転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件 作:友(ユウ)
【Side 武】
「――午前の講習は以上。基本操縦マニュアルには1日1回、必ず目を通すこと」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
「午後は強化装備を実装し戦術機適性を調べる。各自昼食は1時間前には済ませ、ドレッシングルームに集合せよ。以上――解散」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
総戦技演習に合格した後日、俺達の戦術機の操縦訓練が開始されることになり、俺達は一番最初の講習を受けた所だった。
まあ、純夏以外は受けた事があるので今更なのだが。
以前は昼のPXでの食事で恒例のご飯大盛りがあったのだが、今回の俺達はそんな事はしない。
しても多分無意味だからだ。
そして、午後になり戦術機適性検査でそれぞれがシミュレーターに乗って一通りの戦術機の動きを体感する。
にしても、皆の訓練用の強化装備姿を見たのは久々だった。
経験者達は既に慣れてしまっていたが、始めて着る純夏は初々しくて可愛かったな。
そうして、一通り検査を行ったのだが、本来全員が乗り物酔いでグロッキーになっている所なのだが、全員ケロっとしていた。
そして、
「ッ~~~~~~~~~~~~!」
まりもちゃんはまた頭の痛そうな表情をしていた。
「………貴様らの規格外は今に始まった事では無いが…………何故全員が昨日までの適正検査歴代1位を更新していくのだ…………?」
まあ俺達戦術機………というかPTの操縦で戦術機以上の機動を平気で熟せる様になってるからなぁ………
この位の揺れなら昼寝でも出来そうだ。
ごめんねまりもちゃん。
心の中でまりもちゃんに謝った。
翌日。
俺達は戦術機のハンガーに来ていた。
理由は今日搬入された………事になっている俺達の吹雪を見るためだ。
実際には11月11日の時点で既にあったのだが。
今更俺達が戦術機の実機を見てはしゃぐことは無いのだが、ここへ来たのには理由がある。
それは、吹雪とは別にシートに包まれた状態でトレーラーによって運ばれてくるもう1機の戦術機。
シートが外され、その姿が露になった。
「武御雷…………しかもGNドライブ搭載型か…………」
俺は武御雷を見つめる冥夜に声を掛けた。
「……………」
その武御雷を何とも言えないような表情で見つめる冥夜。
たまも『前』の経験があるから不用意に近付くことはしない。
すると、コツコツと静かな足音を響かせて1人の人物が近付いてきた。
冥夜が一度目を伏せる。
それは…………
「……………久しいな…………月読…………」
冥夜はそう言いながら目を開き、その人物に向き直った。
その人物は、赤の斯衛服に身を包んだ緑髪の女性、月読 真那中尉。
『前』のどの世界でも冥夜の付き人をしていた人だ。
その後ろには3馬鹿………もとい付き人の白い斯衛服の3人もいる。
「ッ……………! 冥夜様っ………!」
月読中尉は声を掛けられると目に涙を浮かべながら冥夜の名を呼ぶ。
「3年も音沙汰なく行方を晦ませたこと………そなた達には随分な心配と迷惑を掛けただろう…………許すがよい………」
冥夜はそう言って頭を下げる。
「ッ!? おやめください冥夜様! 私共は、冥夜様が無事であればそれで………!」
月読中尉は焦った表情で冥夜の謝罪を止める。
冥夜は頭を上げた。
「ですが、何故何もおっしゃらずに姿を晦ませられたのでしょうか!? せめて、我らに一言だけでも…………!」
「…………何も言わずに書置きだけ残して姿を消したことは謝ろう…………だが、こればかりは信じられぬ話であった故、誰にも言う訳にはいかなかった…………」
冥夜は申し訳なさそうにそう言う。
「そんな!? 我らが冥夜様のお言葉を疑う等……!」
神代少尉が叫ぶ。
すると、冥夜は彼女達を見つめると、
「ならば理由を言おう。私は3年前のある日、未来の記憶を手に入れた!」
「め、冥夜様……!?」
「そして、同じく未来の記憶を持つ、未来で仲間だったタケルに力を付ける為に誘われ、タケルについて行くと決めた!」
「な、何を………!?」
「このような理由で、お前達は私がタケルに付いて行くことを容認しただろうか?」
「そ、それは……………」
「…………信じられぬだろう? 当然だ。私とて『記憶』を持たなければ戯言と切って捨てただろう。そなた達に落ち度はない。だが、それがそなた達に何も言わずに姿を消した理由だ」
冥夜はそう言い切った。
3人は何か言おうとしたが、月読中尉が手で制した。
そして、
「…………遅ればせながら、総合戦闘技術評価演習、合格おめでとうございます」
突然そう言った。
その表情は、以前ほどの嫌悪感は見られない。
納得もしていないようだが。
「……………………」
冥夜も訝しむように月読中尉を見つめた。
「この度は、この武御雷をご用意しました。なにとぞ…………」
月読中尉はそう続け、頭を下げる。
以前までの冥夜は、ここでにべもなく怒鳴り、すぐに搬出するようにとまで言っていた。
だが、今の冥夜は落ち着いた表情で武御雷を見上げている。
その表情は、僅かに嬉しそうに見えた。
「この武御雷は冥夜様の御為にあるのです。冥夜様のお側におくよう命ぜられております。どなた様のお心使いかは冥夜様もご存知のはず………」
今だからわかるが、冥夜の双子の姉である煌武院 悠陽殿下が妹である冥夜の為に送ってきたものだ。
「どうか、そのお心遣い、無下になさいませぬよう………」
月読中尉がそう言うと、冥夜は視線を戻し、
「…………普段の訓練で使う訳には参りませぬが………しかるべき時に使わせていただきます…………そうお伝えください」
「「「「ッ!?」」」」
そう言った冥夜の言葉に、4人は驚きで目を見開いた。
まあ、今まで贈り物は素直に受け取ったことが無いって話だしな。
「…………ご承諾感謝致します………」
月読中尉達は一礼すると、その場を立ち去ると思いきや、俺に目を向けた。
………もしかして、ここで死人が何故ここに居るとか言われるのか?
