転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件 作:友(ユウ)
【Side ユウヤ】
アラスカ・ユーコン基地。
青空と雲がちょうどいい塩梅で望める今日、俺はこの地に足を踏み入れた。
「ではユウヤ隊員。お気をつけて」
俺が近くまで乗ってきたパトカー、ボルフォッグがそう声を掛けてくる。
「ああ、サンキューなボルフォッグ」
「いえ、これも任務です。私はこれより基地付近に潜伏し、有事の際に備えます。私の力が必要な時には、いつでもお声掛けを」
「ああ。その時は頼むな」
俺がそう言うと、ボルフォッグは
「さて、行くか」
俺は少し距離がある基地の検問所に向かって歩き出した。
「本日からこの基地の所属になるユウヤ・ブリッジス少尉だ。確認してくれ」
俺は受付の人物に書類を渡しながらそう言う。
内心少し緊張していた。
俺が軍人だった事は事実なのだが、この書類や経歴は殆どが偽造書類だ。
ルリやクリス達の能力は認めているが、バレないか冷や冷やものだった。
だが、
「確認が取れました! ようこそユーコン基地へ! ブリッジス少尉!」
その相手はあっさりとOKをだし、敬礼と共に歓迎の言葉を口にする。
「ッ………これから世話になる」
俺は僅かに呆気に取られるも答礼を返す。
ここまで疑いを持たれなかったことに驚いた。
「ところで………」
相手は言葉を続ける。
その事に僅かに警戒したが、
「何故ブリッジス少尉は徒歩でここまで?」
なんて事は無い質問だった。
「いや、思った以上に早く着いてしまってな。散歩がてら周辺を見て回っていた所だ」
俺は咄嗟に思いついた言い訳を口にする。
「そうでしたか。要らぬ詮索をいたしました」
「いや………」
何とか怪しまれなかったか?
「では、改めてようこそ!」
ゲートが解放され、俺は基地に足を踏み入れた。
ふと見れば、輸送機と思わしき飛行機が滑走路に着陸しようとしている。
すると、上空を突如として2機の戦術機が横切った。
「ッ………! あれは………!」
その2機は、F-15とSu-37。
どちらも疑似GNドライブを装備したものだ。
逃げるF-15をSu-37が追い立てる形となっている。
疑似GNドライブを使用しているお陰で、以前の戦術機とは比べ物にならない機動を見せてはいる。
だが、
「……………どちらも推進器の延長線としか考えてないな………」
2人の動きはあくまで噴射機構の操縦が元となっている。
だが、疑似GNドライブ………GN粒子の飛行は斥力によるものだ。
噴射機構とは少々勝手が違う。
どちらもその性能を使いこなせてるとは言えないだろう。
「………っておい! そっちには!」
その2機は、明らかに着陸態勢に入ろうとしていた輸送機の方へ向かっている。
下手をすればぶつかる可能性もあったが、疑似GNドライブの性能もあり、激突は避けられたようだ。
疑似GNドライブ搭載機じゃなかったら激突していたかもしれない。
結局、F-15はSu-37に模擬弾をしこたま食らわせられ、滑走路に墜落した。
まあ、疑似GNドライブを使ったEカーボン製ならあの程度の衝撃はなんてことは無いだろう。
俺はそのまま歩いて行き、集合場所へ向かっていた。
しばらく歩いていると、後ろから軍車両が俺を追い抜いていく。
と、思ったら突如として急停止した。
すると、その軍車両に乗っていた金髪の男が転がり落ちるかのように降りたかと思うと、一目散に俺に向かって駆け寄ってきた。
って、あいつはまさか………!
