転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件 作:友(ユウ)
【Side ユウヤ】
電磁投射砲の発射試験を終えた俺達は、基地へと戻ってきた。
滑走路へ降りようとすると、敷地内から多くの国連兵達が騒いでいるのが見える。
正直こういう称賛を受けるのは初めてだが、悪い気はしない。
俺が滑走路へ機体を着陸させると、
『ぼうっとしてんじゃないわよ! さっさとハンガーへ引っ込みな!』
『邪魔なんだよ! それとも、俺らに避けろって事か!? ああっ!?』
『もう英雄気取り? 勘弁してよ!?』
『ああ! 実戦にビビって、遥か後方から大砲ぶっ放しただけじゃんか!』
『英雄マジすげぇ……! トリガースイッチ押すだけの簡単な任務かよ?』
ジャール大隊のガキ共がまた喚き出す。
しかし、その機体の多くは四肢の何処かを欠損していたり、一目で分かるダメージを受けている。
『あの形であれだけの口が叩けるんだ。大したもんだよ奴らも。ま、今日の英雄の座は揺るぎようが無いけどな』
ヴァレリオがそう言う。
それは俺もそう思う。
かといって、このまま言われ続けるのも癪だからな。
「それは、この電磁投射砲が『唯のお荷物』じゃないって認めてくれたって事でいいんだな?」
俺は電磁投射砲を軽く掲げてそう聞く。
『何っ!?』
「確かに俺のやった事は後方からの砲撃だけだ。それは認めるさ。それだけこの武器が凄かったからな」
『ッ…………!』
「あと、トリガースイッチ押すだけの簡単な任務の筈だったが…………トリガースイッチを押せるようになるまでが難しい任務だったよ」
『ッ~~~~~~!』
遠回しにお前らが協力してくれればもっと早く片が付いてたんだがと言う。
序に言うなら、コイツを使って俺と同じだけのスコアが叩き出せるかどうかは別だけどな。
あの一瞬で出したキルレートは分かっているだけで4000以上。
単純に薙ぎ払っただけでは要塞級ZETAは倒せなかった。
要塞級ZETAにのみ一瞬弾丸を集中させて耐久力を削り切る必要があったのだ。
そのまま薙ぎ払うだけだったら、要塞級ZETAの後方に居たBETA群は生き残っていただろう。
だとしたらキルスコアは3000以下。
下手をすれば2000を下回ったかもしれない。
そんな事を思いつつ、俺はそのままハンガーへと向かった。
その夜、戦勝パーティーが行われ、皆は大いに盛り上がっていた。
そんな中俺は、ハンガーで不知火弐型を見上げていた。
すると、
「ユウヤ隊員」
ボルフォッグの声が聞こえて来た。
ホログラフィックカモフラージュで姿を隠しているんだろう。
「ボルフォッグか………今日は助かった。サンキューな」
俺は戦場で助けてくれたことに礼を言う。
「いえ。問題ありません。ユウヤ隊員こそ見事な砲撃でした」
「…………まあな」
俺はその言葉を素直に受け取る。
「現在戦勝パーティーが行われているようですが………参加しないので?」
彼はそう言う。
その時、足音が聞こえて来た。
「ッ…………」
ボルフォッグが黙り込む。
この場にやってきたのはヴィンセントと唯依だった。
「ユウヤ! 何やってんだよこんなトコで? 戦勝パーティーなんだから、主役が居なくちゃ盛り上がりに欠けるだろうが!」
ヴィンセントがそう言ってくる。
「フッ、主役はソ連軍が振舞ったただ酒だよ。お陰でちゃんと盛り上がってるから安心しろ」
「いやいや! それだってお前のお陰じゃねえか、英雄殿?」
「お前までそう言うのかよ? 英雄なんて俺の柄じゃないさ」
そう言うのは武の役目だ。
何となくそんな気がした。
「それに、英雄と言うなら電磁投射砲を無理して持ってきた中尉………いや、中尉だけじゃない。こいつの開発、研究に関わった者全員だ。俺はそれを最大限に活用しただけだよ。まあ、俺だったからあれだけの戦果を挙げれたって事は分かってる。だが、だからと言って己惚れるつもりはないさ」
この程度で己惚れてたら、あいつらには一生かかっても追いつけないからな。
「その通りだ。あの戦果は貴様だからこそ成し遂げられた。的確なタイミングと標的の選択。貴様の技術と経験があってこそ、望みえる最大の戦果を挙げることが出来たのだ。謙遜するなとは言わんが、誇ってもいいんじゃないか?」
唯依を見ると、やや不満が伺える。
何だろう?
『兄様は凄いです! もっと誇ってください!』的なオーラがひしひしと伝わってくるんだが?
