転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件 作:友(ユウ)
【Side ユウヤ】
ユーコン基地に来て数日。
俺は今、日本の高等練習機、『吹雪』に乗って慣熟訓練を行っていた。
俺がテストパイロットを務める不知火弐型が組み上がるまでの間、同じ日本の戦術機である吹雪で慣れておけという事だ。
俺はその時の場面を思い出していた。
「練習機?」
「そうだ。貴様がテストを行う不知火が組み上がるまでの間、97式戦闘歩行練習機、吹雪に乗って訓練を行ってもらう」
篁中尉に実機の前でそう言われる。
「了解しました」
俺はそう答えるが、
「………………」
篁中尉は訝しむような眼で俺を見てきた。
「何か?」
「いや、経歴を見るに貴様は随分とエリート街道を通ってきたようだからな、今更練習機に乗せるとはふざけるなとでも小言を言われると思ってただけだ」
「ッ…………」
俺を何だと思ってるんだコイツは…………
いや、GGGに会う前の俺なら言ってもおかしくは無いが…………
「アメリカと日本の設計思想に違いがあることは理解しているつもりです。少なくとも、最前線の日本と後方のアメリカ、その差は大きいと思っています。なので、日本の練習機に乗るのは正しい判断だと思います」
俺はそう答える。
「そうか………そう言えば貴様は2年ほど前から消息を絶っていたな? それ以前は随分と同僚と揉めることが多かったようだが、その2年で何かあったのか?」
「それは機密に関する事なのでお答えできかねます」
便利だな機密って言葉。
「ただ、自分が未熟者のガキだったと自覚するには、十分な時間だったと言っておきます」
「…………そうか」
俺の答えに、篁中尉は僅かに微笑んだ。
そう言う理由で俺は今演習場の空を飛んでいる。
「なるほど………アメリカ製に比べれば随分とピーキーで反応も過敏だ………アメリカの戦術機に慣れた奴なら苦労するだろうが…………俺にとっちゃこっちの方がやりやすい!」
ストライクイーグルじゃ反応速度が遅すぎてイライラしていたからな。
この吹雪の反応速度はGN-Xの7割って所か。
未熟な衛士なら振り回されるだけだろうが、一定以上の実力を持つ衛士ならこちらの方がより良い戦果が出せるだろう。
つーか、これで練習機って、日本は随分と衛士の育成に力を入れているようだな………
こんなの、アメリカの訓練生に使わさたらぶん回されるだけだぞ。
まあ、この辺りもアメリカと日本の設計思想の違いだろう。
アメリカはどちらかと言えば万人に扱え、それぞれが一定の戦果を出せる機体。
日本は衛士に実力を要求するが、少ないコストでより高い戦果を求める機体と言った所か。
それに、ピーキーとはいえ、キョウスケのアルトアイゼン・リーゼを見た後じゃ、どんな機体でも堅実に見えてしまう。
GGGで訓練を始めた最初の頃は俺にもプライドがあったから、随分と嚙みついた。
そこでシミュレーターとはいえ、キョウスケとの1対1を行った。
俺の機体は量産型ゲシュペンストMk-Ⅱでキョウスケ機体はアルトアイゼン・リーゼ。
尚、結果は開始1秒で俺の負け。
始まって気付いたときにはバンカーで串刺しにされていた。
俺は機体性能の差で負けたんだと言い訳を言ったが、それならとキョウスケはアルトアイゼン・リーゼの前身であるアルトアイゼンのデータを使ってシミュレーターを行ってみろと言われた。
その結果は………………シミュレーターで吐いたのは初めてだった。
その後もGGGに元からいたメンバーには全員にボッコボコにされ、この世界出身という7人の年下である少年少女達には得意分野だけとはいえ敗北を喫した。
そんな経緯もあり、俺のプライドは粉々にされ、一から鍛え直すことにしたのだ。
お陰で随分と腕が上がったと自負できるけどな。
話を戻すが、この世界の基準でどれだけピーキーだろうと、俺が扱えるレベルであれば十分実用的だと感じるという事だ。
それでも未だにアルトアイゼン・リーゼだけは扱いきれる気がしない。
それだけキョウスケの腕がずば抜けている証拠だろう。
つーか、やっぱりGGGの機体の中でもアルトアイゼン・リーゼだけは頭一つ飛び抜けて頭おかしいんじゃねえのと言いたくなる。
元々はゲシュペンストMk-Ⅲとして作られたらしいが、技術的にも戦術的にも時代に逆行的で古臭い事から『
しかもそれを改修によって短所を改善するのではなく、長所を突き詰める方向に持って行ったのが更に頭おかしい。
プラン自体はキョウスケが出したものらしいが、それを更に開発者の意向で過激にしたものだという。
ジェイやルネ曰く『マ改造』らしい。
マジで頭おかしいんじゃねえの?
