転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件   作:友(ユウ)

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第8話 父

 

 

 

【Side ユウヤ】

 

 

 

 

 

 

 

俺の歓迎会からまた少し。

俺は一つの決心をした。

そして、今日の予定が全て終わった後、

 

「篁中尉!」

 

俺は篁中尉に声を掛けた。

 

「何だ?」

 

篁中尉は相変わらず凛とした態度で聞き返してくる。

 

「アンタと少し、プライベートで話がしたい」

 

「?」

 

俺の言葉に、篁中尉は意外そうな表情をするのだった。

 

 

 

 

基地内のバーのカウンター席で待ち合わせをして、1人でしばらく飲んでいると、

 

「待たせたか?」

 

空き時間を作ってくれた篁中尉が隣に座る。

 

「いや……………心構えが出来て丁度良かった」

 

俺は息を吐く。

篁中尉も飲み物を注文し、一口飲むと、

 

「それで? プライベートで話をしたいとはどういう事だ?」

 

篁中尉は話の本題を訪ねてきた。

俺も飲み物を一口飲んで一息つくと、

 

「………………『タカムラ』……………」

 

「ん?」

 

「中尉の『タカムラ』というファミリーネームは、日本じゃ珍しいのか?」

 

俺がそう問いかけると、篁中尉は少し考える素振りをして、

 

「そうだな…………『タカムラ』と発音する苗字の家系は、探せばそれなりに居るだろう」

 

「そうか………」

 

そうなると、『タカムラ』という呼び名だけでは、父親を捜すのは難しいか?

 

「だが、私の姓である『篁』と書く『タカムラ』は、由緒正しい武家の家系だ。その篁は私の本家と、幾つかの分家で使われているのみの筈だ……………それがどうかしたのか?」

 

「……………俺がアメリカ人と日本人の間に生まれたハーフだという事は知っての通りだが、俺を育ててくれた母親はアメリカ人だった。だから、父親は日本人という事になる」

 

「そうなるだろうな」

 

「俺は父親が誰かも知らない。俺が物心つく前に離婚したらしい。日本人嫌いのじいさんは、母さんは散々弄ばれて捨てられたと言っていたが……………今まで父親の手掛かりは何もなかったんだが、少し前に信用できる筋から情報が入ったんだ。俺の父親のファミリーネームは『タカムラ』だと……………だから、篁中尉の家系の誰かが、俺の父親と関係があるんじゃないかと思ってな…………」

 

「なるほど…………すまないが私の知る限り、私の家系でアメリカ人と結婚した者は居ない筈だ」

 

「そうか…………」

 

俺は少し落胆する。

 

「……………だ、だが、私の父様ならもしかしたら何か知っているかもしれん。次の報告の時に尋ねてみよう」

 

俺の様子を見て少し焦ったのか、声をどもらせてそう言った。

まあ、可能性は低いだろうが、

 

「頼んでいいか?」

 

「ああ………! それと、お前の母親の名を聞いていいか?」

 

「ミラだ。ミラ・ブリッジス」

 

「ミラ殿だな………! わかった。期待しろとは言えんが………待っていてくれ」

 

「ああ。十分だ」

 

俺は篁中尉に感謝しつつ、残った飲み物に口を付けた。

 

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

唯依が父親であり、上司である篁 祐唯(まさただ)に進捗状況を報告していた。

 

「――――――以上になります」

 

『ご苦労中尉。予想以上に順調なようで何よりだ』

 

「いえ、テストパイロットが優秀なので」

 

『テストパイロット…………そう言えば予定されていた衛士が急に変更され、別の人物になっていたそうだね?』

 

「はい。ですが、彼はよくやってくれています。結果論ですが、テストパイロットが変更されたのは正解でした」

 

『ああ。それはデータが物語ってくれている。それに異論は無いよ』

 

「あっ、所で、そのテストパイロットの事なのですが…………」

 

唯依はユウヤとの約束を思い出し、その事を口にする。

 

『どうかしたのかい?』

 