「ユウヤ! ユウヤなのか!?」
その金髪の男は必死の形相で俺に掴みかかってきた。
「ヴィンセント…………か?」
俺はその男に見覚えがあった。
ヴィンセント・ローウェル。
米軍時代に付き合いのあったメカニックだ。
「ユウヤ…………! 生きてたかこの野郎!」
ヴィンセントは涙を浮かべながら震えた声でそう言う。
「悪い………心配かけたな」
「全くだぜ! 生きてたなら連絡の一つぐらいしろってんだ!!」
涙を浮かべながら怒った声を上げるヴィンセント。
「悪いな。あの事件の拍子で少しの間記憶を失ってたみたいでな。記憶を取り戻した時にはある部隊に保護されてて………その部隊が所謂機密性の高い特殊部隊だったもんだから、碌に連絡を入れることも出来なかったんだ」
「ッ………! もういいさ! お前が生きててくれて嬉しいぜ! ユウヤ!」
「…………ああ」
変わらず俺を心配してくれていた友人に、俺は嬉しく思い、笑みを浮かべた。
「………………ユウヤ、何かお前変わったか?」
ヴィンセントが俺を見て不思議そうな顔をする。
「かもな。2年も経ってるんだ。少しは変わりもするさ」
「そうか…………所で、お前もここに居るって事は…………」
「この基地で行われるXFJ計画に参加することになっている」
「そうか! 俺も専属メカニックとして呼ばれたんだ! またよろしく頼むぜ!」
「ああ!」
またコイツと一緒に任務に就けるという事に、俺は喜びを覚えていた。
整備班であるヴィンセントと分かれ、俺は指定された部屋に来ていた。
そこには既に3人の部隊員が来ていた。
1人は褐色肌の背の低い女。
2人目は金髪でスタイルの良い白人の女。
3人目は黒髪の軽そうな男。
俺は空いている席に座る。
会話は無かったが、さして時間を空けずに2人の人物が入ってきた。
褐色肌の男と、まだ若い日本人の女性だった。
俺達は敬礼して迎えると、
「まずは新隊員の紹介だ。ユウヤ・ブリッジス少尉。出身はアメリカ陸軍。他はスウェーデン出身のステラ・ブレーメル少尉。イタリア軍からヴァレリオ・ジアコーザ少尉。ネパール軍のタリサ・マナンダル少尉。そしてこちらが、日本帝国軍から派遣された、ユイ・タカムラ中尉」
「ッ!」
タカムラだって!?
そのファミリーネームに驚愕する。
その名は、ジェイが言っていた俺の父親のファミリーネームと同じだった。
「最後に私が、トルコ軍、イブラヒム・ドーゥル。階級は中尉。このアルゴス小隊の隊長を務めている」
イブラヒム隊長が自己紹介を終えると、
「さて、我が隊はXFJ計画を進めることになる。この計画は………」
隊長が計画の内容を話し出そうとしたところで、突如として扉が開き、
「XFJ計画は、私達ボーニング社の技術によって日本のタイプ94を強化改修することを主目的としまして、我が社で………」
突然入ってきた白髪で眼鏡をかけた男が喋り出した。
「ウォッホン!」
イブラヒム隊長の咳払いで我に返った男は、
「これは失礼をいたしました」
「こちらは、ボーニング社から技術顧問として来られているフランク・ハイネマン氏だ」
「皆さんよろしく」
ハイネマンという男は笑みを浮かべて挨拶をした。
「さて、本日の演習は、そのXFJ計画の隊員に親睦を深めてもらう」
「中尉殿。ビルフォートへの潜入ミッションでありますか?」
ジアコーザ少尉が軽口をたたくと、
「いや、もっといいものだ。ケース47だ」
隊長がそう言う。
要は戦術機同士の模擬戦だ。
想定戦域の説明が終わると、
「それでは編成を発表する。A分隊、ジアコーザ少尉、マナンダル少尉。B分隊、ブレーメル少尉、ブリッジス少尉」
俺が組むのはブレーメル少尉か………
俺は目の前に居るブレーメル少尉の様子を伺う。
「ブリッジス少尉には、私に代わって一番機に乗ってもらう」
隊長の機体は、F-15・ACTV アクティヴ・イーグルだったか………
俺が知ってるのは疑似GNドライブ搭載前のものだから当てにはならないな。
だが、
「ちょ、ちょっとぉ!」
マナンダル少尉が文句ありげに声を上げた。
「なんだね? マナンダル少尉」
それでも隊長は落ち着いた様子で聞き返すと、
「あっ、し、失礼しました! どうしてあいつが隊長機に!?」
佇まいを直しながら謝罪するも、俺に向かって指差しながら疑問の声を上げる。
「ブリッジス少尉は、XFJ計画のメインパイロットだ」
隊長が淡々と事実を告げると、
「そんなぁ………くっ!」
納得いかない声を上げ、俺は睨みつけられる。
まあ、ぽっと出の新人にメインパイロットの座を搔っ攫われれば、文句の一つや二つ言いたくもなるだろう。
まあ、そう言う相手は実力を見せるのが一番だろう。
「では、1325に各員は完全装備にて搭乗機にて待機。以上だ。では解散!」
俺は準備を整えてハンガーの前に来ると、
「アメリカ軍のトップエリートが、何だってこんな所に来たんだ?」
ジアコーザ少尉が話しかけてきた。
「色々あったのさ」
流石にGGG………ジェイの指示だという事は言えないからそう言ってはぐらかす。
「色々………ね………女か?」
何故コイツはそう言う方向に話を持って行こうとするのか?