そんな事を考えつつ、訓練時間の終わりが見えてきたので、俺は基地に帰還するのだった。
滑走路に着陸すると、ヴィンセントが出迎えてくれた。
飲み物を投げ渡される。
「どうだ? 日本の戦術機は?」
ヴィンセントが問いかけてくる。
「ストライクイーグルに比べれば随分とピーキーな機体だ。一定以上の実力が無いと、扱い辛いと感じるだろうな」
俺は素直な感想を述べる。
「ほう? そう言うユウヤ自身は如何なんだ?」
「先日の模擬戦で使ったストライクイーグルよりかはこっちの方がいい。こっちの方が俺のイメージに近い動きをしてくれる」
まあ、まだまだ遅いけどな。
「ほう? あのユウヤが日本の戦術機を随分と褒めるじゃないか」
ヴィンセントが意外そうな声を出す。
「別に。昔の事を忘れたわけじゃないが、日本全てを恨むのは筋違いだと気付いただけだ」
俺はそう返す。
「随分と丸くなったじゃないか! けど、俺は今のユウヤの方がいいと思うぜ」
ヴィンセントは笑みを浮かべる。
「明日はソ連との合同演習だ。気合入れていこうぜ!」
最後にヴィンセントはそう言った。
翌日。
演習を行う場所に向かって、アルゴス小隊の仲間と共に向かっていた。
「練習機の調子はどうだい? トップガン」
マナンダル少尉が皮肉を効かせながら問いかけてくる。
「ああ。問題無い」
その皮肉をスルーし、俺は答える。
「おい見ろよ! スカーレットツインのお出ましだ!」
ジアコーザ少尉がそう言うと、2機のソ連軍の戦術機を映像が捉えた。
「何ぃッ!? あんにゃろう! 見てやがれぇ!」
それを聞いたマナンダル少尉が猛る。
その理由は、俺が先日基地に着いたときに見た2機の戦術機の墜落した方にマナンダル少尉が乗っており、追いかけ回していた方はそのスカーレットツインと呼ばれる衛士だったらしい。
「落ち着いてタリサ。模擬空戦じゃないのよ。あくまで対BETAを想定した合同演習なんだから、胸を借りるつもりでね?」
「どうせ借りたくなるほど小さな胸ですよーだ!」
ブレーメル少尉の言葉にマナンダル少尉が自嘲気味に叫んだ。
それにしてもスカーレットツイン………
一体どういう連中なんだ?
登録衛士のライブラリーでも閲覧不可らしい。
俺達は演習開始位置に着地する。
今回の演習は、実機にシミュレーターで映し出したBETAを相手に戦う実戦に近い訓練だ。
シミュレーターが起動し、BETAの姿が映し出されていく。
その中に、チラホラとZETAの姿もあった。
全体的な数は、BETAとの戦闘では平均と言った所か。
「ビビってねえかトップガン? この程度の数アジアじゃ普通だよ~!」
「ヨーロッパもな」
流石に最前線の出身者だけあって離れしているのか、全員落ち着いている。
GGGに参加する前の俺だったら、この数にビビってただろうな。
つくづく米軍の認識は甘いと言わざるを得ない。
『では、状況を開始せよ!』
訓練開始の合図が来る。
「さあ、気合入れていこうか!」
「おうよ~!」
「さて、まずどのフォーメーションで行く?」
3人は気負った様子もなく前に出る。
俺も3人に並び、
「アルゴス1より各機、アローヘッド・ワンで接敵前進!」
疑似GNドライブとビーム兵器が搭載された事で、BETAへの戦術も大きく変わった。
ビームマシンガンですら突撃級を真正面撃ち抜くことができ、ビームライフルなら要塞級すら一撃で貫くことが可能になった。
この装備が全ての戦術機に行き渡れば、BETAからユーラシアを奪還する事も夢では無いだろう。
とはいえ、全体から見ればまだ1%未満だ。
まだまだ先は長いだろう。
俺はビームマシンガンでBETAを殲滅しながら他のメンバーの様子を伺う。
他のメンバーも順調にBETAを殲滅しているように見えるが、
「アルゴス2! まだジェット噴射で動く癖が抜けていないぞ! アルゴス3! 同じ敵に無駄玉を撃ち過ぎだ! アルゴス4! 通常のBETAにビームライフルは過剰威力だ! 要塞級かZE………
俺は気になった所を指摘していく。
因みに
俺としてはZETAの方が呼びやすいんだがな。
「くぅぅっ!」
「へいへい………」
「あら、手厳しいわね」
それぞれが返事を返す。
俺からしてみれば、GNドライブの力を使いこなすには程遠い。
と、その時、咄嗟に俺は回避行動を取ると、すぐ横を閃光が通り過ぎた要撃級タイプのZETA………機械要撃級のビーム攻撃だ。
俺はビームマシンガンで反撃するが、表面に損傷を与えるものの撃破には至らない。
「だがっ!」
足を止めた隙にビームライフルに持ち変え、狙い撃った。