「その、大した事では無いのですが、そのテストパイロットは日本人とアメリカ人のハーフなのですが、日本人である父親とは物心つく前に別れて顔も覚えていないそうです。ただ、最近父親の姓が『タカムラ』だという情報を得たようで、私に相談して来たのですが…………篁の家系でアメリカ人の女性と結婚した者はおりませんよね?」

 

『…………すまないが私の記憶にも無いな』

 

「そうですか…………」

 

祐唯の言葉を聞いて、少し落胆する唯依。

 

『だが、テストパイロットとして計画の要となっている者の頼みを無下には出来ん。こちらでも少しは調べてみよう。そう言えばテストパイロットの名前すらこちらには回っていないのだが………』

 

「あっ、ユウヤです。ユウヤ・ブリッジス少尉です」

 

『ユウヤ…………ブリッジス…………!?』

 

その名を聞いて、祐唯は一瞬呆けた表情をした。

 

「父様?」

 

『あ、いや、何でもない……………』

 

祐唯は慌てて取り繕うが、

 

「そして、彼の母親の名前ですが………ミラ・ブリッジスと言うそうです」

 

『ミラ……………!?』

 

祐唯は思わずその名を聞いて目を見開いた。

 

「父様? 先程から如何されたのですか?」

 

『………………ッ! すまない。この件に関してはこちらでも調べておく。ユウヤ・ブリッジス少尉のデータも送ってくれ。追って連絡しよう』

 

「はい、よろしくお願いします」

 

すると、通信が切れた。

唯依は、祐唯の様子がおかしかった事を怪訝に思っていた。

 

 

 

 

一方祐唯は通信を終えると、

 

「ミラ……………まさか君は……………」

 

暫くして、ユウヤのデータが届くと、それに目を通し始める。

 

「………………ユウヤ・ブリッジス……………年齢は………………」

 

ユウヤのデータに目を通していると、ある所で目が止まる。

 

「母、ミラ・ブリッジス…………3年前に死亡……………」

 

それを見ると祐唯は椅子の背もたれにもたれ掛かり、天を仰ぎ、目を伏せた。

 

「ミラ………………」

 

その名を呟きながら……………

 

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

【Side ユウヤ】

 

 

 

 

 

 

 

それから約1週間後。

ユーコン基地の滑走路に、1機のシャトルが降り立った。

そのシャトルには、日本の国旗である日の丸が描かれている。

着陸したシャトルにタラップ車が近付き、階段をセットすると、その前に俺や篁中尉を始めとしたアルゴス小隊やXFJ計画に関わる者達が並び、出迎えの準備をする。

すると、シャトルから数名の人物が降りてきた。

先頭を歩く男性は、山吹色の斯衛服に身を包んでいる。

その人物たちが階段を降り切ると、

 

「お待ちしておりました! 篁大佐!」

 

篁中尉が敬礼しながら出迎える。

 

「ご苦労。篁中尉」

 

先頭の男性も答礼して応えた。

にしても、相手も篁って事は………

 

「あれが日本のXFJ計画の総責任者のマサタダ・タカムラ大佐か………唯依姫の親父さんらしいな」

 

隣でヴィンセントが小声で呟いた。

 

「やっぱそうなのか……」

 

ファミリーネームを聞いて、もしやと思っていたが。

すると、篁大佐がこちらに視線を向けると、軽く目を見開いた。

そして、こちらに歩み寄ってきて俺の前で立ち止まると、

 

「君が不知火弐型のテストパイロットか………」

 

「はっ! ユウヤ・ブリッジス少尉であります!」

 

突然話しかけられたが、俺は背筋を伸ばして自分の名を名乗る。

 

「相当腕の立つ衛士だと聞いている。君のお陰で、不知火弐型のテストの日程が随分と前倒しになっているとな」

 

「はっ! 恐縮であります!」

 

「個人的に不知火弐型のテストパイロットである君の話を聞きたい。後で時間を貰えるかな?」

 

