転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件 作:友(ユウ)
【Side 三人称】
――10月22日。
この日、日本の関東地方の国連太平洋方面第11軍横浜基地の近くにある旧横浜市街に、7人の人影があった。
その7人は、住宅街の一角、2軒の家が並ぶ場所でその家を見上げていた。
その7人とは、武、純夏、冥夜、千鶴、慧、壬姫、美琴である。
そして、7人が見上げていた家とは、武と純夏の実家だった。
「……………タケルちゃん………」
「ああ………帰って来たな………」
純夏は寂しそうに、武は決意の籠った声で呟く。
ただ、1つ気になる事があるとすれば、武の記憶では純夏の家は大破した戦術機によって圧し潰されて原型は残っていなかったが、この世界では所々損傷や腐食は見られるが、家としての原型は留めていた。
「…………これも、ジェイさん達のお陰かな………?」
武は少し嬉しそうに呟く。
おそらく横浜侵攻の時にジェイ達が介入したため、被害が抑えられたのだと推測できた。
武は家を見上げていたが、覚悟していたとはいえ、どうしてもこみ上げるものがあった。
しかし、
「ッ!」
武は目を見開いて踵を返す。
「……………」
純夏もそれを追うように家に背を向けた。
「………もうよいのか?」
冥夜が問いかけると、
「………ああ!」
武は覚悟を持った目で頷いた。
そのまま仲間達の間を通り過ぎ、
「行こう! 世界を救う為に!」
運命の場所、横浜基地へと向かった。
桜並木の坂道を登ってゆく7人。
坂を上がり切ると、7人にとって見覚えのある、そして懐かしいゲートが見えた。
そのまま7人が横浜基地の正面ゲートに向かと、見覚えのある2人の門兵が近付いてきた。
「おい、こんな所で何をしてるんだ?」
「外出してたのか?」
「隊に戻るんだろ? 許可証と認識票を出してくれ」
そう言う2人。
尚、4人の格好は訓練兵の軍服に似せた制服である。
その為、武達を訓練兵だと思ったのだ。
だが、
「あ~っと、すまない。こんな格好をしていて紛らわしいと思うんだが、俺達はこの基地の人間じゃないんだ。すまないが香月副指令に取り次いで貰いたい」
「何………? 副指令に?」
「ああ」
「……………貴様らの名前は?」
その言葉に武が口を開こうとした時、
「その必要は無いわ」
女性の声が響いた。
そちらに振り向けば、紫の髪のセミロングの女性、香月 夕呼が悠々と歩いてきていた。
「香月副司令!?」
「何故こちらに!?」
門兵の2人は背筋を伸ばして敬礼し、驚愕の声で尋ねる。
「客人を迎えに来ただけよ」
どうでも良さげに答える夕呼。
そのまま2人の前に歩み出ると、
「久しぶりね、白銀」
薄く笑いながらそう声を掛ける夕呼。
「夕呼………先生………?」
武は目を見開きながらその名を呼ぶと、
「ええ」
薄い笑みを浮かべたまま頷き、
「あんた達も久しぶりね」
後ろの冥夜達に目配せすると、
「「「「「お久しぶりです! 香月副司令!」」」」」
「えっ? あっ……と!」
一斉に敬礼してそう言う冥夜、千鶴、慧、壬姫、美琴。
そんな5人を見て慌てて敬礼する純夏。
「はいはい、そう言うの良いから」
夕呼はひらひらと手を振って敬礼なんてやめろと言う。
6人が手を降ろすと、夕呼は背を向け、
「積もる話もあるでしょう? 付いて来なさい」
そう言って歩き出す。
7人は顔を見合わせると頷き、その後を追った。
7人は地下19階にある夕呼の執務室に通された。
夕呼はその部屋にある執務机の椅子に腰かけ、改めて7人を見渡した。
「……………さて、改めて久しぶりね、あんた達」
「はい。お久しぶりです、夕呼先生。先生も記憶を受け取っていたんですね?」
「その割には驚いて無いのね?」
「いくつかの可能性の1つとして考慮してましたから」
「なんだつまんないの」
そんな軽口を躱すと、夕呼は真剣な表情になり、
「…………アンタ以外も記憶を持ってるって事でいいのね?」
「………純夏以外は」
「ッ? 鑑は記憶が無いの? むしろ鑑こそ一番可能性は高いと思ってたんだけど?」
夕呼が意外そうな表情をしてそう言う。
「あ、はい。皆から色々話を聞いては居ますが、私に『他』の記憶はありません」
「へぇ~………何でかしら………?」
興味深そうに純夏を見る。
しかし、直ぐに視線を切ると、武に視線を戻し、
「さてと……………ここからは私の予想だけど、あんた達、GGGに居たのよね?」
「「「「「「「ッ!?」」」」」」」
その言葉に、武達は思わず目を見開いた。
「フフッ、図星ね」