機械要撃級を貫き、爆発させる。
すると、その爆煙を突っ切って機械突撃級が現れ、俺に向かって突っ込んでくる。
「遅い………!」
俺はGNドライブの力で横に滑る様に移動すると、その射線軸上から逃れる。
更に俺はビームサーベルを抜くと、刃を発生させてその射線軸上に添えた。
機械突撃級は自らの勢いでビームサーベルに突っ込み、両断されて爆発する。
「ヒュ~! やるぅ!」
ジアコーザ少尉が口笛を吹きながら俺を称賛する声を上げる。
「ぐぬぬ………」
マナンダル少尉は悔しそうに呻き、
「圧倒的戦果ね」
ブレーメル少尉は、他のメンバーと比べて倍以上の俺のキルレートを見て感心した声を漏らした。
ふと俺は合同で演習に参加しているソ連軍の戦術機を見た。
スカーレットツインと呼ばれる衛士が乗るチェルミナートルがBETAを屠っていた。
「なるほど………言うだけあって腕はいい………が、まだ甘いな」
俺はビームライフルを構え、放った。
その閃光はチェルミナートルのすぐ横を通り過ぎ、チェルミナートルを狙っていた機械要撃級に着弾。
爆発させる。
恐らく機械要撃級との対戦経験が少なかったのだろう。
光線級と違って地上に居ても普通に狙われるからな。
まあ、GNフィールドがあるから一撃で墜とされることは無いだろうが。
チェルミナートルは驚いたようにこちらを振り向く。
が、俺は直ぐに切り替えて戦闘を続行した。
演習を終えてハンガーに戻ってくると、
「お疲れ、ユウヤ」
ヴィンセントが出迎えた。
「ああ………」
「それにしてもすげえなユウヤ。あのスカーレットツインを押さえてキルレートトップだぜ。友人として鼻が高いよ」
「別に………他のメンバーが機体特性………というより、GNドライブの特性を理解しきれていないだけだ。ちゃんと理解して操縦すれば、あの位は誰でも出来る」
「謙遜なんてらしくねえな。もっと誇ってもいいんじゃないか?」
「……………上には上が居ることを知った今、この程度じゃ誇れねえよ…………」
GGGのメンバーの中じゃ、俺だって下から数えた方が早い位だからな。
「殊勝な事だな。ブリッジス少尉」
篁中尉が現れ、声を掛けてきた。
「お疲れ様です! 篁中尉!」
俺は敬礼して迎える。
「ご苦労。楽にしていい」
篁中尉も答礼を返し、その言葉で敬礼を止める。
「何か至らぬことでもありましたでしょうか?」
「いや、その逆だ。貴様はよくやってくれている。訓練とはいえ、吹雪であれだけの戦果をたたき出すなど並大抵の事では無い。新型の不知火でも期待している。それを伝えにな」
「はっ! ありがとうございます!」
俺は一応軍人らしく返し、敬礼をしながら答えた。
「邪魔をしたな。では、失礼する」
篁中尉は踵を返す。
「………………」
俺はその背中を見つめ、
「………篁中尉!」
思わず呼び止めてしまった。
「………ッ! 何だ?」
振り返った彼女に、俺はファミリーネームの事を尋ねようとしたが、ヴィンセントが居たことに気付き、言葉を飲み込む。
「あ、いえ……何でもありません。呼び止めてしまい申し訳ありませんでした」
「? そうか」
篁中尉は再び踵を返して立ち去った。
「おい、どうしたんだよ? いきなり呼び止めるなんて」
「何でもねえよ」
俺ははぐらかした。
もう一度、立ち去るその背を見つめながら。
俺は基地の敷地内を気晴らしに歩いていた。
「どうすっかな………?」
俺は篁中尉に俺の父親と関係があるのかを聞きたかった。
だが、いきなりプライベートな事に踏み入っていいのだろうかという思いもある。
その時、冷たい風が吹いてきて思わず身を震わせた。
すると、
「…………あっ! あの時助けてくれた人だ!」
幼い声が聞こえて来た。
「ッ?」
振り向けば、長く綺麗な銀髪をした十代前半と思われる少女。
何でこんな少女がこんな所にと疑問に思ったが、
「助けてくれてありがとう! 嬉しかったよ!」
突然お礼を言われて俺は困惑する。
「何の事だ?」
思い当たる事の無かった俺は疑問の声を零すが、
「お礼にミーシャに会わせてあげる!」
突然俺の腕を取った。
「ミーシャ?」
「そう! クリスカとミーシャ! いつも一緒に居るの!」
「それって、家族ってことか?」
俺が聞き返すと、彼女は少し悩んだ表情をして、
「う~ん………あっ、そう! 家族!」
その子は純粋な笑みを浮かべで肯定した。
「行こっ! ユウヤ!」
「あっ! おいっ! ちょっと!」
いきなり腕を引っ張り出し、俺を連れて走り出した。
つーか、俺って名前名乗ったっけ?