「ッ………!? りょ、了解しました!」

 

思いがけない言葉に一瞬どもってしまったが、何とか返事を返した。

 

「楽しみにしている。そして、これからも期待しているよ」

 

篁大佐が俺の肩に手を置きながらそう言った。

 

「はっ!」

 

俺が敬礼して応えると、篁大佐は目を細めて微笑むと、俺の肩から手を離す。

 

「ッ………!?」

 

その瞬間、小さな痛みが走ったが、髪の毛が引っかかったのだろうと思い、さして気にはしなかった。

篁大佐が篁中尉の案内で基地の方へ歩き出すと、篁大佐の傍にお付きの1人が駆け寄り、一言二言言葉を交わすと、お付きの人間は急ぐように先に基地内へ駆け込んでいった。

 

 

 

 

 

その夜、就寝時間まで部屋で時間を潰していると、コンコンと部屋の扉がノックされた。

 

「誰だ?」

 

俺が呼びかけると、

 

「私だ。ブリッジス少尉」

 

篁中尉の声だった。

 

「篁中尉?」

 

俺が扉を開けると、篁中尉が立っている。

 

「どうしたんだ? こんな時間に………」

 

「父様…………篁大佐がお前に話を聞きたいとの仰せだ」

 

「大佐が………?」

 

そう言えば、個人的に話を聞きたいとか言ってたな。

 

「わかった。少し待ってくれ、準備する」

 

俺は手早く上官に会っても失礼のない恰好に着替え、軽く髪型も整えてから篁中尉の案内で篁大佐の部屋へと向かった。

 

「篁大佐、ユウヤ・ブリッジス少尉をお連れしました!」

 

「入りたまえ」

 

篁中尉が声を掛けると、篁大佐の声が聞こえて来た。

 

「失礼します!」

 

篁中尉に続き、俺も部屋に入ると、篁大佐が応接用の机を挟んで向かい合わせになっている椅子の片側に座っていた。

 

「掛けたまえ」

 

俺を促す様に正面の席を指す。

 

「はっ! 失礼します!」

 

一言声を掛けて席に着くと、篁中尉は篁大佐の斜め後方に待機する。

すると、

 

「唯依もこちらに」

 

篁大佐が隣に座るよう促す。

 

「いえ、任務中ですので」

 

篁中尉がそう言って断るが、

 

「唯依………これは大佐ではなく、父としての言葉だ」

 

「………………では、失礼して」

 

篁中尉は渋々といった雰囲気で篁大佐の隣に腰掛けた。

 

「さて、こんな時間に呼び出してすまなかったね?」

 

「いえ、問題ありません。不知火弐型についてのお話でしたね?」

 

俺は呼び出された内容を確認する。

 

「いや、それは建前だ」

 

「建前?」

 

篁大佐の言葉に、俺は思わず聞き返してしまった。

 

「………………………」

 

すると、篁大佐は黙り込む。

いや、何かを言いたげにしているが、どう切り出すべきか迷っている感じか?

すると、部屋の扉が開いた。

 

「失礼します」

 

篁大佐のお付きと思われる人間が入室してくると、篁大佐の後ろに回って何やら小声で耳打ちする。

すると、

 

「……………やはりそうか……………」

 

そう呟いて目を伏せた。

その表情は、後悔や申し訳なさ、自分への情けなさなど、色々な感情が読み取れる。

すると、篁大佐は気を取り直して俺を見据えると、

 

「君には了承を得ずに申し訳ないが、君の毛髪を採取させてもらい、DNA鑑定を行わせてもらった」

 

「ッ!」

 

俺は、出迎えた時に感じた痛みを思い出した。

てっきり髪が引っ掛かっただけかと思っていたが、あの時に毛髪を採取されていたのか。

 

「何故、そんな事を?」

 

俺がそう聞くと、篁大佐は迷う様な仕草をしながらもう一度俺と向き合い、

 

「DNA鑑定の結果、君と私が血縁関係にあることが証明された」

 

驚愕の一言を口にした。

 