「どうしてそれを………?」
武が思わず問いかけたが、
「それは後で。それでGGGは、ジェイに関係がある組織ね?」
「ッ…………! はい」
その事にも驚きつつも、武は頷く。
「やっぱりね………! あれだけの技術力を持つ組織なんて、この地球外の存在しかありえないわ」
夕呼は納得いったと言わんばかりに笑みを浮かべる。
「それで先生………何故俺達がGGGに居ると?」
「そんなの簡単よ。御剣に榊、彩峰、珠瀬、鎧衣………日本の重要人物の娘たちが、置手紙があったとはいえ、同時期に一斉に行方知れずになったのよ? この5人の共通点は207訓練小隊B分隊であることだけ………前の記憶が無ければ気付かない共通点でしょうね」
「ああ……それは確かに…………」
「それに、『前』まであった横浜ハイヴで発見された『捕虜』の中に、生存者は居なかった。それに加えてGGGが初めてこの世界に介入したのは横浜の防衛戦の時………白銀と鑑はGGGに助けられたって考えるのが自然じゃないかしら? そして、その白銀に記憶があるのなら、間違いなく前の5人を気にするはず。そして、そんな白銀に5人がついて行ったとなれば、その5人も『記憶』を持っていると考えられるわ」
「………流石です。夕呼先生」
参りましたと言わんばかりに肩を竦める武。
「相変わらず青臭いわね、白銀」
「否定はしません。ですが、俺はその青臭さを捨てずに世界を救ってやりますよ!」
武はそう言い返した。
「へぇ……」
夕呼はそんな武の姿を見て、感心したような声を漏らす。
「その為に、GGGで力を付けてきたんですから!」
「ふーん………所でGGGってどういう組織なわけ?」
夕呼がそう尋ねると、
「『前』の世界で旅立ったジェイさん達が、世界を渡り歩きながらいろいろな世界の人達を仲間にしていったんです。GGG………ガッツィー・ジェネレーション・ガードはその仲間の集まりなんです。GGGが世界に提供したGNドライブやビーム兵器なんかも、別の世界の地球の技術だそうです」
「なるほどね………あんた達はGNドライブについて詳しいの?」
「横浜基地に来るにあたって、GNドライブの戦術機を動かす訓練はしてきましたよ。多分、この世界ではトップクラスだって自信はあります」
「凄い自信ね………」
「それだけ扱かれましたから………」
そう言いながら遠い目をする武。
見れば他の6人もゲンナリしてたり生気の無い目で遠い目をしている。
「そ、そう………大変だったみたいね………? 所で、あんた達のこれからの事だけど………」
「前と同じく訓練生として始めてくれませんか?」
「訓練生? できれば優秀な人材を遊ばせときたくは無いのだけど………」
「それは、ジェイさん達の『敵』に関係があります…………」
武は、ジェイ達の目的と世界の歪みについて話し始めた。
「………なるほどね………要するに出来るだけ前と同じ流れで物事を進めないと、原種とやらが強力になる可能性がある。特に今日から桜花作戦終了までは、あんた達の行動が世界に大きく影響を与えると………」
「はい」
「更に新種の機械級BETAは、ゾンダー化したBETA……」
「はい。俺達はゾンダー化したBETA……略してZETAって呼んでますけどね」
「そう言う事…………分かったわ。明日から訓練生として207B分隊を編成するわ」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
純夏以外は嬉しそうに返事をする。
その時、
「…………………ん? この感覚………」
武が何かに気付いたように横を見た。
すると、扉の影に隠れるような仕草でこちらを覗き込む銀髪のウサギが1人。
「霞…………」
武が呟くと、ピクンとウサギの耳のようなカチューシャが跳ねる。
「何やってるのよ社? 愛しの白銀が目の前にいるのよ? そんな隅っこから眺めずにこっち来なさい?」
夕呼が声を掛けると、扉の影から社 霞がおずおずと姿を現す。
「先生………もしかして霞も………?」
「ええ。記憶を持ってるわ」
その言葉を聞くと、武は笑みを浮かべ、
「霞………!」
霞に笑いかけた。
「また……会えたな」
それは、『他』の記憶の1つ。
ジェイが現れず、ループした世界でオルタネイティヴ4を成功させた世界。
その世界で武は因果導体から解放され、この世界から消えなければならなかった。
その別れ際に霞に想いを告白され、最後に『またね』と言葉を交わして別れたのだ。
「ッ…………!」
霞は目を見開いて目に涙を浮かべると、
「白銀さんっ………!」
「おうっ!?」
武の腹に突撃するような勢いで抱き着いた。