3年前の状況から、俺が死んだと思われていても不思議は無いし。
俺がそう思っていると、
「……………訓練兵。貴様の名は?」
突然名を尋ねられた。
「えっ………? は、はっ! 白銀です! 白銀 武訓練兵であります!」
俺は一瞬呆けてしまったが、慌てて敬礼してそう名乗った。
「………白銀………武………………」
俺の名前を聞くと、月読中尉は何か考え込むような表情をした。
だが、すぐに佇まいを直すと、
「………それでは私どもは失礼させていただきます」
もう一度冥夜に一礼して今度こそ立ち去った。
【Side Out】
【Side 真那】
冥夜様達の前を立ち去った後、神代達に先に戻る様に伝え、私はハンガーに戻ってきた。
その理由は、確かめなければならない事があるからだ。
それは、数日前、この横浜基地に来る前に煌武院 悠陽殿下に謁見した際に言われた事だった。
「殿下………国連軍横浜基地に冥夜様らしき人物が現れたという話………この月読が確かめに行って参ります」
殿下の御前で頭を下げながらそう発言する。
すると、
「月読、わたくしの勘ではその冥夜はおそらく本物です」
殿下がそう発言した。
「は? な、何故そう思われるのですか?」
私は思わず聞き返してしまった。
不敬であるにも関わらず。
すると、
「…………夢を見たのです」
「夢………でございますか?」
「ええ………それも、冥夜が姿を消す少し前の話です」
「し、失礼ながら、その夢と冥夜様に何の関係が………?」
「その夢は、もう少し未来の時間でした………夢の中の冥夜は、横浜基地所属の訓練兵でした…………」
「ッ!?」
「そして、冥夜と共に研鑽に励む小隊の仲間達…………榊、彩峰、珠瀬、鎧衣…………偶然にしては出来過ぎていると思いませんか?」
その名は冥夜様と同じ時期に行方不明となり、そして同時に横浜基地に姿を現した令嬢達。
失礼ながら、私を揶揄っておられるのかと思ってしまう。
「これだけではそなたを揶揄っていると思われても仕方なきことです…………故に、もう1人の訓練兵…………白銀にこう伝えなさい。再び吹雪に乗ることがあれば、またよろしく頼むと…………」
白銀。
その名は冥夜様や他の令嬢と共に横浜基地に現れた男の名。
これは、まだ殿下には報告してない情報の筈。
何故殿下がその事を………
それに再び吹雪に乗るとは一体………?