「「ッ!?」」

 

その言葉に、俺と同時に篁中尉も目を見開いて驚愕する。

俺は一瞬言葉を失っていたが、

 

「…………………………アンタが………俺の親父だっていうのか…………?」

 

思わず立ち上がりながら、確認の為に問いかけた。

 

「そうなるだろう…………情けない事に、身に覚えもある」

 

篁大佐も立ち上がり、俺と視線を合わせる。

 

「ッ…………!」

 

俺は反射的に拳を握りしめ、

 

「このっ…………クソ親父!!」

 

その頬を思いきり殴りつけた。

 

「ぐっ!?」

 

篁大佐………クソ親父はよろけるが、足を踏ん張って倒れない。

 

「ブリッジス少尉!!」

 

篁中尉が俺を諫めるような声を上げるが、

 

「黙ってろ!! 俺は………もし親父にあったら、絶対にぶん殴ってやるって決めてたんだ!!」

 

「ッ………!?」

 

俺は声を荒げて黙らせる。

すると、

 

「唯依………止めなくていい。彼には、私を殴る権利がある…………そしてブリッジス少尉………いや、ユウヤ…………君にもミラにも大変な苦労をかけた…………申し訳ない…………」

 

親父は深く頭を下げる。

俺はそれを見て、更にカッとなった。

 

「謝るんじゃねえ!!」

 

親父の胸倉を掴んで頭を上げさせる。

 

「ああ………謝るだけでは済まないのは分かっている………だが………」

 

「そうじゃねえ!! 確かに俺も母さんも大変な目にあったさ! 俺が日本人の血を引いてるってだけで、後ろ指を指された事も一度や二度じゃねえ!! けどな! それでも母さんは、俺を生んだことを………アンタと一緒になったことを後悔したなんて口にしたことは事は一度だって無えんだ!!」

 

「ミラが………?」

 

「てめえが謝ったら、そんな母さんの想いを踏みにじることになるだろうが!」

 

「ユウヤ…………」

 

「だから謝るな! 殴ったのは俺の我儘だ!」

 

「……………そうか」

 

親父は何処か嬉し気に呟いた。

俺は胸倉から手を離すと、

 

「けど、これだけは聞かせろ。何で母さんを捨てた? その理由だけは聞きたい」

 

俺がそう聞くと、

 

「………………今更私が何を言っても言い訳になるだろう………自分の都合のいい様に話をでっち上げるかもしれない」

 

それはおそらく、遠回しに言い訳は言わないと言っているのだろう。

だが、

 

「母さんはあんたの事を誠実な人と言っていた。俺はその言葉を信じてアンタの話を聞く」

 

「……………フッ………敵わないな」

 

親父は一度目を伏せて自嘲気味に笑うと、再び俺を見据えた。

 

「わかった…………話そう………」

 

観念したようにそう口にした。

 

「私がミラと出会ったのは、今から25年前…………帝国軍・民間企業合同の戦術機開発・運用技術研修プロジェクト『曙計画』が切っ掛けだ。私は榮二と共に渡米し、そこで計画の協力者であるハイネマンと、その部下であったミラと出会った」

 

「ッ!」

 

母さんが戦術機の開発に関わっていた?

っていうか、ハイネマンってもしかして、XFJ計画にも関わってるあのおっさんか?

 

「ミラは南部の出身で日本人に対する偏見が大きく、最初は誤解から随分と揉めたよ。まあ、私も人の事は言えなかったがね。しかし戦術機の開発の議論を交わす中、私とミラは互いに伝統ある家に生まれたという共通点があることを知ってね、一度相手を理解すれば、打ち解けるのに時間はかからなかったよ………」

 

「…………………」

 

俺は黙って話を聞く。

 

「不謹慎かもしれないが、あの時は楽しかったよ。私とハイネマンとミラで議論を戦わせ、榮二がそれを戦術機で実証する。榮二には随分文句をいわれたよ」

 