前の武だったら悶絶する威力だったが、現在の武は声を漏らす程度で済んでいる。
「白銀さん………白銀さん………!」
霞は泣きながら武の名を繰り返す。
それを見て、
「これは社さんもかなぁ?」
美琴が苦笑しながら呟く。
「こうなるかもとは思ってたけど………」
千鶴がため息を吐きながら頭に手を当てる。
「タケルは何処まで女たらしなのだ………?」
冥夜も呆れたように溜息を吐くのだった。
暫くして落ち着いた後、
「あ、そうそう。あんた達これから暇よね?」
「え? は、はい……特に命令が無ければ何も………」
武がそう言うと、夕呼は面白そうな笑みを浮かべたのだった。
シミュレータールームにとある部隊が集められた。
その部隊とはA-01部隊。
通称『イスミヴァルキリーズ』。
夕呼直属の戦術機部隊であり、横浜基地でも最強の部隊と呼んで差し支え無いだろう。
そのA-01部隊の現在の人員だが、
隊長:伊角 みちる大尉
副隊長:神宮司 まりも大尉
隊員:速瀬 水月中尉、涼宮 遥中尉、宗像 美冴中尉、鳴海 孝之中尉、平 慎二中尉、風間 祷子少尉、涼宮 茜少尉、築地 多恵少尉、高原
総勢13名からなる中隊であった。
すると、シミュレータールームに夕呼が入ってくる。
「皆お疲れ~」
「敬礼っ!」
夕呼は気を抜いた挨拶をするが、みちるの号令で一斉に敬礼をする一同。
「はいはい。そういうのやめなさいっていつも言ってるでしょ?」
いつもの通り手をひらひらと振る夕呼。
「A-01部隊、緊急招集により出頭いたしました!」
みちるが人員報告を済ませると、
「副司令? 突然の緊急招集とはいったいどの様な任務なのでしょうか?」
まりもが尋ねると、
「ああ、そんな難しい事じゃないわよ。これからとある部隊と模擬戦を行って欲しいの」
「模擬戦………でありますか?」
「ええ。私が知る限り世界最強の部隊と言っても過言じゃないわ」
夕呼の口調はいつも通りだ。
揶揄っているのかもしれないし、本当の事なのかもしれない。
「相手は7機。それとヴァルキリーズ全員での対戦よ」
「7機………倍近い戦力差じゃないですか!」
茜が思わず口を出す。
「ええ。しかも、あなた達の機体は不知火だけど、向こうは吹雪だから」
「なっ!? 高等とはいえ練習機で!?」
「本当よ。向こうから言わせれば、『それで十分』だそうよ? ただ、シミュレーターだからビーム兵器ありでだけど………」
夕呼がそう言った瞬間、空気が張り詰めた。
「聞いたか………? 我々は舐められているぞ! 我々の力を見せつけ、その驕り高ぶった鼻をへし折ってやれ!!」
「「「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」」」
やる気を超えて怒気を感じさせる雰囲気でヴァルキリーズはシミュレーターに乗り込むのだった。
一方、その様子を別のシミュレータールームから見ていた武達はと言えば、
「夕呼先生…………ハードル爆上げしないでくださいよ………」
武が項垂れている。
夕呼が言ったことは、ほぼ夕呼の口から出まかせである。
ただ、夕呼から吹雪で相手しろと言われて、『吹雪でも大丈夫』と言ったことは確かだが。
すると、
『各機、シミュレーターを起動してください』
夕呼の右腕とも呼べるオルタネイティヴ計画のオペレーター、イリーナ・ピアティフ中尉が通信で呼び掛けた。
シミュレーターが起動し、本物と遜色ない市街地の映像が網膜投影される。
『状況を開始してください』
開始の合図が出される。
『委員長、作戦はどうする?』
武が千鶴に問いかけると、
『白銀、鑑、相手の位置は分からない?』
『いや、流石にシミュレーターじゃ………実機だったら分かったと思うけど』
千鶴は念動力者の能力で相手の位置が分からないか聞いたが、シミュレーターではやはり無理だ。
『なら、一先ずいつも通りに行きましょう。鎧衣の砲撃で敵を炙り出して、珠瀬の狙撃で数を減らすわ』
『うん、わかった。え~っと…………隠れるなら多分この辺かな?』
美琴がマップを表示して、隠れられそうな所を探す。
美琴は機体をロックオンするのではなく、相手が隠れている場所を予測し、場所を指定してミサイルを発射するのだ。
尚、現在のその的中率は驚異の8割越えである。
『それじゃ、発射!』
美琴が制圧支援装備の吹雪の両肩にあるミサイルを発射した。
一方、市街地のビルの影に身を潜めていたヴァルキリーズは、相手の出方を伺っていた。
『さて、相手がどう出るか………』
みちるはそう呟く。
すると、突然空に向かって複数の白煙が尾を引く。
『何だ!?』
『ッ………!