その時、
「私は認めないからな!!」
怒声を上げながらマナンダル少尉がズカズカと歩み寄ってきた。
「命令だか何だか知らないけど、お前が隊長機に乗るなんて私は絶対に認めないからな!!」
俺の目の前でそう言い放つマナンダル少尉。
「おいおい、落ち着けよ?」
ジアコーザ少尉がマナンダル少尉を宥めようとするが、
「VGは黙ってろ!」
一言で封殺される。
「大体お前が………!」
「なら、お前が一番機に乗ればいい」
「はぁ!? 何でお前の指図なんか…………って、ええっ!?」
俺の言葉にマナンダル少尉は素っ頓狂な声を上げる。
「ッ………! ハンデかなんかのつもりか!? 馬鹿にすんな!!」
乗っても乗らなくても怒るとは、一体どうしろと?
「そんなつもりはない。そもそも、GNドライブを使っている今、ストライクイーグルとアクティヴの性能差なんて誤差レベルだ。ハンデにもなりゃしない。それなら、お互いに乗り慣れた機体の方が実力を発揮できる………だろ? もっとも、俺はGNドライブ搭載型のストライクイーグルに乗ったことは無いから、あまり関係は無いが」
俺はもっともらしい建前を口にする。
「ッ……………! いいだろう、そこまで言うなら換えてやる」
どうでもいいが、何でこいつはいちいち偉そうなんだ?
「ああ」
俺はそれだけ言って背を向けた。
ストライクイーグルの筐体で調整を行っていると、
「おいユウヤ! 勝手に機体変えるんじゃねえよ! 整備する方の身にもなって………」
「ステータスの補正誤差コンマ01以内………流石だな、ヴィンセント」
友人の変わらない腕の高さに安堵する。
「お……おお………これだけの調整が出来るのは俺だけだろうさ!」
チョロい所も変わらないな。
「行ってくるぜ」
「おお! 蹴散らしてこーい!」
俺はストライクイーグルを起動させ、カタパルトで他のメンバーと共に演習場へと飛び立った。
『CPよりアルゴス小隊各機、状況を開始してください』
演習開始の合図が来る。
当然ながらGN粒子の影響でレーダーは使い物にならない。
よって、索敵は目視に頼らざるを得ない。
俺は相手も慎重になると思っていたのだが、いきなりロックオン警告が響いた。
「ッ!」
咄嗟にその場から機体を移動させると、直後にその場にペイント弾が降り注いだ。
『始めようぜ! トップガン!』
ジアコーザ少尉のストライクイーグルが突撃砲を連射しながら向かって来た。
「誰がトップガンだ?」
反撃の為にこちらも撃ち返すが当たる気配は無い。
『どうした? アメリカ軍の射撃技術は世界一じゃなかったか?』
こちらを挑発するような言動を取る。
が、ニール・ディランディやエクセレン・ブロウニング。
それにこの世界出身である珠瀬 壬姫の射撃技術を知った今、その響きは最早虚しいだけだ。
『おっと? 機体がふらついでるぜ? GNドライブの余りの凄さに振り回されてるのか!?』
ジアコーザ少尉は調子に乗ったようにそう言いながら攻撃を加えてくる。
俺はその攻撃を紙一重で避けることが出来たが、反論する気にはなれない。
何故なら、俺が今感じているのは、
――遅ぇっ!
この一言に尽きた。
機体の反応速度が遅い。
ロックオンも遅い。
機体速度も遅い。
何もかもが遅かった。
ヒュッケバインMk-Ⅲと比べるべくも無いが、GN-Xと比べても尚遅い。
いや、GN-Xにすら機体性能が追い付いていない事は聞いていたが、精々8割程度だと思っていた。
しかし、実際に動かしてみると、いいとこ5割だ。
GNドライブの機体に慣れる為に、ニールのアドバイスを受けながらGN-Xのシミュレーターで訓練を行っていたが、それでも尚イメージと差があったため、その修正に苦労してる。
「お前が前衛とは意外だったぜ。てっきりマナンダル少尉が来ると思ってたからな」
俺はそう言い返すと、ビルの影に隠れてジアコーザ少尉をやり過ごすと、背後から攻撃を仕掛けようとした。
『戦場でぼさっとしてんじゃねえよ田舎モン!』
だが、更に背後からマナンダル少尉のアクティヴが現れ、俺に攻撃を仕掛けてきた。
「チッ!」
俺は攻撃を止めて回避に徹する。
『VG! コイツは私の獲物だ! 引っ込んでな!』
マナンダル少尉は執拗に俺を狙い、攻撃を仕掛けてくる。
まあ、攻撃は単調だから回避するのは難しくはない。
『はっ! 逃げるのだけはトップエリートだな!』
こいつらはいちいち挑発しないと気が済まないのか?