その表情は、本当に楽しかったと懐かしんでいた。

俺は、そんな表情が出来るなら、何で母さんを捨てたんだと内心イラつきもあったが、

 

「だが…………計画が始まって2年が過ぎた頃、ミラは突然姿を消した」

 

「えっ………?」

 

親父の言葉に俺は思わず声を漏らした。

 

「理由は分からなかった。ミラは郵送で辞表を送り付けると、職場に戻ることは無かった…………」

 

「そんな…………」

 

「皆驚いていた。私ももちろん驚いた。彼女は優秀で将来も嘱望されていた………そんな彼女が、何故行方を晦ますようなことをしたのか………もちろん戦術機開発に関わっていた彼女は機密などにも触れている。辞めるにしても多くの手続きが必要だった。米軍にCIA、FBI………あらゆる機関が彼女の行方を追っていた。もちろん私も個人的に資金を投入し、ミラの行方を捜したが…………彼女が見つかることは無かった」

 

「……………………」

 

余りの衝撃の事実に俺は何も言えない。

俺はずっと母さんが親父に捨てられたのだとばかり思っていた。

だけど………本当は母さんが自分から行方を晦ました………?

 

「やがて『曙計画』のスケジュールが終盤に差し掛かり、私に帰国命令が下った。帰国後も人を使ってミラを探そうとしたが………その事が周囲にばれ、政争に巻き込まれてしまい、以後、彼女を探す術は無くなってしまった…………」

 

親父は一度大きく息を吐くと、

 

「私は何故ミラが姿を消したのかずっと分からなかった…………だが、君の存在が全てを物語ってくれた。ミラが行方を晦ませたのはおそらく…………」

 

「君を身ごもったからだよ。ユウヤ・ブリッジス」

 

そう言いながら部屋に入ってきたのはハイネマンだった。

 

「ハイネマン!?」

 

親父が驚愕の声を上げる。

 

「知ってしまったんだね、マサタダ………」

 

ハイネマンは残念そうに目を伏せる。

 

「君は知っていたのか!? ミラの事を!?」

 

「彼女の行方が分かったのは、君が帰国した後の事だがね」

 

親父の言葉にハイネマンは肯定の意を返す。

 

「何故教えてくれなかった!?」

 

親父がハイネマンに詰め寄る。

 

「彼女がそれを望まなかったからね。何故彼女が行方を晦ませたのか、今でも理解できない程愚かでは無いだろう?」

 

「ッ…………………!」

 

その言葉に、親父は悔しそうに歯を食いしばり、拳を握りしめる。

 

「譜代とはいえ、主家は将軍選定に多大な影響力を持つ五摂家、崇宰。代々御用兵器の開発と生産に携わり、帝都城参内も許されるほどの名門。米国は労せずして、将軍家に近しい人物の人質を手に入れたような物だからね。そんなおいしい話をCIAの連中が見逃すはずが無い。だから彼女は身を隠した」

 

母さんが行方を晦ましたのは、親父に迷惑を掛けないため………

 

「では…………本当にブリッジス少尉は父様の…………?」

 

篁中尉が驚愕の表情でそう呟くと、

 

「息子だよ。間違いなくね。君にとっては異母兄妹という事になる」

 

ハイネマンがそう告げる。

 

「私と………ブリッジス少尉が………兄妹…………」

 

その事実に篁中尉も驚きを隠せないようだ。

そう言う俺も、言葉が出てこない。

 

「ッ…………私は………何と情けない男なのだ……………私の軽率な行動が、ミラの未来を奪い、更にミラに守られてばかり…………私は生まれた息子の事すら知らず、のうのうと……………はは…………これではミラに愛想をつかされても仕方がない………」

 

親父は涙を浮かべながら自嘲気味に呟く。

 

「……………確かに君は情けない男だ。私を超える戦術機開発者になるかもしれなかった彼女の未来を奪い、更に幸せにしなかった。君に憤りを感じないと言えば噓になる…………だがな、彼女が君に愛想をつかす事などは無かったと言っておく」