みちるの言葉に祷子が答える。
『ハッ! ロックオンの射程内に入ってないのにどこ撃ってるのよ! 自分達の居場所を知らせただけじゃない!』
水月が馬鹿じゃないのと言いたげにそう口にしたが、
『いや、もしかしたらそれが狙いかもしれん。ミサイルを囮として放ち、近付いてきた私達を待ち伏せする作戦なのだろう。各機、無暗に動くな! 動けば相手の思うつぼだ!』
みちるは即座に飛び出さず、その場に留まる選択をする。
その判断は間違いではない。
普通は相手の場所を把握せず、ロックオンもしていないミサイルなど当たるはずが無いのだ。
みちるの睨んだ通り、囮としての役割としてしか使えない。
そう、『普通』なら。
ミサイルが尾を引きながら空を飛ぶ。
ヴァルキリーズの殆どのメンバーはそのミサイルの事を気にしていなかったのだが、
『…………………ねえ? なんかあのミサイル、こっちに向かってきてない?』
ヴァルキリーズの新任少尉である真緒がふと空のミサイルを見上げながら呟く。
『偶然でしょ? あんなところから撃ったミサイルが当たるわけ無いわよ』
凛がそう言って気にしないように言う。
『う、うん………』
真緒は頷くが、どうしてもいやな予感が拭えなかった。
チラチラと空のミサイルを確認する。
『…………や、やっぱりこっちに向かってきてるって!』
『だからそんなわけな………』
その通信は途中で途切れた。
ミサイルの直撃を受けて凛の機体が爆散したのだ。
『高原ぁ!』
真緒が叫ぶ。
その直後、次々と周囲にミサイルが降り注ぐ。
『うわぁああああああっ!?』
『きゃぁああああああああああっ!?』
突然降り注いだミサイルの雨に声を上げる隊員達。
『うおおおっ!?』
ミサイルの直撃を避けようとした慎二がビルの影から飛び出す。
ミサイルを躱してホッとしたのもつかの間、直後にビームに撃ち抜かれて機体が爆発した。
『慎二っ!?』
孝之が声を上げた。
『馬鹿なっ!? 狙撃だと!? 一体どこから!?』
まりもが声を上げたがレーダーの感知範囲内には敵機を確認できない。
何故なら……………
『1機撃墜しました!』
『流石ね珠瀬』
壬姫の報告に千鶴は称賛の言葉を贈る。
武達の部隊はスタート地点からほぼ動いては居なかった。
ただ、壬姫の機体がビルの屋上に陣取り、ビームライフルを構えていた。
本来であれば、ロックオンも届かない距離での射撃など、まぐれ当たりぐらいしか無いのだが…………
壬姫はコクピット内部で目標を見据える。
網膜投影に映るのは、ほんのわずかな点とも言える機影のみ。
だが、壬姫の集中力は人智を超えていた。
その僅かな点が射線に乗った時、
『狙い撃ちます!!』
迷いなく引き金を引く。
放たれた閃光は真っ直ぐに直進し、不知火の1機を貫いた。
爆散する不知火。
『2機撃墜!』
歴戦のスナイパーのように、自信を持って報告するのだった。
ミサイルの雨がやみ、再びビルの影に身を隠したヴァルキリーズは損害状況を確認していた。
『被害は!?』
『慎二………ヴァルキリー07がやられました』
孝之が報告する。
『ヴァルキリー09(築地)と10(高原)………11(麻倉)も………』
『ッ………いきなり4機もやられたのか……!』
みちるは歯噛みした。
自分の判断ミスだと。
だが、それも仕方ないだろう。
『ッ!? 大尉! 敵機に動きが!』
敵部隊が近付いて来るのを捉える。
『ッ………! 遮蔽物が多い場所は奴らのテリトリーだ! 囲んで叩くぞ!』
みちるはすぐに頭を切り替える。
『敵の狙撃に注意し、GNフィールドは展開しておけ!』
みちるの指示で隊員達はGNフィールドを展開。
そして、移動しようとビルの影から出た時、
『うおっ!?』
孝之が声を上げる。
ビームによる狙撃を受けたのだ。
『孝之!?』
水月が声を上げるが、
『だ、大丈夫だ! GNフィールドお陰で助かった!』
GNフィールドはビームライフルの直撃にも耐えられる。
