら………! 総員! 直ちに退却だ!」
『ですが中佐!?』
「命令だ! お前達を無駄死にさせるわけにはいかん!」
『りょ、了解!』
その言葉で祐唯の部隊が撤退を開始。
他の部隊も、チラホラと撤退する様子が見受けられた。
その時、通信に突如として英語で警告が来た。
『【――即時撤退せよ。我々は新型の対ハイヴ兵器の使用を決定した。繰り返す。即時撤退せよ】』
それは事前通告無しの一方的な警告であり宣言であった。
「総員退避ィィィィィィッ!!」
祐唯は全力で叫ぶ。
すると、2発のミサイルが飛来。
直後に黒い爆発が横浜ハイヴを包み込んだ。
その内部にあったモニュメントが消滅していく。
その範囲はまだ膨れ上がっており、祐唯の部隊に迫っていた。
その時、祐唯の武御雷の推進装置に異常が起こり、爆発を起こした。
「ッ!? 戦闘の影響か!?」
『ッ! 篁中佐!』
「止まるな! 行け!!」
『し、しかし………!』
「命令だ!!」
『りょ、了解………!』
推進装置に異常が起こったことで、武御雷の速度が落ちて徐々に黒い爆発の範囲が迫ってきていた。
「これは………無理か………!?」
このままではおそらく巻き込まれる。
衛士としての勘と技術者としての知識がそう言っている。
「唯依…………」
この戦場に居るはずの娘の無事を祈り、祐唯は目を閉じた。
だが、ガシンッと機体に震動が走る。
「ッ!?」
祐唯が目を開けば、先程の紺色の機体が祐唯の武御雷を抱えていた。
「止めろ! 君まで巻き込まれる! 戦術機2機分を支える推力など…………!」
祐唯がそう言いかけた時、グンッと機体が加速するのを感じた。
紺色の機体は武御雷を抱えたまま、戦術機が出せる飛行速度を遥かに超えた速度で飛行していた。
先に行かせた部下の機体にあっという間に追いつき、追い抜いた所でその機体は速度を緩めた。
見れば黒い爆発は拡大を止め、収縮し始めていた。
それを確認すると、紺色の機体は祐唯の武御雷を地面に降ろした。
「………君は一体…………?」
祐唯はそう問いかけるが、紺色の機体は背を向けた。
「ッ! 待ってくれ!!」
祐唯は強い口調で呼び止める。
その紺色の機体は一度振り向く。
すると、武御雷のコクピットのハッチが開くと祐唯が姿を現し、
「我々を救ってくれて、感謝する!」
敬礼して礼を述べた。
その紺色の機体は少し祐唯を見つめた後、背を向けて飛び立った。
白亜の戦艦と、他の6機の機体と共に。
祐唯はその姿が見えなくなるまで紺色の機体を見つめていた。
言いようの無い、胸のざわつきを感じながら。
はい、マブラヴオルタネイティヴAnother編第4話です。
なんだかんだで半日で完成させました。
武達の機体の決定と明星作戦での実機訓練。
序に何故か現れた謎の鋼鉄のBETAとの戦いでした。
鋼鉄のBETAの正体はいったいなんなんだ~?
まあ決まってますがね。
そんで色々と死ぬはずだった方々をシレっと助けてました。
まあ、唯依の父親はG弾に巻き込まれて死亡したという情報があったので、おそらく明星作戦には参加してたんでしょう。
唯依も多摩川の防衛線に居たという情報はあったので。
で、結局ユウヤの機体はヒュッケバインMk-Ⅲとしました。
自分も好きな機体なので問題ありません。
まあ、ユウヤは念動力無いのでAMパーツは無し。
最強武器はグラビトンライフルとなります。
それでは、次回をお楽しみに。