マナンダル少尉の挑発を聞き流しつつ、GN-Xとストライクイーグルの性能と操縦のズレを修正していく。
と、同時に俺は2人を誘い出していた。
『追い込むよVG!』
『了解!』
2機をブレーメル少尉の射撃ライン上に誘い出した瞬間、狙撃が来る。
『うおっ!?』
だが、その弾丸は外れてしまった。
「ッ……………」
俺は小さく舌打ちをする。
今の絶好のタイミングで外してしまうとは…………
壬姫でも1機は墜とせるタイミングだったんだがな。
内心僅かに落胆を覚えた。
だが、
『あっぶねー! いいタイミングで来やがる!』
ジアコーザ少尉はブレーメル少尉を褒める発言をした。
……………俺がおかしいのか?
ニールやエクセレンなら2機とも仕留められるのが当然なんだが………
そう思いながらもマナンダル少尉の攻撃を避ける。
マナンダル少尉は我が強く頭に血が上ると周りが見えなくなるタイプだな。
ちょっと攪乱するだけでジアコーザ少尉との連携の雑さが露になる。
『ッ! 邪魔だVG! ステラを抑えろ! あいつは私がやる!!』
『はいはい。仰せのままに』
ジアコーザ少尉はマナンダル少尉の性格を熟知しているのか、特に言い返しもせずに指示に従ってブレーメル少尉の方へ向かった。
「……………そろそろいいか」
漸く機体の動きとイメージのズレが修正出来てきたところだ。
俺は振り返ってマナンダル少尉のアクティヴと向かい合う。
「待たせたなマナンダル少尉。望み通り1対1だ!」
『ッ! 近接戦でカタ付けてやる!』
アクティヴが背中からGN粒子を放出し、突進してくる。
「甘い………!」
俺はその場に浮遊した状態から、滑る様に横に移動し、突進して来たアクティヴの側面を取った。
そのまま突撃砲を発射し、アクティヴの突撃砲に当てて使用不能にする。
『何っ!? 何だよ今の動き!?』
マナンダル少尉は使えなくなった突撃砲を捨てると、短刀を装備した。
『よくもやってくれたな! このド田舎野郎!!』
感情のままに突進してくるマナンダル少尉。
だが、キョウスケの突進に比べれば欠伸が出る。
俺は突撃砲を手放す。
『観念したか! ド田舎野郎!!』
短刀を持つ右腕を繰り出してくるマナンダル少尉。
「…………フッ」
俺は薄く笑みを浮かべると、繰り出された右腕を躱すと同時に掴み取り、一本背負いの要領で投げ飛ばした。
『はぁああああああああああああああっ!? なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』
「GNドライブ搭載機は、以前の戦術機より遥かに頑丈だからな。多少の無茶も効くんだよ! 序にOSもより高性能だから、こういう事も出来るんだ!」
投げ飛ばされた勢いのまま地面に激突したアクティヴ。
俺は模擬短刀を取り出すと、その胴体に突き立て、撃破判定を与えた。
「ちくしょー! 何なんだよさっきのは!?」
マナンダル少尉が、負けた事が悔しかったのかハンガーに戻ってきた途端に叫ぶ。
「しかもなんだよ!? あの回避行動は!? 気持ちワルイ!」
「気持ち悪いとか言うなよ。GNドライブの飛行は斥力によるものだから、ジェット噴射とは違った動きが出来るんだ。さっきのはただ機体の向きを変えないまま横に移動しただけだ」
俺は先ほどの動きを説明する。
「そんな事できたのかよ…………」
知らなかったのかがっくりと項垂れる。
「まあ、これから仲間になるんだから、やり方は教えてやるよ」
「本当だな!」
「あ、ああ………」
余りの剣幕に若干引いてしまった。
「まあ、兎に角改めて、アルゴス小隊へようこそ」
ジアコーザ少尉が恭しくお辞儀をしながら歓迎の言葉を口にした。
「ああ。これからよろしく頼む」
俺は、新しい仲間達に向かってそう言った。
はい、マブラヴオルタネイティヴAnother編第6話です。
トータルイクリプス編に突入しました。
ヴィンセントとの再会と最初の模擬戦でしたが、原作と違ってユウヤが圧勝しました。
まあ、機体性能の低さに若干苦労しましたが………
あと、今の所の戦術機の外観は、元となった戦術機の背中に疑似GNドライブがくっ付いてるだけです。
それでは次回をお楽しみに。