ただ、連続で受けると流石に減衰していくが。
『距離があるからと言って油断するな! 相手に光線級が居ると思え! ランダム回避運動を行いながら距離を詰めろ!』
『『『『『『『了解!』』』』』』』
指示通りに回避運動を行いながら向かってくる敵機を囲うように接近して行く。
その間にも、放たれるビーム。
GNフィールドで防ぐことこそ出来ているが、その狙撃は1発たりとも外してはいなかった。
『何て命中精度……!』
茜がその技量に戦く。
回避しようとしても、その先が見えているかのように当ててくるのだ。
だが、それでも敵部隊を扇状に囲う位置取りには付けた。
『各機! 兵器使用自由! 攻撃開始!』
それぞれがビームライフルやビームマシンガンを使って攻撃するが、敵部隊はスルスルとビームの合間を縫う様な動きで回避してしまう。
『なっ!? 何なのよその動き!?』
水月が驚愕の声を上げる。
『風間! 誘導弾だ! 敵の連携を崩せ!』
みちるは祷子に向かって叫ぶ。
『了解! 全弾発射!』
合計36発のミサイルを一斉発射する。
みちるはこれで倒せるとは思っていなかったが、迎撃の為に少なからず隙が出来ると思っていたのだ。
だが、
『密集隊形!』
千鶴の指示と共に、7機の吹雪が背中合わせに円陣を組む。
『な、何だ!?』
みちるが怪訝な声を漏らすと、
『
円陣を組んだ吹雪が、まるで車輪のように回転を始め、
『攻撃!』
円陣を組んだまま回転し、ビームを放ち始めた。
『何っ!?』
みちるが驚愕する。
滑らかに回転しながら全方位に次々とビームが放たれる。
それはミサイル迎撃すると同時に、ヴァルキリーズにも牽制、いや、攻撃を仕掛けていた。
『くぅぅっ!?』
『何て動きだ!?』
美冴や孝之がビームを受け、声を漏らす。
GNフィールドで防げて入るが、幾度も攻撃を受け、GNフィールドが減衰していく
やがてミサイルを全て撃ち落すが、攻撃は止まない。
『こんのぉっ!』
水月がやや強引に反撃に転じ、ビームライフルを撃ち込んだ。
だが、
『散開!』
吹雪は即座に陣形を解き、散開。
『各個撃破!』
千鶴の言葉にそれぞれが動き出す。
『狙い撃ちます!』
『それぇっ!』
壬姫と美琴のビームライフが先ほどまでの攻撃で減衰していたGNフィールドを打ち破り、祷子と美冴の不知火を貫いた。
『しまった!?』
『きゃあっ!?』
爆散する2機の不知火。
『晴子! 援護して!』
『わかった!』
茜が晴子の援護で前に出て、向かってくる慧の吹雪を迎え撃とうとして、
『そこっ!』
慧の背後から放たれた千鶴のビームライフルに貫かれて爆散。
『涼宮っ!? このっ!?』
晴子はビームマシンガンを撃ちながら距離を取ろうとしたが、慧の動きについて来れずに迎撃が追い付かなくなり、
『遅いっ………!』
ビームサーベルを抜いた慧によって斬り抜かれた。
『うそぉ~………!?』
爆発する晴子の不知火。
『孝之! こうなったら2人掛かりよ!』
『あ、ああ!』
水月が孝之に呼び掛け、武の吹雪に迫る。
しかし、
『ほいっと』
武は軽く飛ぶ。
その速度はあまり速くなかったので、
『隙あり!』
『このタイミングなら!』
2人が同時にビームライフルを向けたが、
『ブーストジャンプキャンセル! って、GNドライブはブーストジャンプじゃねえか』
直後にその吹雪は地面に着地していた。
2人の不知火は空中に向かってビームライフルを構えており、隙だらけだ。
『でやぁっ!!』
両手でビームサーベルを抜くと、2機同時に切り裂く。
『まさか、これほどの実力者がまだ居たとは………』
まりもはビームマシンガンとビームライフルで冥夜の吹雪を狙っていたが、地面を滑るような動きで移動する吹雪に掠りもしない。
すると、突然居合い抜きのような構えを取った。
『ッ!?』
まりもは一瞬何故その距離でと怪訝に思い、一瞬動きを止めてしまった。