「………っと、そう言えば、電磁投射砲がメンテナンスの途中に、またBETAの進軍があったらどうするんだ?」
俺は話を変える様にそう言う。
「ッ………! 不知火弐型の近接戦闘試験はまだ先だ。だが、貴様の今までのテストの前倒し状況を考えれば、更なる前倒しの可能性も考えられる。もしかしたら、出撃の可能性も無くは無い」
「そうか。前にも言ったが俺は実戦も経験してる。もし出撃になったとしても問題ない」
「そ、そうか………わかった。上にはそう伝えておく」
「ああ」
「明日は戦空褒賞で36時間の基地内待機だ。今後の出撃に備え、ゆっくり休め」
「了解」
そう言って唯依は踵を返した。
翌日。
今日は基地内待機という名目での休日だ。
とはいえ、基地内で遊べる事など限られている。
そのため、身体が訛らない様に軽く汗を流す為にトレーニングをしていた。
すると、
「随分と精が出るな。英雄と呼ばれている割に訓練は欠かしていないと見える」
いきなりラトロワ中佐が現れた。
「中佐!?」
俺は咄嗟に敬礼をする。
ラトロワ中佐も答礼をすると、
「貴様のお陰で昨日は我々も上物のウォッカにありつけた。一言礼を言っておこうと思ってな。英雄殿?」
「英雄は俺だけじゃない。電磁投射砲の開発、研究に携わった者全てが英雄だと俺は思っています。必要以上に謙遜するつもりはありませんが、俺だけが英雄じゃないのは確かです」
「ほう? その若さで随分と達観しているでは無いか。こういう場合、武器の力を自分の力と勘違いする馬鹿か、必要以上に謙遜して己の分を見誤るかのどちらかなのだが」
「それなりに修羅場潜ってますからね。自分の実力は十分に理解しているつもりです」
GGGの連中に揉まれれば嫌でも理解させられるけどな。
「そうか。分を弁えろと念を押して忠告するつもりだったが、余計なお節介だったようだ。それだけだ、ではな」
ラトロワ中佐はそう言って踵を返して去っていった。
数日後、再びBETAの進行が始まったが、俺達はブリーフィングで出撃出来ないとの報告があった。
理由は電磁投射砲の不調。
メインコンピューターを含む制御系が全てダウンしてしまい、復帰も儘ならないそうだ。
まあ、元々試作型だから問題が起こるのは当然だ。
そう言う問題を潰していって完成品に仕上げるのが試験小隊の仕事だしな。
すると、
「99型の運用試験が無理なら、他の試験項目を繰り上げたら如何だね? 例えば近接格闘戦とか………」
ハイネマンがそう発言した。
「機体調整が間に合いません。99型装備仕様から基本仕様に復帰中です」
イブラヒム隊長がそう発言する。
「ふむ………ならばアクティブの近接格闘試験だけでもやって頂きたいものだね。我が社としては………」
コイツも仕事なんだろうが、言い方が何処か気に入らない。
まあ、技術者として合理的な考えを言っているだけなんだろうが。
「94セカンドが動かない以上、他の機体で試験を行うのは何の問題も無いと思われるが、いかがかな?」
「………確かに問題ありません」
ハイネマンの言葉をイブラヒム隊長は肯定するが、何処か納得いかなそうだ。
「ならば94セカンドはチェイサーとして随伴出撃してはいかがでしょう?」
そう口を挟んできたのは、ソ連軍のイェージー・サンダーク中尉だったか。
なんでコイツが…………
俺はコイツが口を挟んできたことを訝しんだ。
「確かに。実験機と随伴機は同じ数の方が望ましいですな。早速94セカンドを………」
「お待ちください! 94セカンドは現在調整中と言った筈です!」
サンダーク中尉の言葉に乗せられてハイネマンが話を進めようとした所をイブラヒム隊長が待ったをかける。
だが、
「BETAの適性規模上陸が続く保証は無い。せめて実戦の空気を共有することは、ブリッジス少尉にも、そして開発チーム全体のプラスになるのでは?」
サンダーク中尉が更に口を挟む。
………やたらと不知火弐型を出撃させようとしている節があるが………
「確かに随伴であれば、仕様変更の影響はないねぇ。どうだろうその線で? これは、我が社の意向として理解してくれて構わんよ」
ハイネマンはそちらの方が望ましいので不知火弐型の出撃を強く推している。
すると、
「…………ブリッジス少尉。貴様はどう考えている?」
唯依が俺に問いかけてきた。
「出撃する事自体は問題ない。だが、援護射撃を行うぐらいの許可は欲しい」
俺はそう答える。
「援護射撃?」