殿下の言葉に、疑問は尽きなかった。
ハンガーに再び足を踏み入れると、冥夜様と白銀 武はまだ武御雷の足元に居た。
私が近付くと、足音が聞こえたのかこちらを振り向く。
「月読中尉………何か御用でしょうか?」
白銀 武がそう問いかけてきた。
「……………白銀 武………殿下から貴様に伝言がある」
「伝言………!? 殿下から………!?」
その表情が驚愕に染まる。
私は続けて口を開いた。
「再び吹雪に乗ることがあれば、またよろしく頼む………とのことだ。私にはどういう意味か理解しかねる…………貴様は…………聞くまでも無かったようだな」
「ッ…………!? まさか、殿下にも『記憶』が…………!?」
「ッ!? 姉上にもっ………」
白銀 武は傍から見ても分かる程に困惑している様子だった。
冥夜様も同じくだ。
しかも、殿下を『姉上』とお呼びになるとは………
それに、白銀 武は殿下と直接お会いになった事がある様子。
私が調べ、知る限り、殿下とこの男の間に接点は無い筈。
真に信じられない事だが、殿下の見た『夢』とは、本当に未来で起こった出来事であり、白銀 武と冥夜様………
延いては207訓練小隊もその記憶を持っていると見るべきか…………
「私から伝えるべきことは以上です…………それから冥夜様……」
私は冥夜様に向き直る。
「な、なんだ?」
困惑が抜けきらない様子で冥夜様は応える。
「非常に遅くなり申し訳ありませんでしたが、明星作戦の折………私の命を救ってくださり、感謝の念に耐えません…………」
私は頭を下げた。
「ッ……………何の事だ?」
冥夜様は惚けるが、私は言葉を続ける。
「明星作戦で複数の機械級BETAに囲まれた時、青き戦術機で戦場に現れ、一刀の下に切り伏せたあの太刀筋…………私が知るものより遥かに洗練されていたとはいえ、幼少の頃よりお仕えしていた冥夜様の太刀筋を見間違えるはずがございません」
「……………すまぬな。私には何の事か理解しかねる」
冥夜様はそう言って背を向けた。
「………さようでございますか。であれば、見当違いの戯言としてお聞き流しください」
私は一礼するとその場を立ち去るのだった。
【Side Out】
【Side 三人称】
翌日。
戦術機のシミュレーター訓練が開始された207B分隊に、自重などと言う言葉は無かった。
普通の訓練兵が最低5日かかる動作教習を1日未満でクリアし、再びまりもの頭を抱えさせた。
そんなある日のPXで207B分隊が食事を取っていると、
「よう、訓練兵共」
何時だったか見覚えのある男女の少尉が声を掛けてきた。
「敬礼!」
千鶴が号令を掛け、全員が起立して敬礼する。
「少尉殿、何か御用でしょうか?」
千鶴はこんなこともあったわねと思いながら問いかける。
「訓練兵はこれで全員か?」
女の少尉が問いかけて来る。
「はい。これで全員です」
その問いに千鶴が肯定すると、
「だったらハンガーにある特別機………帝国軍の新型は誰のだ? お前らの中の誰か用だと聞いたが…………」
男の少尉が問うと、
「ッ………!」
武が一瞬反応したが、その前に冥夜が手で制し、
「私の機体です。少尉」
平然とした態度で答えた。
「ん? あれ………? お前の顔、何処かで…………」
「ああ……どうなってる? 何で武御雷あんなものがここにあるんだ?」
冥夜の顔を見て訝しむ表情をした男女の少尉だったがそう問いかける。
「………………………」
「おい! 答えろ!!」
冥夜が黙っていると、男の少尉が怒鳴る。
すると、
「……………答えて宜しいのでしょうか?」
冥夜がそう口を開いた。
「あぁ!? ハンガーをあいつが1つ占拠してるのは事実だろ? 整備兵もあいつの点検を行っている」
「ましてや特別仕様と来ればそこらの戦術機とはわけが違う」
「その事情を聞く権利が、俺達に無いと言いたいのか!?」
少尉達は冥夜を脅すような口振りでそう言った。
だが、
「もう一度聞きます。本当に答えても宜しいのでしょうか?」
「何度も同じこと繰り返してんじゃねえよ! いいから訓練兵は言われたことに答えてりゃいいんだよ!!」
冥夜の言葉に男の少尉は我慢できない様に怒鳴り散らかした。
「そうですか………………自分の命を顧みない任務の遂行、真に天晴でございます」
「は? お前何言って………?」
「武御雷やその搭乗衛士の事を調べろという任務を受けているのですね? そのような命懸けの任務を進んで引き受けるあなた方のお姿………真に軍人の鑑でございましょう」
「てめぇ………さっきから何訳の分からねえことを…………!?」
「武御雷を………しかも『紫』の機体を送って来られる方が誰なのか知らぬとは言いますまい? その方の周囲を探るという事は、正に命懸け! 同じ国連軍の軍人として感嘆に値いたします!」
「「ッ…………!?」」
少尉2人の顔色が青く染まる。
「私にも言えぬ理由はありますが、軍人として上官からの命令に逆らう訳には参りませぬ! ここは少尉達の命を懸けた献身に応え、申し上げましょう! 武御雷があそこにあるのは……………!」
「お、おい! 行くぞ!!」
「あ、ああ!」
2人は冥夜の言葉から逃げる様にその場を立ち去った。
「おお、なんという負け犬っぷり」
武が逃げていく少尉達を眺めながら呟く。
「それにしてもうまく躱したな、冥夜」
武が冥夜に振り返ってそう言う。
「何、今思えばあのような者達が機密を知ればどうなるか分かり切っていた事、少し命の危険があることを仄めかせば、それ以上は踏み込んでは来ぬだろう」
「成長したな。冥夜」
武が笑ってそう言うと、
「そなたのお陰だ………タケル」
冥夜も微笑んで答えたのだった。
はい、マブラヴオルタネイティヴAnother編第25話です。
今回は月読さんとの出会いと、例のごとくかませ少尉達のざまぁとなりました。
この冥夜は精神的に成長してますのであの位はへでもありません。
それでは次回はたまパパもとい事務次官来訪です。
お楽しみに。