その瞬間、吹雪はその体勢のまま滑る様に接近して来たかと思うと、
『はっ!』
そのままビームサーベルが振り抜かれ、虚を突かれたまりもはそのまま切り裂かれた。
そして、遂に残り1機となってしまったみちるは、
『………ははは。まさか我々がこうも一方的に…………』
あまりにも一方的な展開に乾いた笑いを漏らす。
戦闘前に夕呼が言っていた事は、誇張でも何でもなかった。
数の有利、機体の性能の有利、それだけのハンデがあって尚一方的に蹂躙された。
それだけ衛士の腕の差が大きい事に、みちるも戸惑いを隠せない。
『……………だが! 私にも横浜基地最強の部隊を率いている矜持がある!』
みちるはビームライフルと盾を捨て去ると、ビームサーベルを抜いて両手持ちで構えると、
『はぁあああああああああああああああああああっ!!』
純夏の吹雪に向かって突撃した。
『ッ!』
純夏もビームサーベルを抜くと、対抗するように突撃。
『でやぁあああああああああああああああっ!!!』
みちるの渾身の一突きが繰り出される。
しかし、その一撃は吹雪の頭部のすぐ横を通り過ぎ、
『やぁあああああああああああっ!!』
純夏の一撃は不知火の胴体を貫いた。
『…………見事だ』
そう言い残してみちるの不知火は爆発した。
『状況終了』
ピアティフの言葉と共に、シミュレーターが停止し、ヴァルキリーズがシミュレーターから出てくる。
しかし、その雰囲気はお通夜状態だ。
彼女達にも精鋭部隊と言うプライドがあった。
それが粉々に砕かれたのだから仕方ない。
「お疲れ様。どうだった?」
夕呼がそう尋ねると、
「……完敗でした………今のままでは100回やっても勝つことは不可能でしょう」
みちるはそういう。
「私もここまで一方的になるとは予想外だったけど………彼らの実力、よくわかったかしら?」
「はい。我々はまだまだでした。精鋭部隊などと呼ばれ、いい気になっていただけです」
「………じゃあ負けを認める?」
夕呼の問いかけに、
「………いえ! 今は無理でも、いずれ必ずリベンジを果たして見せます!」
みちるはそう言い切る。
「フフッ……それでこそこの場を設けた甲斐があったっていうものだわ。伊角、今日の敗北を糧にA-01部隊を名実ともに横浜最強の部隊に鍛え上げなさい」
「はっ! 了解しました! 聞いていたな!? 明日から………いや、これからこのデータを基に訓練を組み直す! 覚悟しておけ!!」
「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」
みちるの言葉にヴァルキリーズは一斉に返事を返した。
「あ、そうそう。言い忘れる所だったわ」
思い出したように夕呼が口を開く。
「まりも。あんた明日からまた訓練生の教官やってもらうから」
「は? ど、どういう事でしょうか副司令?」
「言った通りよ。新たに207訓練小隊B分隊を作るから、あんたそこの教官。明日付でまた軍曹になるからよろしく」
「えっ?ちょっと夕呼!? 聞いて無いわよ!?」
「そりゃ今初めて言ったし」
「な、何で急に!?」
「何でも何も命令よ。拒否権は無いから」
「嘘~~~~~~~っ!?」
夕呼の無茶振りにまりもの悲鳴が響くのだった。
はい、マブラヴオルタネイティヴAnother編第21話です。
本編開始しました。
まあ、前回にもチラッとありましたが夕呼先生記憶持ち。
序に霞も。
スーパーなタケルちゃんが1人でヴァルキリーズを無双する小説は数あれど、スーパーな207小隊B分隊が無双する小説は読んだことあるでしょうか?
自分は知りません。
と言う訳で次回からスーパーな207B分隊が活躍するのでお楽しみに。
尚、ヴァルキリーズの高原と麻倉の名前は、公式には無い様なので勝手に付けさせて頂きました。
あと、ナハト・リコリス様からコラボ小説を頂きましたので、良ければそちらも読んでみてください。