彼女に連れてこられた場所は、見るからに機密性が高そうな場所だった。
「ユウヤ! 早く!」
少し心配になったが、あんな純粋な笑みを浮かべる女の子が入れる場所なら大丈夫だろうと思っていた。
そのまま彼女に連れられて奥へ奥へと進んでいくと、厳重そうな扉の前に来て、彼女がパネルを操作すると扉が開く。
「はい! 開きました!」
その扉の中は、2つだけベッドの置かれた簡素な部屋。
まるで独房のようなイメージを感じた。
「ここは………?」
「居たっ! ミーシャ!」
その子は片方のベッドに駆け寄ると、
「ほら!」
クマのぬいぐるみを抱えて俺に見せた。
「なるほど、そいつがミーシャね」
その年相応らしい無邪気な笑みと共に紹介されたクマのぬいぐるみを見て、警戒していた事が馬鹿らしくなった。
「ほらミーシャ。ユウヤにごあいさつしなさい」
俺は彼女の前まで歩み寄ると、
「よろしくミーシャ」
彼女に付き合ってぬいぐるみに挨拶をする。
その時、突如として照明が付き、
「動くな!!」
別の女の声が聞こえた。
「ッ!?」
同時に金属が擦れる音も聞こえたので、おそらく銃を向けられているのだろう。
俺は咄嗟に手を挙げて振り向く。
「落ち着いてくれ……! 俺は……!」
「動くと撃つ!」
俺の視線の先に現れたのは、銀髪をセミロングにした美しい女だった。
「ッ! お前は………ユウヤ・ブリッジス!? ッ!」
一瞬驚いたようだが、その女は再び銃を向ける。
「クリスカ! 駄目っ!」
少女が俺を庇うように前に立った。
その後、ソ連の兵士に連行された俺は独房に入れられ、取り調べと称して自白剤を打たれそうになるも、篁中尉の取り計らいで何とか釈放された。
それからまた数日後。
組み上がった不知火弐型のシミュレーターを早速行っていた。
吹雪よりも更にピーキーな機体だが、俺にとってはまだまだ物足りない位だ。
「まだまだ! こんなもんかよ不知火弐型!」
ハイヴ内を想定したシミュレーターで、目標ポイントまで到達する内容だが、俺は機体をどんどん加速させる。
『チェックポイント3通過。マイナス12.52』
想定タイムをどんどん更新させる。
まあ、想定タイムは疑似GNドライブの特性を考えていないようだからな。
1度のターンで0.5~1秒近くは更新できる。
「次は
戦車級が屯する場所だが、いちいち相手にする気は無い。
最短コースを塞ぐ敵だけを迎撃して一気に抜ける。
この辺りの戦術は、実際にハイヴ突入経験のある武達から聞いている。
ハイヴ内ではいちいちBETAを相手していたらキリがないとな。
「うぉおおおおおおおおっ!!」
最後の直線で更に加速する。
結果は想定タイムのマイナス19.58。
「チッ! マイナス20は行きたかったんだがな」
俺は筐体から出ながら舌打ちしつつそう零す。
「おいおい。あれだけ想定タイムを更新しておきながらまだ不満なのかよ?」
ヴィンセントが声を掛けてくる。
「想定タイムはGNドライブの特性を考慮していない。最大はマイナス25近くまではタイムを縮められたはずだ」
おそらく武ならもっといいタイムをたたき出しただろう。
エクセレンやアルトは言わずもがなだが。
「へえへえ。志の高いこって………」
ヴィンセントは半ば呆れた仕草を見せた。
すると、
「ブリッジス少尉」
篁中尉が現れた。
俺達は敬礼すると、
「ブリッジス少尉。実際に不知火弐型に乗ってみた感想は如何だ?」
篁中尉の質問に、
「そうだな………ピーキーさは吹雪より更に上。腕の立つ衛士ならともかく、少なくとも平均レベルの衛士じゃ乗りこなせないな。こいつを量産するなら、同時に乗りこなせる衛士も育てなきゃいけない。現状じゃエース向けの専用機と言った所だ」
「そうか………貴重な意見を感謝する」
篁中尉はそう言うと、踵を返して立ち去る。