「機械級に有効な武器は、99型を除けばビーム兵器しか無い。完全なチェイサーとしてお荷物になるぐらいなら、砲台としていた方がまだマシだ。この前みたいに助けられるタイミングで黙って見ているのももどかしいからな。もちろん、自分から格闘戦を挑みにBETAの群れの中に飛び込むなんて真似はしない事は約束する」
俺がそう言うと、
「しかし、先程も言った通り94セカンドは99型装備仕様のままだ!」
イブラヒム隊長が暗に危険だと仄めかす。
「砲撃戦であれば仕様の違いによる調整誤差は最小限で済む。それなら俺の腕で十分にカバーできる範囲だ」
俺がそう返すと、
「………確かに貴様の腕は信用に値する。貴様が出来ると言うのならそうなのだろう」
唯依が渋々と言った口調でそう言うと、
「分かりました。94セカンドはチェイサーとして随伴。戦闘行動は後方からの援護射撃のみ許可する…………宜しいですか?」
唯依がイブラヒム隊長とハイネマンに確認を取るようにそちらを伺うと、
「……………わかった」
「うむ」
イブラヒム隊長はため息を吐きながら頷き、ハイネマンは満足そうに頷いた。
そして。
「………………!」
サンダーク中尉の口元が僅かに吊り上がったのを俺は見逃さなかった。
ブリーフィングが終わった後、
「篁中尉!」
俺は唯依を見つけて声を掛ける。
「ブリッジス少尉? 何だ?」
唯依は軍人らしい口調で返してきた。
俺は口を寄せると、
「俺の勘だが今回の出撃、何かキナ臭い。そっちでも十分に注意してくれ」
小声で懸念していた事を伝える。
「ッ………! 分かっている」
唯依は頷いて答える。
「お前も気付いてたのか?」
「ああ。サンダーク中尉はやけに不知火弐型………いや、アルゴス試験小隊の出撃に拘っていた。何かしらの企みがあるのは間違いないだろう」
「俺もそう思う。言うまでも無かったな」
「いや、その言葉で更に確信が持てた」
「そうか…………当然の事だが、気を付けろよ、唯依」
「あっ…………そ、そちらもお気を付けください…………兄様」
俺がそう言うと、唯依も小声で返してきた。
俺はサムズアップで応えると、格納庫へ向かった。
BETAの上陸予想地点で待ち構え、上陸と同時に攻撃が開始される。
突撃級の群れの側面から弾丸の嵐がお見舞いされた。
『ヒャッハー! 見ろ! まるでぶちまけたボルシチだぜ!』
『全部食うなよ? お客さんに取っとかなきゃな!』
相変わらずジャール大隊のガキ共は口が悪い。
『消えろタコ助どもぉっ!!』
『このぉーーーッ!!』
いや、ウチの小隊も似たような物か?
俺がそう思っていると、
『よう英雄殿! 今日も突っ立ってるだけか?』
俺の随伴機の衛士がそう言ってくる。
「心配するな。援護射撃の許可は貰ってる」
俺はそう言うとビームライフルを構え、引き金を引いた。
赤い閃光が発射され、BETAの群れの中に着弾する。
俺は大体1秒に1発位のペースでビームライフルを発射していた。
『はっ! 適当に撃つだけかぁ!?』
『これだけ的があれば外す方が難しいに決まってるわよ!』
相変わらずバカにする口調で言ってくる。
俺はため息を吐きながら射撃を続けていたが。
『分かって無いわね。あなた達』
ブレーメルが口を挟んできた。
『ユウヤがそんな適当な射撃をするわけねーだろ! よく見てみろ!』
タリサもそう言う。
どうやら小隊の皆は分かっているようだ。
『何っ!?』
ジャール大隊のガキの1人が文句ありげに叫ぶ。
俺がビームを放った先に居たのは突撃級ZETA。
続いてその次に撃ち抜いたのは要撃級ZETA。
更に2連射で要塞級ZETAを撃ち抜く。
『ユウヤはあれだけのBETAの群れの中で、機械級BETAだけを狙って撃ってるんだ。それをあの連射速度で………しかも百発百中ときた。それでもユウヤを馬鹿に出来る奴がいるんなら、それ以上の腕前を見せて欲しいね?』
ヴァレリオがそう締めくくる。
『『『『『ッ………!?』』』』』
一斉にジャール大隊のガキ共が黙り込んだ。
「フッ………」
俺は思わず口元に笑みを浮かべた。
余り気にしていないつもりだったが、そう言ってもらえると気分が良い。
やがて、さほど時間を置かずに進行して来たBETAの殆どを駆逐した。
だが、突如としてコード991。
BETAの大規模地中侵攻の報告がなされたのだった。
はい、マブラヴオルタネイティヴAnother編第12話です。
今回も大筋は同じで細部に変化がある感じです。
まあ、ユウヤの原作とは違う反応を楽しむ感じでお願いします。
次回は………どうなりますかねぇ?
お楽しみに。