 

「何を根拠に………!」

 

「彼女を見つけた時の私も混乱していてね、随分と酷い事を言ってしまった。その子を捨てて自分の人生をやり直せとね。協力はいくらでもするから、と」

 

「…………………………」

 

その言葉に親父は何も言わない。

言う資格も無いと思っているのだろう。

 

「だが彼女は強情だった。彼女は何としてもマサタダとの間の子を……ユウヤ・ブリッジスを立派に育て上げると宣言した」

 

母さんがそんな事を…………

 

「私には、その選択を愚かだと言い切ることは出来なかった」

 

すると、ハイネマンは1枚のメモ用紙を取り出した。

 

「これを見たまえ」

 

それを、この場の全員が見える様に机に置くと、そこにはこう書かれていた。

『祐弥・ブリッジス』と。

 

「ッ…………!」

 

「私達はこうなってしまったから………せめてこの子には希望を託して………ユウヤ・ブリッジス………………祐弥・ブリッジス。これが君が母親から与えられた、正式な名前だよ。願いを込めた大切な名前だとミラは言っていた。『祐』の文字には人を助けるという意味があり、『弥』には端から端まで、広きに渡ってという意味があり………合わせるとあまねくをたすく………多くの人々を助けるという意味だ、と。つまり『国家の壁にとらわれず、多くの人々を助けるような人になって欲しい』そのような願いが込められている…………」

 

「それが…………俺の名前の意味……………」

 

俺の名前に、そんな意味が込められていたなんて知らなかった………

 

「ミラはそう語っていた。『祐唯』の名前から一文字貰って名付けた、とね………」

 

その言葉を聞いた瞬間、親父は膝を着いた。

 

「くっ………ううっ………!」

 

親父も限界だったのだろう。

涙を溢れさせている。

 

「ミラ…………」

 

親父は母さんの名を呟き、目を伏せたのだった。

 

 

 

 

 

衝撃の事実が明らかになって全員が落ち着くまでにしばらくの時間を要した。

 

「で? 結局俺が親父の息子って事は、黙っといた方がいいのか?」

 

俺は確認を取る。

 

「ああ。すまないがもう少しだけ黙っていて欲しい。妻を始めとして家の者には先に伝えねばならない。根回しをしておかなければ、余計な介入を許してしまうかもしれないからね。まあ栴納には怒られるだろうが………」

 

「母様は怒るとこわいですからね」

 

「覚悟はしているよ」

 

まあ、結婚前だろうと別の女と子供作ってたと言われたら怒り狂うだろうよ。

そこは自業自得だ。

 

「だが、遠くないうちに必ず認知はするよ。それが父親としての責任だと思うからね」

 

親父は優し気に、それでいて覚悟を持った目で俺を見つめた。

 

「別に気にしねーよ。俺としちゃ自分のルーツが知れてスッキリしたからな。親父も殴れたし」

 

俺はそう言う。

 

「そうか………」

 

親父は微笑んだ。

 

「さて、随分と話し込んでしまったが、建前とは言え不知火弐型の進捗状況を知らねばならない。そこでだ……………」

 

次に親父の口から出た言葉に、俺は思わず素っ頓狂な声を上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

基地内の演習場に、不知火弐型と山吹色の武御雷が向かい合っていた。

不知火弐型にはもちろんテストパイロットのユウヤが。

そして、山吹色の武御雷には、

 

『準備は良いかな? ブリッジス少尉』

 

祐唯その人が乗っていた。

 

「…………いつでも」

 

ユウヤは内心呆れていた。

不知火弐型の進捗状況を知る建前とは言え、開発総責任者が直々に模擬戦の相手をするか普通?と思っている。

因みに武御雷は唯依の物を借り受けて使っている。

装備はペイント弾の突撃砲と、模擬長刀だ。

 

「…………………………」

 

ユウヤはこの模擬戦に対して、GNドライブの特性を発揮して戦えば、勝つことは難しくないだろうと思っている

だからユウヤは、この模擬戦で考えている事があった。

 