俺は、その背中を見つめていた。
「………おや? ユウヤ君? もしや唯依姫の事………」
ヴィンセントが邪推してそんな事をいう。
「アホ。そんなんじゃねえよ」
ヴィンセントの言葉を受け流して、もう一度その背に目を向けた。
今日の演習内容はドローンを標的にした射撃テストだ。
まあ、今の俺には大したことじゃない。
ただ飛んでるだけのドローンに当てるだけだ。
この程度の標的なら俺でも百発百中させることは出来る。
すると、
『コマンドポストよりアルゴス1。ドローン6制御不能。当空域を離れE-92に接近中。速やかに確保せよ』
「アルゴス1了解」
ドローンの処分指示が来たのでそちらに向かう。
E-92はソ連軍が使用していた筈。
ソ連と考えて、あの2人を思い出した。
それぞれの呼び名から、小さい方がイーニァ。
もう1人がクリスカという名前であることは分かっている。
すると、ドローンが確認できた。
俺は武装を模擬弾からビームライフルに切り替えると、ドローンを狙い撃った。
ドローンが赤い閃光に貫かれて爆発する。
と同時に別方向からも赤い閃光がドローンが居た場所を通過した。
「ん?」
俺はビームが飛んできた方を見ると、あのスカーレットツインが乗っているチェルミナートルが居た。
『また貴様か』
聞き覚えのある声が通信から聞こえてくる。
『下がれ! ここより先は我々の演習空域だ。接近すれば撃つ!』
チェルミナートルがビームライフルをこちらに向ける。
「おい待て! こっちは故障した標的機の始末に………!」
俺が事情を説明しようとした時、
『ユウヤ?』
更に聞き覚えのある声が聞こえて来た。
『やっぱりユウヤだ!』
「イーニァか!?」
まさか、あんな純粋な少女が戦術機に!?
『ユウヤ、あの悪い子を追いかけてきたの?』
『イーニァ、演習中よ。そこまでにしなさい』
『でもクリスカ………』
イーニァは何か言いたげだったが、
『イーダル1了解。イーニァ』
何やら通信が入ったようでクリスカが話を打ち切る。
『うん! それじゃあまたね! ユウヤ!』
イーニァの声と共に、チェルミナートルが背を向ける。
だが、俺は一言言っておかなければならなかった。
『おい。これは警告だ。ビーム兵器を人に向けるんじゃねえ。いつか後悔するぞ』
『フン』
クリスカの鼻で笑う声と共に、チェルミナートルは飛び去った。
それから少しして、少し遅めの俺の歓迎会が行われた。
「ようこそ」
「アラスカへ」
「「「「チュース!」」」」
乾杯をする俺達。
その最中にナタリー・デュクレールというこの店のウェイトレス兼バーテンダーとも顔見知りになった。
何だかんだで、俺を仲間と認めてくれている3人に俺は嬉しさを覚えた。
だから俺は、
「タリサ」
「ん?」
「ヴァレリオ」
「お?」
「ブレーメル」
「あら?」
「これからも、よろしく頼む」
俺はそう言って名を呼んだ。
「へへっ」
「フッ」
「何で私だけ名前で呼んでくれないのかしら?」
タリサとヴァレリオは微笑んだが、ブレーメルだけは若干不服そうにそう言った。
「悪い。『ステラ』って名前の知り合いはもういるからな。勘弁してくれ」
「あら? もしかしてユウヤの良い人?」
「そんなんじゃねーよ。それに、そいつには別に恋人がいる」
「あらそうなの」
また残念そうに言うブレーメル。
まあ、その恋人にもう1人恋人がいるとは思うまい。
久々に楽しい時間を過ごすことが出来た俺は、より一層計画に身を入れようと思うのだった。
はい、マブラヴオルタネイティヴAnother編の第7話です。
本日は土曜日の代休という事で更新できました。
原作と違ってユウヤが大暴れです。
そんでクリスカとイーニァに出会いました。
出会いはほぼ原作通り。
それでは次回をお楽しみに。