『状況開始してください』

 

CPから開始の合図がでる。

その瞬間、ユウヤは突撃砲を手放す。

 

『ッ!?』

 

祐唯はそれを見て怪訝な声を漏らした。

すると、ユウヤは背中にマウントされた長刀を手にすると両手で握り、垂直に立てると、顔の横に持ってくる構えを取る。

日本の戦術機の長刀は示現流を元にして作られており、『機体を1本の刀』に見立てている。

その為、戦術機も示現流の構えが取れる。

すると、

 

「…………我が名はユウヤ! 祐弥・ブリッジス! いざ、尋常に勝負!!」

 

ユウヤは突然名乗りを上げる。

ユウヤはこの模擬戦を剣術だけの勝負で行うつもりだった。

それに対し、

 

『……………フッ』

 

祐唯も口元に笑みを浮かべると、武御雷から突撃砲を手放し、長刀を手に取る。

 

『我が名は篁 祐唯! 推して参る!!』

 

2機が同時に突撃。

長刀が交差する。

ガァァァァンとけたたましい音が鳴り響き、互いに弾かれ合うが、

 

「はぁあああああああっ!!」

 

『せぇぇぇぇぇぇぇいっ!!』

 

どちらも即座に体勢を立て直し、2撃目を放つ。

それも互いに弾き合うが、

 

「でやぁああああああっ!!」

 

ユウヤが一瞬早く機体を立て直し、追撃に掛かった。

だが、

 

『何のっ!』

 

祐唯はユウヤの一撃を受け止めると、手首を返してその一撃を受け流す。

 

「ッ!」

 

勢い余って体勢が崩れる不知火弐型。

その隙を突いて攻撃を仕掛ける武御雷。

 

「ちぃぃっ!」

 

ユウヤは舌打ちしつつ、ギリギリでその一撃を受け止め、鍔迫り合いの状態になる。

 

『やるじゃないか、ブリッジス少尉。どこかで剣術を習ったことがあるのかい?』

 

祐唯が問いかける。

 

「剣の達人を相手にしたことが何度もあるんでね。慣れってヤツだよ!」

 

ユウヤは鍔迫り合いの状態から刃を滑らせて武御雷の体勢を崩そうとしたが、完全に崩し切る前にユウヤの狙いに気付いた祐唯が武御雷を飛び退かせた。

間合いが開く2機。

 

「……………へへっ」

 

『……………フフッ』

 

両者の口元には、小さな笑みが浮かんでいた。

そして、

 

「はぁああああああああああっ!!」

 

『おぉおおおおおおおおおおっ!!』

 

再び激突し、長刀が交差したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

祐唯が帰国するためのシャトルに乗り込むところで、ユウヤ達XFJ計画のメンバーが見送りの為に並んでいた。

メンバーが敬礼で見送る中、祐唯らも答礼で答える。

そんな中、祐唯の視線がユウヤと交わり、フッと笑みを浮かべた。

 

「……………ッ」

 

ユウヤも、視線だけでそれに応えると、祐唯はシャトルに乗り込み、ユーコン基地を飛び立っていった。

 

「………………またな、親父」

 

ユウヤは誰にも聞こえないよう呟くと、シャトルに背を向けて歩き出す。

何処か清々しい表情で。

 

 

 

 

 







はい、マブラヴオルタネイティヴAnother編第8話です。
原作では唯依の演習乱入ですが、このユウヤは普通に近接格闘戦も熟せる奴なのでそんな事をする必要無し。
ということで何だかんだでユウヤの血縁関係がハッキリしました。
尚、内容はYouTubeのプレイ動画より。
まあユウヤは親父を一発殴っても許されるでしょう。
それで何だかんだで和解しました。
最後の勝負は唯依との戦いの代わりって事で。
メタな事言えば唯依が恋愛感情持つ前に血縁関係ハッキリさせとけば傷付くことも無いかなと。
次回は西インド諸島でのイベントですが果たして………?



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